「神様になった日(TVアニメ動画)」

総合得点
74.5
感想・評価
749
棚に入れた
2204
ランキング
883
★★★★☆ 3.4 (749)
物語
2.9
作画
3.8
声優
3.6
音楽
3.7
キャラ
3.2

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ネタバレ

TaXSe33187 さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.5
物語 : 1.0 作画 : 4.0 声優 : 3.5 音楽 : 3.0 キャラ : 1.0 状態:観終わった

なるほど評判通りだ

abema一挙配信で視聴
評判は以前から聞いていて、ラストの展開についても大筋はネタバレを知った上での視聴のため覚悟してはいた
なんというか評判通り、というより評判で得た以上の物がアニメ自体をきちんと視聴しても伝わってこなかった

ものすごくザックリ言ってしまうと、
高校最後の夏休みに知り合った女の子を通して仲間を集めて映画を作る
大切な女の子が不治の病に侵されていることを知り、一生をともに過ごすために将来の道を見出す
の2本を1クールに並べた感じ

{netabare}
並べた、と表現したのは「纏めた」と言えるほど脚本が纏まっていないから
やりたいことを思いついただけパパっと並べて、並べた内容を一つの物語として連結させるところまで至っていない
伏線、ネタ振り、ミスリードを狙ったような物は多いものの、描写不足と超展開から全てが意味をなしていない

全ての問題は初期設定とキャラの多さと内容の薄さ
夏休みの1ヶ月が楽しかったから一生ずっと一緒にいたい!が動機づけとして適切かっていうと…
まぁ高校生の青春モノなんてそんな感じだし、「半分の月がのぼる空」なんかは同じノリでも大好きではある

ただ、このアニメの場合はヒナとの仲を深めたり、内面を掘り下げたりが全く足りていない
「仲間を集めて映画作り」という軸を成立させるために人間関係が外側に向きすぎて、メインの関係性の変化が描けなかった
ラーメンと麻雀の話が仲間づくりの側面と量子コンピュータの発見のヒントという側面の両方があるのは分かる
ただ、焦点がラーメンやら麻雀やらに向きすぎてキャラ描写を完全に放棄していた
そのせいで仲間の内面を掘り下げるどころか、後半のギミックになる鈴木少年の動きすら唐突になる始末

せめてギャグ回の合間に鈴木少年がラーメン屋の再生なり麻雀大会の成果なりに疑問を持つ描写を入れればよかった
例えば爺さんの研究を追う中で早々にヒナに目をつけて、真相を探るために周囲をうろつくとか出来たはず
そうやって探る中で量子コンピュータの可能性に行き着いて、30日目の顛末に繋げれば、
「シナリオ上で最重要なのに存在感皆無の闇組織」なんて馬鹿なものにはならなかった
メインキャラの心情の変化が描けなかったのは尺の都合にせよ、後半の主軸になる部分すら描けないのはもう論外

そもそもあの謎の組織に関しては問題外な部分がまだある
なんであの組織下請け企業なの?馬鹿じゃないの?闇の下請け業の更に下働きの少年ってギャグのつもりなの?
CEOが主導で動いていたかと思えば急に「上の企業の問題になった」ってギャグじゃないと書けないでしょ

鈴木少年の親代わりになるCEOを悪役にしたくないって考えからのことだろうけど、
思想も目的意識もない人間が悪役のトップっていう物語に魅力があると思ったの?
「お仕事の依頼があったから受けました、報告を上げたら完了しちゃいました」でフェードアウトするなら最初っからだすな
あのでっかいハンコをベタベタやってた連中だけ登場していれば問題なかっただろうと
なんで物語が動き出す瞬間に悪役的な立ち位置の組織がスケールダウンするんだよ…

ヒナの入院先に行ってからの主人公の癇癪と異常行動について思うところは脚本家の目的の見えなさ
大学受験まで済ませた高校3年生の男の子が自制心を持たず騒ぎ立てて患者の心を傷つける描写で脚本家は何を伝えたかったの?
感動ポルノで障害者を見世物にしたいっていう高尚な考えは伝わるんだけど、それにしても主人公の行動が分からない
好きな子のために必死に頑張る主人公を見せたいのかなとも思うけど、ここまで一貫して不快だと別の意図がある気すらする
「子供の青臭い衝動」を描きたいのかもしれないけど、受験まで迎えた高校3年生が見せるような「青臭さ」じゃないよなと

そもそも「好きなこと同じ大学に行きたい」が受験の動機なのは良いんだけど、何を学ぶかは普通考えない?
そりゃ将来の職業選択は不透明かもしれないけど、進学先で何を学ぶかすら考えず女の尻を追いかけたいだけって…
それなりの進学校に入ったのに、周りのクラスメイトや教師から影響を受けて進路を考えたりしなかったの?
一浪して医学部を目指するオチを前提に、主人公を将来どころか近い未来の計画すらない無能として描いてしまっている

というか主人公の当初の進学目的が「好きな子を追いかけたいから」
そしてラストの主人公の進学目的が「好きな子と一緒に生きたいから」
もう全然成長してねーじゃん結局女のことしか考えてねーのかよ
女を理由に志望校をコロコロ変えるってもうギャグじゃん…
進路を変えるにしても、あの施設のスタッフのおねえさんみたいに目線を広く持つとかないの?
イザナミさんは父親との関係性が改善して外に目を向けて活発になったり成長が見えたのに、肝心の主人公はなにも成長していない

あと、この作品で一番気に入らない部分がラストのヒナの格好
なんで元気な頃の格好に寄せに行くの?
神様としての全知であるヒナじゃなく、人間としてのヒナと一緒に生きるラストじゃないの?
そもそも映画撮影なんて全部夏に終わらせとけって感じだし、あの感動ポルノ展開自体蛇足ではある
ただ、「映画を完成させよう」を合言葉にヒナの捜索を諦めなかったって心情を想像すると最後の撮影は大事な要素でもあった
夏にやり残した思い出を完成させた、と思えばヒナが歩く姿に大喜びする集団もギリギリ許容できなくもない
それでも、その撮影と試写を終えたらあの被り物はやめるべきでしょ

あの格好は「神様としてのヒナ」の象徴とも言える格好じゃないの?
神様であった頃の記憶もヒナの一部と言えば聞こえはいいけど、
自分たちが「元気なヒナ」しか見ていない象徴のように思えてしまう

そもそもタイトルの「神様になった日」はシナリオ的には大分前の時点だからタイトルから微妙におかしい
脚本家の意図としては「病気のヒナが受け入れられた日」を「神様になった日」と言いたいのは分かる
それにしたって在宅介護の障害者を「神様」と呼ぶって薄っぺらい独善に塗れていて反吐が出る
登場人物の誰も今のヒナを見ようとしない、不気味な関係性が服装やタイトルから滲み出ていて、本当に気持ち悪かった

こういう安い感動要素の合間に1話完結のギャグとサブキャラ回を考えなしに並べた結果がこのアニメ
正直に言えばヒナは本物の神様で、1クールずっとハイテンションギャグを続けていたならまだマシだった
あるいはラーメン麻雀のような脇道を一切やらず、突然家に転がり込んできた女の子の話として描いていれば印象も違った
古い時代の鍵ADVのように共通パートをギャグまみれで展開して、個別ルートに入ったらお涙頂戴を工夫無く踏襲しただけ
その割に謎の組織だのヒナの家族だの描くべき要素は放り投げているからゲームとしても恐らく微妙{/netabare}

この作品の脚本で褒められる部分があるとするなら、それは1クールだけで終わった点くらい
このペース配分で2クールやるとなるとギャグは食傷気味なほどに増え、
後半の主人公の異常行動は常軌を逸したレベルになりかねない
傷を必要以上に広げなかったって意味ではよく出来た作品じゃないかな…現時点で致命傷だけど

投稿 : 2021/05/23
閲覧 : 497
サンキュー:

4

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