「十二大戦(TVアニメ動画)」

総合得点
70.0
感想・評価
489
棚に入れた
2066
ランキング
1606
★★★★☆ 3.4 (489)
物語
3.2
作画
3.4
声優
3.5
音楽
3.3
キャラ
3.4

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ネタバレ

Progress さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 3.0 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

価値はあるのか?

率直な感想としては、物語に連続性が無いという面が目立ちましたね。
登場人物の回想というものが、死亡フラグのように使われたこと。
人物を作り出す為に過去(回想)だけを用いて、
現在(人物達の交錯)をほぼ使わなかったこと。

そういう部分が目を引きました。
また、ほとんどの戦士が、自分の最大限の持ち味を発揮できずに死ぬという、
キャラクターを丁寧に作りつつその味をころしてしまうような部分もちょっと残念だったかな。

キャラクターのデザインはとても魅力的でしたね。


後述するのはこの作品の着地点を考えて見ました。暇でしたら読んでみてください。




まず、バトルロワイヤルというジャンルは
各参加人物視点でそれぞれ描写しないといけないのでしょうか?

そういうことはなく、たとえ主人公サイドだけに絞っても
良作というものは生まれると思います。

数減らしのようにすぐに死んでしまうキャラクターの回想が本当に必要?

ではこの作品は何故いちいち各人物の過去を描写し、
あっさりと退場させたのでしょうか?

この手法を採用した作品の目的とは? 

●価値の否定

十二大戦のシステムとして組み込まれた
「勝者はなんでも願いを叶えられる」
視聴していたとき、これを忘れていました。
登場人物達にはそれぞれ願いがあります。
ここでは願いや人物をモノと設定します。
回想はその願いや人物に価値を与えるアクションです。
価値を与えて売るとするなら誰が誰にでしょう?
売り手は書き手です。
買い手は読み手です。
視聴者は回想をみてじっくりと値踏みします。
よし、これだけ強そうで深みがあるものなら大丈夫だろうと、
この人が勝つことにベットします。
ですが残念、すぐに死んでしまいました!

…というのが序盤です。どうですか?
別に否定してるわけではないですよ?
この作品はモノに価値を時間と労力をかけてつけた後、
すぐに退場させて、ゲームの外へと出してしまうのです。
ゲー厶の行われているテーブルに置かれないものは
そのゲームの中において無価値同然です。
このように連続的に価値のあるモノの排除を行い、
後にテーブルに残ったモノは価値が定められていないモノばかりです。

また、価値をつけられた人物は、
必ず価値の与えられていない人物によりゲームから排除されます。
無価値による価値の否定でしょうか?

敗者にベットされた価値は勝者に引き継がれるわけではなく、
十二大戦のシステム「なんでも一つ願いを叶えられる」に託されます。

つまり、このバトルロワイヤルゲームは、
価値の否定と勝者が叶える願いの価値を上げる事が行われているのではないでしょうか。

●無価値の肯定

価値の否定や価値の引き継ぎを行う事は手段に過ぎません。
この手法を用いるこの作品の目的とは?

最後まで生き残った鼠の戦士の願いから考えてみましょう。
鼠の戦士は参戦当初、願いがありませんでした。
彼の目的意識の薄さは、馬の戦士とのやり取りからもわかります。
「買ったスマフォの画面をまず割る。放射状で綺麗だから。」
ここから馬の戦士が感じたこと、「何を言っているんだ?」

つまり、その行為に関して意味や価値を感じなかったのです。
馬の戦士には願いがあり、鼠の戦士には願いがない。
その差が価値のない行為に対しての意識差を生むのです。
目的意識が高いことから、無駄なことに価値を見いだせない馬の戦士。
目的意識が低いことから、無駄なことに価値を見出す鼠の戦士。
そこに鼠の戦士の価値観が現れています。

さて、最終話で鼠の戦士が願った事は「大戦の記憶を一切消してほしい」
これは、大戦に命をかけた戦士達の願いの価値を一切合切否定する、とも取れます。
なぜなら、人はその願いに、
大戦を生き残ったほどの価値や意味を感じないからです。
しかし、鼠の戦士には違います。
彼はこの願いを言うとき、泣いて懇願しました。
つまり彼にはこの願いは価値があったのです。
彼にとって、意味のない行為は意味のある行為となることは先ほど書いた通りです。

鼠の戦士は理想の為に過程を省略するようなことを嫌う部分がありました。
そもそも彼に理想がなかったからこそ、客観的に価値のある物を選べなかったのかもしれません。

他の戦士が積み上げた、十二大戦に賭けた理想を考えてしまう鼠の戦士。

意味のない行為を肯定するからこそ、意味のある行為を選べなかった。
まさに鼠の戦士らしいオチでしたが、この結末による作品の意味とは?

ゲームメーカーも言いましたが「心からの願い」というのは、
客観的な価値観を排除し、自分の願うことでなければ、意味が無いということなのかもしれません。

鼠にとって「無意味」な大戦はどこまでも「無意味」を叶え続ける為に存在していたという結末は、
人から「無意味」と「否定」されても自分の「価値観」を肯定するという、
面白いメッセージ性があるのではないでしょうか?

そういった意味で価値のある人生を多く描き、
あっさりと退場させて、客観的に価値のある願いの否定をするという手法は、
鼠の戦士の価値観が、客観的に価値のある物と同等に価値があるという、
価値観を否定された事に対する反論めいた主張をこの作品に感じています。


これで最後です。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

投稿 : 2017/12/30
閲覧 : 299
サンキュー:

30

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