「けいおん!(TVアニメ動画)」

総合得点
90.3
感想・評価
9670
棚に入れた
36859
ランキング
57
★★★★★ 4.2 (9670)
物語
3.9
作画
4.1
声優
4.2
音楽
4.4
キャラ
4.3

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nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

女子しかいない日常系の原型。アニメ沼の元凶。追記 女子だけアニメについて訂正

 このアニメの前後で何かが変わった気がします。ハルヒの時代には日常部活ものではあっても物語性がありました。本作については物語は日常を見せるための舞台装置でしかありません。
 本作で「アニメ沼」というか「けいおん沼」にはまった人間は数多くいるみたいです。ニュースで本作の舞台となった旧小学校の聖地巡礼が10年以上たっても続いているというのを見たことがあります。

 シンエヴァであちらは今年ケリが付きましたが、この日常系アニをドラッグのように求める層を生み出したという意味では、潜在的な影響力はエヴァ以上かもしれません。信者の深さは半端ではありません。

 思い切って女性しか登場人物がいない、という切り捨てに出た初めてのアニメではないでしょうか。同時代にひだまりスケッチとかARIAとかありますがそれでも男性は出ていました。本作はモブを除いて徹底的に男性を排除しています。

 これが男性からみても女性から見てもノイズをカットした「今まで見たくても無かったもの」だったのではないでしょうか。それはつまり恋愛、スクールカーストに疲れ切った時代になってしばらくたった頃に符合します。悪意もイジメも順列も差別も無い世界。そこには男がいてはいけません。男が入った瞬間、女子には順位付けが始まります。
 ムギという金持ちキャラに対する驚きはあっても嫉妬がありません。アズサも練習に対する姿勢の不満があっても結局はわかり合ってしまいます。女子だけの世界ですら本来はこんなに優しくはないと思います。こういうアニメの型を作り出した最初の作品ではないでしょうか。
(追記;あずまんが大王を忘れていました)

 京アニは女性スタッフが多いし、監督は確か女性だったと思います。その女子側が心地い世界が、男子側の見たい世界と一致することに気が付いた慧眼があってのこの「けいおん」という作品だったのでしょう。

 京アニのアニメ映像の技術と高い音楽性、演出の巧みさ、さほど人気があるとは言えない原作の設定を拾ってきてストーリーに仕上げる技術で作成された本作は、今の作品に比べてもとびぬけたクオリティだと思います。
 作成意図と視聴者の幅から言って決して、メジャーとはいえませんが、マイナーの浸透度は恐ろしいものがあります。アニメ史を分析してゆくと、本作はどこかで語られなくてはならない作品だと思います。
 実は初音ミクが2007年、本作が2009年です。初音ミクの影響があったかどうかは不明ですが、このけいおんというヴァーチャル空間のようなアニメと無関係ではない気がします。


 で、アニメの感想ですが同時代性が大事な部分があり、後から見ると乗れない部分はあります。甘ったるい空間やデフォルメされたキャラ造形などが、作品の古さを感じさせる部分もあります。
 ですが、やっぱり面白いです。とにかくダレる部分が一切ありません。これでもかと内容を詰め込んでいます。音楽というギミックとJKの部活を組み合わせエピソードの一つ一つがすべて面白いです。
 強いて言えば、無理に感動を作ろうとする姿勢が、好みにあいませんでしたが、すぐにギャグで相対化されてしまいますし、思春期の女子の間の日々の小さな感動を拾ったという意味では必要だったのでしょう。


女子だけアニメについて追記 

「けいおん」は部活というはっきりしたテーマがある日常系の元祖であり、親父趣味日常系の原型として、ゆるキャン△につながる流れのきっかけなのは間違いないと思います。
 ですが、それ以前に女子だけアニメがありましたので、注記しておきます。漏れていたら随時追記します。

「あずまんが大王」2002年がほぼ女子だけアニメの始祖といえそうです。木村先生とか男女共学とかで男子が混ざっている点でまだ純度は低いですが。女子高生を性的に消費する意図を隠そうとしていませんでしたし。
「苺ましまろ」2005年ですね。これが本当に女子だけだと思います。そして日常系でもありました。つまりこれがオリジンでしょう。
同時期に「ぽにぽにだっしゅ」がありますがこちらは結構男が出ていました。

「ひだまりスケッチ」2006年。これも長いですね。なぜこれを忘れた?
「らきすた」2008年。これはモブ男子やお父さん、ラッキーチャンネルの白石が出てきます。
「けいおん」2009年 本作
「たまゆら」2010年 若干家族で男登場
「ゆるゆり」2011年
「Aチャンネル」2011年
「キルミーベイベー」2012年 日常系?
「ヤマノススメ」2013年
「きんいろモザイク」2013年
「ご注文はうさぎですか」2013年
「のんのんびより」2013年
以降はまた別のアニメで。

という感じでしょうか。ただ、思っていたより少ないですね。2011~2013年の量産体制から考えて、やはり「けいおん」の影響は大きかったと言えるでしょう。
「ARIA」2005年や「みなみけ」2007年はしっかり男子が出てますね。


また、京アニの作品の変遷と進化、時代性などあります。
 らき☆すたとのキャラの相似性について言及しわすれました。けいおんとキャラの特徴を必ずしも一致させず、らき☆すたの登場人物の特性を分解、再構成したような形になっています。
 ハルヒとらき⭐︎すたを足し算するとけいおんになるとも言えます。ライブアライブの反響と技術、作画、演出を蓄積したことも影響しているかも知れません。

投稿 : 2021/11/20
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サンキュー:

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