「Engage Kiss(TVアニメ動画)」

総合得点
70.4
感想・評価
292
棚に入れた
956
ランキング
1529
★★★★☆ 3.5 (292)
物語
3.2
作画
3.7
声優
3.5
音楽
3.4
キャラ
3.5

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ネタバレ

エイ8 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

『Project Engage』の一作品という位置づけらしい

『Engage Kiss』(エンゲージ・キス)はA-1 Pictures制作による日本のテレビアニメ作品。2022年7月から9月までTOKYO MXほかにて放送された。
ラブコメディを題材としたオリジナルテレビアニメであり、太平洋に浮かぶメガフロート都市「ベイロンシティ」を舞台に、都市を脅かす「悪魔」との戦いを通じてダメ人間のシュウ、ヤンデレのキサラ、元恋人のアヤノの三角関係を描く(wikipedia)

全体的に言って一昔……いや、ふた昔前のエロゲ/ギャルゲの文法で作られたように感じられる作品。実際シリーズ構成・脚本共に丸戸史明氏が担当していた。こじれにこじれた男女関係、そして主人公男子の(本作は過労ではなく「記憶」を捧げるという自己犠牲ではあるものの)オーバーワークっぷりは実に氏らしい様式美。

シナリオはちゃんと伏線が利いており捻りもある。作画も上々、乱れというかコストカットの痕跡は少々見受けられるが重要どころではやらかさない。アクションシーンもまずまず、特に星天教会シスターであるシャロンの足技は見どころの一つ。
キスシーンが結構煽情的なためエロ上等の作品のように思えるがそのようなシーンは実のところ(良いか悪いかは別にして)数少ない。先述したシスター・シャロンのバトルお披露目ではそこそこにパンツがチラチラしていたがそれ以降は多分無く、主役級のキサラはあれだけのミニスカを履いていながらこちらは一度も無かったように記憶している(どこ集中して見てんだよという突っ込みは受け付けません。)

本作は原則的に未成年が活躍する話ではない。ヒロイン役となるキサラはJK設定であるように見えるがその実態は悪魔であり実年齢としては相当上となる(wikipediaによれば「数百年前から生きているため不詳」とのこと)。また主人公の緒方シュウも明らかに成人しており(wikipedia曰く20歳より上とのこと)そのことを強調するためか喫煙シーンなども用意されていが、それは情事を匂わせるシーンを描写するためなのかもしれない。が、あくまで匂わせるだけに留まっておりなるべく幅広い視聴者層を取り込もうとしている様子が窺い知れる。実際amazonでのレーティングは「すべて」又は「NR」がほとんど。(10話のみ13+となっていた……どんな回だっけ?)

シナリオに関して特に秀逸だと思ったのが退魔局の巡査マイルズ・モーガンの扱い。当初現れた時は最近流行りの所謂「外国人枠」だと思っていた。本編に絡んでいながらもそこまで重要でないポジションとしての刑事、優しすぎる瞳はいくら何でも気を遣い過ぎてんじゃないかとも思ったがまさか闇落ちしてるとは思わなかった。
「犯人はヤス」(わかる人だけわかってw)に代表されるように推理ものならいざしらず、通常刑事役というのは一種の舞台装置のようなものでそう頻繁に人員が取り換えられるものではない。実際「金田一少年の事件簿」では剣持警部が、「名探偵コナン」では目暮警部や高木刑事が高頻度で事件現場に現れる。ましてや1クールもののアニメで同じ警官が使いまわされることに違和感を感じる人は少ないだろう。そこを上手く突かれた形となっていた。更に言うならば先述したような「外国人枠」にこのような扱いをするわけがないという思い込みも自分にはあった。同時期に放送された『リコリス・リコイル』でも同様な「外国人枠」が登場していたが、実に絶妙な役回りが与えられていたと感じており、本作もせいぜい似たような感じになるんじゃないかと予想していた。実際、マイルズはシュウを一時的とはいえ養子として迎え入れるという善人キャラであり黒幕という設定は全くの予想外、それも先述したような刑事役の扱いを上手く利用しており実にお見事だと思う。さすがに三上テツヤ刑事が殺される辺りではシーンの描写から明らかにマイルズが怪しいことが見て取れたが、蜂須賀ミハイルの正体を明らかにする時点でもうバレてもいい扱いだったのだろう。実際、当エピソードの最後では犯人が明らかになっている。

マイナス要素なのは第一にオチ。最終話のタイトルが「未解決で大団円」とあるように物語としてはちゃんと終了しているとは言えない。ただこれは本作自体が『Project Engage』というメディアミックスとしての一作品でしかないからかもしれない。実際作品内では退魔オーディションのものを電脳空間的なところで行っているのだが、本作のコンセプトとは全く合っておらず浮いた設定となっていた。おそらくこれは他の派生作品にかかわってくる根幹設定なんだろうと思う。(よくわからない超高速宅配業者のベイロンシティエクスプレスも同様だと予想。無駄に大物声優(釘宮)使ってるし)

第二に鹿島 ヨシト(かしま ヨシト)の存在。彼は悪魔憑きで討伐対象であったものの人間としての理性を維持していることから捕獲されることになったわけだが、その後何かに活かされることはなかった。彼を唆した悪魔代理人の花村 ジュンヤ(はなむら ジュンヤ)は第一話の伏線を回収する形でシュウたちが見抜いている。流れからしてあのままお役御免にするキャラではなかったと思うのだが……

第三にキサラのヤンデレ設定。これはもう中盤までの間に有名無実化してしまっている。これはちゃんと貫いて欲しかった。記憶を失った直後のキサラが毒にも薬にもならない性格をしてたところからみてもキャラ付けのためにやったのだろうが結局持て余してしまい単なるラブコメにありがちの描写にしかなってない。とどのつまり、アヤノとほとんど何ら変わらなくなってしまっている。(彼女は彼女でシュウが記憶を失うことを良いことに寝取るなどちょっとヤバい面もある)

更に言えば、これは個人的にはマイナス要素ではないがシュウのキャラはあまり現代受けしなさそうだなと感じた。先述したように本作はふた昔前のエロゲ/ギャルゲの雰囲気が漂っており、その当時なら彼のような「ジゴロ系ダメ人間」みたいなタイプの主人公でも良かったかもしれないがちょっと時代が悪いんじゃないかなと思った。実際何でシュウがそこまでモテるのかよくわからない(もっともこれは最近鉄板の「冴えない男子」系にも言える事だけど……)。
またそもそものキャラデザ自体がやや古臭く感じられるのも問題点だと思う。

後、これは所謂「おま環(お前の環境)」と言うやつかもしれないがOPEDが本編に比べて音圧が低いという謎があった。何でこんなことしたのか意味不明。

ここまでマイナス要素を並べ立てたが総合的に見て悪い作品というわけではない、むしろ良い方だと思う。不作のシーズンなら季間1位を取れてても不思議ではない……と思ったのだけど現時点ではあまり振るわない成績ですね。ただこれはシュウがどうのこうのよりもキャラデザが受けなかったから、と予想。

{netabare}
(今回は久しぶりにお堅い調子で書いてみましたが、やっぱこっちの方がそれっぽく書けてる気がするw)
{/netabare}

投稿 : 2022/11/18
閲覧 : 194
サンキュー:

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