「かぐや姫の物語(アニメ映画)」

総合得点
65.0
感想・評価
289
棚に入れた
1186
ランキング
3450
★★★★☆ 3.8 (289)
物語
3.6
作画
4.2
声優
3.7
音楽
3.8
キャラ
3.6

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2
物語 : 3.0 作画 : 4.0 声優 : 3.0 音楽 : 4.0 キャラ : 2.0 状態:観終わった

道楽。

【概要】

アニメーション制作:スタジオジブリ
2013年11月23日に公開された137分間の劇場版アニメ。
原作は、『竹取物語』

監督は、高畑勲。

【あらすじ】

日本人なら『竹取物語』を誰でも知っていますので略。

【感想】

日本テレビの会長だった故・氏家齊一郎氏が、「ホーホケキョ となりの山田くん」を見て、
どれだけ金かかってもいいからと言って高畑勲氏に映画を作らせようとした。
興行的には失敗続きで干されていた高畑勲氏はこれを引き受ける。
その制作半ばで氏家会長は没して、日テレも前会長の遺命で引くにひけずに、
宣伝に予算をかけるも莫大な制作費を回収できなかった大作。

仕事を始めるのにも重い腰を上げるための話し相手が通い詰めたり、
絵コンテ30分作るのに1年半と書かれていて完成に長い年月を必要としたり、
自分では絵が描けなくて文章でびっちりと説明をして他の監督の作品の10倍もリテイクを繰り返して、
プロデューサーとしては厳格であり、宮崎駿氏の頭が上がらない人物が、
いざ自分で作品を作るとスケジュールや予算の管理能力が皆無。
8年間の歳月と制作費52億を費やしてまで、これを作らないとならなかったのか?
宮崎駿監督で稼いだ金を食い潰すという、最晩年はジブリのお荷物になりながらも、
結局は高畑勲監督の遺作となってしまった作品。

個人的には巨匠ぶって数年おきに忘れた頃に映画を発表をする方よりは、
その時節で人様が作った作品を素直に楽しんだり、
TVシリーズなどで仕事を続けていて現場感覚が強いといった人材のほうが好ましく、
アニメは視聴者・観客に受け入れられてこその娯楽であると思っている自分にとっては、
美術館に飾る絵画のような精神で作られた芸術家ぶったアニメには抵抗があります。

誰もが知っている作者不詳の御伽噺が原作であり、
他には類を見ない戯画や水墨画みたいな作画が特徴ですが、
原作は説明不足であると思ったのか、独自解釈に依る補完まみれ。
映画の展開は原典に完全には忠実ではなくて、
かぐや姫が赤子の状態から段階を踏んで成長していき、
原典にはない山野での幼女時代を挟むことによって、
主観での楽しかった子供時代を美化することで、

養父である竹取の翁(讃岐造)から押し付けられた幸せ(貴族との結婚)を、
貴族社会の権威やしきたりなどを姫の主観では窮屈な鳥かごのように、
極めてネガティブなものとして扱って、彼女がそれを望んでいないこと。

原典では姫と三年間も文を交わして心の交流がある時の帝を、
ギャグみたいなアゴがキモいナルシストのストーカーとして、
かぐや姫の拒絶の対象に改変してまで、
オリキャラの木こりの捨丸を姫の幼い頃からの想い人にして、
貧しい庶民の暮らしは素晴らしいと強調させる。

高畑勲氏の思う人間らしさの描写が、
今回はブルジョワジーに対するルサンチマンの拗らせと思いきや、
その捨丸ですら妻子がいながら姫に思いを馳せる不貞な男としていると、
人間社会は欲にまみれて真に美しいものはないと描いている。

しかし、その罪深き人間の業ですら、
感情が去勢されていることで悩みも苦しみも失ってしまった、
一見は朗らかな月の世界のディストピアと比べればマシな存在としている。

この作品で真に描きたかったのは登場人物の個人のドラマではなくて、
人間は愚かな俗物ではあるが、感情があるからこそ素晴らしいと肯定するための物語なのだろう。
俯瞰した人間の描き方は、戦時中のニート少年が集団生活のルールから外れて、
妹を巻き込んで餓死する「火垂るの墓」から一貫している。

扇情的な大衆娯楽ドラマは視聴者を一方通行の受け身状態にしているとして好まない高畑監督は、
視聴者の想像力や自分で考えることを大切にしているという。

この作品も前述の明確なテーマ性を持っていて、なるほどな!と思うこともあれど、
実はそんなに面白いものではない。メッセージとしてはありきたりであるし、
イチイチお金払って映画館で高畑勲氏の説法を聞くのが楽しいのか?

やはり、劇場に足を運ぶ客から求められているのは感動であり大衆娯楽であるのは、
近年の人気アニメ映画の数々を見れば一目瞭然であり、
高畑勲氏が否定しているものこそが、視聴者が欲しているものであろう。
その視聴者を口を開けて餌をねだる雛鳥扱いして、
クリエイターが顧客に媚びていてけしからんとする者もいるが、
むしろ監督個人の作家性云々を主張している者こそがニッチ側の存在である。

高畑氏のクリエイターとしての姿勢は嫌いではないが、何億何十億もかかるプロジェクトで、
莫大な人間を作家性の巻き添えにすることについて、やはり疑問なのが、
このアニメを見てて思うこと。

芸術家ぶって好き勝手にやりたいなら、出版物で作ればいいじゃない?
やりたいようにやって27億円の赤字のアニメを見て、
作画スタッフの手間暇に比べて特に満足感がなかったことで、
思ったことがこれでした。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2022/10/14
閲覧 : 193
サンキュー:

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