「冴えない彼女の育てかた♭(TVアニメ動画)」

総合得点
92.8
感想・評価
1421
棚に入れた
7697
ランキング
16
★★★★☆ 3.9 (1421)
物語
3.8
作画
4.0
声優
3.9
音楽
3.7
キャラ
4.0

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ネタバレ

kurosuke40 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

こうして勉強させていただいております。

8話の加藤のめんどくさ可愛さにやられたので、原作7巻+GSまで読んだ。
1期アニメは見てない。なんでや、A〇azonPrimeに入ってないんや。
元々本としてお勧めされてたのでまぁ1期は本でも良いかなということで。
原作7巻+GSまでが原作第一部で、アニメ二期の範囲もここまで。
正直6巻までプロローグで、7巻+GSの濃密さが恐ろしい作品だった。

わざわざGS(Girls Side)という単行本があるわけで、
では原作は何sideか言われるとboys side(BS)であり、実は安芸の話だと思っている。
そしてアニメはGS(英梨々)も混ぜつつ、BS安芸よりBS加藤メインで物語を構築している印象。
以下、原作含んでの感想。1期アニメ見てないから的外れな部分もあるかもしれない。

春。理想のギャルゲーシチュエーションに遭遇した主人公だが、
その後の展開があまりに平凡で劇的な展開にならなかったことに落胆し、
ならその後の理想的なキャラ・展開のギャルゲーを作ればいいじゃん(!!?)と
フラットなヒロイン加藤らを巻き込んで、同人ギャルゲーを作るお話。

物語の前半は先輩の「クリエイターの世界へようこそ」が象徴的。
クリエイターとしての高みへの貪欲さ。
締め切りがぎりぎりだろうと、自分の納得のいく作品を作り上げる質を求める世界の話。
安芸は最後まで粘り、自分の納得のいくものを作り上げていく。

転換点は英梨々のカンヅメ。
安芸に「凄い」と認められるために、英梨々は文字通り命を削って作品を描き上げる。
と同時に、今まで突っ走ってきた安芸の心に停滞が訪れる。
伊織からマスターアップ時間の延命を受けたにもかかわらず、
安芸は何も動けなかった。
その理由は、脳裏に浮かぶ過去の病気中の英梨々の姿による脅迫か、伊織の指摘するように独占欲か。
どれが原因とははっきり言えない。
ただなりふり構わずなんとかする心意気は彼からはっきりと消え去ってしまった。

英梨々は問う。私の絵、凄かった?と。
安芸は答える。ああ、凄かった、と。
英梨々はそれで満たされる。
だが、英梨々は気づかない。安芸の心に影がかかったのを。
英梨々は自分自身で完結してしまっている。
自分自身の満足だけで、安芸の心の状態まで自身の心配事に入らない。

この関係を表す原作の描写は俊逸だ。
「画面の中の英梨々は、俺に介入させてくれない。
……ただ、俺を心の支えにするだけ。」
畢竟、英梨々から見ても、安芸は画面の向こうにいる存在のような関係性しかない。

アニメだと上記の描写が薄く、加藤と安芸の軋轢に力点が置かれており、
加藤の不満に対して、安芸が奮闘する。
加藤をあの場所へ連れていく。夢から覚めさせない。

英梨々と安芸との関係と対比すると、
お互いにエゴの部分は丸出しだし、話がかみ合わないけど、お互いに介入する安芸と加藤の関係は、
安芸にとっては、メインヒロインは加藤だよなーと思う。
ここ最近どちらかというと、加藤側のマネジメントの役割が主人公を彩る作品が印象に残っているけど、
古き良きヒロインの立ち位置という感覚。

安芸と英梨々の関係も心の平穏とクリエイターとしての英梨々への葛藤から問い直され、英梨々は高みを目指す。

愛し合う二人は幸せに手を取って終了、とはならない、
微妙なニュアンス関係性の描写が素晴らしい作品でした。



蛇足。

アニメしかないシーンで印象に残った場面
・安芸が昼飯代に加藤に財布を渡すシーン。夫婦か。
・英梨々が下手くそと言われて描けたと号泣するシーン。原作は戸惑い道に悩むという印象が強い。
・8話すこ。特に「やなこった」

アニメでわかりにくかった点
・先輩は英梨々の大ファン。アニメでは態度から後半わかってくるのだけど、小説の地の文がないとわかりにくかった。
・朱音による英梨々の模写について。朱音が片手間に描いた絵で、英梨々が求めた絵のレベルに達していること。

わざと隠したなと思うところ
・加藤の英梨々への説得。加藤が「おかしいよ」と言うのは、英梨々の事情を知らない加藤が自分勝手に見える。
 加藤メインのアニメ2期だからね。

エロ漫画先生みたいに、フェチぃ作画だ。

学園ハーレムものだが、安芸のヒロインたちへの好意の種類ははっきりしている。
霞ヶ丘先輩は先輩の作品の大ファンであり、作者への敬愛、
英梨々は体の弱い幼馴染への親愛
加藤は元々遠慮は薄い安芸だが、さらにフラットな気兼ねなさへの安心感
出海は弟子への師弟愛
(美知留はここらへんが薄いから、輪に入りにくく影が薄いのだと思う)
好意の種類がはっきりしているからこそ、それは恋愛感情ではなく、また恋愛感情になりえず
きっと安芸は告られても、「友達だと思ってた」みたいな反応になるのが目に見えており、
踏み出せば関係は崩れるのは安芸以外には明らか。
かくして、箱庭は維持される。
乙女な先輩は遠回しに試そうとして自爆するが、遠回しだったのであまり関係性には傷は入らなかった。
鈍感主人公だが、なまじ彼は異性間でも好意の種類をたくさん知っているから、という言い訳って感じか。

アニメが凄いいい出来なので、
小説第2部に進むか、映画を見てからにするか迷う……

原作未読時の一言。
ある女優さんが、自分の仕事を「誰かが言えなかったごめんを代わりに言うこと」と言っていたが、まさにその通りなんだろうなと8話の加藤の話を見て思った。
なかなか機会が掴めずに流れてしまいやすいもの。

投稿 : 2019/04/25
閲覧 : 253
サンキュー:

4

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