「夜ノヤッターマン(TVアニメ動画)」

総合得点
64.6
感想・評価
696
棚に入れた
3331
ランキング
3649
★★★★☆ 3.5 (696)
物語
3.3
作画
3.5
声優
3.6
音楽
3.5
キャラ
3.6

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ネタバレ

ナルユキ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 2.0 作画 : 3.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

時に本家へのリスペクトを棄てて見せるのも重要

誰もが耳にしたことがあるタツノコプロ発の正義の味方『ヤッターマン』と悪役「ドロンボー」。本作はこの雌雄が決された後を描いたスピンオフ作品である。
ヒーローが悪を倒した後の世界。それは本来なら幸せに満ち溢れた雰囲気に包まれているはずだが、この作品は違う。
荒れ果てた荒野や枯れた樹木ばかりを写し、どこか寂しげで息苦しさを覚える世界。悪を倒した後の世界のはずなのに何とも言えない空気を漂わせている。この謎に惹き込まれて本作を視聴した。

【ココが熱い!:悪に堕ちたヤッターマンに正義のドロンボーが立ち向かう物語】
メインヒロイン・レパードはドロンジョの血を受け継ぐ9歳の少女だ。彼女らドロンボー一味の子孫は先祖が「お仕置き」として辺境の地へ追いやられて以降、貧しい暮らしを強いられている。彼女の誕生日ケーキは半分に割ってろうそくを刺したふかし芋でプレゼントは1冊の図鑑。絵に描いたような貧乏を見せられて、泥棒の子孫だといっても同情することは避けられない。
その誕生日にレパードの母親が病に倒れる。一命を取り留めたものの辺境の地の医者では手の施しようがない。レパードたちは海の向こう側の国・ヤッター王国にいるヤッターマンに助けを求めて海を渡った。
レパードはこの時までは先祖の悪行を恨み、ヤッターマンを師事していた。正義の味方ならお母さんを助けてくれる筈。お母さんを助けてくれたら自分はもっとヤッターマンのことが好きになる、と。
国を覆う隔壁の中から現れた懐かしい2つのシルエット。ヤッターマン1号2号の出現にレパードは手を振るのだが、その頬を掠める弾丸。ヤッターマンはレパードたちの事情も聴かずに攻撃を仕掛けてきた。
追い払われたレパードたち。そして母の命がタイムリミットを迎えた。手を差し伸べれば助かる筈だった母親の逝去。レパードの悲しみはヤッターマンへの復讐心に相転移し、「デコピンをしてやる!」という可愛い表現ながらもそのために忌み嫌っていた先祖・ドロンジョを受け継いで新生ドロンボーを結成するのである。
ヤッターマンが正義でドロンボーが悪。そんな勧善懲悪モノの児童向けアニメ『ヤッターマン』の価値観がひっくり返って始まった本作の物語に大きく期待感が高まる、確かに深夜アニメ向けに改革されたヤッターマンシリーズの意欲作だ。これなら元・子供向けという恥ずかしさもなく、その魅力を存分に他者に語れるだろうと第1話を観てそう思った。

【ココがつまらない:やっぱりヤッターマンだった】
{netabare}まあ別に『ヤッターマン』がつまらない作品だと言うつもりはないのだが、少なくとも深夜アニメとして放映された本作に児童向けだったヤッターマンのギャグをそのまま随時、挿入するのは間違っていたと思う。「ブタもおだてりゃ木に登る」。このギャグ何回もやるほど面白いか?
そして本作はドロンボーが主人公なので華を持たされることもあるが、大抵はボヤッキーの子孫が作った安っぽいメカがヤッターマンたちに壊されて、三人乗りのダンベル自転車などを使い逃走するというのがお約束となっている。1話完結式に近い淡々としたストーリーが第4話から始まり、一気に脚本の浅さが露呈する。第1話で示したシリアスな方向性とヤッターマンをリスペクトするようなコメディ展開がいまいち噛み合っていない。
さらにストーリーは間延びしている。本作はドロンボー一味が本物のヤッターマンがいるであろうヤッター王国の首都まで旅をするのだが、その過程の中でヤッター王国のディストピアっぷりを際立たせた微妙なエピソードも多い。はっきり書いて本筋とは関係ない話が非常に多く、1話はあんなに濃ゆかったのに話が進めば進むほど内容が薄まっていく。
メインストーリーだけを知りたいなら3話まで観て、跳んで9話から最終話まで見ればいい。10話のAパートではご丁寧に総集を兼ねた回想シーンもあるので10話からでも問題ない。序中盤から4・5話分、レパードと道中で仲間になるアルエットの可愛さや、何処と無くヤッターマンの面影が見える少年・ガリナの成長物語が描写されているものの、物語の本筋を描く上でそこまで尺を割くべきだったのか疑問が残る。{/netabare}

【キャラクター評価】
レパード(新生ドロンジョ)
9歳の女の子がドロンジョ様のコスチュームを着るってもうそれだけで背伸びしてるような可愛さが出ていていいよね!
しかし内面としてはもう少し成長を描いて欲しかったところ。何しろヤッター王国の首都に向かうまでは逃げる・頼る・捕まる・助けてもらうのオンパレードだ。彼女の思いきった判断が状況を好転させることもあるものの、基本的にはご先祖様もそうだったからかトンズラーとボヤッキーの子孫に指示出しするだけで何もしない──いや、出来ないのである。
ヤッターマンの巨大な戦力を知った2話以降でも彼女自身が対抗できる力や知恵を付ける展開が無いので「母親の仇を討つ」という復讐から始まった旅に無謀というか時期尚早な印象を受けてしまった。5年修行して14歳で出発する方が主人公感あったかなーとも思う辺り、自分はロリコンじゃない。せふせふ

【総評】
『ヤッターマン』という勧善懲悪のコメディタッチな作品の雰囲気をスピンオフで逆転させ、物語への期待感を高めた第1話には非の打ち所がない。しかし以降の話は深夜アニメ向けの調整を見誤っており、結局児童に向けたようなギャグ要素が抜けきれていなかった。それが根強くさらに本筋には殆ど関係ない中盤がかなり足を引っ張っている。時として1クールだけでは語りきれずに評価を落とすような作品も多いが本作は逆。1時間半の映画や6話ほどのOVAくらいの尺で十分、事足りる。
終盤は更なるどんでん返しを行い王道的なストーリーに戻すことが本家『ヤッターマン』へのリスペクトも兼ねており悪くない。幼少の頃からのタツノコファンであれば真のヤッターマンの誕生と新生ドロンボーの共闘は感涙ものだろう。しかし折角の共闘も作画のクオリティー低下や使い回しの多用(まさかのOP映像の使い回しもある)で素直に「よかった」と言えない出来栄えである。
最初の掴みがとても良かっただけに色々と惜しい。もっとシリアスに、もっと丁寧に作ってくれたのならここから自分もタツノコアニメのファンになっていたかも知れないが、本家のスピンオフという最大のチャンスがありながら、本家ヤッターマンという全日枠の感覚を捨てきれておらず、大人(という名の大きな子ども)を唸らせるにはまだまだ甘かったと書かざるを得ない。

投稿 : 2021/09/25
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サンキュー:

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