「超時空要塞マクロス(TVアニメ動画)」

総合得点
71.9
感想・評価
339
棚に入れた
1751
ランキング
1213
★★★★☆ 3.7 (339)
物語
3.9
作画
3.3
声優
3.6
音楽
4.0
キャラ
3.9

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 3.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

デカルチャー。

【概要】

アニメーション制作:タツノコプロ、アニメフレンド
1982年10月3日 - 1983年6月26日に放映された全36話のTVアニメ。

監督は、石黒昇。

【あらすじ】

西暦1999年7月、宇宙より飛来した謎の恒星間巨大宇宙船が大気圏に突入し、
高熱と衝撃波で地上に多大な被害を与えながら地球をほぼ一周して、
太平洋の南アタリア島に落下し、更には大地震や津波などの世界的な災害を引き起こした。

宇宙船は戦闘兵器であり、人類を遥かに超えた巨大な異星人と星々の宇宙戦争の事実。
地球の人類は、近い将来に恐ろしい異星人とファーストコンタクトをすることが予想され、
地球上の国家間でいつまでも争ってる場合ではないと、
世界中の国家を解体して組織を再編した地球統合政府が樹立。

統合政府は地球統合軍を設立。宇宙船を調査・研究することで地球の科学力は飛躍的に向上。

その一方で、急激な地球統一への反発や、宇宙人の科学技術の優先権などの問題から、
統合政府のやり方に不満を持つ旧ロシアを中心とした旧東側の勢力がいて、
反統合思想の紛争や内乱が世界各地で勃発。

2000年に始まった統合戦争は、多くの戦死者を出して2007年に一応の決着。

西暦2009年2月、人類は10年前に宇宙より落下し大破した全長1,200m超の異星の宇宙船である、
識別名AAS-1の修理・復元を完成させて、統合宇宙軍所属艦SDF-1巨大戦艦マクロスとして蘇らせた。

しかし、マクロスの進宙式当日、宇宙船の元の所有者の異星人「監察軍」が仕掛けておいた、
ブービートラップの自動防衛システムが働き、止める手立てのないまま、
マクロスの主砲ビームは、月軌道上に出現した宇宙人ゼントラーディ軍の宇宙戦艦を撃破し、
人類とゼントラーディ軍の交戦状態に入ってしまった。

一方、進宙式にロイ・フォッカー少佐からの招待を受けたエアレーサー(飛行機乗り)の一条輝は、
マクロスの航空管制主任オペレーターの早瀬未沙中尉の指令に促されて、
可変戦闘機バルキリーで飛び立った。生まれて初めての戦闘に戸惑う輝はリン・ミンメイと出会う。
継続する戦闘から逃れるためにフォッカー少佐の助力によってマクロスに乗り込む輝とミンメイ。
そしてマクロスはゼントラーディ軍の包囲網から脱するために宇宙に飛び立ち、
月の裏側へのフォールド航行(ワープ)を試みる。
しかし、ワープに失敗して冥王星軌道の宇宙空間に送り込まれてしまった。

フォールドに巻き込まれた南アタリア島住民5万8千人(シェルターに避難していた)と、
宇宙空間に浮かぶアタリア島の街の残骸の一切合切を収容してマクロス艦内に街を再建し、
マクロスは地球への帰還の宇宙航海をすることになる。
フォールドシステムの消滅でフォールドは不可能で、地球へは通常エンジンで向かうしか無かった。
帰還途中でマクロスとゼントラーディ軍の戦闘があり、
輝はこのまま何もしないよりは、飛行機操縦しか能のない自分が出来ること、
そして、ミンメイを守るために軍隊に入ってバルキリーのパイロットになることを決意するのだった。

【感想】

ロボットアニメですがSF要素が特に強くて、ミンメイの歌によるアイドル要素と、
トレンディドラマみたいな三角関係で、小学生よりは思春期の青少年が共感をしやすい作品。
当時は20代の若いスタッフが多くて、ファン層との心理的な差異が少なかったのが要因。

大昔に観たはずなのですが、クライマックスの27話までの記憶がほとんど消えてまして、
戦後の28話から最終回の36話までを、もともと観ていませんでしたので視聴。

バルキリーやデストロイドなどのメカニックのデザインは、
サンドイエローのカラーリングの標準量産機VF-1Aですら、令和の今でも相当にかっこよくて、
戦車に手足が生えたようなモンスターは、これって欠陥兵器?
なのと重量感たっぷりの無骨さには特にロマンを感じます。
河森正治氏と宮武一貴氏はメカニックデザイナーとしては本当に神ですわ。
忘れていましたがマクロスのトランスフォーメーションの成り立ちが相当に酷くて、
改良前の変形時に破壊されていく街並みに住民は恐怖ですよね。

平野俊弘氏と板野一郎氏によるオープニングのアニメーションが出来が良くて、
バトロイドに変形しながら前転をして銃を撃つ一連の動作なんか感動モノ。

昭和から美少女イラストレーターとして名高いアニメーターで、1983年からは漫画家でもある、
美樹本晴彦氏の女性キャラの柔らかいキャラクターデザインは同時代でも傑出したものであり、
ミンメイの存在は彼女の行動にアンチを生みながらも当時のアニメファンを熱狂させたもの。

と、べた褒めなのですが、常に人手不足でスタッフが逃亡するなど制作現場は地獄だったようでして、
本編の作画のクオリティには統一性がなくて映像が話によって玉石混交。
今、お目にかかれるBD版は作画修正済であり、
BD-BOXに収録されてる放送版第11話なんか究極の放送事故みたいな作画崩壊アニメで、
何十回もダビングで孫コピーしたビデオテープみたいに画質がボロボロ。
マックスがミリアと結婚する第25話 「バージン・ロード」なんか原画・動画スタープロで可哀想。
この話ぐらいは一軍スタッフで作り直して欲しかったなと今更ながら思います。

第27話 「愛は流れる」なんか、昭和のテレビアニメでこんな凄いの出来てたの?
とスタッフの本気・全力を出せれば本当に素晴らしいものが出来ていることもあり、
コアスタッフのアニメーターは間違いなく一流揃いですが、
人的リソースを適切に配分出来なければ、安定したクオリティを提供出来ない。
当時のタツノコプロはタイムボカンシリーズなど何作品も同時に作っていて、
マクロス班は冷遇されてたとかいう話もネットでは目にしますけどね。
単純に本気回のためにその他の回を敢えて海外に投げて質を下げてたのかもしれませんが。

作画が良いロボットアニメOVAを当時のアニメファンが重宝してたのも、
TVアニメでは作画の捨て回を多く作らざるを得なかった、
このマクロスの現実を見てると一理あると考えさせられることがあります。

令和の今のほうが修正や素材管理が容易で制作環境は昭和より恵まれているはずですが、
アニメ本数が多すぎて人材の上下の実力格差の大きさ、腕のいいフリーのアニメーターは、
有望で金払いの良い会社に集まる。結果としてクオリティの酷いアニメ会社が出来る。

いつの時代でもアニメづくりの仕事は何かしらの問題を抱えているわけですね。
きちんとマネージメントや人材教育・社員登用が出来ている会社を、
作品自体も人気あって評価されてるのにも関わらずに「作画だけ」と言うのも、
その発信者が仮に業界人であるならば、持たざる者の僻みなのかなと思ってたりします。

マクロスの作画班が真価を最大に発揮するのは、
1984年の劇場版「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」まで待たれるわけですが、
スタッフの本来の実力を十全に発揮するのには時間と予算が大事ということですね。

ミンメイの歌が戦いしか知らないゼントラーディ軍の一部の艦隊の心に愛や文化を芽生えさせて、
終戦に向かわせるという物語ですが、一見蛇足に思われる28話から最終回までの戦後の展開が、
マクロスというアニメを理想主義を全肯定したお花畑にならずに終わらせたのが興味深いですね。

ミンメイの歌で心が動いたのが一時の気の迷いで間違いだったと後になって否定されたり、
一度は手を取り合って仲間になっても、種族や考え方の違いで対立していく。
暴力は虚しいとしながらも避けられない戦いがある。
リン・カイフンみたいな口先だけの反戦主義者は現実に向き合っていなくて、
すぐにイライラして攻撃的であるという矛盾を、現実の活動家の気質をカリカチュアしていまして、
現実問題と相対して解決に真剣に働いてる者の足を引っ張り混乱させるだけで何の役にも立たない。

単純な善悪でキャラクターが塗り分けられているわけではなくて、
ゼントラーディだけでなく人間同士でも価値観の違いを乗り越えていくことの難しさ。
理想はあっても、結局は武器で解決していく虚しさ・やるせなさを軍人視点で描いていくところ。
昭和に描かれた戦争アニメとしてはよく練られていると思います。

朴念仁の鈍感男の一条輝と、
気分屋で自分の本当の気持ちに気づくのが遅すぎたミンメイ、
自分の気持ちに素直になるのがミンメイより早かった早瀬未沙の、
携帯電話が普及前の時代にあったトレンディドラマみたいな終盤の三角関係展開が長いなと、
見てて冗長に思うところはありますが、それを差し引いても、

そのストーリーからは、名作の名に恥じないものを観られた満足感が得られたことが、
この作品で思ったことでした。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2022/10/09
閲覧 : 194
サンキュー:

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