「借りぐらしのアリエッティ(アニメ映画)」

総合得点
65.9
感想・評価
661
棚に入れた
3142
ランキング
3032
★★★★☆ 3.6 (661)
物語
3.4
作画
4.1
声優
3.4
音楽
3.7
キャラ
3.5

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 1.5 作画 : 4.5 声優 : 3.0 音楽 : 4.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

夢を失った心に映るものは?

【概要】

アニメーション制作:スタジオジブリ
2010年7月17日に公開された94分間の劇場版作品。
メアリー・ノートンの小説の『床下の小人たち』を原案にしている。

監督は、米林宏昌。

【あらすじ】

『ぼくはあの年の夏、母の育った古い屋敷で一週間だけ過ごした。』

12歳の少年の翔は家族との関係が薄く、生まれつき心臓が弱かった。
手術を控えて療養のために、郊外にある大叔母の古い屋敷にやってきた。

その屋敷には女主人の牧貞子と飼い猫のニーヤと家政婦のハルの他に3人の住人がいた。
14歳になる小人の少女のアリエッティとその父ポッドと母のホミリーが、
床下に部屋に構えていて、夜中に人間の食料や生活品をちょびっとずつ借りながら、
人間に気づかれないようにひっそりと暮らしていた。

小人の一族はもう殆どいなくて、人間に見つかったら引っ越さないといけない。
だが、アリエッティの初めての「借り」で翔に見つかってしまった。

翔はアリエッティと仲良くしたく、アリエッティも翔個人に対しては、
両親の人間への警戒心ほどの感情は持っていない。

ところが、人間と小人の共存は無理という両親の考えを裏付けるかのように、
翔の善意の行動が結果として問題となってしまい、
引越しが決定事項となってしまったのだった。


【感想】

ジブリもいつまでも、宮崎駿氏・高畑勲氏だけじゃいられないと判断したのか、
実子の宮崎吾朗氏の他にも、次を担う人材として社内のスタッフから米林宏昌氏を監督に起用。

美術を含めた映像と音楽は「ゲド戦記」より明らかに上で、
小人のアリエッティと人間の翔が種族の壁を超えて心を通わせる過程には、
いい意味でのジブリらしさのボーイ・ミーツ・ガールを志向していたと思います。

でも、ストーリーそのものはちょっと難ありですか?

翔のとったある行動が原因で樹木希林氏が演じる家政婦に小人の住処が見つかって、
その家政婦が邪悪な笑みを浮かべながら母・ホミリーを捕まえる。
翔とアリエッティが協力してホミリーを救出して、
小人一家が逃げて翔とアリエッティの情緒深いサヨナラで終了。

と四行で終わってしまう淡白な内容です。

それと、タイトルに2文字を付け加えたほうが正解だと思うのですよね。

借りパクぐらしのアリエッティ!
借りパクぐらしのアリエッティ!

今作品では宮崎駿氏の数々のアイデアを丹羽圭子氏が文章化するという形で、
脚本名義で両者が併記されていますが、

映画での小人の観念では、財産は個人の所有物ではなくて、

『人はいつからモノを所有するという感覚を身につけたのか。
 私たちの世界には、様々な生物が共存共栄しています。 動物も虫も、そして、植物も。
 本来、生物が生きていく上で境界線など存在しなかったはずです。
 自分のものと他者のものを分けることはできなかったはずです。
 人間も動物も植物も所有できるものなどこの世にありはしない。
 全て自然の営みを借りて生活していました。
 自然に寄生して生きているのは人間も小人も同じだったはずなのです。』

と、公式サイトに書いてあるのですが、
人間の所有欲や資源の無駄遣いに比べれば、
小人の借りぐらしは、角砂糖1個、ティッシュ一枚とささやかなものだからええだろ?
と貨幣や物々交換や労働などの対価を支払わずに窃盗を繰り返してる言い訳ですね。
この理屈ではコンビニや駄菓子屋で飴1つジュース1本を万引きしたら通報ですな。
と童話風のメルヘンな設定でありながら、子供の情操教育によろしくはない。
なお、借りパクは人間相手が限定のルールであって、
スピラーの弓を借りて弄ってるアリエッティに対して返すよう促す母ホミリーの台詞から、
小人同士の貸し借りは、人間と変わらない倫理観のようです。

別の作者の別の作品になりますが、
漫画家の高遠るい氏の某格闘漫画で偽造旅券での不法入国者のミャンマー人の女性がいて、
入局管理局の職員が捕まえに来たのを女性格闘家たちがが撃退する?(うろおぼえ)話で、
脱法者に弱者や被害者をアピールをさせて、法を遵守させる役人を悪いように描いていまして、

アリエッティの話に戻しますが、
人間の家に住み着いて何代にも渡っての長い間、食料品や生活品の窃盗を続けた上に、
家の住人に見つかった途端に被害者面の逆ギレをはじめるこのアニメでの小人の姿は、
例の漫画と同じ空気感がありまして、小人ではなくて人間のほうが悪いといった描き方は、
謝罪を無限に要求され続けている日本人の姿を表しているようでして、

平日に、主催者からバイト代を貰ってデモ隊を組んで抗議活動をしているような暇人を除いて、
日頃、労働や勉学をしている普通の日本人のメンタリティには、
あまり適合しない話かな?と思いました。

少なくとも自分には共感できるストーリーや感情移入できるキャラが皆無でしたね。

原作の1巻を原案にアニメ化して、2巻以降で新たな住まいを探しての冒険活劇になるらしく、
序章にすぎない部分をジブリ味で翻案をした結果ですね。

↓観ながら思ったことのまとめ。
・可愛いアリエッティも、将来は美人でもない地味な母親みたいになる。
・正統派ジブリ美少女のアリエッティも絶滅しないために、
 未来少年コナンのジムシーみたいな小人のスピラーと子作りせざるをえないんだろうな。
・今はまだ文明人みたいな装いのアリエッティも数年後にはスピラーみたいに原始人化してるの?

個人的には魅力的なキャラが皆無で、
作画と音楽が本当に素晴らしくても映像作品として特に面白いとは思いませんでした。


ということで、これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2022/10/04
閲覧 : 146
サンキュー:

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