「二ノ国(アニメ映画)」

総合得点
60.5
感想・評価
79
棚に入れた
195
ランキング
5700
★★★★☆ 3.1 (79)
物語
2.6
作画
3.6
声優
2.7
音楽
3.8
キャラ
2.8

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ネタバレ

USB_DAC さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.4
物語 : 1.0 作画 : 3.0 声優 : 2.5 音楽 : 2.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

キャッチコピーの違和感

★物語
・原作 : レベルファイブ
・監督 : 百瀬義行
・脚本 : 日野晃博

レベルファイブの人気RPG『二ノ国』の世界観を基盤とし映画化した
突っ込みどころ満載のオリジナルストーリー。同社社長の日野氏が制作
指揮を執り、過去にスタジオジブリに在籍していた百瀬氏が監督を務め、
ゲーム制作と同じ布陣・体制で挑んだという作品。

劇伴を担当した久石譲氏から脚本の違和感を指摘され、イチからそれを
書き直したというのは余りに有名な逸話。ただ出来上がった作品を見る
限り『白き聖灰の女王』にあった良さは全て失われた感があります。


★作画
・美術監督 : 志和史織
・制作会社 : オー・エル・エム

エンドロールを見る限り相当な苦労(人海戦術)が垣間見えます。そも
そも『二ノ国』はジブリの映像でゲームをプレイすることを当初目指し
た作品ですが、今回は第二作『レヴァナントキングダム』と同様ジブリ
の作画協力は無く、『妖怪ウォッチ』で有名なOLMが制作しています。

基本的なデザインはしっかりしているし、動き自体も悪くない。ただと
にかく安定感が無い。粗さや曖昧さが目立ち、妖精の配色などゲーム的
な安っぽさを感じます。背景も結構作り込まれてますが、立体感はあま
り感じられないし彩色も薄め。映画のクオリティとしては些か疑問です。


★声優
・ユウ : 山﨑賢人
・ハル : 新田真剣佑
・コトナ / アーシャ : 永野芽郁

例の如く劇場版ならではの俳優を主役に充てたキャスティング。しかし
宮野真守さん、梶裕貴さん、津田健次郎さんなど、多くの実力派声優陣
が脇を固めるが故に、その力量差と違和感が半端じゃなく目立ちます。


★音楽
・ED :「MOIL」 / 須田景凪
・音楽 : 久石譲

久石さんの劇伴は相変わらずのクオリティだと思います。ただ須田さん
の曲は作品にあまりマッチしていない感じがします。ファンタジー向け
というよりは青春群像劇に合う楽曲のような気がします。


★キャラ
・キャラクターデザイン : 西谷泰史

二つの国で繋がった人物を対象的に描くのか同一性に描くのか。それが
キャラによって今一曖昧だった感じです。その辺の拘りをもし感じられ
ていたら、また違った印象で作品を見ることが出来たのかも知れません。
ただデザイン自体は良かったと思いました。



[簡単なあらすじ]
{netabare}
車椅子生活を送る高校生ユウは、学校でトップクラスの成績を誇る秀才
で、バスケ部の人気者ハルと、ハルの彼女コトナとは幼なじみだ。ある
日、事件に巻き込まれたコトナを助けようとしたユウとハルは、現実世
界と並行する魔法の世界「二ノ国」に引き込まれ、そこでもうひとりの
コトナであるアーシャ姫と出会った。ユウはアーシャに惹かれていくが、
コトナを救うためにはアーシャの命を奪わなければならないということ
を知り、2人は究極の選択を迫られる。

引用元 : 二ノ国 : 作品情報 - 映画.com
{/netabare}


[感想]

初代『二ノ国・白き聖灰の女王』は世界観やストーリーなど、実に心温
まる作風に仕上がっていて、特にエンドロールはジブリらしさを感じる
素晴らしい作品でした。ですので、今作の映画化は本当に楽しみにして
いたんですが・・・・やはり前評判というものは嘘をつかないもんです。

このシリーズの世界観には先ず現実の世界『一ノ国』が基本的にあって、
それと表裏一体の世界『二ノ国』がある。そして、そこには繋がり合う
対になる命が存在していて、片方で失われそうな命を守ることで、もう
一方の命が救われるというシンプルで分かり易い設定があります。善や
悪に関わらず、人の命を大切にするという優しさのあるスタイルが結構
好きだった訳なんですよね。キャラもなかなか可愛いし、広大な世界を
旅する冒険要素も非常に楽しめました。

ところがこの作品、冒頭から色々とやらかすんですね。ヒロインが行き
成り暴漢に刺される描写から始まり、闘技場での殺し合いや戦争での命
の奪い合いなど、『白き聖灰の女王』では殆んど描かれなかった殺戮の
オンパレード。せめて戦うのなら相手は人間ではなく、モブや悪魔の様
な存在でなければダメなんですよ。何故なら人が殺し合ってしまったら、
一ノ国でも大勢の命が失われることになってしまう。それを大規模なホ
テル火災で辻褄を合せる描写には驚きを覚えました。

それに悪役が改心する優しさなど一切持ち合わせていない悲しさ。折角
築いた温かさや優しい世界観を、自らブッ壊しちゃった感じです。同じ
会社が作ったシナリオとは到底思えませんでした。(こりゃ酷過ぎる)


その他、説明不足や気になった点を幾つか
{netabare}
・刺されたコトナを何故ハルは救急車を待たずに抱えて走ったのか?
・二ノ国に行ってユウの障害が治る理由。そもそもこの設定必要?
・アーシャ姫を助けたことでコトナが死ぬとハルが思った理由。
・アーシャ姫に惹かれるユウ。コトナに似てりゃそれで満足かいな。
・わざわざ自分の命を差し出すアーシャ姫の心理が理解出来ない。
・命の危険がトリガーだったら世の中とんでもないことになるんじゃ。
・敵(クリーチャー)の安いデザイン。
・グラディオン(聖剣)を持つ王の父とは爺ちゃんのことでいいの?
・そんでもって爺ちゃんはその後一体何処行った?
{/netabare}


特に気になったのは一ノ国のユウが障害を持つ設定。本来注意を払って
扱うべきこのセンシティブな設定を、いとも簡単に異世界に行って健常
者に変えてしまう配慮の欠如。日野氏が「これを見て障害者が二ノ国に
夢を抱くだろう」なんて回答をアニメイトタイムズでされていましたが、
ある意味自殺行為にも取れるトリガーを考えるとあまりに危ない発想で、
障害というものを、単なる物語の構成上のパーツとしてしか見ていない。
そう思われても仕方ない浅い考えだと言わざるを得ません。

最後のオチはここでは一応避けますが、それにしても腑に落ちない感じ
で、ラストの台詞なんて呆気にとられてしまいました。ウィキにもあり
ましたけど、あの「愛と友情」は一体何処へ行っちゃったんでしょうね。

途中、城前の広場に建つニャンダール14世の石像を見て、改めてああ
これは二ノ国の世界だったんだと思うほど『白き聖灰の女王』とは違う、
明らかに見劣りする作品でした。見ない方が良いとまでは言いませんが、
次第に穏やかじゃ無くなるレベル。興味本位で見ると確実に怪我します。

戦犯は色々言われていますけど僕も同意見です。そう言えばこの作品の
キャッチコピー「命を選べ」って結局片方の思い違いってことだと思う
んですけど、何でこのフレーズを選んだんでしょうか。不思議です。



以上、拙い感想(酷評)をご覧頂きありがとうございました。


2020.01.19  一部修正

投稿 : 2020/04/18
閲覧 : 275
サンキュー:

18

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