「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊-ゴーストインザシェル(アニメ映画)」

総合得点
86.4
感想・評価
1094
棚に入れた
6492
ランキング
197
★★★★★ 4.2 (1094)
物語
4.2
作画
4.2
声優
4.1
音楽
4.1
キャラ
4.1

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ネタバレ

シェリー さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

人と人らしさ

公安9課、通称「攻殻機動隊」。
事件が起きてから動く警察とは違い、事件を未然に防ぐ機関。
そのため裏の組織と激しい抗争を繰り広げることも多々ある。手を汚さずにはいられないときだって。
2029年、世界は科学技術が進みあらゆるものが発達した。それは人体にも反映された。
脳を補強することでネットワークにつなげることもでき情報の受け渡しやその処理の簡略化、また他人の脳にハッキングすることも可能になった。
身体に関しても一部分だけを改造することもできるし、少しの脳さえあれば活なんだって可能なのだ。
またその脳のデータを作ることも。

お話は「人形使い」の異名を持つ凄腕ハッカーの一件を公安9課が任されることになり
高度資本主義経済やら合理主義やらが発展したことで巻き起こる事件を解決に導くため奮闘するもの。
他人の脳をいじる「人形使い」との出会いによって彼らが問う自己の問題に対しどう関わっていくのかも見どころです。

公安9課、攻殻機動隊の主な活動隊員は脳以外は作り物である草薙素子。
目や腕など身体の8割以上がサイボーグのバトー。
ほとんどが生身で銃もオートマではなくリボルバーを使用し何かと2人とは反対なトグサ。

この物語で特に目を引くのは草薙とバトーです。この映画の象徴的存在とも言えます。
ストーリーの運びは同監督の『機動警察パトレイバー』のときもそうでしたが
とにかく情報が多く、語りも決してゆくっりではないので難しい話はついていくのに僕は大変でした。
哲学的なことも語られます。今回は特にアイデンティティ。
しかしそういうたくさんの情報からじわりじわりとその2人が浮かび上がってきます。結局その2人なのです。
そこで何を拾うかは人それぞれに委ねられますが。

シリアスな雰囲気で画や戦闘、事件性に引かれもする映画でしたが、それ以上に「人」または「自分」について少し考えたくなりもする映画です。

面白いのでおすすめです。

{netabare}

人1人を、「個人」を成り立たせるために必要なものはあまりに多い。

確かにそうだと思います。
アイデンティティとは、1人ひとりの過去の体験の記憶の集積によってもたらされた思考システムの独自性です。(『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』より)
もし自分の脳が作られたものであり、今現在の思考、行動、仕草が時間と共に積み重ねて
作り上げられ形成された自己(私)の自由意思に任されたものではなく、
既存のものを応用したプラグラムであることがわかったときはたして正気でいられるのでしょうか。
まったく考えが及びません。まるで奈落のような深い恐怖を感じます。自分が自分でなく、ましてや人間でもなかっただなんて。


目に見えているものが全てではない。なにが正しく、そしてなにが間違っているのかは自分で判断しなくてはならない。
これはよく使われる表現ですがこの言葉の意味は真に探ろうとしなければその重要性は身に染みてきません。
草薙素子はそれを体現してくれました。
彼女は目には見えない不確かなものに正面から向き合い独りでずっと戦ってきました。
世間も身近な人々さえもが持つ「正しい」価値観を当てにせず自分の位置からじっと真実を見据えてきた彼女の姿は強く勇ましい。
初めから崩壊することの分かっている理想や希望を彼女は持たない。仕事は完璧にこなすし羞恥心だってない。
あくまでも鋼のような強靭な精神を持つリアリストなのだ。ゴーストの囁きを聴く以外は。
こういった彼女の姿は本編の目的やテーマを見い出そうとするあまり見逃しがちですが、
たおやかで矜持を持った彼女はとても印象的で個人的にすごく好きです。
でも彼女はこれからなにをどう生きていくんだろう。それともここが出発点なのかな。

羽海野チカさんが『スピカ』で書いていたことにも共感しました。
裸になることにまったく意識すらない草薙にバトーが服をかけてあげたり
着替える時には見ないようにしているところはなんだかよかったです。
草薙が自身を認めていなくともバトーが草薙を人間として接することで草薙は人間だったし
バトー自身もまたそれ以上に人間らしく映っていたと思います。

人と人らしさ。
人として作品に登場してきた彼女たちの後ろ姿には語るものがありました。

{/netabare}

投稿 : 2014/07/05
閲覧 : 397
サンキュー:

26

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