「涼宮ハルヒの憂鬱 第2期(TVアニメ動画)」

総合得点
86.7
感想・評価
3782
棚に入れた
19119
ランキング
182
★★★★☆ 3.9 (3782)
物語
3.6
作画
4.0
声優
4.1
音楽
3.9
キャラ
4.1

U-NEXTとは?(31日間無料トライアル)

ネタバレ

蒼い星 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5
物語 : 2.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

感想。

【概要】

アニメーション制作:京都アニメーション
2009年4月 - 10月に放映された全28話のTVアニメ。
原作は、谷川流によるライトノベル。
総監督は、石原立也。
監督は、武本康弘。

【あらすじ】

県立北高校に入学した男子高校生・キョン(本名不明)は、
子供のときは漫画やアニメやTV特撮に出てくるような非日常的な超常の存在に憧れていたが、
中学を卒業するころには、現実にはそんなものは存在しないという認識に至っていた。
ところが、同じクラスで一つ後ろの席になった、
退屈な日常に飽き飽きしていて、やたら我が強くておかしな言動をする美少女。
その彼女・涼宮ハルヒとの出会いから、キョンの日常が一変した。

入りたい部活が無いとぼやくハルヒに、じゃあ自分で作れば良いじゃないかと答えるキョン。
その結果が、涼宮ハルヒを団長とした、
「宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶこと」
を目的とした学校非公式の団体であるSOS団の設立。

北高にごく普通の一般な生徒として紛れ込んでいた宇宙人、未来人、超能力者との出会い。
彼女らの正体は後々キョンが知っていくことになるのであるが、
ハルヒ、キョン、宇宙人、未来人、超能力者の5名でSOS団が活動していく中で、
ハルヒだけは事実を何も知らない。そして物語は、ハルヒを中心に超常的なありえない事件が、
当のハルヒ自身が無自覚なままに幾度も発生しては、キョンたちは巻き込まれて行くのだった。

【感想】

京都アニメーションといえば、
初元請けの『フルメタル・パニック? ふもっふ』(2003年)で注目を浴び、
『AIR』(2005年)の作画の美しさを皆が絶賛していたあの頃。

そして、『涼宮ハルヒの憂鬱』が“最高のアニメ”として大ヒットして、
当事は持て囃されていた記憶が。

少なくとも2006年当事のアニメファンには特別な意味がハルヒにはあったようです。

そして、自分は?というと、
1期をリアルタイムで完走して、2期はエンドレスエイト途中で脱落。
数年後に劇場版である『消失』を見て、そっちは素晴らしかったような覚えが。

2020年の今の視点で観てみると、どんな感じだろう?
と全28話を一週間かけて観てみました。

パッと見では行動が女ジャイアン気質であるハルヒと、
彼女に振り回されるSOS団員4名を中心としたSFチックな現代の物語ではあるのですが、
視聴者としては涼宮ハルヒがどんな人物像であるのか?
未成年特有の麻疹のような情動に正直に生きているハルヒを理解して、
彼女の理不尽な行動に付き合わなければいけない。なんとも疲労感のあるアニメですね。

当事のTVアニメ基準では最高クオリティの作画。原作を読んでない視聴者には予測不可能な展開。
そして、ハルヒのハチャメチャを笑って受容できる視聴スタンスであれば、
名作であったことでしょうね。

観た感想としては、率直に言って面白い話もあればつまらない話もありますね。
演出方針の更新で芝居の間を大事にする『けいおん!』以降の作風が浸透している、
『響け!ユーフォニアム』などに見られる京都アニメーションの演出スタイルを知っていると、
2006年版部分の作画芝居がイマイチで、説明台詞とモノローグが多すぎに見えます。
(原作がそうだからとしか言いようがないですが)

映像も2006年版では、「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅵ」 など石原監督自らの演出とコンテで、
総作監の池田さん自らが作画監督で作画が良い回もあれば、

「ライブアライブ」のように、天才演出家として称賛を浴びたいがために、
実写映画『リンダリンダリンダ』をコンテ代わりに丸々盗用したりする奴がいる。
(オマージュでもパロディでもなく日本の公立高校に不要な背景のハングル文字が盗用の証)
その一方でリソース管理が全く頭になく、雑に描かれたモブを大量に動かそうとして、
むやみにアニメーターに負担をかけて原画マンを普段の2~3倍の21名に増員したうえで、
見栄えのしないカットの量産をしたり廊下が無意味に歪んでいたりで、
後の自身の監督作品に共通する作画崩壊の兆候がハルヒ時代に既に確認されたりする。

「サムデイ イン ザ レイン」 では定点カメラを気取って、
小さく描かれたキャラをうねうね動かそうとして、しょぼくれたカットになったり、
また背景が歪んだパースであったりと、従来の京アニ水準から外れているダメな作画も有る。

コンテの良し悪しがクオリティに影響する例としてスタッフ名を参照しながら視聴すると、
各人の個性が見えて参考になるなと思いました。
また、後年の各アニメ会社の芝居と演出の進化を見ると、
ハルヒはあくまでも2006年当事の深夜アニメ基準では神扱いであって、
京アニを含めた優良作画なアニメ会社の技術のアップデートに伴い、
当事の神作画が相対的に普通寄りに下がっていく傾向があるとしか言いようがないですね。

比べると2009年版の追加エピソードでは、けいおん顔と言われながらも、
光を意識した色彩設計であり、雑なカットが無いなど映像クオリティの飛躍的向上がありました。
ただ、新作14回分のうち8回が殆ど同じ展開の繰り返しで批判を浴びた悪名高い「エンドレスエイト」
であり、作画の向上が評判に寄与していないのが残念でした。
いろいろ物議を醸した「エンドレスエイト」ではありますが、
自分は視聴中に計35回程度、睡魔で意識を失う事態になってしまって、
あまり褒める気にはなりませんでしたね。

ループ話を8回も放映するのは愚の骨頂ではありますが、
原作の時系列を遵守した上で『消失』以前のみで28回の放送スケジュールをこなすには、
『涼宮ハルヒの消失』を映画化せずにTV版エピソードに組み込むか、
原作にはないオリジナルエピソードを大量に仕込むしかなく、
『消失』以後のエピソードを先に使う提案は無かったのか?アニメオリジナルとして、
ハルヒの物語を作るには原作サイドとの打ち合わせが必要なのに協力を得られなかったのか?
それで誰の判断で穴埋めもままならない、無理なシリーズ構成になってしまったのか?
原作モノである以上は、少なくとも大手出版社相手にアニメ会社の独断での好き勝手は不可能であり、
『消失』を劇場版に回させたことでのTV版シリーズへの影響に対するプロデューサーの配慮不足。

連携が不十分ではなかったか?アニメ会社はスポンサーや原作サイドに対して権限が強くなく、
悪く言えばテキトーさ加減でアニメ会社が無理難題を押し付けられてしまったために、
事故のような不可解な構成になってしまった。

だから、後年に京アニがKAエスマ文庫を立ち上げて原作も自社作品を中心にして、
変な介入が目立つプロデューサー(具体的に言うとY氏かもしれないしI氏かもしれない)
がいる一部の強引な出版社サイドの影響を、
なるべく減らそうとしたとは個人的には考えていますが、真相はよくわかりませんね。

「涼宮ハルヒの溜息」にもなるとキョンに同調して、
ハルヒの行動に本気でムカつくシーンが何度もあったのですが、
たかだかアニメの中でのハルヒのみくるへの行動に腹が立つというのは、
作画芝居が2006年より上昇して、ふざけるな!という感情を呼び起こされている証拠でしょうかね。
京都アニメーションは、日本のアニメ業界でも日常の感情表現を磨いている会社として有名。
それは『けいおん!』のような温かい話とは逆の演出も出来るということであり、
表現力の進化がもたらした結果なのは皮肉なのか?演出家の意図通りなのか?
作品世界への共感性。「エンドレスエイト」の敢えて同じ話を間違い探しみたいな差分をつけての、
繰り返しはキョンの精神的疲労を視聴者に共有して貰う演出意図があるなら狙い通りでしょうが、
娯楽としてのアニメ作品では好ましくなかったですね。

当事の大人気作品でありファンが大勢いるのを承知の上で言いますが、
変哲もない日常シーンがイマイチで感覚的に面白くない話が多いと感じたのは事実です。

それは、後年の京アニの作品が登場人物の横のつながりを意識した細やかさを重視なのと比較すると、
ハルヒのアニメとはあくまでもキョンの主観の物語であり、登場人物の本心や意図が伝わりにくい。
それは多分に意図的な仕掛けであるだろうし、作品スタイルの違いではありますが。

それが原作エピソードでも評判高く、カメラワークや演出が優れている『涼宮ハルヒの消失』
という映画になると、感情的にもしっくりくる場面が増えてくるのが不思議ですね。
それは見せ方の違いでしょうか?
ともあれ、TV版と劇場版の予算とリソースの差を考慮しても、
こちらはまだ“発展途上”の四文字が脳裏に付き纏ったり、
理屈ではなく感情で、『これのどこが面白いの?』という場面が頻繁にあったりで、
絶賛するには遠いアニメ作品でした。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2020/04/29
閲覧 : 318
サンキュー:

54

涼宮ハルヒの憂鬱 第2期のレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
涼宮ハルヒの憂鬱 第2期のレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

蒼い星が他の作品に書いているレビューも読んでみよう

ページの先頭へ