「映像研には手を出すな!(TVアニメ動画)」

総合得点
80.0
感想・評価
583
棚に入れた
2214
ランキング
465
★★★★☆ 3.8 (583)
物語
3.8
作画
3.9
声優
3.8
音楽
3.7
キャラ
3.9

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ネタバレ

てとてと さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

SHIROBAKOと双璧なアニメ作りアニメの傑作

湯浅監督作品。超高校級の女子高生たちがアニメを作る、アニメ作りフェチアニメ。
※作品データベース様より転載

【良い点】
アニメーション制作の、設定や映像表現など諸々の拘りに焦点を当て、アニメの魅力やその情熱を描き抜いた作風。
アニメ制作アニメの先例「SHIROBAKO」が社会人の職業的なアニメ作り紹介なのに対し、本作はより趣味に凝る事が許される高校生の同人的な活動なので、差別化出来ている。
舞台設定が2050年という今と地続きながら未来とする事で、女子高生が超本格派の拘り抜いたアニメ制作という「フィクションの嘘」を違和感無く見せてくれる。
外部との折衝を金森氏という超人に集約する事で、気持ち良く趣味活動に邁進出来ていた。
生徒会の妨害などあっても金森氏が無敵なので不快要素も少ない。
主人公たちはどう見ても女子高生らしくはないが、どうせフィクションなら女の子にやらせる方が楽しいのは常道。

浅草氏が空想の翼をはためかせる際に現実から虚構にシームレスに移行していく演出。
(的外れかもだけど)「中二病でも恋がしたい」での中二病バトルごっこシーンと同様の構図。
ここでの浅草氏の設定への浪漫や拘りが凄まじく、空想を広げていく楽しさがビンビン伝わってくる。
設定に拘り抜く浅草氏による、設定と空想だけで物語が形になっていく過程がワクワクする。
後半のサイレントアニメのストーリー性の高さは素晴らしく、この物語なら是非アニメで見たいと思わせた。
アニメーションの、設定、世界観構築という側面からの魅力を存分に伝えてくれた。
湯浅監督得意の映像表現が素晴らしく、一気に浅草氏の空想に惹かれた。

キャラクターの強烈な個性。
職人肌の設定厨浅草氏もさることながら、超高校級のマネージメントの鬼な金森氏のインパクト大。
単に金にがめつい底の浅いキャラにあらず、「利益を創造する」こと自体に強烈な信念を持っている。
幼い頃の商売の天才的エピソードや、学生の商業活動を厭う生徒会など学校側と丁々発止とやり合うシーンは、アニメ制作パート以上に面白かった。
本作の面白味の多くは金森氏の存在が絶大。
生徒会長も底の浅い嫌われ役ではなく、大人社会の代弁者としての凄みがある点も見逃せない。

創作意欲に溢れた学園青春物としても活力がある魅力的な雰囲気。
ロボット研究会の情熱も負けてなかったり、その他モブたちもそれぞれ自分たちがやりたい事を全力で謳歌している。
また、現実の高校生よりも高い教養がある(先生の綽名が世界史の古代の王だったりなど)と思わしきシーン多く、教養の高い会話劇は見ていて面白い。
現実(少なくとも自分の)では無かった、創作世界の理想郷というか、(いいなぁ、こんな風に情熱的な学園活動したかったなぁ)と見せてくれるのは魅力だった。
(本作に限らず、現実よりも活気に溢れた学園という王道の一つ)

浅草氏のべらんめえ調が底の浅いキャラ付けにあらず、金森氏との掛け合い会話劇で軽妙な雰囲気を出せている。
例えば11話の、普通なら歩けない川の道を遡る際のやりとり
「落ちたら三途の川渡る」に対し「三途の川は横に渡るもの」(この時、彼女らは川を縦に歩いてる)という返しが小粋で良かった。
「六文銭は自分で用意しろ」など、いちいちセリフ回しがシャレていて印象に残った。
記憶に残る作品は会話劇が独特で魅力的な作品が多い。

【悪い点】
水崎氏が相対的にあまり目立ってない。

本作ではなく自分の問題として、自分は映像表現の拘り自体はあまり重視しないタイプなので、浅草氏と温度差感じる。
浅草氏が熱弁振るってる時の空想シーンが一番面白かった一方、完成品のサイレントアニメは微妙に思えてしまった。
声優の重要性を再認識。尺の問題で仕方が無いが、演劇部辺りも参加してほしかった。

各キャラの人格や立ち位置が最初から完成・固定されていて、キャラドラマという面では薄味。
(この点は大ヒットしたSHIROBAKOとは大きな格差ある)
ただし、あえてキャラドラマ面を削る事で純粋に設定厨の面白味を見せる作品かも知れない。

ラストが締まらない。こういうラストも本作らしさなのかもしれないけれど
やはりラストは分かり易い盛り上がりがほしかった。ラストがカタルシスに欠けるのは残念。
ここ含めてドラマ性・娯楽性に欠ける。そこはアニメ設定作りの魅力一本槍で押し切る、潔い作品ともいえる。

【総合評価】8~9点
SHIROBAKOとは方向性の異なるアニメ作りアニメの力作。
評価は「とても良い」

面白かったんだけど、良くも悪くもマニアックな作品なので、(アニメ好き層からの)評価が高い割には地味な作品止まりでもあり。
後年、地味な良作の一つ、として残っていきそう。

投稿 : 2023/07/16
閲覧 : 106
サンキュー:

7

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