「この素晴らしい世界に祝福を! 第2期(TVアニメ動画)」

総合得点
95.3
感想・評価
2179
棚に入れた
11673
ランキング
2
★★★★☆ 3.9 (2179)
物語
3.8
作画
3.6
声優
4.1
音楽
3.8
キャラ
4.2

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ネタバレ

ナルユキ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.0 作画 : 3.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

さあ貴方もアクシズ教に入りましょう。────エリス教徒? ペッ!

本作品は『この素晴らしい世界に祝福を!』の2期。監督、製作会社ともに1期との変更はなく、1期と同様に本編10話+初回未放映回1話の構成だ。2期の決定は1期に大きな反響があったからだそうで、現在でこそ「このすばなら当然」の継続人気が認知されているものの結果次第では全然続きを作られることがなかったのは従来の「なろう系」のアニメ化らしい扱いである。他作はそれでも構わないのだけど、このすばだけは例え人気が落ちてもアニメで完結まで行ってほしいですね。
見出して感じたナイスな演出。「ふっかつのじゅもん」を入力することで2期が始まるという演出はドラクエのような世界観でもある本作ならでは。加えて『スターウォーズ』をパロったテロップは他作品でもよく使われているものの、そのシュールさがこのすばにもやはりピッタリとはまっている。そして福島潤演じる主人公が壮大なファンファーレをBGMにして並べ立てる嘘八百なあらすじ────始まって早々、小粋な演出の数々から観る者の口角を吊り上げていくのは流石である。

【変わらない魅力:面白い導入】
内容はちょうど1期最終話(10話)直後から始まり、主人公であるカズマは国家転覆罪の嫌疑で投獄されているところからスタート。冤罪どころか冒険者の街を救った英雄である筈なのに1期のカズマの行いを振り返ると──パンツをスティールして以降は味を占めて女性をパンツ盗るぞと脅すわ、他の冒険者を不意討ちで倒して主装備を売り払うわ、極めつけは魔王軍と繋がりの強いアンデットと交流を持ち魔法まで教えてもらい見事に使いこなすわ──誰が聴いても不思議と彼を悪人にしか思えないという話運びが、ギャグとして素晴らしい程の噛み合い率を誇っている。仮に1期を観ずに2期の本作を観始めた人がいたら本気でカズマが有罪にしか見えないのではないだろうか(笑)
この敗色濃厚な魔女裁判をどういう判決に持っていくのか。今まで主人公・カズマが冒険で培った物の良いところも悪いところもひっくるめて伏線とし、本作の始まりを飾る大きな注目点としている。

【変わらない魅力:ダメなヒロインズ】
また培ったものはそれだけではない。1期で培ったキャラクター描写が2期でも大きく活きてくる。
とくに主人公であるカズマとヒロインたちの関係性は完成されたと言ってもいい、ある意味でこの作品だからこそのなんとも言えない関係性はきちんとしたギャグになっている。
普通なら主人公とヒロインが「一緒にお風呂に入る」という展開はラブコメならば一大イベントだ。しかし、この作品はそれすらもギャグにしてしまう。カズマとめぐみんの意地の張り合い、口喧嘩から自然と一緒にお風呂に入り、そこからきちんとオチがつく。決して恋愛描写を強めるのではなく、飽くまでもこの作品らしい関係性になっており、この作品だからこそのキャラクター同士の関係性とそこから生まれるシーンはきちんとこの作品らしいギャグになっている。
{netabare}後にカズマとめぐみんが公式カップリングになる展開を鑑みると、そう視聴者に思わせておいて然り気無くめぐみんがカズマに対して大胆になっていく過程を描いていることになり、その伏線の張り方はギャグ作品とは思えない秀逸さがあると言えるだろう。{/netabare}
1期より「クズ」になっているキャラクターたちの行動や言動が素晴らしく、とくに主人公の清々しいまでの冷静なクズ具合は1期以上のギャグシーンを生んでいる。
変にキャラクターを増やさず自然に増えていくキャラクターたちと、決してメインヒロインたちの描写を忘れないバランスがキャラの魅力を1期以上に深めている。
ヒロインの駄目っぷりもどんどん増している(笑) アクアはより頭が悪く泣き虫な女神様へ、めぐみんはライバル?のゆんゆんが出ることで新しい欠点を開拓し、ダグネスはより見境のないマゾヒストになる────。各ヒロインの残念な部分がより強調されることで1期以上の笑いを生んでいる。

【でもココも変わらない:作画……作画さえ良ければっ!!】
1話から作画はやや不安定だ。このすばは1期時点から作画不安定の回が多かったが、2期ではそれがより顕著になっている。人気が出たので急遽、2期を制作したという事情が垣間見えるレベルの落ち方であり、1期との比較画像が(多少の悪意も含まれているとはいえ)ネットの海に数多く撒かれてしまっている。
だが、その作画の悪さを敢えて受け入れて演出にしているようだ。作画が安定しないからいっそわざと作画崩壊させた、というくらいに本来は美少女である顔面をひん曲げて顔芸にしている。この作品がギャグだからこそ、作画が不安定でも問題ない。むしろ利用しているスタンスは素晴らしい。
しかし「逃げ」も増えてしまったことだけは感心しない。声優たちによる熱演に任せてジャンケンやパンツのスティールなどのシーンを「一瞬だから」と背景カットを置くだけで済ます。ながら見をしない視聴者は真っ先に「逃げたな」と気づく部分である。

【そしてココが面白い:ようこそアクシズ教総本山へ】
{netabare}2期のある意味最大の盛り上がりと言ってもいい第8話。8話は異世界で有名な温泉街、しかしその実態は女神である「アクア」を崇拝するアクシズ教の総本山・アルカンレティアへ訪れる話だ。
あの駄女神を崇拝する街である。そして異世界ではエリス教の人気に追いやられているせいか信者が多いのはこの街だけ。なのでこの街では観光や湯治に来たお客をアクシズ教の信者たちがありとあらゆる手段で入信させようと迫ってくるのだ(笑)
親切心で助けた女性がお礼と称して教団運営のカフェへ連れていこうとする。
気立ての良さそうなおばさんが表向き親切心で教団の品を押しつけていく。
美少女役と悪漢役がエリス教を悪に見立てた三文芝居を唐突に打つ。
大通りでは知らない人が「記念品を贈呈したいのでお名前よろしいですか?」「久しぶり!わたし学校であなたと同じクラスだった──(以下略)」などよく聞くフィッシング詐欺の手法で近づく。
極めつけは年端のいかない幼女までもが実に巧妙なやり口で入信書にサインを書かせようとする。
流石はあのアクアを崇拝するアクシズ教というべき行動と言動の数々であり、彼らの信仰ぶりと偶像譲りの悪辣さに振り回されるカズマとダクネス、めぐみんの表情がさらに笑いを誘う。本来はダークな要素である「宗教の勧誘」というのをこの作品は見事、ギャグに仕立て上げている。{/netabare}

【でもココがひどい?:やや強引なストーリー】
{netabare}ただ、1期に比べるとややストーリーの練り込みは浅く感じる。1期では魔王の幹部であるデュラハンがめぐみんの爆裂魔法のせいで襲ってきたり、デストロイヤーという存在を1期全体で匂わせて終盤で登場させ全員でなんとかやっつけるも結局、2期の始まりでもあるテロリスト疑惑をかけられて終わるなど展開の運び方が自然なストーリーになっていた。
しかし、1期と比べると2期はやや強引なことが多い。アクアのしかけた魔法で魔王の幹部がまたやってくる展開は悪くないが、終盤のアクシズ教総本山で魔王軍幹部が登場するのはやや唐突であり、「復活できるから」という理由で捨て身の行動で敵を倒す展開も1期と比較するとやや強引に感じる部分もあった。
ただ、ある意味ギャグだからこそ許される強引さだ。最終話の戦闘シーンにおける最後の一撃の作画の迫力、そこからの「アクシズ教の教え」というギャグにつなげ、ギャグと燃えを見事に融合させた素晴らしい最終話になっており、「みんなの思い」を力にするという王道の展開を逆手に取るようなアクアとアクシズ教の思いによる1撃はこの作品らしい面白さを秘めていた。

『アクシズ教徒はやればできる。できる子たちなのだから、うまく行かなくてもそれはあなたのせいじゃない。上手くいかないのは“世間が悪い”』

『自分を抑えて真面目に生きても頑張らないまま生きても明日は何が起こるか分からない。なら、分からない明日の事よりも、“確かな今を楽に行きなさい”』

『汝、“我慢をする事なかれ”。飲みたい気分の時に飲み、食べたい気分の時に食べるがよい。明日もそれが食べられるとは限らないのだから』

『汝、老後を恐れるなかれ。未来のあなたが笑っているか、“それは神ですら分からない”。なら、今だけでも笑いなさい』

共感したくなる甘美な言葉である一方で「絶対にダメだ!」という自制も働く。そんな絶妙な教義ばかりを連々と並べるアクシズ教は本当に素晴らしい宗教かも知れませんね(入信済み){/netabare}

【総評】
全体的に見て1期を楽しめた人ならば確実に楽しめる2期だ。作画の不安定さは気になるものの、そんな欠点を覆い隠すほど気合いの入った「顔芸」という名の演出、キャラクターをあまり増やさずに従来のキャラの魅力を深め、1期以上にこの作品の世界観にハマり、3期を見たいと思わせる2期だった。
いわゆるお約束的な流れがしっかりしており、流れ自体はお約束だが内容がハチャメチャで、予想外なギャグと底から生まれるファンタジーストーリーを彩るからこそ、『この素晴らしい世界に祝福を!』という作品のオリジナル性を強く感じることができ、話が進むほど作品の世界観に浸れる。
より駄目になっているキャラクターたち、深まるキャラクター描写、そこから生まれるギャグは1期を楽しめたなら間違いなく笑える。ただ1期と比べるとストーリー面の練り込みはやや浅く感じ、1期では最後の敵を最初から匂わせていたが2期の最後の敵は唐突に出てきた感じが否めない。
ただ、徐々に物語が進み、徐々に世界観が広がり、徐々にキャラクターの魅力が深まっている。駄目なはずの彼らなのに魔王の幹部はこれで3名倒しており、一応ストーリーは進んでいる。
惜しむべきは本編10話+初回未放映回1話の構成だ。1クールに満たず短く切り詰めたからこその勢いがある作品ともいえるかもしれないが、この作品の世界観にもっと浸っていたいと1期以上に感じてしまい、正直、早く3期が見たい(笑) おっと、その前に紅伝説は見ておかないとな!
個人的にはやはり「ダクネス」を演じている茅野愛衣さんの演技が素晴らしかった。1期でもドMな演技は素晴らしかったが、2期ではそのドM演技に磨きがかかっており、キャラクターの魅力がより深まっていた。

投稿 : 2023/12/03
閲覧 : 81
サンキュー:

9

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