「この世界の片隅に(アニメ映画)」

総合得点
82.8
感想・評価
691
棚に入れた
3061
ランキング
346
★★★★★ 4.2 (691)
物語
4.3
作画
4.2
声優
4.2
音楽
4.0
キャラ
4.2

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ひろたん さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

女性の"強さ"と"弱さ"は表裏一体であることを描いてみせた傑作

最初は、なごやかな雰囲気で、ギャグもあり、クスっと笑える場面もあった。
それが、気づくともう逃れられない悲惨な状況に巻き込まれている。
この物語の中で、いつからこうなった、いつから・・・。
それが、戦争。

徐々に、徐々にその足音が近づいてきて、幸せを蝕んでいく。
この物語もここまでが普通の日常、ここからが辛い日常、そんな線引きはない。
気づいたころにはそうなっている。

ああしておけばよかった、こうしておけばよかった。
主人公もそんな後悔の念に苛まれる。
しかし、それが戦争。


私は、歴史は知っているが、戦争は知らない。
教科書には、広島に原爆が落とされたことは書いてある。
しかし、一人ひとりの"悲惨さ"までは書いていない。

それは、ひとりの人間なんて、本当に歴史や世界の片隅の存在でしかないから。
そして、"悲惨さ"とは、物事の一種のとらえ方の感情であり、史実ではないから。

しかし、"悲惨さ"は、みんなの心の中にある紛れもない真実である。
そして、この作品には、それが描かれている。

この作品は、直接、戦闘をしない立場の人間に焦点をあてている。
同じコンセプトの作品に「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」がある。
この作品は、子供視点から戦争を描いた傑作である。
そして、本作は、女性視点から戦争を描いた傑作である。

前者は架空、後者は史実にもとづいている違いはあるが、その本質は同じだ。
戦争は、それを知らない現代人にとっては、どこか他人事であり、ファンタジーだ。
しかし、それだと再び歴史を繰り返してしまう。
この2つの作品は、そのことに対して一石を投じ、自分ごとのように感じさせる。
それは、直接戦闘に関係ない人間が気づくと巻き込まれていると言う怖さからだ。

戦争によって、破壊されつくされた普通の生活。
前者は、同じ過ちを繰り返さないこと、その望みを子供の未来に託した。
後者は、未来への一歩一歩が女性の力強さに支えられていることが描かれていた。


この物語では、主人公の描写に圧倒される場面が大きく2つあった。
1つは、主人公が、空襲の中、広島に飛んでいく鳥を見たとき。
そして、もう一つは、玉音放送を聴いた後。
この二つの場面の主人公の気持ちの描き方はすごいとしか言いようがない。
いままで積み上げてきたもの、ため込んできたものを一気に放出させる。
それは、これほどまでに鬼気迫るものがあるのかと。

女性は、我慢強い分、自分の気持ちを押し殺しため込んでしまう。
しかし、一度、気持ちがあふれ出したときには、一気に、崩れてしまう。
この作品は、女性の"強さ"と"弱さ"は、表裏一体であることを描いてみせる。
こんな作品は、他に観たことが無い。


じわじわと蝕まれていく幸せに、じわじわと泣けてくる・・・。
しかし、最後は、未来に希望が持てる内容であったのが、とても救いだった。

投稿 : 2021/12/31
閲覧 : 331
サンキュー:

37

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