「色づく世界の明日から(TVアニメ動画)」

総合得点
87.3
感想・評価
1131
棚に入れた
4824
ランキング
157
★★★★☆ 3.9 (1131)
物語
3.7
作画
4.2
声優
3.8
音楽
3.9
キャラ
3.7

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ネタバレ

フリ-クス さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1
物語 : 2.0 作画 : 4.5 声優 : 3.0 音楽 : 4.0 キャラ : 2.0 状態:観終わった

草食動物特有のキレのなさ

モテる男とモテない男の違いについて。

[モテる男]
(1) いつもニコニコしていて、さわやか
(2) 自分の考えをしっかり持っている
(3) シンプルなTシャツにジ-ンズとか、着こなしがうまい
(4) 場の雰囲気にのまれず、言うべきことをはっきり言う
(5) さりげなく、いいモノを身につけている
(6) ちょっと子どもっぽい部分がある
(7) 相手の気持ちを大切に考える

[モテない男]
(1) いつもニヤニヤしていて、気持ち悪い
(2) 偏執的な考えに固執している
(3) 何の変哲もないTシャツにGパンとか、ダサい
(4) 場の空気を読まず、好き勝手な発言をする
(5) これ見よがしに、カネをかけたものを身につけている
(6) ガキの気分が抜けていない
(7) 相手の顔色ばっかり伺っている

げに、主観とはおそろしいものであります。

さて、本作のヒロインである瞳美は魔法使い一族の末裔にして、
『引っ込み思案なかわいこちゃん』です。
作品全体を楽しめるかどうかは、
この瞳美に感情移入できるかどうかにかかっている、
と言っても過言ではありません。
{netabare}
後天的全色盲の状態にある瞳美は、
大魔法使いであるおばあちゃん(琥珀)の魔法によって、
60年前(現代)の世界に送られてしまいます。
一人では何もできない瞳美は、
その時代の琥珀や新しくできた友だちに見守られ、
少しずつ、生きていくことの喜びを見いだし、
やがて色彩を取り戻して元いた時代へ帰っていきます。

ほんと、呆れるほど自分では何もできないし、しない人です。

未来へ帰る方法を自力で探そうともせず、
人と話すときには下向いてモゴモゴ、
人前に立つのも何かを決断するのも苦手、
写真美術部に誘われて入るときも、
色覚異常のことを仲間に話すことすらできません。
(物語中盤から多少マシになって自分から告げますが)

そうなった理由も
「幼い時に母親が家を出ていった」という、
ないよりはマシ程度のトラウマでしかありません。

正直言うと、美少女じゃなかったら『ウザい』です。
いや、なまじ美少女であるぶん、
余計にめんどくさいキャラであるとも言えます。

そんな瞳美を写真美術部の仲間たちは、暖かく迎え入れます。
こちらも文系らしいというか、基本はみんな草食系。
琥珀も、はっちゃけてはいるものの、元気のよい草食系ですね。
ガツガツも喧々もなく、
みんな楽しく穏やかに高校生活をエンジョイしています。

このあたりは、緑の牧場で草を食んでいた羊たちが、
見慣れない引っ込み思案な羊を見つけ、
一緒に草たべようよ、と誘ってあげているイメージです。

で、引っ込み思案でちょっと厭世的だった羊さんは、
おっかなびっくりでみんなと草を食んでいるうち、
ああ、みんなと一緒って楽しいなあ、と思い始める。

いうなれば、牧歌的で美しい世界ではあります。

ただ、羊さんのすることだけに、
やることなすこといちいち『キレ』がない。
誉田哲也さんの表現をお借りさせていただくと、
『草食動物特有のキレのなさ』みたいなものが、
物語全体に漂い続けているんです。

だから、いろいろイベントがあるのだけど、
改めて思い返してみると、
印象に残るものが全然ありません。
一般的にはドロドロしがちな三角関係のもつれさえ、
うんまあそうだよね、みたいなところに着地してますし。

そのぶん、映像ではしっかりメリハリをつけています。

基本的に全体の風景も作画も素晴らしいので、
日常描写だけでもそのクオリティを充分楽しめます。
さらに、もともと『魔法』をモチ-フの一つにしていますから、
随所にそのファンタジックな映像を差し込み、
非日常的な美しさで視聴者を惹き込むことに成功しているんです。

OP、EDの楽曲も、曲だけ聞いてると、
すごい大名作アニメに思えるぐらい出来がいいです。
ただ、OPの方は、
尺がつまっちゃってFO編集してますが……
90秒で収まるよう録り直して納品しろよ、SonyMusic。

というわけで、絵と音楽は素晴らしいけれど、
お話の方はどうにもキレがないまま大団円に向かっていきます。
この段階で少なくとも僕は、
ヒロインの瞳美にも相方の唯翔にも、
たいした思い入れを持つことができませんでした。

だから最終回、
感動すべき瞳美の送り出し・告白・帰還してからのシーンは、
残念ながら冗長に感じてしまいました。
これ、半分ぐらいの尺の方がリズムよくない? みたいな。

つまるところ本作品の評価は、瞳美のことを
『すごくいいこ』だと思えるかどうか、
最終話に至る過程を
『友情と愛を育む美しい物語』だと思えるかどうか、
それによってくっきり分かれてしまうなあ、と。

ドラマにおける人間の描き方にカドやキレを求めず、
牧歌的で暖かなつながりを求める方は、
最後まで楽しく観れるのではないかと思います。

僕みたいに『キレがあるからコクが出る』とか思っちゃってる方は、
映像や音楽がすごくしっかりしている分、
残尿感に苛まれるのではないかと愚考いたします。


ちなみに、おばあちゃん琥珀って島本須美さんだったんですね。
唯一の絡みがあった瞳美役の石原夏織さん、
アフレコのとき、びびっただろうなあ。
{/netabare}

投稿 : 2021/05/22
閲覧 : 561
サンキュー:

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