「クズの本懐(TVアニメ動画)」

総合得点
83.1
感想・評価
1023
棚に入れた
5250
ランキング
332
★★★★☆ 3.6 (1023)
物語
3.5
作画
3.7
声優
3.6
音楽
3.6
キャラ
3.5

U-NEXTとは?(31日間無料トライアル)

ネタバレ

フリ-クス さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.5 作画 : 3.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

女子高生や妹に夢を追っている方には、無理かも

なんとなくだけどアニメの世界では
『恋愛とは一途で、かつ、誠実でなければならない』
みたいな不文律があります。

もちろんそれは倫理的に『全く正しい』ことなのだけれど。

かたや現実の世界というのは、
『倫理的に全く正しいことだけでは回っていない』
というのが公然というか『あたりまえ』であったりするわけです。

作品に即して焦点を『恋愛と性』に絞ると、
男でも女でも、等しく性欲なり性的好奇心はあります。
で、好きな人以外にそれを向けてはイケナイのかと言うと、
別にそんな決まりはないし、
そもそもそんなのは現実的に無理な話であるわけで。

ただ、それをアニメに乗せちゃうと、
たいていは『クソビッチ』『やりチン』『ただのエロアニメ』
というように酷評されるのが慣例みたくなっています。

この作品は、
あえてそういう世界にバクダン放り込むようなもので、
まずは製作陣の潔さに拍手です、ぱちぱちぱち。
{netabare}
少なくとも僕にとってこの作品は『妄想』などではなく、
ふだん街角ですれ違っているた若者たちの
一面を鋭く切り取った群像劇として成立しています。

というか、ふつうに『ドラマ』として、観て面白い。

好きな人に振り向いてもらえない虚ろさの代償行為として、
自分の『性』を、ある意味粗雑に扱う。
自分の隙間を埋めるために、
寄せられた好意を手放すことが出来なくて、
心の代わりに身体を差し出す。
自分の承認欲求を満たすためだけに、不毛な性交を繰り返す。

そういう『どうしようないこと』をやっちゃうのが人間です。

もちろん、その行為だけを並べてもエロアニメにしかなりません。
だけどこの作品は、
その中で不規則に揺れ動く心の針を、
自虐と自戒を繰り返しながら、もがき続ける様を、
そしてそれらを通じて少しずつ収束に向かっていく成長を、
繊細なタッチで描いています。

そして、それを体現するキャラクター造形が素晴らしい。

好きだから、花火の身体を求めてしまう早苗。
好きが満たされず、穴埋めに身体を開いてしまう花火。
求められる自分が好きだから、奔放に身体を開く茜。
好きだけど、無償で身体を開けないのり子(モカ)。
半ば自暴自棄気味に、好感をもつ麦に身体を投げ出す芽衣。

それぞれ、物語における役割の軽重はあっても序列はありません。
誰が正しいとか間違っているとかじゃなく、
みんな血の通った、ふつうに街を歩いている『オンナ』なんです。
作者は誰のことも、非難も擁護もしていません。
だからこそ、この作品は『群像劇』として成立しているんです。

やっぱそれって、作者が女性だからなんでしょうね。
オトコが描いたら好みが入って、
無理に壊したりデフォルメしたりしそうだし。

個々のキャラを演じる女性役者の方々も、演りやすそうです。
みんな首まで浸かって演ってるし。
豊崎さんなんか、ほんとめっちゃ楽しそう。

あと、OPとEDの楽曲が秀逸です。
作品世界と楽曲が完全にマッチして互いを高めあっている、
楽曲選定のお手本のような作品ではないかと。
見習えよ、某大手。

********************************

と、いろいろと褒めてはみたものの、
かなり攻めている作品なので、
楽しめる人が限られるかも知れません。

女子高生や妹に夢を追っている方には、まず無理かもです。

若かりし頃に、懺悔したくなるほどアイタタな思い出のある方は、
真っ直ぐのめり込めるような気がします。
ただ、もしトラウマえぐられちゃったらごめんしてくださいね。
{/netabare}

投稿 : 2021/04/10
閲覧 : 411
サンキュー:

13

クズの本懐のレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
クズの本懐のレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

フリ-クスが他の作品に書いているレビューも読んでみよう

ページの先頭へ