「君の名は。(アニメ映画)」

総合得点
91.0
感想・評価
2499
棚に入れた
11411
ランキング
42
★★★★★ 4.1 (2499)
物語
4.1
作画
4.5
声優
3.9
音楽
4.2
キャラ
4.0

U-NEXTとは?(31日間無料トライアル)

ネタバレ

ダリア さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

世界で最も豪華な1時間46分

クリエイター新海誠と同じ時代に生まれ、彼の最高傑作に触れられた事。ずっと誇りに思います。この作品に出会えて、本当に幸せ。

以下ネタバレ感想 アホみたいに長文なので飽きたらすぐやめてくださいね
{netabare}
まず冒頭5分で惹かれました。バンドRADWIMPSの曲がOPとなって更に綺麗になった新海の都会の描写に映える。作中通して思っていた事ですが、昔から音入れるタイミング抜群に上手いんですよ新海誠。特にラストのED曲「なんでもないや」の入りはズルい。映像といい秒速5センチメートルを想起させるように描いていて、まるでセルフリバイバルのようでした。近いうち2回目に劇場に足を運ぶ予定ですが、その時泣いてしまうとしたらきっとここかも。視聴後に知った事なんですけれど、なんでも劇伴は全てRADWIMPSが担当しているとか。どうりで爽やかなバンドサウンドが多い筈ですね。これがまた作品の景観を損ねることなく親和している絶妙なバランスはアッパレ。1度目の視聴では構成と魅せ方の上手さに感心しきりでインスト曲を頭に入れておく余裕がなかったのですが、2度目の視聴ではもっと意識を向けて聴いてみます。

今回は長編です。そう、短編連作や短編を得意とする新海が久々の長編。テンポ良く進んでいく冒頭から1時間はぶっちゃけ退屈で、新海でなくても描けるような展開だよなーと風景ばかり観ていましたが……本編はここから。入れ替わっていたのは3年前に彗星の衝突で焦土と化した田舎町、糸守町の住人であり既に死人の宮水三葉であった事が発覚。そして瀧は入れ替わりをもう一度起こし三葉の救済が出来る事を願って三葉の口噛み酒を飲み……幾度となく、作中ずっと印象的に描かれる名前の記憶。

忘れちゃいけない人、忘れたくない人、忘れちゃダメな人。

手のひらに描いた名前でない「魔法の言葉」が、絶対に忘れないメッセージが、躓いた三葉を再び突き動かす。ああ、なんて美しい日本人的情緒。日本人に生まれ母国語であのシーンを視聴出来た歓びをずっと噛み締めていたいです。

過去作の積み重ね、新海誠のたった一つの答えがあのラストシーンです。
私達はきっと、会えばすぐ分かる。その言葉通り階段で歩み寄り、すれ違って、声を掛けます。

ずっと、君を探していた気がする、君の名前は___!

二人は出会って全てを思い出し、干渉する事を選んだのです。日々焦燥感の中、誰か一人を探していた瀧と三葉。朝目覚めて、何故か自分が泣いていた事に気付き、覚えていなくともどうしようもなく互いを求めていた二人。奥寺先輩が既に誰かと結婚していて、三葉の指に指輪がはめられていないのを見るに、全ての伏線を回収しての完璧なハッピーエンド。圧倒的に"綺麗なバッドエンド"ばかり描いてきた新海誠がここに来て見せる、文句なしのハッピーエンド。三葉の泣き笑いを観て、ああ、報われたとスッキリ暗雲を晴らす、この泣き笑いを描くためだけに新海誠は"クロスロード"を作り一度あえて迷走したのです。"秒速5センチメートル"では登場人物だけが救済されるエンドでした。あの作品はかくして名作と呼ばれているわけですが、それじゃあ駄目なんです。映画館で観るには、あまりにも観客が報われない。裏切りと呼んでもいいラストと言えるでしょう。そのもやもやをこの作品は見事に払拭した。

"君の名は。"という作品のラストは、"秒速5センチメートル"のセルフリバイバルです。あえて絵柄を今風の萌え系に寄せてヒロインを始めとする登場人物達を魅力的に活き活きと描き、"あえて立ち去る"のではなく"声を掛けもう一度始める"。前述したように新海作品はバッドエンドが多いので、どうか救済を救済をと祈るように視聴していて、そのあたりで気付きます。あ、そのために新海はこの絵柄を選んだのか、と。完全敗北です。この萌え系の絵柄でしかできないエンドを描いた新海誠の手腕に脱帽。

ちなみに、ラストの時間軸は瀧視点なので気付きにくいのですが、瀧は5年間、なんと三葉はハレー彗星衝突からの数えで8年もずっと探し続けた上での再会なんです。その背景を考えるだけでもこの作品の美しさを再認識できて、尊い。新海誠自ら執筆の小説やスピンオフ漫画等のメディアミックス展開で補完されたりでもしてしまったら、全部買ってしまいそうなくらい、儚く、だからこそ美しい"君の名は。"世界観にもうすっかり虜です。

声優について。立花瀧役神木隆之介と宮水三葉役上白石萌音、このお二方の神懸かりな演技力が二人に命を吹き込み、作品を占めるウェイトは結構大きいです。前作、言の葉の庭の入野自由と花澤香菜の好演が記憶に新しい中で新作は俳優を声優に起用と聞いた時は失望したものですが、そこは新海誠。彼の審美眼は確かでした。むしろ今では声優が瀧と三葉を演じていなくてよかったとさえ思っています。神木隆之介君と宮水三葉さん以外のキャストでは絶対にありえない、代役の効かない唯一無二の演技には開いた口が塞がらず。脇を固める大物声優の中では、やっぱり悠木碧が目立っていましたね。キンキンした高い声よりモゴモゴ喋らせた方が悠木はかわいい(確信)

本当に伝えたい事の半分も伝えられていないので、もう一度映画館で観た後文章を推敲してまた追記します。
余談ですが、人間本当に感動の局地を味わうと言葉を失くしますね。今日ほど自分の語彙の少なさと日本語で表す事の出来る表現の少なさを恨んだ日はありません。私はこの作品にエンターテイメントだとか娯楽だとかいう言葉を付ける気はありませんし、面白いなんて陳腐な言葉で形容出来ないこの作品の魅力を他人に伝える事の難しさを痛感しています。感じた感情に一番近い形容をするなら「美しい」でしょう。構成もテンポも背景も色彩も作画も劇伴も声優の演技も雰囲気も、全てが美しい。そして中々実際に会えない二人の距離は近くて遠い。そんな切なささえ愛しく、美しい。視聴後にもう一度キャッチコピーのセリフを見ると感慨深いです。

───まだ会ったことのない君を、さがしている───

{/netabare}
総括。ちょっと賛否分かれるとは思いますが老若男女誰でも一度は視聴を勧めたい作品です。新海色は、今までで一番薄いようで実は一番濃いかも。けれど今までと混ぜ方が違うので万人受けを残しつつ新海だけの味はしっかり残っている。"言の葉の庭"の方が雰囲気は好みですが作品自体の完成度と煮詰まり方は圧倒的にこちらに軍配が上がります。新海誠の世界観に触れる入門編にはピッタリ。
これを気に入ったらこれの前身、過去作の"言の葉の庭"と"秒速5センチメートル"も視聴してみましょう。これらを踏まえた上でもう一度"君の名は。"を視聴すると随分見方が変わりますよー。

投稿 : 2016/09/04
閲覧 : 219
サンキュー:

18

君の名は。のレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
君の名は。のレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

ダリアが他の作品に書いているレビューも読んでみよう

ページの先頭へ