「ヴァイオレット・エヴァーガーデン(TVアニメ動画)」

総合得点
94.1
感想・評価
2537
棚に入れた
10324
ランキング
6
★★★★★ 4.2 (2537)
物語
4.1
作画
4.5
声優
4.1
音楽
4.1
キャラ
4.1

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ネタバレ

おぬごん さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 2.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

意識の高い京アニ作品…内容は今ひとつ

京都アニメーション大賞を初めて受賞したKAエスマ文庫のライトノベルが原作
京アニ作品での超美麗なCMで注目されていた作品が、満を持してTVアニメ化です

さて突然ですが、京都アニメーションというのは非常に意識の高いアニメ製作会社です
高いスケジュール管理能力や(アニメ業界としては)ホワイトで、若手も積極的に起用される社風、
「KAエスマ文庫」や自社ショップの立ち上げによる収益確保などがその主な理由です
また個人的に京アニ作品には「本気の京アニ」と「本気じゃない京アニ」の2パターンがあると思っています
最近の作品で言うと『ユーフォ』や『聲の形』は本気の京アニ、『無彩限のファントムワールド』『小林さんちのメイドラゴン』あたりは、本気じゃない京アニですね

じゃあこの『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』はどうか
美麗な作画から「本気」の方じゃないかと思いがちですが、実は「本気じゃない」方ではないかと思います
というのもこの作品が2作目の監督となる石立太一監督をはじめ、キャラデザ&総作監の高瀬亜貴子、シリーズ演出の藤田春香と主要スタッフには若手が並んでいます
何より「本気」のスタッフはユーフォの映画『リズと青い鳥』に持ってかれていると思いますし
本作の位置づけとしては「意識の高い京アニが、若手育成のため注目作を大胆に若手に委ねた」ものと思われます
自社レーベルの作品であれば、最悪大コケしたり原作破壊してしまっても大丈夫ですからねw


前置きが長くなりましたが、感想は…今ひとつという感じでした
感動した回もあったので、各回、場面場面の演出は光るモノがあったのだと思うのですが、
TVアニメとして見た場合の全体のできばえとしてはちぐはぐな印象が残りました
主人公ヴァイオレットの成長過程が、序盤のアスペ状態(敢えてこの言葉を使います)から名声を得るまでが急すぎたり、バトルシーンの唐突さ、作風からの浮きっぷりが尋常じゃなかったり

特に序盤の「アスペなヴァイオレットが頑張る!→何か依頼者に認められてめでたし!ヴァイオレットSUGEEE」
の連続はかなり単調で、かつ魅力に乏しいものでした
感動回として評価の高い10話は王道のストーリー({netabare}『天国からのビデオレター』とほぼ同じですよねw{/netabare})もそうですが、直前の8,9話でヴァイオレットのバックボーンと成長が劇的に描かれたからこそ感動できたわけじゃないですか
そういった感動の下地となる積み重ねが序盤は無かったために「いい話」のみが先行してしまっていた印象です
序盤は1話完結にせずに、もう少しストーリーの下地をじっくりと仕込んでおくべきだったのではないかと思います
またバトルシーンは、完全に蛇足でしたね
確かにアニメ映えするシーンではあるでしょうが、あそこまで過剰な単騎無双がこの作品に必要だったでしょうか
そもそも「第一次大戦後の西欧風の街」「機械の義手」「焼きそば」などの世界観のちぐはぐさも気になりましたし、
もっと言えば「自動手記人形」なんて名称や義手の設定自体も、いかにも「機械が心を理解していく隠喩だぜ!」という感じで作者が表現に酔っているようで鼻につくんですよね

あとは皆さん指摘しているであろうEDの酷さですかね
この作品は各回のラストも余韻・引き両面で大事に作っている印象があったのですが、ED出だしの茅原実里の抜けた歌声のせいで全て台無しでした
ランティスとの兼ね合いであの曲を使わざるを得なかったとしても、ピアノイントロから入るとかもう少し他に無かったんでしょうか
またあまり触れられることはないですが、OPも何というか、安易で安っぽい曲だと思いました
そもそも視聴者はCMで作風にぴったりで美しい結城アイラの「Violet Snow」を聴いているんですから、曲へのハードルも上がりまくってるんですよね
「Violet Snow」も作中で使われることになるわけですが……あの場面なの?という感じでしたし……


結構酷評してきましたが、本当に惜しい作品だったと思います
もちろんこの手の感動系作品に初めて触れた人には感動できる作品だったかと思いますが(それこそ10話を見て{netabare}「あ、これ週刊ストーリーランドで見たやつだ!」とか思わないようなw{/netabare})、作品のポテンシャルを思うと、もう少し上手く作れば傑作になれたのでは……と思ってしまいます
シリーズ演出の藤田春香さんには『甘ブリ』のギャグ回や『ユーフォ』1期の祭回で個人的に注目していただけに
ただスタッフの皆さんには又とない経験になったでしょうから、新たな京アニの担い手として次回以降の作品に活かしてほしいですね
新たな京アニの担い手ということは、日本アニメ界の担い手ということですから


~余談1~
冒頭で触れた放送前のCMですが、アニメを見終わってから見てみると、短いシーンが一つ一つのエピソードを表現しているのが分かります
ぜひ一度見直してみて下さい
……というか、このCMの方が作品として完成されているような……

~余談2~
思いっきりネタバレですが{netabare}ギルベルト少佐が生きていなかったのは安心しました。あれだけ戦争の哀しさ・愚かさを描いておきながら、少佐だけが生きていたら茶番劇もいいところだったので…。{/netabare}

投稿 : 2018/04/06
閲覧 : 313
サンキュー:

31

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