どらむろ さんの感想・評価

4.7
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 5.0 状態：観終わった

無様でも決して挫けず足掻き「やり直す」物語。異世界＋タイムリープの鬼がかった怪作でした。

ライトノベル原作の異世界召喚＋タイムリープ（時間巻き戻し）系、全25話です。
絶望的なまでに過酷な状況を、能力も人格も劣る主人公ただ一つの異能「死に戻り」のみで足掻いていく…。

…現時点で2016年度最高傑作です。（君の名は。も捨て難いけれど）
主人公ナツキ・スバルのウザさで評価割れるのも分かる、私はそこ含めて全面的に評価しております。

{netabare}『物語』
ジャンルは最早テンプレと化した感のある「異世界召喚」
普通ならば主人公は強力な異能で大活躍…でも本作主人公のナツキ・スバルは平凡な少年。
普通は主人公補正で中々死なない…アッサリ死ぬ。
死んだら話は終わってしまう…「死に戻り」するので終わりません。
弱くても不死身（スバルの場合は無限コンテニューだけど）で食い下がるのは「3×3EYES（サザンアイズ）」初期の藤井八雲っぽい。
…原動力が「好きな女の子を救いたい」のも王道。
エミリアたんはスバルが頑張って守りたいと思わせるに足る可愛さありますし。

どんなに弱くても無限コンテニューあれば、どんなクソゲーでも絶対クリアできる、とんだご都合主義だな…？
でも死ぬたびに、積み上げた努力が水泡に帰す絶望感、光明が見えず追い詰められていく展開は、決して予断を許さず。
…私子どもの頃、ファミコンの超難易度ゲーム何本もクリアー出来ず投げ出した経験あります。
たとえ何度チャレンジできるとしても、結局先にプレーヤーの心が折れる。
長時間やり過ぎると母から怒られるし…ｗ
スバルは何度も何度も理不尽かつ先の見えない災厄に、激しい苦痛と精神的絶望感を味わい続け、また「本当に無限コンテニュー」という保証も無いので…実質的に「死に戻りの回数制限はある」
クトゥルフ神話TRPGでいうところのSAN値（正気度）が、死に戻るたびに減り続けるんですよゼロになったらゲームオーバーですよ。
…そんなワケで、死に戻りにご都合主義は感じないです。
折角、幾度も絶望の果てに信頼関係を築けたのに…賽の河原ですかこれは…。
「ゼーガペイン」のリセット回の虚無感を想起しましたよ…。

見所は先の読めない展開。まるで「初見殺し上等なクソゲーを何度もコンテニューしつつ攻略の糸口を模索」するかのように、あまりにも理不尽な異世界の脅威に立ち向かっていく。
スバル（と、視聴者）視点では、まさに究極のセカイ系、セカイの秘密に一歩ずつ食い下がる緊迫感で目が離せず。
そこに前述の通りスバルの心が折れそうになる無情な展開多数、それでも決して諦めない！
三歩進んで二歩下がるの繰り返しで絶望の中を足掻き続ける…

本作の評価が割れそうな、中盤のスバルの無様さもまた見所でしょう。
最低な奴だ？でも、無理もないなぁと思うので。
普通なら（少なくとも私なら）とっくの前に心が折れている。
スバルは無様に未熟な本性むき出して好きな女の子を傷つけ自分も傷つき、足掻くがやり方が迷走している…
とても見ちゃいられぬ無様さなんですが、最後の一線で、まだ諦めてはいない。
中盤のスバルの無様な悪足掻き…ここも含めて全面支持。

紆余曲折、やり直しの果て、双子鬼族の妹レムの全幅の信頼が、スバルを救う。
中盤の無様な足掻きも、実は決して無駄では無かった積み重ねが効いている。
レムの圧倒的健気さ…それだけに、ダメ男やさぐれスバルのダメさが際立ちますが…
それでも尽くすレム可愛すぎる！
あぁ^～心がぴょんぴょんするんじゃぁ^～

スランプを抜けたスバル怒涛の活躍で白鯨打倒も熱い。
中盤の落ちぶれ期にフルボッコされた強キャラ達の信頼を勝ち得ていく流れも拍手喝采でした。
この高揚感は、中盤のダメっぷりあってのもの、あのダメなスバルが英雄になった、感慨深い。

怠惰のペテルギウスとの戦いを通じて、スバルがエミリアへの想いを再確認する流れも、本作のメインテーマを思い出させてくれて非常に良い。
一途な愛。
愛においてスバルとペテルギウスは似た者同士、合わせ鏡だった。
でも、決定的な差が、明暗を分けたのでしょう。
ここでも中盤落ちぶれていた頃の過ちが効いている。
スバルは未熟で無様でクズだった…でも、死よりも辛い試行錯誤の末、レムの想いも得て、成長した。
幾度もの死に戻りの果てに得たモノ、仲間との絆や不屈さの全てを乗せて…怠惰を討つ。
それは精神的に追い詰められたスバルがエミリアに言い放った暴言の数々が、歪で本当の愛とは違う事を気付かせる…
怠惰の大罪司教の末路を加えて、分かり易く比較できる構成見事でした。

怠惰戦の前の白鯨戦での、ウィル爺の若き日の恋の話もステキ。
このエピソードでも愛の形を示してくれて、これがスバルのエミリアへの想いのあり方も導びいた。
怠惰戦と合わせて、数々の積み重ねが大テーマ「無力な少年が挫けず成長して少女への想いを貫く」に繋がっていく、これが素晴らしい。

無様でも決して挫けず足掻き続け…ついにエミリアたんに届いた想い…
感無量、よく頑張ったとしか言いようがない！
理不尽な異世界の不条理を不屈に足掻いて進む展開、濃密な信頼関係（エミリアたん以上に、レム、ウィル爺、ユリウス）、ハードな激戦、そしてスバルの成長。
全25話の1話たりとも目が離せぬ面白さでした。
スバルがクズだった中盤含めて、否、この中盤あればこそ、満点評価としたいです。


『作画』
女子のキャラデザは普通に可愛い程度なんですが、表情や仕草含めて可愛いです。
キャラの作画で注目は、レムの瞳の輝きが一瞬で変化するシーン。
この一瞬でレムの感情変化がヒシヒシと伝わる、アニメーションの可能性感じました。

バトル描写も水準以上、時に派手に、時に殺陣も繊細。
レムの鬼気迫る奮闘や、白鯨戦の大規模総力戦、怠惰との異能バトルいずれも迫真。
グロも含めて、過酷な状況に引き込んでくれる。
異世界の世界観描写も良かったです。


『声優』
スバルの小林裕介さん、レムの水瀬いのりさん、そして怠惰の松岡禎丞さんが非常に素晴らしかったです。
小林裕介さんは怠惰に乗っ取られた際も、松岡さんにヒケを取らず。
ウザさも、弱さも、ナツキスバルはまり役でした。

水瀬いのりさんは、全幅の信頼モードの慈愛と、覚悟を決めた鬼気迫る気迫の落差に注目。
「シンフォギア3期」のキャロルちゃんを彷彿、更に鬼がかっている感じ。
「心が叫びたがってるんだ」に匹敵する名演技でした。

そして多分本作MVPと思われる、怠惰の松岡禎丞さん。
圧巻の狂人っぷり！大先輩の飛田展男さんや家中宏さんにもヒケを取らぬ。
凄まじいインパクトでした。

他にもヴィル爺の堀内賢雄さんの渋イケボや、ベアトリスの新井里美さん等印象的でした。
男女ともに豪華声優陣、メインヒロイン・エミリアたんの高橋李依さんも可憐でした。


『音楽』
主題歌は良曲なんですが好みではない、また流れる機会が少ないです。
それでも要所で盛り上げている。


『キャラ』
多分アニメ史上でも、ここまでウザい主人公は、そうそういないと思われる。
ナツキ・スバル。一見口は達者だけど、空気が読めず、無用な軋轢を招きがち。
ウザいし、スベっているクサい言動の数々、メッキが剥がれて無様を晒す情けなさ…
嫌われるのは致し方が無いダメ主人公ではあります。
が！
好きな女の子の為に、非力でも、間違っても、決して諦めなかった不屈さがスゴイ。
…もし自分がスバルの立場なら？果たしてもっと上手く立ち回ったり、頑張れるだろうか？
死に戻れるからって、自分が死んでも皆を救いたいと行動できるのか…？
私は…自信が無い。素直に尊敬したいです。
未熟さも含めてのキャラクターの魅力だと思う。
例えば「さくら荘のペットな彼女」とか「凪のあすから」とか。
未熟でダメだった主人公が成長するから、物語は面白いです。

メインヒロインはエミリアたんですが、ヒロイン度ではレムの方が。
最初の出逢いは…ツンなんて生易しいレベルではない！
そこからの紆余曲折、姉のラムに対する敬意とコンプレックス、背負った重荷を救われてデレる…
デレて以降の怒涛の嫁っぷり。スバルが一番辛く一番やさぐれていた時期に、拒絶されても支え続けた何という健気さ！
悲壮な覚悟で死戦に臨む…尊い。
心がぴょんぴょんしそうになる可愛さでした。
…終盤、レムの霊圧が…。切ないけれど、レムのヒロインとしての役割は完璧に果たしたので。

エミリアたんは序盤以降はヒロインの座から離れる事久しい、それでもやはりメインヒロイン。
世界から疎まれてもなお、無償の愛を抱く…天使か。
なんとなく「聲の形」の硝子ちゃんと似たタイプ、君は悪くない…と、スバルに受け入れられて、デレないハズがない。

剣鬼ウィルヘルムさんカッコよかった。老人も魅力あるのは良作率高し。
昨日の敵は今日の親友、生真面目な騎士ユリウスも頼もしい。ユウジョウ！

敵役も怠惰のペテルギウスが（松岡さんの怪演も相まって）存在感バツグン。
ある意味スバルと表裏一体、彼との対決はスバルを大きく成長させた。

その他男女ともに印象に残る良キャラ多いです。
ベア子かわいい。
ただ一匹、パックおまえはダメだ。
エミリアたん守れてないではないか…近年一番イラッとするマスコットだよ…{/netabare}