「ソ・ラ・ノ・ヲ・ト(TVアニメ動画)」

総合得点
76.2
感想・評価
1222
棚に入れた
6713
ランキング
719
★★★★☆ 3.7 (1222)
物語
3.6
作画
3.8
声優
3.7
音楽
3.9
キャラ
3.7

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ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

音を通じて伝える思い

 舞台となるセーズの街は、昔の世界名作劇場を思い出させるヨーロッパの田舎風だが、
随所に日本の風俗などが紛れ込んでいる。例えば教会は、司祭の格好などはキリスト教風なの
だが、教義はどちらかというと日本の神道に近かったり。
 更に水かけ祭りなどの民間伝承の部分だと中南米を思わせる要素も入ってくる。
 で軍隊の方は、軍装は第二次世界大戦時のドイツ軍。実際、車両がキューベルワーゲン、
ライフルがモーゼルのKar98k、機関銃がMG42といった感じで、その時期の戦闘車両や
武器が随所に出てくる。
 色々な要素がごちゃ混ぜになっているうえに、それがこの時代の人々には誤った名称で
伝わっているものがあるのが面白い。
 どうやら作品中で旧時代と呼ばれる現在の文明と作品世界の文明の間は一度、文明の断絶が
あったのではないかと思わせる。
 作品中ではこれらの細かい設定が描かれることはないが、裏設定はかなり色々ありそうな
感じ。
 この世界全体を描くようなマクロ的作品なら、「説明不足だ」と思ったりもするけど、
辺境の街を描いた作品なので、この程度の描写で時代の雰囲気だけ伝わればいいかなと
思ったりします。

 基本的にはラッパ手の新兵である空深 彼方の成長譚といった感じ。
 ラッパという明確に音で認識できるものが基本モチーフになっているため、演奏の成長
度合いが判りやすい。
 この彼方だが、馬鹿正直なまでに素直な娘。この性格が非常に可愛いのだが、実際に身近に
いたら、暮羽じゃないけどうざいかもしれない。
 しかし、この愚直なまでの素直さが要所要所で話を動かしていく。

 序盤から中盤に掛けては第1121小隊に属する少女達の日々の生活を描いた、軍隊内日常系
といったところ。
 軍隊と言っても、セーズの街は戦場から遠く離れた場所であるため、軍隊生活ものんびり
したもの。
 それでも戦時下であり、更に人類の文明自体が衰退に向かっているため、日常系とはいえ、
全体的には寂寥感が漂っている。むしろ、そんな状態だからこそ、何気ない日常の生活が
非常に貴重に見えてくる感じ。

 この作品、リアルタイム放映時は、少女達の日常系、音楽が基本モチーフといった類似性も
あるためか、「けいおん!」と比較されて叩かれたりもしていたけど、そういう見方をして
しまうとちょっと可哀想な気が。
 共に音楽が基本モチーフになっているが、音楽に対する描き方は随分異なる。
 「けいおん!」の方がバンドという形態のためか、音を出すという行為を共有することに
よって得られる楽しさを主に描いていたのに対して、こちらはビューグルやトランペットの
独奏が中心であったため、音を出す者とそれを聴く者の繋がりを描いていたように思います。
 前者が「共に演奏することでつながる絆」、後者が「思いを音に乗せて伝えることで
つながる絆」といった感じかな。
 この「音で伝える思い」という部分は随所に出てくるけど、その際に多用される曲が
アメイジング・グレイス。元々原曲自体がいい曲なんだけど、使い方が上手いこともあって、
かなり印象的。
 その最たるものが、やはり最終回の停戦シーン。ベタと言ったらベタなんだけど、やはり
いいシーンだなと思ったりします。

 個人的には結構好きな作品でしたが、捉えにくい面があるのも事実で、設定などから
ラッパ手の新兵を主人公にした戦争モノだと思っていると、のんびりした日常シーンばかり
続くために面食らいそうだし、逆に序盤から中盤に掛けての視聴で軍隊内日常系という認識を
していると終盤のシリアス展開に違和感を感じそう。
 おそらく両面をうまくブレンドしたかったのかもしれないけど、やはり序盤と終盤では
分離感を感じます。
 あくまで個人的意見ですが、終盤のシリアス展開に備えて、序盤の日常的光景の中でも、
戦時下であることを思い起こさせるような緊張感を感じる要素を差し込んでおいた方が
良かったのかも。

投稿 : 2012/09/22
閲覧 : 226
サンキュー:

6

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