「アニメ ブルーピリオド(TVアニメ動画)」

総合得点
73.9
感想・評価
273
棚に入れた
866
ランキング
948
★★★★☆ 3.7 (273)
物語
3.8
作画
3.6
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.7

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ネタバレ

エイ8 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

*高校生のおはなしです

『ブルーピリオド』(Blue Period.)は、山口つばさによる日本の漫画。『月刊アフタヌーン』(講談社)にて2017年6月24日発売の8月号から連載中
2021年10月から12月にかけて毎日放送・TBS系列『スーパーアニメイズム』枠ほかにて放送された。同系列では各話放送後に、山田五郎によるミニコーナー『明日誰かに話したくなる!ブルピリ美術豆知識』を放送(wikipedia)

冒頭どこかのスポーツBARでテレビ観戦を楽しむ男四人組。もくもくと立ち昇る煙草の煙、色合いからみても明らかなアルコール、徹夜後のラーメン、眉毛無しが二人……そう、この物語は成人男性たちの熱い友情を描いtこ、ここここーこーせいいいいぃぃぃ!?

このシーンから高校生の物語と看破できた人は果たしてどれほどいただろうか?いくらなんでもおっさん臭過ぎるだろ……それとも最近の高校生はこんな感じなの?酒かっくらいながらのスポーツ観戦が娯楽……にわかに信じがたいんだけど……

まあそんなどう見てもおっさん描写の四人組の中の一人こと矢口八虎が本作の主人公。ようするに特にやりたいこともない中、自堕落に青春の時間を浪費していたという事が言いたいんだろう。少なくともアニメでは元から絵画に興味があったという描写はない。むしろピカソの絵がわからないとマイナスのイメージから出発している。
そんな彼が絵に興味を持つきっかけとなったのがオール明けの渋谷の空の色。タイトルの『ブルーピリオド』はその時の空の色から来てるのだろう(と、思ったのだが他所様のレビューのお陰でピカソの一時期の作品の定義だと知る。その名もズバリPicasso's Blue Period……勉強になりました。なんでピリオドやねんとか思ってしまってました……)。

行動力のある彼はすぐに美術部に入部し芸大を目指すことに。と、ここで部員の放った「DQN」という言葉からやや時代を感じさせるが、初出は2017年。うーん、この頃にはもう廃れていた言葉なような気もするが。

全体を通して女性陣に関してはある程度リアル志向と言うか、あーいるいるこういう人って感じの人が多い気がした。美術部員たちに関しても最早偏見で描いてるんじゃないかと言った感じのリアリティ(オレっ子はさすがにいなさそうだが)。ただ先輩の一人である山本に対しタメ口なのはどうしてなのだろうか?業界的にそういう慣習みたいなのがあるの?彼女の卒業式でもそれは変わらず、うちら受験終わったら同人誌だかrど、どどど同人誌ぃぃぃ!?
……こっそり八虎と龍二のカプもの描いてそう(偏見)攻守で揉めてそう(偏見)ヤトラソー〇ケとか言ってそう(げん〇けん)

冗談はともかく老婆の割にスタイル抜群の美術部顧問と予備校の大場といった教師陣以外はちゃんと人間を見て描写してると感じるのに対し男性陣はファンタジックな連中が多い。その筆頭となるのが鮎川龍二で彼はいわゆる男の娘タイプ。制服を男性もの女性もの上下バラバラに着こなすなど普通ではありえないというか許されないことを学校内でやってのけている(同じことやってる人、個人的にはつい最近「古見さん」で見た)。彼が何故「ゆかちゃん」と呼ばれるのか謎だったが「あユカわ」から来てる模様。それを先生どころか自身の祖母にも呼ばせてるのだから大したものだなあ、と。

推測だが、本来彼はもっと大きな役割があったのではないかと思っている。理由は単純に八「虎」に対して「龍」二だから。ひょっとしたら数字の八と二にも理由があった?合わせて10なとことかも含め意味深だけど、アニメ一期中にはそういったことは無かった。一応大きなイベントはあったが二人の関係が大きく変化するといったものにはなっておらず、今後もそんな気配は感じない終わり方だった。
男性陣でリアルと言っていいのは高橋世田介ぐらい。八虎の不良友達は冒頭のアレでとても高校生とは感じられないし。というか改めて見直すと男性陣少ないな。残りの準レギュラー級は橋田くらいじゃないか。後は予備校のイガクリ頭君……

美術を題材にしているだけあって風景描写はかなり上手。とくに校舎内に関しては下手な実写トレースよりも雰囲気が出てた。そうそう、学校ってああいうアブラ引きの匂いが漂ってくるところだったよね、とか。
一方で人物描写に関してはそうとも言えない。上手いは上手いが、例えば予備校生の桜庭と龍二の顔の書き分けはほとんど出来てない。彼女が私服で現れるシーンがあったのだが、顔だけ映されると本当にどちらかわからなかった。多分作者の中での「美人」があれで似通ってしまうのだろう。せめて髪の色をもうちょっと変えてたら良かったな。

さっきは男性陣が少ないと書いたが実際のところは男女双方とも少ない。ほとんどが八虎が絵画に向き合うシーンで消費されていくため他の登場人物は実質アクセントに過ぎず、サブキャラとしてはぶっちゃけ講師の大場が一番出番多い気がする。
そんな中では龍二がもっともドラマがあった方だが、これも先述した通り彼等の人間関係を深めるためでなくあくまで絵画の成長として利用される。あれだけのイベントをこなしておきながらそれだけで「はいお終い」と言うのもどうだかなとは思った。原作では違うのかもしれないけど。(あ、いや何も尊い関係になれと言いたいわけじゃないですよ?)

ただまあ、それらもそもそも八虎の性格に起因しているのかもしれない。他ならぬ龍二に「救命道具はもってくるが飛び込まない」タイプとして揶揄され結果飛び込みはするものの、単に飛び込んだという事実だけで終わった感は否めない。もっともこれは八虎よりも無茶振りだけした龍二の方に問題があるとは思うが、あのイベントによって得られたものは二次試験でのヌードの先取と龍二が作中ではちゃんと男に見られてたということぐらいでしかなかったのはやはり残念だ。

八虎というキャラはかなり空気が読めて立ち回りも上手いタイプで、挙句努力もできその効率も良い。高校生に見えないガタイの下には年がら年中絵画に向き合っても尚腹筋が浮かび上がってるぐらいのフィジカル派でもある。終盤にストレスによる蕁麻疹と眼精疲労でダウン寸前まで追い込まれはしたが、あれだけのオーバーワークを重ねながら崩した体調と言えばそれぐらい。世田介に「何でもできる奴がこっちくんな」と言われてしまうが、まあ気持ちはわかる。そもそもズブの素人から二年弱で芸大合格までこぎつけるほどのポテンシャルを持った完璧超人なのだ。

その一方で他人に対するこだわりは少ない方。世田介と美術部の先輩である森に関しては別格扱いだが、それは彼らがどうとかでなくあくまで美術に対するものでしかない。不良仲間の恋ケ窪に「その笑い方されるとそれ以上こっち入ってくるなと言われてる気がする」と言われたこともあり一応愚痴らせてもらうが、あの流れも何だか社交辞令的であまり良い印象を受けなかった。先述した龍二の一件も含め、多分彼は人間相手には本気になれないタイプなのだろう。何かに打ち込むことに対する集中力は群を抜くため合格までこぎつけることはできたが、ヒューマンドラマ自体が少ないのは必ずしもアニメ尺の都合だけでなく人間そのものに対する興味が薄いという事情もありそうな気がする。或いは自分の中で簡単に割り切りができてしまうからか。世田介に例の発言をされてからも暫くしたらへらへら電話に出る。Mなんじゃないかと自嘲気味だったが、少なくとも恨み妬み嫉み系とは無縁そうだ。

八虎が学ランの下に常にネクタイを締めている本当のところの理由はわからないが、真面目さの象徴と言った感じはする。じゃあどういう理由で不良化したのだろうか?多分、本当に人付き合いのための一種のコスプレに過ぎないんだろう。

全体的に感じたのは八虎を筆頭にみんなとても高校生とは思えないぐらい色んな意味で成熟しているということだった。龍二も実際のところは煙草慣れしてそうだし、どういうツテなのかスナックでホステスとしてバイトしている。(単純に大丈夫なの?あれ。風営法とかに引っかからんの?)
不良仲間達ももっと八虎の足を引っ張るかと思ったら、普通に良い奴揃い。正直何しにあんな尖った不良設定にしたのかわからないぐらい。八虎自身も空気読んだお付き合いを続けていた割には結構あっさり美術に打ち込めた。最初の頃は遊びは夜だからとか言ってたが、夏休みを全く焼けずに終わらせたという描写からもずっと絵を描いていたんだろう。要するに、不良仲間達とはどこにもいかなかったと見ていいと思う。

あくまで美術に対する成長譚として見れば悪い作品ではなかったが、「高校生の成長譚」として見れば色々チグハグしてるなとは感じた。冒頭のシーンもいくら着替えたところであんな空間にずっといれば髪の毛にヤニの匂いはどうしたって移る。しかも胃の中にはアルコール。朝っぱらからそんなんじゃどうしたってバレますよ。そういう面などをファンタジーとして描いてるのなら良いんだけど、やはり実在の学校の名前を出している以上そういう言い訳も難しいなという気もする。

初めから浪人生としての物語だったならスッと納得できただろうなあとは思う。いずれにしろ不良設定はむしろ邪魔にしかならなかったんじゃないかなあというのがディティールとしての感想。

投稿 : 2022/03/23
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サンキュー:

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