nyaro さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
2重構造の日常の謎にバラ色を探すホータローの青春。一番好きな推理小説です。
推理ですので、謎の解答については触れていません。本当は本作の素晴らしさを語るには謎解きについて書きたいですが、ネタバレで隠すことはできますが、推理小説のネタバレをアップするのは止めておきます。
この作品は特にメインになる話において日常の謎解きの下に真の謎がある、と言う構造です。ヒューマンドラマが隠れています。さらにホータローが千反田に対する距離が縮まって行くプロセスが描かれます。
つまり、推理ではありますが、ホータローがバラ色の高校生活…それは千反田でした、というラブコメでもありました。更にホータローが主体性を獲得して行き自ら行動して行くという成長が見られました。
ラブコメとしての水準は非常に高いです。主人公の心の変化をここまで丁寧に面白く描いた作品は数少ないでしょう。
ここに見えない登場人物、姉の存在があります。恐らくですがホータローの学園生活について思うところがあったんでしょうね。海外からでもホータローを遠隔操作できる強者でした。前半は活躍しますが後半はフェードアウトします。
桁上がりの4名家とかもうまいですよね。名家という存在でさりげなく舞台が田舎で因習があることを表現していたし、名家のつながりが交友関係やストーリーの要素になったりします。
なお、1話目について、前後半別れた話で導入のような軽い話ですが後半の女郎蜘蛛の会…これ、重要です。千反田との距離感についてこれが喫茶店のシーンにつながり、そして最後は遠回りする雛につながってゆきます。
刑事事件にもならない日常系推理ではありますが、謎の中には、本人たちにとっては自分事で大きな意味を持つ事件もありました。
氷菓は千反田、映画はホータロー、文化祭はマヤカそしてサトシのプライドの問題でもありました。もちろん遠回りする雛はホータローの「自覚」でした。バレンタインはサトシとマヤカです。
優れた推理とこの主人公たちの内面と恋愛感情の部分を言葉で説明しないでストーリーで見せたところがいいですね。ホータローのバラ色の生活を含めて、重層的な意味を描けた本作は本当に素晴らしいと思います。
映像・アニメ表現に関しては、キャラデザ・作画は最高です。原作のイメージ通りで、しかも破綻が一切ないと思います。ヒロインの髪、瞳の輝き、雪や桜の表現など効果的で美しかったです。
主人公、ヒロインその他、声優も雰囲気がぴったりあっていあました。
幻想的な映像表現で遊びの部分もありましたが、そのレベルが高くてともすれば映像的には地味な本作について上手く処理したなあという感じです。
演出では、もともと高校生にしては大人びすぎているキャラばかりの中で、マヤカの性格作りが原作に比べてきつすぎるかなあ、というところがありました。
アニメ版になってマイルドな性格になった登場人物もいて、原作の意味が若干変わっているところはありますが、見ている側からするとよい改変です。もし、原作を読むなら比べるといいかもしれません。
キャラでは十文字先輩の見た目としゃべり方が素晴らしいです。短時間しかでませんが、育ちの良さをちゃんと表現できています。
もちろんヒロイン千反田のキャラデザ、ぶっとんだ天然ぶりも素晴らしです。ヒロインのエロシーン(温泉回と水着回)もあるといえばありますが残念ながら全然エロくありません。これは意図的な演出の気もしますが。11.5話の水着回でかろうじて…いや、やっぱりエロくはないですね。
総評としては、推理小説を題材にしたアニメはいろいろありますが、出色の出来です。青春ラブコメとしても、かなりの水準です。アニメの出来、演出、ストーリー…5年、10年後に見ても古さを感じないでしょう。
なお、自慢になりますが、遠まわりする雛、ふたりの距離の概算、いまさら翼といわれても、は初版本を持っています。それくらい本作は原作時代からのめり込んでいました。
以前のレビューを大幅に修正しました。