「PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1「罪と罰」(アニメ映画)」

総合得点
74.0
感想・評価
172
棚に入れた
984
ランキング
937
★★★★☆ 3.8 (172)
物語
3.7
作画
4.0
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
3.8

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ネタバレ

ネムりん さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

『Sinners of System』を解消していく物語

物語は潜在犯隔離施設「サンクチュアリ」において、薬物投与と催眠療法を使い潜在犯を洗脳し、鉱石採掘事業と銘を打ってこれらの者を使い、過去の遺物である放射性廃棄物を処理させるために名目とは異なる施設の存在が前提にあり、その運営実態の真相を解明するため、公安局監視官の霜月と執行官の宜野座をメインにした潜入捜査と黒幕の真実を突き止めていくという流れ。

ていうことだけど、わざわざ潜在犯に処理させなくてもドローンやメカ的なもので処理させればいいんじゃね?と思うのだが、存在そのものが執行対象だから人間として取り扱われていないのだろうか、処分する手間が省けて経済的にも安価で済むだろうし、合理的に考えれば間違ってはいないのだが、ここが人間とシビュラというシステムの違いなのでしょう。人間に対する価値基準がそもそも異なるので集約的にしか物事を捉えられない倫理的価値観の相違があり、そこに齟齬が生じる。
人間を「物」で見るのか「者」で見るのかの違いだとすれば、優劣の付け方がそもそも打算的で損得勘定で行われているのでそこに私情の入り込む余地がないことになり、つまり機械的であり社会道徳的でもあるので、こういう輩は汎用性が効かず対処が困難となる。
近代合理主義を掲げる人間なら正しい判断と言えるが、作りが合議制によって成り立っているため政治的イデオロギーである無政府主義を掲げると、そこに管理者は存在しない謂わば選民思想を持つアナキズム集団がファシズム的な独裁政治行うことにも繋がり、本来人間が作り出した法を補完する目的で導入されたものが、反対に説得され懐柔されてしまうと不可逆的合意を行うことにもなりかねない。
そこで究極的にはシステムを作り出した張本人様が登場して、シビュラの正確さに人間の思考力の柔軟性を加えることでより高度なシステムが作り上げられていくわけだが、本編ではその欠陥部分が如実に表れていて、人間様がじゃあ今回は秘密保持の取引のため仕方がないから手を打っておきましょうかみたいな流れで終わってるけど、後にしっかりとその部分を解決していくのがこのシリーズ作品の惹きが強いところで、全編観ていると導入部分から問題点の提起、解決策への繋がりが事件性のあるストーリーを介して見事に描かれているのだ。

物語の黒幕が{netabare}シビュラのユニットの一部である国会議員の烏間{/netabare}と判明してダメダメな部分を露見するわけだが、霜月ちゃん取引と引き換えに渾身の一撃を喰らわせてやるのがオチになっていて、公安局最後の意地を見せた展開は今後の流れへ繋ぐエピローグとしては面白かった。
事件性を楽しむというより、シビュラシステムの不完全性を嘲笑するかの如く疑問点を投げかけ、人間とシステムの共存という方向性で次の展開を議論し成長性を感じるための作品だということが言えるのです。
霜月美佳を免罪体質者にしてシビュラのユニットの一部に組み込んでみてはどうか、合議制なのに我が強いため約250体いるマジョリティの1/3の発言力を占めそうだからやはり無理なのか、シビュラレンタルサービス始めましたみたいなノリでなんとか個体数を減らすため、お出かけシビュラちゃんこさえてみるなどネタは尽きないわけだが、そういった未開拓な一つ一つの試みがシステムの強化につながるだろうし、改善点が見つかるのかもしれない。

そういう意味では外交上の問題と人身問題を秤にかけて、外国との関係を優先させたシビュラの判断は正しくもあり間違いなのかもしれないが、成長するシステムだからこそ時には回り道をしても良いのではないか、ケーススタディが蓄積されて判例のような慣習的効力を生じさせるより完全体に近いものに変貌を遂げ、未成熟でありつつ成長株でもあり、短い時間枠の中に物語の本質が見え隠れしていて、考察を深めると伝えたい内容が十分に伝わってくるのであって、上映時間以上に濃い内容の作品と言えるのでした。

投稿 : 2022/06/06
閲覧 : 277
サンキュー:

4

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