「精霊の守り人(TVアニメ動画)」

総合得点
80.7
感想・評価
1230
棚に入れた
6413
ランキング
435
★★★★★ 4.1 (1230)
物語
4.2
作画
4.2
声優
3.9
音楽
3.9
キャラ
4.1

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ネタバレ

やっぱり!!のり塩 さんの感想・評価

★★★★★ 4.9
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

☆ハードコア・ペアレンツを見たァァァ!! 作品☆

■評価
テーマ性(家族愛):★★★★★ 5.0
脚本&構成巧み度:★★★★★ 5.0
音楽&音響巧み度:★★★★★ 5.0
名作度     :★★★★★ 5.0
話題性度    :★★    2.0
おススメ度    :★★★★☆ 4.4+0.5=4.9
(0.5点は私の愛をプラスしているので無視で構いません)

■ストーリー
用心棒家業を生業とし世界中を旅するバルサであったが、
久しぶりに立ち寄った新ヨゴ皇国で事故によって濁流に落下した
新ヨゴ皇国の王子チャグムを救う事になる。
しかし、これをきっかけにチャグムの母(宮中皇太后)より
チャグムは水妖の卵を産み付けられた事で、穢れを嫌う
帝から命を狙われている事を知る。そして隠密にチャグムを連れ出し、
用心棒を頼まれるバルサであったが...。
チャグムに産み付けられた水妖の卵とは一体何なのか?
帝より放たれた狩人たちの追っ手からバルサは逃げ切る事ができるのか?
世界を圧倒する大河アジアンファンタジーが今幕を開ける。

■感想
個人的に大のお気に入り作品であり、やっとこさ人生初の
BD-BOXを購入した作品。神山健治監督の作品だから、
攻殻SACから買うのが筋じゃないのかい・・・とも思ったのだけど、
この作品のBD-Boxを購入した理由も含めて全てこのレビューに
記載したいと思います。

本作はグロ・エロなどの刺激物は一切なし、ただ本来あるべき
理想の親子を描いた力作であり、ストーリーや脚本・演出・音響の
全てで魅せる作品は相当めずらしい。
原作者である上橋さんの小説版:精霊の守り人はアンデルセン賞
(児童文学賞)なる世界的な名誉ある賞を受賞した事はすごくうれしい...。
だけど、この原作小説を超えたアニメ版の方にこそ何か賞が与えられても
良いと思うほど出来がよいアニメです。

本作のテーマは『家族』とか『親子』なのだけれど、現実世界では
非常に扱いが難しいテーマです。何しろ親もしくは子を蔑ろにしたり、
子育ての匙加減や認識を間違えると親子での家庭内暴力・権力闘争・
相続争い・モンスターご両親、最悪の場合は"家庭外"暴力に繋がったりと
エライ目にあうと思う。だけど本作はこの難しいテーマを原作小説以上に
上手く消化し骨太な親子の物語を描ききっていると思う。

前置きが長くなってしまうけど、理想の家族ってものがどんなものか
視聴する前に思い描いてから見ても面白いと思う。
主観だけど僕が理想としたり、本作から感じ取れた家族像を
記載すると・・・
『生きる事とは何か?』
  誰かを必要とし、誰かに必要とされる事。
『親子とは何か?』
  人が”生きる事”を互いに学びあう関係の事。
『家族とは何か?』
  人が”社会”で生きていく事を学ぶ場所の事。
  そして自分を正当化して生きる事ができる場所の事
だと考えてます。
家族や親子は私の一言二言で片付くほど単純なものではない事は
重々承知しているつもり…だけどやっぱり根幹にあるのは
これが理想だと思うし、日本で生まれ日本の文化に囲まれて
育ったご家族であれば無意識のうちにこれに近い価値観が
備わっているのではないかと思う。
これを踏まえた上で本作を視聴すると感動が倍増する。

具体的な感想を書くと、子役となるチャグムは何とも過保護に
育てられた虚弱体質なガキンチョだけど、親代わりとなるバルサは
生きていくために必要なもの以外は殆ど物を与えない。
そのかわりバルサは『生活の知恵』『愛情』『人付き合い』
といったものを惜しみなく与え、子育ての最終目標である『自立』に
むけて命の盾となり、親が子にすべきことだけをする。
本作はこの生活の繰り返しなのだけれど、チャグムにとりついた
水妖の謎解きや追手からの逃走劇などのお陰で全く飽きが来ない。面白い!!
そして、この擬似親子が日々の生活の中で培う絆が『親子』や
『生きる事』とは何なのかをしっかり感じさせてくれるし、
本来あるべき家族と同じ様に自分みたいな甘しょっぱい人間でも
自分を正当化できる場所が実は足元にある事を気付かせてくれる。
だからこその感動というのが本作にはあると思う。
{netabare}
これを実感させる名シーンをいくつか紹介すると、
まずロタ人との喧嘩相撲大会で、チャグムがロタ人のガキンチョに
辛勝したあとにシャシャリでてきたモンスターペアレンツをバルサが
一投してだまらせるシーン。一見武力で解決している様にみえるけど違う。
これは負けても良いから人間として困難から『逃げない』『誤魔化さない』
『責任を持つ』という人の姿を子供に見せている良シーンだと思う。
この姿を子供に見せている時点で、あのモンスターお父ちゃまは既に
完敗なのです。
そして、過酷な運命から逃げるチャグムにむけて言い放ったバルサの
『親にむかって…』のシーンになる。これは実はチャグムに必要とされて
いない事を知ったバルサが一番傷ついている。
だからこそ『生きる事への執着』を教えるために愛と怒りの大ビンタを
かますのです。
そして、バルサの養父ジグロの『俺は案外お前やこの暮らしが…』の
シーンは感動の極地といっても良い。これは置物の様な地位・名誉・富を
捨て去り『誰かを必要として、誰かに必要とされる事』=『生きる事』を
選択して最後まで貫いた漢のぶきっちょな一言です。
これは生きる事が虚飾・虚勢をはるための空虚な情熱で浪費するもの
ではなく、ただ大切に毎日生きる事を意識する事なんだと感じさせて
くれるし、生きる事を学びあう親子に血のつながりなんてものは
実は関係ない事に気付かされると思う。
これが生きる豊かさというものなのだろう。

だいたいこのあたりのシーンでボロカスに泣かされているし、
小説にはないストーリーや脚本が追加されている事に感動を覚える。
大局的にみればストーリーはありがちかもしれない。
だけど、もし自分が生きている意味ないとか、不要な人間だと
思っている人が、この作品みたら強いとか弱いとか関係なく
『まず誰かを必要とする事』に気付かされるかもしれない。

ここまで全力で褒めぶっちぎったけど、悪い点を記載すると全体的に
行儀良く描かれているので、清廉潔白さや理想主義が鼻について白ける人も
結構いるかもしれない。また最も悪い点はこんな面白いのに
本作を何と言って人に薦めれば良いのか分からないくらい話題性が薄く
地味だ。なので進撃の巨人等にも負けないくらいのキャッチコピーを
妄想すると、『親の中の親を見た!!モンスターペアレンツを駆逐する
ハードコア・ペアレンツが今ここに!!』くらい言って周りの方に薦めても
良いでは内科と感じます。
{/netabare}
ちなみにストーリーやテーマ、そして脚本を強く褒め称えましたが、
音楽・音響・作画も本当に素晴らしい!!
あって当たり前の事を描いている作品なのだけど、
いつまでも人の心に残るテーマとメッセージの分かりやすさが
本作一番の魅力。

アホな僕は何かを評価・レビューしたりする時に、見本がないと
判断できない。だから本作を5点満点クラスの基準として、他作品の
評価を決める時に比較しながら決めています。
本作はそのくらい僕にとって重要であり大好きな作品。
なので最高の環境で視聴したいからBD-BOXの購入に至った次第です。

最後に原作者の上橋直子さん、神山健治監督および製作者の皆様に
心からの敬意と感謝の気持ちをもってレビューを終わりにさせて頂きます。
本当に感動を有り難うございました。

以下レビューに関係ない内容なので興味ない方は無視して下さいまし。
■余談:原作小説とこの後の物語について
{netabare}
私は小説版である守り人・旅人シリーズもすべて読破しましたが、
本作は小説版『精霊の守り人』を超えた面白さを持っていると
断言しても良いです。本作で感じた感動シーンはすべて小説には
記載されていない事に気付くはずです。
もし小説版にチャレンジされる方がいれば、若干キャラ設定が違いますが
本作を視聴してから続編である『闇の守り人』から読み進んでも面白いと
思います。まさに本作のラストでカンバルに旅にでたシーンから
始まります。

続編小説ではバルサはジグロの贖罪と誤解を解くためにカンバルに。
そして旅の先々のジグロの教え通り、一文の得にならない事でも
少年少女達を救っていきます。
チャグムは庶民の暮らしや苦しみをしったからこそ、帝に反発しながらも
皇太子(外交官)として励み、新ヨゴ皇国に牙をむこうとしている
隣の大国『タルシュ帝国』との政争や戦争に巻き込まれていきます。

タルシュ帝国に追い込まれ窮地に立つ新ヨゴ皇国とチャグムに対し
バルサは再び立ち上がります。この二人は再び会える日が来るのか?
どうぞこの素晴らしい親子の末路を小説にてご堪能下さい。
(本当は続編作って欲しいのだけど・・・)
{/netabare}

■余談2:親子について
{netabare}
親子がテーマという事なので独白するけれど、実をいうと
僕はマザコンである。
別に今でもかーちゃんのおっぱいをチューチューしたいなんて事は
思わないけど、母親の誕生日にはとーちゃんから皇太后妃殿下の
聖誕祭なるぞ!!貢物を持ち実家に帰って来い・・・なんて内容の
メールが家族中に飛ぶくらいの痛いマザコン一家である。
しかもとーちゃんがこの聖誕祭のメールを誤って親戚の兄ちゃんに
送ってしまい親戚一同から失笑されるなんてのが結構あるから
頭から湯気がでそうだ。

けれど日本男児の60~70%は軽度~重度のマザコンである事は
間違いないはずだ。(根拠なし・・・)
これは幼少期に長い時間母親と一緒に育ったであろう日本男児であれば
当然の結果であり、これを認めない男は立派な男とはいえない(笑)。
本作を高く評価している男性陣がいらっしゃれば、恐らくその方も
・・・そうであってほしい。いや絶対そうだ。いや仲間がほしい。

だけどマザコンの根幹である母親への敬意は、妻もしくは恋人たる
女性への敬意にもつながるので実は重要な要素でもあると思う。
だから女性には旦那や彼氏や好きな人がマザコンであっても
幻滅してはいけないし心配御無用とだけお伝えしたい次第です。
(極度のマザコンは除く)
{/netabare}

■余談3:親にむかって・・・
{netabare}
僕はチャグムやバルサほどの過酷な運命に立ち向かった事もないし、
ましてや親にむかって刃物を向けたこともない。
だけど人並みに反抗期を迎えていた頃、僕は机にむかって一心不乱に
教科書を被せて偽装した漫画を読み漁っていたのだけど、
当然かぁーちゃんにバレて『のり塩!!勉強もしないで・・・』という
テンプレそのままに叱られていることに嫌気がさしてしまい、
あろう事か僕は・・・お尻の銃口を親にむけ『プップぅぅぅぅ↑↑
(訳:はーい)』と返事代わりにトリガーを引いたことがある。
これがきっかけで三週間弁当やら晩飯やら抜きになって独り大飢饉に
なった大変な思い出がある。
この作品を見て思うことは、すまん!!かーちゃん。親の苦労を
分かってなかった。
しかも・・・僕は今も大して変わってない!!本当にすみま千年。
{/netabare}

好きな作品だけに長文になり、大変失礼致しました
ご拝読有り難うございました。 

投稿 : 2016/02/14
閲覧 : 627
サンキュー:

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