「四畳半神話大系(TVアニメ動画)」

総合得点
88.7
感想・評価
2930
棚に入れた
13588
ランキング
102
★★★★☆ 4.0 (2930)
物語
4.1
作画
3.9
声優
4.0
音楽
3.8
キャラ
4.0

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ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 3.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

森見 登美彦、湯浅 政明二つの個性の相乗作品

 原作は未読だが、原作者の森見 登美彦氏の作品は幾つか読了といったところ。
 森見 登美彦氏の小説は他にはあまり見られない独特の個性が感じられるが、加えて本作の監督で
ある湯浅 政明氏が、これまた個性的な作品を作る人であるため、より個性的になった感じ。

 森見作品の多くはSF、ファンタジーなどの非現実的要素を持っているが、それでいて見せたい
ところはSF、ファンタジー的設定や世界観よりキャラクタードラマにあるようで、本作もそんな
印象がある。
 古いSF小説には設定を使った思考実験に終始して、登場人物は実験内の駒に過ぎない、
つまらないキャラのオンパレードみたいな作品があったりする。さすがに最近はそういった作品は
ないだろうけど。
 そういった作品は何度も読んだり観たりする気になれないが、本作はそれとは真逆の印象で
とにかくキャラが面白い。
 いずれもストーリー上の役割による表層的なタイプでは終わらず、一筋縄でいかない印象が強い。
 逆に言えば平行世界設定などはあくまでキャラクタードラマのための舞台装置で、本格的SF
作品のような事象の発生理由などはなく、設定に理論的裏付けが欲しいような人には不満が
残るかも。

 売りはキャラクタードラマみたいなことを書いたが、平行世界ものとしての面白さもある。
 本作は本人が記憶を持ったまま同じ時間を繰り返すいわゆるタイムリープものとはちょっと
違うが、それでも同じキャラや事象でも別の世界では異なった展開を見せていくのは面白いし、
所々に各世界がリンクしているような感覚があったりするのがこれまた興味深い。
 最終章?に当たる繋がった四畳半展開において、それまでの展開で謎の事象だった「食べられて
しまったカステラ」、「突然現れた10万円」などの理由が明らかになっていく展開はパズルが完成
したような面白さがあった。

 ストーリーは主人公である「私」の大学生活が何度も繰り返し描かれるが、どれも「私」に
とっては「こんなはずじゃなかった」というもので、状況が変わろうとも「私」という人物自身が
変わらぬ代わり本質的な部分においては同じことの繰り返しになってしまうのだろう。
 タイムリープ系の他作品でもよく出来た作品のやり直し展開は単なる選択変更に留まらず、
当事者の心の有り様が変化していることが多かったりする。
 これまでの「私」自身がつまらなく感じていた世界も最終章の「私」にとっては充実したものに
映っていたようで、結局は充実感というものは本人の心持ち次第なんだろうなあと思う。
 それに気付いた最後の「私」には憑きものが落ちたような清々しさが感じられた。
 本人の心持ちという点では対極にいた感があったのが小津で、どの世界でもろくでもないことを
本当に楽しそうにやっていたのが印象深い。おそらく本人は非常に充実していたんじゃ
ないだろうか。

 基本的には「私」の独白スタイルで話が進んでいくが、これが全体的に早口なものが多い。
 展開自体がポンポン進んでいくのでそれに合わせたものと言えそうだが、「私」の日々に対する
焦燥感に合わせたものとも言えそう。

2019/08/13

投稿 : 2019/08/13
閲覧 : 283
サンキュー:

7

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