「信長の忍び ~姉川・石山篇~(TVアニメ動画)」

総合得点
69.8
感想・評価
115
棚に入れた
380
ランキング
1652
★★★★☆ 3.6 (115)
物語
3.7
作画
3.5
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.8

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ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

戦国乱世でござる。

【概要】

アニメーション制作:トムス・エンタテインメント/V1Studio
2018年4月 - 9月に放映された全26話のTVアニメ。
原作は、『ヤングアニマル』にて連載中の重野なおき・作の漫画作品。
監督は、大地丙太郎。

【あらすじ】

1568年。上洛を果たした戦国大名・織田信長は、
大和国の大名“梟雄”松永久秀を傘下にし、
弑逆された十三代将軍・足利義輝の弟の足利義昭を十五代将軍に擁立。

翌、1569年には畿内での三好三人衆らとの合戦(本圀寺の変)
続いては、国司である北畠具教・具房親子が治める伊勢国への侵攻。

信長の天下布武の道のりの影には、北畠家の前当主“剣豪大名”北畠具教を決闘で制して、
降伏を決意させるなど、信長の忍である千鳥(ちどり)の活躍があった。

一方で、将軍の足利義昭は、実権を持たない傀儡であることで信長に対する不満をを募らせていた。

年が明け、年号は「永禄」から「元亀」へと変わる。
この元亀元年(1570年)から信長の苦難の道のりが始まるのである。

伊勢平定の次は、北陸の越前国・朝倉氏。
上洛して天皇家と将軍家に礼節を尽くす旨の使者に、
信長の権威を認めず、命令に従わない越前国大名・朝倉義景。

信長は越前国に侵攻する大義名分が出来たと、
織田・徳川の連合軍が朝倉領の金ヶ崎城と手筒山城を攻める。

だが、それが引き金となって信長に絶体絶命の危機が訪れた。
信長の妹である市を嫁がせて同盟関係にある浅井家は古くから朝倉家とも同盟関係にあり、

・浅井家は朝倉家に旧恩がある。
・「浅井家に無断で朝倉家を攻めぬ」との約定を信長が破った。

と、信長への怒りを見せる久政。
浅井家は現当主・長政と前当主・久政の二重権力構造になっていたため、
当主の浅井長政は家中をまとめることが出来ずに、朝倉家の救援に父・久政が出兵。

浅井軍に背後を襲われた織田軍は壊滅を避けるために撤退をせざるを得なくなり、
軍の最後尾で敵を防ぐ、「殿(しんがり)部隊」の大将に木下秀吉を任命。

追撃する朝倉軍2万 vs 防ぐ織田軍殿部隊3千 の合戦が始まった。

地獄の撤退戦。秀吉の参謀・竹中半兵衛の軍略。
明智光秀や徳川家康の奮戦。松永久秀による調略。

何度も死線を乗り越え秀吉の指揮で撤退を成し遂げて「金ヶ崎の退き口」は終わる。

千鳥は、朝倉軍の猛将・真柄直隆に手傷を追わせながらも、
忍刀を折られて大太刀で真っ二つに斬り殺される寸前まで追い込まれて、
光秀に救われて九死に一生を得た。

・杉谷善住坊による信長への狙撃。
・家の主(あるじ)の帰還を喜ぶ織田家臣の家族たち。
・刀匠の関孫六が千鳥に打ってくれた新しい忍刀「風切」
・夫の長政について行き浅井家の妻として、兄である信長への決別を示す市。
・裏切りを感じて闇落ち寸前を、妻の帰蝶によって引き戻される信長。

それぞれの思いがあるなか、

織田・徳川連合軍 対 浅井・朝倉連合軍

舞台は次なる合戦の地、「姉川」に移るのだった。

【感想】

3期目となる今回は、原作5巻最初の77話から6巻半ばの107話までをアニメ化。

コミカルな味付けをされた愉快な戦国武将たちによるギャグアニメの体をとりつつも、
史実の展開に沿った物語ですので、可愛い絵柄に反して戦国時代の残酷さがあります。

史実ベースと言っても、新しく発見された歴史資料による研究成果の更新で、
斎藤道三の下剋上が親子二代によるものになったり定説が時期によって変わるのが歴史。
そして、物語は著者による文献の取捨選択と解釈次第で大きく変わります。

たとえば、司馬遼太郎の『夏草の賦』と宮下英樹の『センゴク』で、
仙石秀久のイメージがガラリと変わるように、

この作品でも、ルイス・フロイスの著書「日本史」を採用して、
ダメ君主のイメージが従来強い斎藤龍興のイメージアップに努めたり、
どの説を採用するかで実在した人物のイメージが激変しますので、
やはり史実のみに拘泥するのではなく、
物語として著者が何を見てもらいたかったのか?を汲み取るのが大事でしょうか?

この作品では、病弱な天才軍師・竹中半兵衛など講談ベースのキャラ付けもあり、
出来事は史実であると同時に、講談の要素と折衷させた軍記でもあり、

更にそこに一流剣豪クラスの腕前を持つ主人公の千鳥の活躍をどうねじ込んで行くか?

千鳥は一騎当千の戦闘能力を持つが決して最強ではなく、遅れをとる相手は何人もいるし、
戦や斬り合いでも普通に死にかけていることも少なくない。

主人公無双に片足を突っ込みながらも、割とバランス取りが丁寧な部類の作品ではあると思います。

比べれば、前田慶次を持ち上げすぎて伊達政宗や真田信繁など著名な戦国武将たちですら、
慶次の噛ませ犬や驚き役に下げられた『花の慶次』は有名過ぎる戦国漫画ではありますが、
こともあろうか、慶次への嫉妬で殺意を燃やす引き立て役として徹底的に貶められた前田利家。
更には史実では利家の妻で2男9女11人の子を産んだ、まつが慶次に惚れているという設定まで追加。
原作小説である『一夢庵風流記』では不倫関係で一時期慶次と同棲していたという創作で、
利家の人格のみならず利家夫婦の関係にケチを付けてしまった。
主人公の都合で人物像を歪めてしまうのは創作と言えどもやりすぎに反感を持ってしまいます。

対して、この作品では利家は爽やかな好漢であり、まつとの夫婦の数々の逸話を元に、
見てるほうが恥ずかしくなるぐらいの相思相愛の純愛関係が見て取れるなど、
キャラのいじり方が微笑ましいものになっており、
ある程度の戦国知識がある層からみても納得できる作りであること。
創作で変えて良いもの、変えてはいけないものの区別がついている、
その堅実さが作品としての良さと言えるでしょうね。

姉川の戦いをとってみると、敗者となる浅井・朝倉軍の視点で、
斜陽の道を進むことになる彼らの奮闘や悲哀を描くことで、
当時の人々が何を考えて戦い抜いたか?
決して後世の現代人の視点で論ずること無く、当時の人々は皆が必死であったこと。
戦国の世の厳しさを、コミカルな絵柄でギャグを交えながらもきちんと描いていたとは思います。
創作ですので、漫画に描かれた本人は何を考えていたか?は本当はわかりませんけどね。

浅井・朝倉の次に参戦した石山本願寺の教主・本願寺顕如。
そして、その妻で15歳で長男を出産した如春尼。
いかにも漫画的なキャラ付けでギャグ混じりに話が進んでいきますが、
恐るべき組織力を持った宗教勢力によって信長が如何に追い詰められていったか?
がわかりやすく解説されており、歴史の流れを識るにおいてはお手本的なアニメでしょうね。

初期からのレギュラーキャラである森可成の戦死。そして、歴史の転機といえる信長の決断。
いよいよ話が比叡山の焼き討ちに続いていくところで、~姉川・石山篇~は終了。

この先、伊勢長島の戦いがあったり、亡国の大名の10歳ぐらいの子息の処刑があったりで、
女子供であろうと史実通りに死んでいくという血で血を洗うような展開で、
切れが悪くともギャグを清涼剤にして中和していかないとキツイですね。

原作のストックは7~8期が可能なまで溜まっていますが、4期はまだなのですね。
このへんが、どうなっているか?続きが見たいので気になるところではありました。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2020/04/12
閲覧 : 265
サンキュー:

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