「狼と香辛料(TVアニメ動画)」

総合得点
89.4
感想・評価
4740
棚に入れた
23351
ランキング
80
★★★★☆ 4.0 (4740)
物語
4.1
作画
3.9
声優
4.0
音楽
3.9
キャラ
4.2

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ラ ム ネ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

費やす聴覚。

 まず、タイトルに「?」がうかぶ。その二語にどんな接点が? 調べると題名の由来は「金と香辛料-中世における実業家の誕生」(ジャン・ファヴィエの中世経済史書)から来ているとのこと。「狼と香辛料」ではファンタジーと商業(経済、商取引、金融、流通等)が描かれ、時代背景は中世ヨーロッパを思わせるので、原作著者がこの本にヒントをもたらされ、強く影響されたことが窺える。
 その時代、馬車で各地を巡り、様々な物品を取引する行商人の一人、クラフト・ロレンス。麦の商取引に訪れた村・パスロエで、彼は荷馬車の覆い布の下に潜り込んだ少女・ホロと出逢う。自分は麦の豊作を司る狼神、故郷である北の地・ヨイツの賢狼だと言う彼女には、確かな狼の耳と尾が生えている。ロレンスはそんな彼女を疑いながらも認め、ホロの故郷であるヨイツへと旅を共にすることとなる。‥原作小説はシリーズ累計400万部を突破。第12回電撃小説大賞〈銀賞〉受賞作。ファンタジー作品でありながら、超常的現象は一切描写されず、争いも空飛ぶ箒もなく、商人の経済活動を主題と掲げていることと、ライトノベルでは稀な経済史、商取引を取り入れたことから、新感覚ファンタジー作品と呼声が高い。

 聴覚を費やした作品。ひとことで言えばそのような一作だった。恋言葉の駆引きと、商言葉の駆引きでの会話劇を想起させる数々の対話にて、一語一語を漏らさんと澄ましていたからだろう。超常現象などがない為に、割合から対話表現がぎっしり詰まっている。恋言葉の駆引きとはホロとロレンスの対話であり、恋の告白などしないものの、片方が片方を想う恋心をちゃかしたり、みとめさせようとしたり、いじけておどけさせたり、鑑賞者側に若干の「察する」をさせて対話を流れさせている。商言葉の駆引きでは、主にロレンスと他の商業人との対話である。需給関係、通貨価値、商品価格など様々な状況で対応する様々な商業法に則った会話から醸す人との関わりから、曾て(紙幣はなく、人は神々の存在を疑うようになり、宗教が組織化したような)遠い時代であった、現代へと続く商取引の根底(或いは、現代までに風化する習し)から、その時代の風情をかぐわせる。

(批評性込につき注意されたし)
 世界観は物静か。都会のクラクションの乱舞なんてあるばずもなく、あるのは中世欧州の景観。この物語のこんな時代に生まれていたら、旅の行商人になっていた気もする。少年を拾って馬車に荷を載せて商取引の旅をすれば、さぞ愉しく過ごせるだろうか。ホロの魅力に脱帽したという意見が多く、確かに魅力的な描き方ではあったろうが、ちょっとした苦手意識がありつつ、私は無念に画面を眺めていたのみだった。
そんなホロの魅力を掻きたてる場面が、やはりロレンスとの会話だろうか。剣や魔法が描かれないことから恋模様の立ち回りは多くなるが、その多い対話の内容を広い視野で客観的に見れば、著者には対話表現での根の強い一種のイメージと、そのイメージの属する所のパターンが作品に根付いているように感じれた。作中の商会話は、なぜかミステリー観ある描写あり商人ならではの調法な刻む言葉もありの劇なのだが、ホロとロレンスの言葉の遣取を会話劇と言えば過言に思えてしまうのだ。ホロの言葉の言い回しとロレンスの商業人としての言い回しの中で、心理深くはなく、内容が偏重とまでではないが一辺倒と感じてしまったのは私だけだろうか(だけかもしれない笑)。底のイメージの根の観念形態の思考傾向を幾つかに分類させて書けば、その対話がより立体的になったかも知れない。楽しめた作品だけに、あともう一捻り、もう一延び、という所感があった。

旅の行商人クラフト・ロレンス、ヨイツの賢狼・ホロ「狼と香辛料」は主人公ふたりのことを指しており、狼がホロ、香辛料がロレンスとなる。ロレンスを香辛料とするのは、作中ミローネ商会のマールハイトが商売の節度を説くため、正教会が創作した戯曲の登場人物「肥太った魂にたっぷりと香辛料の旨みを効かせた大金持の商人」を引き合いに出し、彼を大成する商人として褒めた言葉に因んでいるとのこと。


第2段落あらすじ、情報、公式HP参考、引用。
2014.3.16投稿。

投稿 : 2014/03/17
閲覧 : 332
サンキュー:

11

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