「ブレンド・S(TVアニメ動画)」

総合得点
79.5
感想・評価
746
棚に入れた
3274
ランキング
490
★★★★☆ 3.7 (746)
物語
3.5
作画
3.7
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.9

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ネタバレ

とーとろじい さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

生きる類型から、演技される類型へ

彼女たちは、自分の属性(オタク世界のキャラ属性)を職業上の設定として受け入れ演技する。これは、伝統的アニメの、主にライトノベル等の、少女の類型を、メタ的に取り入れる構図になっている。ガンスリンガーガールでは条件付けという装置によって、アニメ世界によく見られる少女の従順さ(主人公のことを愛する、都合のいい女性像)に理由を与え、それを設定として組み込むことで、メタ「アニメ世界」にしていた。このブレンドSでも同様に、アニメ世界の伝統的少女像、キャラクターの類型を、作品内にカフェという装置でメタ的に取り入れる。あまり真剣に捉える人はいないだろうが、このアニメの模範的エンターテイメント性の裏にはそういう面白さがある。
図式:「伝統的アニメ」 物語外で作者が少女にアニメ世界の性格類型を付与し、そのようなものとして生きさせる。
「ブレンド・S」 上の手続きを〔カフェ〕という装置(舞台)で実行し、その類型付与自体を物語化(内包化)する。ナウく言えば作者の手続きの見える化、適切に言えば設定の対象化すなわちメタ設定、或いはメタ「アニメ世界」。

加えて、彼女たちは実際にそのような性格ではないが、そのような性格のように振る舞っている。これは彼女たちの演じるアニメ世界のキャラクター類型(ツンデレ、ドS、お姉さんキャラ)が、実際の現状においてリアリティを失ったことを表している。つまり、ツンデレなどこの世に存在しない、ということはあまりに自明なのだが、その自明さをこの時代の我々オタクは、痛いほど感じている。だからラノベアニメをまともに見るとき、登場するツンデレキャラのあまりにテンプレートな「別にあなたのこと、好きなわけじゃないからね!」が、我々にはもはや耐え難く嘘くさく(リアリティがなく)、耐え難くクサいのだ。クサいという意識は、我々オタクがこれまでより現実を重要視するようになったことに起因しているかもしれないが、少なくとも、そうした類型が限界に達しているのは間違いない。だからこそブレンドSのこの点は面白い。つまりもはやアニメ世界上のリアリティを失ってしまい限界に陥った伝統的少女像が、ここではただの設定に置かれることで、この作品は我々の現実と地続きになるのだ。伝統的少女類型の限界、アニメ世界の伝統の限界、その有り様をブレンドSは象徴している。彼女たちは我々と同じ性格で、我々と同じ顔を持つ、現実の人間であり、オタクは今やアニメ世界のリアリティではなく、現実のリアリティを求めているのだ。この視点は、今(2018年夏時点)流行のVtuberと繋がる(アニメ世界に現実のリアリティを求めるオタクたち)が、これにて批評を終えよう。

投稿 : 2018/07/02
閲覧 : 252
サンキュー:

5

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