「海賊王女(TVアニメ動画)」

総合得点
68.0
感想・評価
218
棚に入れた
677
ランキング
2174
★★★★☆ 3.4 (218)
物語
3.0
作画
3.8
声優
3.5
音楽
3.6
キャラ
3.4

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ネタバレ

ネムりん さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

全ての項目において高評価

繊細な作画が印象的なProduction I.G制作の完全新作オリジナルアニメーション作品。

舞台は18世紀大西洋のイギリス。
社会構造が劇的に変革した産業革命時代の話で、男娼の島シャングリラで娼婦として働くことを義務付けられたフェナ・ハウトマンが選択の巫女として、始まりと終わりの場所『エデン』で仲間と共に数奇な運命の謎を解きその秘密を明らかにしていく物語。

産業革命により資本主義体制が確立し、蒸気機関の開発や産業用機械の発達により生産性が向上した見返りに、石油や石炭などのエネルギー資源の利用による水質汚染や土壌汚染、そして大気汚染(イギリスのロンドンスモッグ等が有名)が進み地球温暖化に繋がったと言われているが、その影響で20世紀に入ると人口が爆発的に増加(コーディの言っていた増えすぎた魂を管理する話に繋がる)し、このままではやがて増えすぎた人類自らが身を滅ぼす道程を辿ることを予見したものになり、経済成長と環境問題に関わる現代社会を風刺した作品であることが読み取れる。

旧約聖書『創世記』による地上に増えた人々の堕落を見て、洪水で人類を滅ぼすノアの方舟(本作では「時の方舟」)の話(温暖化による集中豪雨で洪水被害をもたらし、南極や北極圏の氷が融解して浸水被害をもたらすことを示唆している)に準えて「破壊と創造又は継続」の何れかを時代の節目に現れる選択の巫女にその判断を委ねるため、選択していたつもりが選択させられていた物語のヒロイン・フェナが、エデンに向かい流れ込む先代の選択の巫女の過去の記憶から思いを巡らせ苦渋の決断を迫るといったものになり、かつて人類の始祖であるアダムとイブが暮らしていた楽園において、人類をリセットして最も大切な人と共に再生の時を待つか、それともこれからの人類の行いを信じて、確定したものではない未来に一途の望みを託し存続の道を歩むべきかを見極めるもので、内容としては世界の憂いを嘆き人間の愚かな行動を戒め、進み過ぎた文明批評の意味合いが込められているとすれば、人類に軌道修正する選択の余地を残し元の水準への回帰を促すものだと解釈できる。
フィクション色の強い冒険ファンタジーのような抽象的な内容のものとは異なりメッセージ性の強い内容となっており、 旧約聖書に出てくる話に照らし合わせた物語の構成がしっかりしていて、テーマに沿ったストーリー展開は説得力がありました。

コーディにより真実が明らかとなるフェナが血筋を受け継ぐ先代の選択の巫女ジャンヌ・ダルクが活躍した「英仏百年戦争」。
ここに物語の接点を持たせているとした場合、ジャンヌの呼称がオルレアンの乙女"ラ・ピュセル・ドルレアン"、フェナの本名が"フェナ・ラ・ピュセル・フレデリック"であることからフランス(ジャンヌ)、イギリス(フェナ)という別の血統が繋がり、髪の色や容姿、奇跡を起こす能力、大天使ミカエルの神の声と観測者のコーディやハインツの真実の告知、黒死病による人口減少と経済発展による人口増加に係る人類の危機、ジャンヌと母親のヘレナが火刑に処される類似性、ジャンヌがオルレアンの地で奇跡的な勝利を収め、その後もフランス軍を率いて快進撃を続けるが謀略により火刑に処されたというのは、真田の末裔であるゴブリンの剣士の話に繋がりフェナの回想シーンで雪丸達が倒れていく姿が重なる。
よってこれらの共通するものから時代の重要な転換点において "人類に選択させる"という話の前提に立てば、ジャンヌが「破壊と創造」を選択しなかったと捉えるとフェナが「継続」の道を選択するのは必然だったと言え、様々な思惑が交錯する中でフェナの採った選択は困難なものへ立ち向かう結論付けられた人類の強い意志に類するものと判断することができ、最後の「私、ずっとその言葉を聞きたかったんだ」というフェナのセリフは、かけがえのないものとの一蓮托生の道を選択することへの認識という解釈になり、この作品が未完結で終わらせなければいけなかった理由を考察すると、それは現在も人類が抱える最重要課題について触れられたものだからという結論に至ります。

◆総評
作画音楽共に素晴らしくJUNNAさんの主題歌「海と真珠 」が特に良かったです。
梶浦さんの歌唱指導が入ったのか良い意味で他作品の主題歌とは差別化が図られていて、技術に頼りすぎない歌唱方法が曲にとても合っていて個人的にはかなり好み。

登場人物は「どんな時間が流れても、たとえこの身が滅んでも、この気持ちは変わらない。愛してる」なんてことをサラって言ってのける雪丸の不器用だけど素直なカッコよさや、ストーリーが進むにつれ成長していく"可愛いだけじゃないフェナさん"の神秘的な姿が魅力的でとても良かった。

作品として似ている映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」のような壮大なスケール感を12話という枠組みの中では描き切れなかったと感じる部分はありましたが、制作側の意図が理解できれば物語の繋がりが見え作品全般評価できないものではなく、「18世紀大西洋イギリス」、「選択」といったキーワードから「三角貿易」→「産業革命」→「環境破壊」→「人類の終焉又は存続」といった物語の背景にあるものを汲み取り導き出すことができたかが焦点と言え、社会問題に対する関心の高さや理解力が問われる作品内容でした。

投稿 : 2023/02/18
閲覧 : 491
サンキュー:

6

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