「スーパーカブ(TVアニメ動画)」

総合得点
75.3
感想・評価
479
棚に入れた
1360
ランキング
804
★★★★☆ 3.5 (479)
物語
3.4
作画
3.7
声優
3.5
音楽
3.6
キャラ
3.4

U-NEXTとは?(31日間無料トライアル)

ネタバレ

Rera さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

傑作

{netabare}6話まで視聴。
最強の日常系。素晴らしいの一言に尽きる。最近では稀にみる完成度の高い日常系アニメ。毎回心地よい感動を覚える。そして前向きになれる。6話は湘南弾丸道路を疾走する2人を見て思わず目頭が熱くなった。決して泣かせに来ているわけではないのに。こんな場面でと思うだろうが確かにそうなのだ。
穏やかな風景、何気ない日常、田舎の片隅で静かに暮らす少女。何もない、何も持たない。ただ過ぎ去て行く日常の中で、突然思い立ったかのように一台のバイクに惹かれていく。日常が変わる、生活が変わっていく、何もなかった日常に、色のなかった日常に少しずつ色がついていく見事にアニメで表現されている。心情の変化を色の変化で表現する演出が巧みである。
カブの存在で日常が変わっていく。毎日の買い物、少しの遠出、見るものが変わる、風景が変わる。そして心象風景も変わっていく。セリフは少なく、すべて絵で表現されていく。一歩踏み出すたびに景色が変わっていく。そこに人間の成長がある。
そしてこのアニメの素晴らしい点は「音」である。ゆったりとした日常を表現するのにクラッシックを多用、特にピアノ曲が多く穏やかな雰囲気を演出している。これはもう、疑うべくもない完璧な仕事である。エンジン音、クラッチを踏む音、走行音、カブの整備をするときの工具の音、風切り音。おそらくは本物の音を採録しているのであろう。街中を走るカブの音を聞くことがあるが、このアニメの音はまさにそれと全く同じである。日常系はまさにそれが存在することを絵で音で表現しなければならない。、まさにそれを実践している。本物でなければ日常系とは呼ばない。そこに確かにカブが存在すると示さなければならない。
そして冒険が始まる。礼子はカブがあればどこへでもも行けると言った。それを実践する小熊。
小熊はやはり熊であった。いきなりの凶暴化。思いついたとしても修学旅行に普通バイクでは行かんだろう。そしてこっそり2人で冒険に。湘南弾丸道路を二人乗りで疾走。しかも余裕の道路交通法違反。そして得られるこの解放感と達成感。何にも代えがたいものを彼女は得たのだ。

全話視聴終了後
11話の椎救出シーンが物議を醸している。というか、善悪を議論すること自体が焦点がずれすぎているというか、小熊の選択自体に議論をふっかけるなどかなりナンセンスだと思っている。
これは子熊の選択であり、世間一般のとるべき選択とは関係がないのだ。小熊は椎の置かれている状況、自宅との距離、これまでの経験から自ら選択したのであって、これが仮に違う人であれば違う選択になったことは言うまでもない。
一般論を振りかざしても何の意味はない。
それでは小熊というキャラクターを全く理解できないのではないだろうか。
そもそも物語を通して小熊ならばこの選択も十分に考えられることぐらいはわかるはずである。
物語の初めは彼女は普通の女の子のように見えたが、物語が進むにつれ、その特異性が徐々に浮き彫りにされてきたはずだ。
全くノーマルな性格とはいいがたい。
誰が修学旅行にバイクでついていくか、誰がカブで大八車を引いて甲府まで行こうというか、誰が佐多岬まで桜を見に行こうというか、とにかくまさに猛獣のごとき振る舞いである。
しかも圧倒的なリアリストである。彼女には両親がいない。しかもそれは突然に訪れた孤独だ。先のことはわからないと言った彼女の独白は、物語のそこかしこに出てきている。
準備を怠らない、代替案を用意する、帰ってこれるかわからないから、挨拶はきちんとしておくなど、彼女は常に現実を直視して、自ら考え行動している。
その経験をもとにあの瞬間も行動したのだと思う。
他人から見れば誤った行動かもしれないが、彼女の中では取りうる選択肢の一つだったに過ぎないのだ。
それは礼子も同じである。父親は議員、母親は会社社長、そして本人はログハウスで一人暮らし。カブで富士山に登ろうなどと考えるのはまさにファンタジーである。
人の言うことなど聞いちゃいないが、そうと決めたら決断は早い。かなりがさつで、あけっぴろげで大らかというか、まあ大した性格である。
そしてノーマルな椎の存在が礼子と小熊の特異性をより際立たせ、我々をこの魅力的なアニメの世界に引き込んでくれているのだ。
この物語の魅力は、写実的なところにもあるとは思うが、スーパーカブの造形や音は素晴らしく、まさにアニメの中にスーパーカブが存在していることを圧倒的なリアリティをもって表現している。
しかしその一方で、礼子や子熊のような女子高生は現実にはいないよね、ということである。
この普通ではない物語を私は大いに楽しんでいる。私史上最高のアニメの一つになることは間違いない。{/netabare}

投稿 : 2021/06/27
閲覧 : 150
サンキュー:

13

スーパーカブのレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
スーパーカブのレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

Reraが他の作品に書いているレビューも読んでみよう

ページの先頭へ