「機動戦艦ナデシコ The prince of darkness(アニメ映画)」

総合得点
73.5
感想・評価
434
棚に入れた
2159
ランキング
990
★★★★☆ 3.9 (434)
物語
3.8
作画
4.1
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
4.0

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

ハッピーエンドは失われた?

アニメーション制作:XEBEC
1998年8月8日に公開されたアニメーション映画。
監督は佐藤竜雄。

【概要/あらすじ】

戦艦ナデシコの初戦から5年後、そしてTV版最終回から3年後の西暦2201年・夏。
連合宇宙軍の総司令に昇進していたミスマル・コウイチロウは墓参りに来ていた。
遺影に写っているのは彼の溺愛する娘でナデシコの艦長でヒロインだったユリカと、
その夫で主人公だったテンカワ・アキト。
二人は火星への新婚旅行の出発時のシャトルの事故に遭い、帰らぬ人となったという。

他のナデシコのクルーたちは連合宇宙軍に参加する者もいれば、統合軍に転属する者もいる。
己の特性を活かした民間の仕事に就く者もいれば、家族のもとに帰った者もいる。
それぞれが自分の生活を持って別々の人生を歩んでいた。

中でも目覚ましいのは、ナデシコオペレーターであったホシノ・ルリ。
遺伝子操作によって生まれ、優れた能力を持つ彼女は16歳。
美しく成長し、この劇場版では主人公に昇格。連合宇宙軍少佐でナデシコBの艦長を努め、
“史上最年少の美少女艦長”“電子の妖精”と称えられる有名人となっていた。

かつて戦争状態にあった地球と木星は、木連の穏健派がクーデターで主流になったことで、
両陣営の間に和平交渉が成立し、木連も加入した新地球連合は協力体制にはあったが、
感情的なしこりが完全に解消しているとも言えず馬が合わないなどの理由で、
組織内での内輪もめが度々起こっていた。

従来から存在していた連合宇宙軍とそれを支援する超巨大企業ネルガルの強権への反発から、
反ネルガル企業群の支持を得て戦後に発足した統合軍。
これらの組織の足並みの揃わなさが、戦後の地球を中心とした人類社会の縮図である。
内部にある程度の問題を抱えながらも、いずれは組織の再編で解決を図る予定であり、
一応は平和への道を歩みつつあった。

だがしかし、表向きの平和の影で暗躍する者たちがおり、自らの正義と目的のためには手段を選ばず。
今の体制に代わり権力を握るためなら非合法かつ暴力的・非人道的な行為を躊躇しない者たち、
“火星の後継者”という反体制組織の計画が水面下で進行してた。

【感想】

TV版のラブコメモード全開な最終回を否定するような導入部。
そして、ユリカとアキトの扱いに賛否両論な劇場版ですが、私は好きですね。

ロボットアニメですので敵がいて、彼らの野望を潰すために当然戦いになりますし、
ルリを艦長としてナデシコのメンバーが再集結するわけですが、
相変わらずナデシコのメンバーは3年前と変わらない“バカばっか”な同窓会アニメ。

TV版のナデシコの人たちの冗談ばかり言いながら戦ってるノリの軽さがあまり好きじゃなかったのですが、
本当に“バカ”というより、わざと“バカ”を装っている風もあり、時折真面目な顔を覗かせる点で、
表面に見えるものが人間の全てでは無くて、過去の結果として今のアイデンティティが存在していたり、
どこまで冗談か本気かさておき、明るくしぶとく戦いの中で生き延びていくための仮面じみたものであったりと、
そういう人間的複雑さがナデシコの登場人物の魅力なのかな?と思ったりしています。

ユリカとアキトの事故の件で喪失したものをみんなが集まって取り戻す劇中での過程。
昔ながらのナデシコの安心感は、TV版を観てないと劇場版だけだと多分わかりませんね!

十分にコメディ色が強いものの劇場版ではシリアス面が強化されていてバランス的にTV版より良かったと思います。

みんながおちゃらけてる中で、ルリは別にもう一人の主役と言えるシリアス全開な登場人物がいるわけなのですが、
TV版と大きく雰囲気が変わってしまった彼の扱いと立ち振舞に完全に昔通りのナデシコには戻れない。
それの欠けてしまったピースが寂寥感として物語にアクセントを与えています。

そして、3年間で変わらないもの、変わってしまったものがそれぞれにあったりで、、
アニメにありがちな進むことを放棄した“ここが私の居場所”の、いつまでもぬるま湯に浸っていたい甘えとは別物な、
変わっていった中で大切にしたいものが在ったり、各々の人生の歩みの一頁みたいなもの?が感じられましたね。

この映画の最大の魅力は、16歳のホシノ・ルリに尽きるでしょう。
当時やはり大人気だった彼女なのですが、ある程度幼さを残して成長した劇場版での姿は別格の美しさがあります。
久々に集合したおなじみのナデシコクルーを相手にしているときの昔と変わらぬ淡々とした態度。
劇場版にて新登場の部下・弟みたいなハーリーくんに時々見せる優しい顔。
TV版と比べて作画が大幅にパワーアップしてるがために、
ホシノ・ルリのファンにとっては最高のアニメだったと思います。
アキトとユリカのファンにとっては、複雑な内容でしょうけど!

この作品に難があるとしたら、1998年に発売されたセガサターン版のゲームで明示されている、
TV版と劇場版の間にある3年間の出来事を視聴者が知っていることが前提のストーリーっぽいので、
若干シナリオが不親切かもしれないということ。(私はプレイしてません。)
十分に把握してなくても台詞の端々から、ある程度は察することはできるのですが。

ネットで探せば購入できますが今から実機とゲームを入手するのも好きじゃないと厳しいかと思いますし、
これから劇場版を観ようという人は、取り敢えずTV版だけでも先に観ておけば十分かな?と思います。
実は、この劇場版の続きの物語が構想にあったようですが、実現できなくなったのを残念に思いました。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2018/06/02
閲覧 : 549
サンキュー:

44

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