2015年度のミュージカルアニメ映画ランキング 3

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の2015年度のミュージカル成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月09日の時点で一番の2015年度のミュージカルアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

73.6 1 2015年度のミュージカルアニメランキング1位
ラブライブ!The School Idol Movie(アニメ映画)

2015年6月13日
★★★★★ 4.1 (692)
3545人が棚に入れました
スクールアイドルたちがパフォーマンスを競う大会「ラブライブ!」。
前回優勝者のμ'sは、3年生の卒業をもって活動をおしまいにすると決めていたが、
卒業式の直後、μ'sのもとに飛び込んで来たひとつの知らせを受けて、新たなライブをすることに!
見たことのない世界とふれあい、また少しずつまた成長していく9人。
スクールアイドルとして、最後に何ができるのか——。
限られた時間のなかで、μ'sが見つけた最高に楽しいライブとは——!?

声優・キャラクター
新田恵海、南條愛乃、内田彩、三森すずこ、飯田里穂、Pile、楠田亜衣奈、久保ユリカ、徳井青空
ネタバレ

おぬごん さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

ラブライバーへのメッセージ

2013年冬にTVアニメ1期、2014年春にアニメ2期が放送された、ラブライブの劇場版
2期のラストで劇場アニメ化が告知されましたので、およそ1年越しでの公開ですね
普段はTVアニメしかレビューしていないんですが、せっかく公開日に観てきたのでレビューしちゃおうかと思います

(※以下、TVアニメ1期と2期のネタバレを含みます)

さて、映画公開前に誰もが気になっていたのは「どんな映画になるのか」です
何せTVアニメのエンドロールまでは、主人公たちμ'sがやるべき凡そ全てのことが描かれ、3年生の卒業とμ'sの終わりを以て綺麗に閉められましたからね
その後の取って付けたような花陽への連絡からどんなストーリーになるのか、というのが、専らの話題でした
…まあ結論から言うと、先行PVの時点でニューヨークの風景とタイムズスクウェア、セントラルパークでのライブ模様が描かれ、概ねそこから予想できる展開通りだったんですけどねw
まあTVアニメであそこまで綺麗に描ききってしまっては、卒業~新学期までの短い期間くらいしか描きようがないですよね
この辺は、舞台が海外なのも含め、映画「けいおん!」を思わせました

余談ですが、なぜニューヨークが舞台なのかというと、ニューヨークがエンターテインメントのメッカであることや、劇中で語られる理由もあるとは思いますが、
おそらく現実世界でのμ'sの2ndライブ「New Year LoveLive!」が「NYライブ」と略され、ニューヨークでライブをしたのかと勘違いされることがよくあるのを、劇中で実現させたんじゃないか…と勝手に思ってますw


内容としては、視聴者がTVアニメを視聴済みのラブライブファン(=ラブライバー)であることを前提としたものでした
いきなり歌い出してミュージカルを始めたり、キャラネタのギャグが多めに仕込まれていたりと「アニメラブライブはこういうものだ」と分かっている人に向けた描写が多く、およそ初見の人には優しくないと思います
その分、ファンにとっては見所満載でしたけどね!凛ちゃん可愛かった!

TVアニメでも特徴的だった、メタファーをちりばめた演出も健在でした
一例を挙げると、冒頭の穂乃果のジャンプのシーンと、後半に描かれる同じく穂乃果のジャンプのシーン、この2つのシーンの背景の違いなどですかね
またそれに関連し、「飛ぶ」という言葉や「鳥」「羽」などのメタファーにも注目してみると面白いと思います

ラブライブの見所であるライブシーンは3回で、ミュージカル風のシーンが同じく3回
曲はライブシーン1曲目、PVでも流れている「Angelic Angel」が最高に良い曲ですね!
youtubeの公式チャンネルでライブシーンが丸々上げられてますので、是非観てください!
私も昨日から10回くらい観てます
あとは最後の最後に流れる曲「僕たちはひとつの光」にも、嬉しく感動的な仕掛けが為されていて聞き入ってしまいました
また、ミュージカルシーンは全編手描き作画で見応えありです!

…ただ全体的にシーンとシーンがぶつ切りで、特にライブシーンが浮いている感じもあり、まとまりが悪かった印象もありました

※以下、劇場版のテーマについてのネタバレ含む長い考察
{netabare}
さて、この劇場版では、2期の終盤に描かれたテーマが、再度描かれることになります
μ'sは2期11話「わたしたちが決めたこと」で描かれたように、今の9人以外のμ'sは考えられないと、3年生の卒業を以てμ'sの活動を終了することを決めました
しかし、TVアニメ作中では、このことをメンバー以外には知らせてないんです
11話の直前の2期10話で、μ'sがファンの人たちと共に作られる「みんなで叶える物語」であることを認識したにも関わらず、ですからね
今回描かれるまで気付きませんでしたが、考えてみれば明らかに不自然です

で、この劇場版では、TVアニメで描かれたそういったテーマをさらに一歩先に進め、
人気が絶頂に達し、大きな影響力を持つようになったμ'sを、それでも「わたしたち」の決断で、終わらさせても良いのか、それは「みんなの物語」を裏切ることにならないか、ということが描かれます
これは多くの人が気付いたとは思いますが、明らかに現実のラブライブ、μ'sに重ね合わせていますよね

アニメスタッフとしては、もう出せる物を全部出してアニメを描き切りました
現実の声優ユニットの方のμ'sも、5thライブが終わる頃には、穂乃果役のえみつんが喉を痛め、30歳を超えた絵里役のナンジョルノは膝を痛め、特にナンジョルノはファンミーティングツアーでもライブに参加できない状態となっています
しかし、ファンは増え、ベストアルバムがオリコン1位になるなど人気は加速する一方
現場は止めたいけど、止められない状態になってしまっているんです

さて、劇中ではこの問題に対し「μ'sはあくまでスクールアイドルだから、この先も続けていくことはできない」という答えを出し、最後にスクールアイドルの素晴らしさを世界に伝えることで、μ'sの幕引きとしました

そもそもアイドルというものには、制限時間があります
若さを武器にアイドルとして活動した後、歌手や役者といった次の道へと歩み出すのが世のアイドルの常です
特に年を取っても「格好良さ」を演出できる男性アイドルと違い、「可愛さ」が求められる女性アイドルは尚更です
アイドル自体が、限られた時間の中での「今一瞬の輝き」を与える仕事なんです

TVアニメ1期の頃の劇中歌の歌詞は、どれも「未来に向け頑張る」曲でした
1期OPの「僕らは今のなかで」も「今のなかで輝きを待ってた」わけですから、過去形になっているとはいえ視線は未来にあります
その頑張りが1期終盤~2期にかけて報われていきます
ラストライブで歌われた「僕らは今のなかで」へのアンサーソング「Kira-Kira Sensation」では
「奇跡それは今さここなんだ」「だから本当に今を楽しんで」と、視線は「今この一瞬」に向けられています

部活動テイストにアイドル活動を頑張っていた彼女たちは、いつしかアイドルになっていたんです

この映画の劇中歌でも、「Angelic Angel」では「もしもは欲しくないのさもっとが好き」「明日じゃない大事なときは今なんだ」と、もしもの明日ではなく、今の大事さが歌われています
「僕たちはひとつの光」では「時を巻き戻してみるかい? No,no,no 今が最高」と、過去の楽しかった時間に戻ることさえも否定しています

学生、アイドルという制限時間の中で放つ「今一瞬」こそが大事
これこそが今回の映画での、ファンへの一番のメッセージだと思います

「限られた時間の中で輝けるスクールアイドルが好き」という絵里の言葉は、敢えて今まで語られなかった、スクールアイドルという「二重の制限時間」を含んだ設定の妙に言及する、ストレートすぎるほどのメッセージでした
「ラブライバーの皆さん、アニメのラブライブはここで終わりです。現実のラブライブもいつか終わります。でも、だからこそアイドルは良いんですよ」

…それでも納得がいかないという方に救いがあるとすれば、
ラブライブはアニメが終わっても、コンテンツが続き得ることですね
上で挙げた「けいおん!」は、あくまで日常がメインの作風でしたから、原作、アニメの終了と共に、きっぱりさっぱりコンテンツが幕を閉じてしまいました
その潔さこそが、コンテンツとしての「けいおん!」の素晴らしさだと思いますし、アニメのラブライブについても(この映画で完結するのであれば)そうだと思います
ただ、ラブライブ自体は元々「曲」がメインのコンテンツですから、アニメが終わっても、今後もアニメ化以前のようにシングルを出したりして続けていくことは可能です
まあ先ほど述べたように今は人気の絶頂ですから、簡単には終わらないんじゃないかなあ…とw
今回の映画で、ドームライブの可能性も示唆されましたしね!

※ 2015/12/16追記
2016年3月31日、4月1日のファイナルライブを以て、μ'sの活動終了となることが正式に発表されましたね
NHKに出て、Mステに出て、紅白に出て………やれることをやり切ってからのファイナルライブ
年度の替わる、スクールアイドルがスクールアイドルでなくなる日に行なうファイナルライブ
素晴らしい引き際だと思います
残された時間を握りしめて、本当に今を楽しんで、μ'sを最後まで応援したいですね
ファイナルライブ、当選してくれ!!

※ 2016/4/2追記
ラブライブ!μ's Final LoveLive!〜μ'sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪〜
3/31現地完全見切れ席(と言いつつ超良席!)、4/1ライブビューイング(途中から)で参加してきました!
ありがとう、μ’s!! ありがとう、ラブライブ!
今が最高!
{/netabare}


この劇場版自体は、ラブライバーへの最高の贈り物だったと言えるでしょう
ただそれは、人によっては終わりを感じさせる、やや不安と寂しさを含んだ物だったかもしれません
でも、劇中の「Angelic Angel」でも歌われています
「もしもは欲しくないのさ もっとが好き」「大事な時は明日じゃない 今なんだ」
もしもラブライブが終わってしまったら…なんて未来を考える前に、今そこにあるラブライブをもっと楽しむことが、正しいラブライブの(そしてアイドルの)楽しみ方なんじゃないでしょうか

投稿 : 2024/05/04
♥ : 30
ネタバレ

ぽ~か~ふぇいす さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

スクールアイドルμ’sの物語がついに堂々の完結!

公開初日の朝一で観てきました

2期のラストでは卒業の余韻を映画の引きで見事にぶち壊されて
映画にはあまり期待していなかったというか
期待以上に強い不安を感じていましたが
しっかりとμ’sの物語を完結させてくれたことにホッとしています

観てない方に向けて当たり障りなく書いておくと

事前に流れてたニューヨークでのPV撮影の話を
前半に早々と回収してしまい
後半はμ’sの未来とスクールアイドルの未来をテーマに
全国のスクールアイドルを呼んで
μ’s最後のイベントに挑むお話

μ’s以外のスクールアイドルたちの代表として
A-RISEが本編以上に優遇されていたので
ファンの方は必見ですね

後何を血迷ったのか映画ゲストキャラとして
高山みなみ呼んで歌まで歌わせるっていうサプライズ
TWO-MIX世代としては不意打ち過ぎて感涙モノでした

海未&にこの顔芸も劇場クオリティでキレッキレだし
ギャグパートはこれまでの集大成というか
良い部分がしっかり出せていたと思います

前半ライブパートはNYPVは事前に流れていた映画トレイラーを
そのまま尺長くしたような感じで
まぁ悪くはないけどよくもない感じです
作画と3DCGのクオリティが上がるほどに
継ぎ目に違和感が出ちゃうのはやっぱりどうしようもないのかな?

どちらかというと各学年ごとに一回ずつ
ミュージカルパートがあって
3DCG一切使わずに作画だけでやっていたのですが
こっちの方は細やかな表情描写とダイナミックな躍動感が
見事に両立されておりこれだけでも見に行く価値があると思いました

後半ライブパートは全国のスクールアイドルとのセッションという事で
モブの数が半端ないからこれは3Dで行くしかないよねーという感じで
スクールアイドルの世界の広がりが見事に表現されていました

そしてEDの歌詞!あれは反則です
以前にこりんぱなで同じことやってましたが
今回もきれいにまとまってました

また花田センセーがやらかしてくれるんじゃないか?とか
やめるやめる詐欺でまだまだ搾り取りに来るだろうとか
割とネガティブな予想が多かったのに対して
冒険せずに無難にまとめあげたシナリオって感じです
その上でファンサービスに特化した作りになっているので
ラブライブプロジェクトのイベントの一つとしてではなく
純粋にアニメ映画として観に行ったらあんまり高評価にはできないかもですね

以下観終わった人向け

{netabare}
爆発的な人気上昇
ラブライブ大会運営からの要請
A-RISEのプロ転向
いろいろあって一度は揺らいだ決心だけど
やっぱりμ’sの活動はこれでおしまい
それはμ’sがスクールアイドルであることに意義があるから
限られた期限付きの活動だからこそ放てる一瞬の煌きが
スクールアイドルたちを何倍も魅力的にしているんです
μ’sの活動はこれで終わりですが
ラブライブは、スクールアイドルの物語はまだ終わりません
これからもラブライブとスクールアイドルたちを応援して下さい!

っていうのがこの映画のメッセージだと
言ってしまうとあまりにも身も蓋もないですが
要するにそういう事ですよね

作り手側からしても予想外の大ヒットオリジナルアニメ
このまま引き伸ばしてもう一稼ぎしようという思惑が
2期のラストのアレにつながっているのだと思います

しかしμ’sの中の人たちも軒並みアラサーで
体力的にも活動継続の限界にきているのはファンの目から見ても明らか
このままドル箱をたたんでしまうのは勿体ないし
世代交代させつつラブライブというコンテンツを
長期的にブランド化していくのが制作陣の思惑でしょう

しかしラブライブ人気は事実上のμ’s人気であり
かつてアイマスが新作を出すごとに激震していたように
世代交代が難航するのは目に見えています

既にμ’sから次のバトンを受け取るスクールアイドルたちが
G's誌上企画ラブライブサンシャインとして開始していますが
よりスムーズに移行するための架け橋として
今回の映画が作られたわけです

前半はファンサービスに終始しμ’の良さを再確認させる
そして後半ではそのμ’sメンバーたち自身の口から
ラブライブの素晴らしさスクールアイドルの素晴らしさを伝えるとともに
μ’s以外のスクールアイドルの代表ともいえるA-RISEや
世代交代の象徴ともいえる新入生雪歩と亜里沙の組んだユニットをはじめとして
全国の沢山のスクールアイドルたちを登場させることで
スクールアイドル=μ’Sという図式をを崩していく

ストーリーが1期2期に比べて無難で落ち着いているのも
世代交代をいかに軟着陸させるかがテーマと考えればうなづけます
ジェットコースターのような起伏で攻める1期2期のようなストーリーは
軟着陸というゴールからかけ離れすぎていますね

ラブライブサンシャインに関してはラブライバーの中でも
賛否両論色々な意見があるようです
私は最初の発表のときはどちらかというと否定的でした
なぜなら新ユニットが結成されれば
μ’sの活動は縮小されるか無くなだろうと思ったためです

しかし5th直後のえみつん休業や
今回のなんちゃんのライブパート不参加
たとえ世代交代をしなくてもμ’sが活動できる期間はそう長くない
というのが薄々わかってきたのもあり
μ’sとともにラブライブが終わるのと
μ’sが引退してもラブライブ自体は続いていくのと
一体どちらが良いのか考えるととても悩ましいところ
だから今はサンシャインに関しては中立というか
出てきたものの出来栄え次第かなぁと思っています

今回の映画はμ’sファンをラブライブファンに塗りかえるための
ある種のプロパガンダ映像としてなかなかよくできていたと思います

でも後輩たちに道を示しつつ表舞台から消えていくことを
納得づくのようにキャラクターとして発言しなきゃいけないμ’sメンバー(中の人の方)は
いったい何を思いながら演じていたんだろう?

2016年冬としか発表されていないNEXTLIVE
これが卒業ライブになる可能性も覚悟しておいたほうが良さそうですね
{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 25
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

『ラブライブ!』……未来に導かれた物語

以前μ's(ミューズ)6thシングルOVAのレビューに記した考察の延長みたいな文書になりますが、
ファイナルライブを控え、さらに本作と現実とのリンク具合が高まったのでここで改めて。

結構ストーリーが腑に落ちない鑑賞者も多い映画だと思います。
本作はある出来事が過去からの積み重ねのみで実現するのではなく、
未来からの導きによっても引き起こされる。
という独特の時間感覚によって一連の流れを説明します。

この感覚の伝え方が、表現として、もう一つ洗練されていないこと。

加えて世間一般が時間は過去から未来へと流れる。
今は全て過去からの積み重ね、という常識に囚われている。
もっと言えば、多くの人が未来なんか信じない(苦笑)
こんな世の中では、なかなか心に響かない話なのかもしれませんw

ただ『ラブライブ!』というコンテンツの歩んだ過程も鑑みると、
未来からの導きを訴えたくもなるスタッフの気持ちが私には凄く分かります。

『ラブライブ!』はアニメもヒットし、映画化し、
現実世界のμ'sは紅白出場を果たし、最後は東京ドームでコンサートを行う。

例えばこんな事実を6年前、『ラブライブ!』のファーストPVを観て、
こんなもん絶対、流行るわけがないwと嗤っている私に言っても私は絶対信じないでしょう。
というよりμ's(当時はこの名前すらなかったw)のメンバーや、
スタッフさんに言っても誰一人として信じなかったと思います。

まさに未来のことなんて今は分からなくてもいいから、
素直に生きればいい、とでも声をかけたくなる感じ。

その後、ドゥームだの、紅白だの夢にも思っていないであろう6年前の後のμ'sやスタッフたちは、
努力なり才能なりを積み重ねて今に至るわけですが、
正直、本人達が自分たちの過去の積み重ねだけで、ドームコンサート等の快挙にたどり着いた。
と考えているとは思えません。

きっと自分たちを未来から引っ張り上げる運命的なエネルギーといった、
常識を越える不思議な何かを感じずにはいられないのだと思います。

こうした想いを共有した時、過去、現在、未来は自由につながり、
足枷となっていた未来への不安や疑心暗鬼が外れることにより、
「いつだって飛べる」という感覚が理解できるのだと私は思います。

この想いは例えば『ラブライブ!』初期の苦況など、
輝かしい今を想像すらできない、景色を知れば知る程、身に染みるものだと思います。
そして、本作が伏線として仕込んだネタが、
後に現実世界で具現化することにより、未来の力についての実感はさらに強まっていくのです。

やっぱり……このアニメ、もの凄くファン向けな映画ですね(汗)
けど、本作が今ひとつ理解しがたいと思った人にも、
もう一度、未来の力を信じてみて欲しい。
個人的にはなかなか深イイ話だと思います♪


前回2015年6月レビュー
ラブライバーならば、いま観ておくべきスクールアイドルムービー

長くなるので折りたたみw

{netabare}
2期よりもさらに現実の『ラブライブ!』、
三次元のμ's(ミューズ)の活動内容とリンクした
或いは今後関連しそうな内容の作品だったと思います。

それだけに、本作が『ラブライブ!』の展開にどう関わっていて、
今後どう影響していくのか、色々と考えながら観ることができ、
そうしたヤキモキした気持ちも一緒に思い出にできる…。
本作がこうした〝鮮度"を保つ期間は案外短いと思います。
(せいぜい{netabare} 来冬予定の、本作の内容が反映されるであろう6thライブ{/netabare}辺りまで?)

ファンの方々は『ラブライブ!』とμ'sと同じ時代に生きている、
幸せを噛みしめて観ることができる、
いまのうちに観ておいた方が賢明かと思います♪

逆に新規の方が本作から『ラブライブ!』の世界に入り込むのは流石に厳しいと思いますw
TVアニメで予習してから観るのが賢明かと思います♪

{netabare}現実のμ'sを今後どう終わらせるべきか、それとも終わらせないべきか?
二期でμ'sを続けるか否かが描かれた辺りから、
ファンの間で語られることの多い話題でした。

区切りは必要なのだろうけど、これだけ人気が出てしまったら引っ込められないだろう。
大体は堂々巡りで平行線をたどることが多かったと思います。

本作はまさに一躍スターになってしまったμ'sが、
卒業と同時に終わらせるとの決意を揺るがされ、
それに対して改めて答えを出していくストーリーでした。

そして、概ね現実のμ'sが今後、活動に一区切りを付けることに対する、
心の準備をファンにさせるための映画だったようにも私は感じました。

次の6thライブを例えばTOKYO DOME(※DOOM(ドゥーム)ではないw)辺りでやって、
現在電撃G`sマガジンで進行中の『ラブライブ!サンシャイン!!』辺りにバトンタッチして、
解散するのか、大きなところでのライブはこれでお終いにして、
ドラマCD付シングルや、ゲームの追加イベントのアフレコなど
規模を縮小してやっていくのか…。

そんなことをしみじみと考えさせられました。
というより、本作で限られた時間の中で輝くのがスクールアイドルと断言して、
例えば本作のEDテーマを6thライブの終盤に歌っておいて、
もうあと五、六年、現実のμ'sが同じ規模の活動を続けたら、
相当に締りがないwと私は思います。

いずれにせよ、この辺りは、今後、現実のμ'sの活動を見てみないとなんとも言えません。
よって星★の数は『ラブライブ!』のプロジェクト展開に左右される暫定値になると思います。{/netabare}


蛇足…劇場版開演前のμ's版マナー注意喚起映像を観て思った、
どうでもいいが地味に衝撃的だったことw

{netabare}穂乃果ちゃんって…未だにミナリンスキーの正体に気づいとらんかったんかーーーいww(笑) {/netabare}{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 40

78.3 2 2015年度のミュージカルアニメランキング2位
心が叫びたがってるんだ。(アニメ映画)

2015年9月19日
★★★★☆ 4.0 (1198)
6265人が棚に入れました
監督 長井龍雪
脚本 岡田麿里
キャラクターデザイン 田中将賀
制作 A-1 Pictures
青春群像劇 第2弾 劇場版完全新作オリジナルアニメーション 

幼い頃、何気なく発した言葉によって、家族がバラバラになってしまった少女・成瀬順。
そして突然現れた“玉子の妖精”に、二度と人を傷つけないようお喋りを封印され、言葉を発するとお腹が痛くなるという呪いをかけられる。それ以来トラウマを抱え、心も閉ざし、唯一のコミュニケーション手段は、携帯メールのみとなってしまった。高校2年生になった順はある日、担任から「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命される。一緒に任命されたのは、全く接点のない3人のクラスメイト。本音を言わない、やる気のない少年・坂上拓実、甲子園を期待されながらヒジの故障で挫折した元エース・田崎大樹、恋に悩むチアリーダー部の優等生・仁藤菜月。彼らもそれぞれ心に傷を持っていた。

声優・キャラクター
水瀬いのり、内山昂輝、雨宮天、細谷佳正、藤原啓治、吉田羊
ネタバレ

素塔 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

始まりの言葉

言葉は誰かを傷つける。

このフレーズによって
すでに私たちは作品の世界に引き込まれている。

純粋で、ストレートであるがゆえに
傷つきやすい思春期の心の
その傷や痛みさえも美しく見せるものが青春だとすれば
青春という特権的な時間の中にのみ現れる
尖鋭化された、純粋な言葉へと
すでに定位はなされている。
言語一般に解消するのは誤りであると思う。

この作品で言葉は、テーマというよりはむしろ
もっと具体的な、マクロ的な機能を担って現れているようだ。
特に注目したいのは、ストーリーの展開の軸となる次の二つ、
「傷つける言葉」と「本当の言葉」。
これらを物語の展開に即して辿っていきたい。
そこには当然、この作品の主題も絡んでくるはずである。



{netabare}
「傷つける言葉」が現れるのは、物語の発端。
それが、ヒロインの成瀬順と田崎大樹とを結ぶ接点となる。

この二人は、反転させた相似図形のように
順は、メンタルな傷によるフィジカルな痛みを
田崎は、フィジカルな傷によるメンタルな痛みを抱えて
自分の殻に閉じこもって周囲から孤立している。

田崎は無神経かつ暴力的な言葉で順を傷つける。
その彼が、後輩の言葉で逆に傷つけられた時
「言葉は人を傷つける」ことを順が言語化する。
田崎にとってそれは、世界が一変するほどの衝撃だった。

田崎の「謝罪」から物語は動き出す。
彼の変化は、「傷つける言葉」を経験して
他者というものの存在を初めて意識したことによる。
はじめは拓実の苗字さえ知らなかった彼が
クラスの一人一人の個性に共感を示せるほど
今では周囲との関係の中に融和しているのである。

言葉を前景として展開されていく
この作品の中心主題とは、「関係の危機と回復」
そう捉えてよいのではないだろうか。
関係の危機に際して二人がとった対照的な態度が
このあとの展開の鍵となっているように思う。

順の場合、原因となった言葉を封印することで
不幸を回避しようとして、結果的に関係を遠ざける。
このネガティブな論法を、田崎はポジティブな行動で打ち破る。
彼は、言葉による関係の回復を証明してみせた。
それが彼の「謝罪」の意味である。

最初に田崎が殻を破り、関係の世界に踏み出した。
だから、本番直前に失踪という形でクラスの仲間を裏切り
順がふたたび関係の危機に陥った時、彼女のために
再起へのチャンスを懇願し、的確に方向性を示して
クラスの空気を一瞬で変えることができた。
田崎は先に進み、順が自分に追いつくのを待っている。



「本当の言葉」が現れるのは、物語の最終盤
順と坂上拓実との間に交わされる対話の中である。

拓実が失踪した順を探し当てた場所は
「すべての事のはじまり」の場所である
今は廃墟となった、山の上のお城(ラブホテル)だった。
不幸が繰り返された結果、原点に回帰して
すべての根源を断ち切りたいという無意識の願望が
おそらく順をここに誘ったのだろう。

二人の間に交わされる対話は、物語の最重要場面だが
短い時間の中に内面の動きが極度に凝縮されているため
観る側の解釈による補足がどうしても必要になる。
例えば、関係という補助線を引きつつ
二人の言葉を糸口に、経過を注視していくと
順と拓実との間で「本当の言葉」が交わされ、連鎖的に
二人の心に劇的な変化が生じてゆく過程が見えてくる。


まず、順から拓実へ。

無残な廃墟と化したホテルの部屋は
順の心の内部を象徴するものだろう。
童話風なステンドグラスの窓は、はじめは薄暗く
対話が進行するにつれて、徐々に明るい光が差し込んでくる。
宗教的な空間を想起させるこの場所で
彼女の魂の再生が行われることを暗示している。

絶望に駆られ、すべてを呪詛する順に
拓実は、「本当の言葉」を聞かせてくれ、とせまる。
順が怒りに任せて叩きつけた罵倒の言葉は
確かに「本当の言葉」だったかも知れないが
あっという間に種切れになった。
物語の少女とは違い、現実の彼女は
言葉で誰かを傷つけたことは一度もなかったからだ。

自分のおしゃべりが原因で家族が崩壊したという
あまりにも不幸な体験が再現しないよう
痛みを伴う強烈な自己暗示をかけて言葉を封印した。
その際、誰かを傷つけてしまうから、という
単純化した論理を用いて自分を戒めてきたのだろう。

その順を「傷つける言葉」へ誘導することで
意図せずして拓実が行ったことは
対話によって患者をトラウマの根源に導いていく
精神分析の治療法を想起させるものだ。
ただし、治癒は一方的なものではなく、相互的に進行する。
先に変化が生じたのは、拓実の方だった。


拓実から順へ。

順は、拓実の名前を繰り返して三度、呼んだ。
その時、思いがけず拓実の目から涙がこぼれ落ちた。
この呼びかけが、彼の心の一番奥深くにまで届いたのは
それが順の「本当の言葉」だったからだろう。

彼が順に打ち明けたのは、心に澱んだ虚しさだった。
自分には誰かに伝えたいことが失われてしまっている。
伝えたいことがない、という空虚感は
裏返せば、他者との関係の希薄さを意味している。
つまり、彼もまた順と同じように
心の殻に閉じこもってしまっていた。

伝えたいことで満ちあふれる順の心の躍動に触れ
何より、関係を諦めない順を通して
自分が渇望していたものを知ることができた。
本当の言葉を伝えることとは、言葉を介して相手を受け入れ
自らも相手に受け入れられようとする、関係への願いである。

いま、それが実現していた。
猛烈な勢いで罵倒されてもうれしかった。
名前を呼ばれた時には
空虚だった自分の存在が満たされる気がした。
そして彼の中に、伝えるべき本当の言葉が生まれた。
お前に会えてよかった、という感謝。
これが、ようやく拓実が伝えられた「本当の言葉」だった。


ふたたび、順から拓実へ。

拓実のストレートな心情の吐露が
すべての原点にまで遡って、順の中の固定観念を
転倒させることに成功する。

私のおかげ? 私のせいじゃなくて?

この時、順のトラウマの原因が、父親の言い放った
「お前のせいだ」という言葉だったことが明らかになり
自らにかけてきた、卵の呪縛から解き放たれる。
殻が破れた瞬間に見えてきたものはやはり
これまで育んできた仲間たちとの関係だった。
だから、彼女の中に感謝と後悔が自然に湧いてくる。
「みんな」が待っている場所へ行く。その決意とともに
物語は一気にフィナーレへと加速する。

その前にあと一つ、伝えなければならない
「本当の言葉」が順には残されていた。
それを伝え終えたあとの表情には、傷心よりもむしろ
自分に対して一つの決着をつけられた清々しさが勝っていて
順が生まれ変わったことを強く印象づける。
失恋は終わりではなく始まりとなった。
彼女は新しい世界へ踏み出していく。



フィナーレでは「言葉」は前景から退き
代わって「歌」が、順が踏み出した新しい「世界」の
メッセージを高らかに歌い上げる。

ここに、雀犬氏のレビューから一文を引用させて頂こう。

「この映画で最後に見せたかったものは
 自分の殻を破り外の世界に飛び出した成瀬順に対する
「新しい世界からの祝福」だと思われる。」

これは、ラストの田崎の告白に関してのご指摘だが
この卓見はフィナーレの全体にまで敷衍することができる。


思い返せば、ミュージカルの発端にあったものは
順がケータイで紡いだ物語と、拓実のピアノとの二つ。
そのいずれもが、閉ざされた内部に封印されてきた想いを
外の世界へ向けて解き放とうとするものだった。
それが周囲の多種多様な心を取り込んで、膨れ上がり
一つの作品にまで結晶する。

ラストの全員合唱のシーンにオーバーラップする
日常の片隅の、さりげない情景の数々。
日々繰り返される、何気ない
そしてかけがえのない「日常」の愛おしさ。
彼らの過ごしてきた日々が集約されている
誰もいない教室を写した一カットにはいつも胸を打たれる。

明らかにここには、「世界」の意味するものが
具体的なイメージとして重ねられている。それは
一人一人の内面の「小さな世界」を包みながら
同心円状に、クラス、学園、地域へと広がっていく
コミュニティと呼ばれる、古くて新しい私たちの「世界」だ。

集団のエネルギーの総和である、ミュージカル。
無数の関係の集積として成立する、コミュニティ。
アナロジーで結ばれたその二つの場が向かい合い
同一の空間を形成するのが、この作品のクライマックスである。
そして、物語の最大の焦点であった順と母の和解は
二人がそれぞれ、一方の場所からお互いを見出し
言葉を介さずに理解しあうという、象徴的な描き方がなされている。

個々人の葛藤が、共同性の中に止揚されるこの図式は
祝祭というものの本質的な機能に即している。したがってそれは
個と集団との対立のない、調和的な世界であって
甘さとして指摘できる部分だが、こうした批評的な掘り下げは
本作にはあまり似つかわしくないようにも思う。
「あの花」とは異なる、これがこの作品の独自性なのである。

青春のリアルな感触を伴った本作の魅力は
逆説的だが、一種のユートピア性にあるのではないだろうか。
同じ印象をかつて自分は、「耳をすませば」から受けた。
私たちの日常と隣り合った、いわば親密なユートピア。
アニメーションはこれを志向し、私たちもそれを憧憬する。
アニメがもたらす幸福感の源の一つが、確かにここにはある。
{/netabare}



言葉は誰かを傷つける。

そのことにまた傷つき、立ち止まり、それでもなお
「本当の言葉」を交わしあいながら、彼らは前へ進んでいく。

危機に瀕した関係を回復する「謝罪」も
相手を肯定し、関係を深化させる「感謝」も
新たな関係への願いである「告白」も
彼らの言葉は、ありったけの真情をこめた叫びのように
未知の可能性に向かって発せられる。

だから、青春の言葉はいつでも
「始まりの言葉」なのだ。


(初投稿 : 2020/08/02)

投稿 : 2024/05/04
♥ : 23
ネタバレ

ぽ~か~ふぇいす さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

音楽を題材にしたアニメにはずれ無し!

初日舞台挨拶付上映を観てきました
それほど期待していなかったのですが
素晴らしい映画でした!

あの花スタッフが贈るなんたらかんたら~
みたいな宣伝をひたすら続けていたので
あの花がそこまで好きになれなかった身としては
「あの花スタッフが贈る」はキャッチコピーとしてむしろマイナス

『あの花』は後頭部を鈍器で殴って「ほら、目から涙が出ただろう?」みたいなやり方をしていた
というのはつい先日のインタビューで長井監督自身の発言ですが
まさに言い得て妙だと思いました

あの花は{netabare}1話がピークだったというか
女装のあたりで物語から振り落とされて
それ以降登場人物にほとんど感情移入できずに
テンションはどんどん下がっていって
最後は醒めきったまま作業的に消化
そして興奮して盛り上がっている方々に
「これで泣けない奴は人間として終わってる」とまで言われ
疎外感をたっぷり感じながら
遠巻きに眺めている感じでした{/netabare}

しかしこの映画は自ら鈍器で殴られに劇場に来ていた人たちには
若干火力が足りなかったかもしれません
4人の主人公たちがそれぞれに抱える悩みを
じっくり掘り下げて書いているので
青春映画特有の古傷をチクチクと針でつつかれるような痛みなら
ぎっしりと詰まっているのですが
こういう青春映画の良さって
現役バリバリで青春真っただ中の人には
あんまりピンとこないかもしれません

そもそも4人の抱えている問題は
{netabare}過去に起こしてしまった取り返しがつかない過ちに起因します
田崎の問題だけは他の部員との軋轢という意味では現在進行形ですが
怪我で大会を棒に振るという変えられない過去に端を発している点では彼も同じようなもの
年月がたっていなかった分最も早くそれと向き合うことができたともいえましょう
他の3人は古傷が心の中にしこりになって残っていたものを
すこしずつ吐き出して前に進んでいく物語なわけです
そうなるとどうしても古傷をたくさん抱えている大人の方が
こういった作品と向き合った時に
心の奥底まで物語が浸透しやすいんじゃないでしょうか{/netabare}

私が作中で一番印象に残ったシーンは
{netabare}廃墟で二人が対峙するシーン
あのシーンの拓実は本当に格好良かったですね
ミュージカルと平行して進む会話の中で
順の告白はきっぱり断りつつ絶望の淵から救い出す
その二つはなかなか両立できたもんじゃないですよ

それまでの拓実がしていたように
相手を傷つけない言葉だけを選んで会話するのは
一切の会話ができない順に比べて生活に支障が少ないだけで
本質的なところはたいして変わりません
たしかに言葉は人を傷つける
でも言葉は人を傷つけるだけではない
逆に言葉にしないことが人を傷つけることもある
たとえ相手を傷つけることになったとしても
自分の本当の気持ちを相手にぶつける勇気
その覚悟と誠意のこもった言葉が
順の殻を破り刺さったのでしょうね

そこからラストまでのヒロインダブルキャストのミュージカルがはじまり
悲愴のメロディにのった「心が叫びだす」と
OverTheRainbowを基調とした「あなたの名前叫ぶよ」のクロス・メロディまで
本当に完璧な仕上がりでした{/netabare}

物語を満点からわずかに減点したのは
最後のシーンがあまりに唐突過ぎたからです
あの締め方自体は決して嫌いじゃないというか
すごく良い終り方だと思いますが
ちょっとそこまでの描写が足りていませんでした

{netabare}思い返してみれば
最初は順のことを小馬鹿にしていた田崎が
徐々に順のことをリスペクトしていく描写は
ところどころに有ったのは分かります
たしかにそういう伏線めいたものは感じられましたが
それ以上に初期に仁藤に言い寄る田崎の印象が強くて
それが消えていくような描写が見当たらなかったのが問題かな
穿った見方をすれば、坂上たちが付き合い始めて脈なしになったから
代用品として順を選んだようにも見えてしまいます
そしてその節操の無さが妻子持ちながらお城に通う順の父とかぶるというか・・・

ここからは憶測ですが
たぶんこれは演出家の考えが足りないわけではありません
むしろそこでサプライズを起こしたいから
敢えてミスリードを残し、そこに繋がる描写を最小限にしてあるのです
どうしてそう思うのか?簡単なことです

それがマリーの常套手段だから

全体のバランスとか細かい整合性よりも
唐突に吹き出す感情のインパクトを重視するのが彼女の流儀
それがぴたりと噛み合うと傑作が生まれるわけですが
空回りしていることのほうがずっと多い印象
だから私は彼女の実力はある程度評価していますけど
はっきり言ってあんまり好きな脚本家じゃないですね
今回みたいな完全オリジナルならまだ許せるけど
続編ものとか原作付とか他の人が積み上げてきた土俵で
何もかもぶち壊すのは本当にヤメテ!{/netabare}

音楽に関してはミュージカルが題材なだけに
当然かなり力が入っています

ミュージカル部分の担当はクラムボンのミト
ショウバイロッカーにとってはラボムンクのミトミトンですねw
日本人になじみの深いミュージカル曲を選出し
それを劇中劇としてまとめ上げました

もう一人の劇伴作家は横山克
最近だと君嘘の音楽を担当されていた方で
私はあれでファンになったのですが
今回の作品でも物語をカラフルに彩る
心地よい音楽に仕上がっています

この二人の仕事は非の打ち所がありません
それでも音楽に満点をつけられなかったのは
エンディングの存在が原因

のぎさかなんとかはあんまりよく知らないので何とも言えませんが
秋元康って日本を代表するヒットメーカーなんですよね?
詩の内容は多少映画の内容を意識してはいるんですが
むしろそれが却ってマイナスです
それまでスクリーンに映し出されていた濃厚な人間ドラマと
そこに内容をがっちりリンクさせたミュージカル
それらすべてを引き継いで締めるにはあまりにも薄っぺらく
取ってつけたような物語とのリンクは蛇足の一言に尽きます
これならばまだ方向性を変えて
真っ向勝負を避けたほうまだマシだったでしょう

例えるならリレー競技で
全員一丸となって必死に走ってきたのに
トップでバトンを受けたアンカーが
余裕こいて軽く流してたら
なんか最後抜かちゃいれました
みたいなものすごい興醒め感です

声優に関しては全く文句ありませんでした
特に水瀬さんの声にならないうめき声と
はまり役すぎるほどの内山君が素晴らしかった
それから順の母親役の吉田羊さん
話題作りのためにTVや映画で活躍する有名人をキャスティングして
散々な出来だった作品をいくつも観てきました
乃木坂同様不協和音にならなければいいと心配していましたが
こちらは全くの杞憂に終わりました
やはり一流の女優さんは声だけの演技であっても
その実力がはっきり見て取れるものなんですね

作画も全体的にすごく良かったと思います
特に言葉を発することができない順の心情を
水瀬さんのうめき声とともに見事に表現していた表情芸は素晴らしかったし
途中の携帯を使ったLineっぽい演出も面白かったです

ついでに言っておくとこのアニメも西武線アニメなので
西武線の電車がちょいちょい出てくるのは想定内だったのですが
なんと今回は西武バスも出てきます!
地元民以外からすればなんのこっちゃ?って話なんですが
毎日家のすぐ前を通ってるのと同系のバスが出てくると
なんか無意味にテンションあがりますねw

音楽を題材にしたアニメ作品で
過去のトラウマを乗り越えて成長していく青春群像劇
A-1Pictuers制作でプロデューサーはアニプレ斉藤P
劇伴には横山克、要所で流れるベートーベン
そしてやけに主張の激しい小道具として使われる西武線(笑)
水瀬いのりも瀬戸小春役ででてましたし
このアニメ実はかなり君嘘と共通項が多いです
ひょっとするとあの花ファンだけじゃなくて
君嘘ファンにもおすすめしていい作品かもしれません

全体としてはかなりレベルの高いところでまとまっていたと思います
時間を見つけてもう一回見に行きたいですね

おまけ

舞台挨拶でキャストの方々が
是非サントラを買って帰ってください!
何て言うもんだから買って帰ろうとしたら売り切れ・・・
まぁそりゃあんな風に言われりゃみんな買おうとするし
私らの回は挨拶付上映2回目だから1回目の客が買って帰って終わりだわな

仕方なく家に帰ってから通販で購入したのですが
アニプレの通販特典でセルフライナーノーツがついてきました
映画パンフにあったミトさんの話をさらに膨らませた感じの内容で
版権の問題で没になった曲なども含む
ミュージカル選曲案(第一稿)もついてました
これは、会場で買わないで通販にして良かったかもしれないw

投稿 : 2024/05/04
♥ : 37
ネタバレ

takarock さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

Shout at the Devil

あれは確か私が中学2年の時、
放課後にクラス全員で校内行事の合唱コンクールの練習をしていた時の話だ。
やる気もあまり感じられず、どことなく気怠い空気が蔓延していた。
そんな中、ある女子生徒の一声が教室中に響き渡った。
「みんな、もっとちゃんとやろうよ!! コンクールまでもう時間ないんだよ!!
私はこのクラスのみんなと一緒に精一杯やりたいよ!!」
女子生徒はその場で泣き崩れてしまう。
それを目の当たりにした野球部の男子生徒が
「そうだよ!みんなもっと声出るだろ!!本気でやろうぜ!!」と
女子生徒の訴えに呼応するように叫びだした。
その後クラス中で嗚咽をもらすという空気になっていったわけだが、
そんな中、私は
「おいおい、こいつら青春ドラマの見過ぎだろ・・何の茶番劇だよ・・」と
一人その場を冷静に観察していたというまさに外道!!w(リアル中二病とも言う)
そんな私が「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(あの花)
を観て感動などできるはずもなく、
クライマックスシーンは、はっきり言ってドン引きしていました。
ええ、そうです。私はそういう人なんです!!

本作は「あの花」のメインスタッフが再び集結して作られた作品です。
そうと分かっていながら何故視聴した?という話なんですけど、
評判も上々でしたし、
制作側も「あの花はちょっと露骨過ぎた」的なことを発信していたようなので、
それならばと思って視聴してみました。

では、ここからはネタバレありで本作を語っていきます。


{netabare}まず、結論から言うと、
王道の学園青春アニメ(映画)としての出来はかなりよかったと思います。
「あの花」よりもこちらの方が断然好みでしたし、
感動して泣いてしまったというのもよく分かります。
私もぐっときたシーンはいくつもありました。

けど・・・けれどもなんですよ!
まぁそれは一先ず置いておきましょう。

幼年期あれだけおしゃべりだった主人公成瀬順が、
高校生になるとろくに声も発しず、携帯等の文字のやり取りしかできないような状態に・・
そこまで変わるものなのかとも一瞬思いましたが、
そうなるには充分な説得力(トラウマ)があったと思います。

成瀬順から言葉を奪ったのが「玉子(の妖精)」なら、
再び声を取り戻すきっかけとなるのが「王子」。
「玉子」と「王子」・・・似て非なるもの、表裏一体、アンビバレントな、
というのは意識して作られていたのかもしれませんね。
言葉というのは毒にも薬にもなり得るものですし、
「せい」でなく「おかげ」なんてことも本作中で語られていましたしね。
本作のミュージカル中には、
マッシュアップ(2つ以上の曲から片方はボーカルトラック、もう片方は伴奏トラックを取り出して
それらをもともとあった曲のようにミックスし重ねて一つにした音楽の手法)
が取り上げられていましたけど、これもそこら辺に掛かっているのかな?
まぁ小難しい考察は他の方に任せますw
あとは、ベタだけど玉子の殻を破ってとか、玉子を様々なメタファーとして用いていましたね。

まぁ、とどのつまり本作は、主人公成瀬順が再び声を取り戻す再生の物語なんですけど、
普段接点のない者達が集まって、一つの目標に向かっていくというのは、
やっぱりキュンキュンときめいてしまいますねw
その距離感と緊張感の演出は本当に素晴らしかったと思います。

はい、ではここからは、けど・・・けれどもの部分の話をしますよ。

声を失った少女、そしてミュージカルと
私は本作の中盤くらいからクライマックスシーンをある程度もう想定していました。
それはどんなものかというと、ミュージカルの劇中、
成瀬順の母親も見ている中で成瀬順が唐突に叫び出すんです。
そう、それこそ私の中二時代の合唱コンクールの練習時のあの女子生徒のように。
舞台裏のクラスメイトが「ねぇ、こんな台詞あったっけ?」なんて狼狽する中で、
少女はこれまで溜めに溜めてきた鬱屈した心情を魂の咆哮によって吐き出すのです。
「私が言葉を発してしまったせいで多くの人を不幸にしてしまったから・・・
だから・・・私は自分なんて存在しない方がいいって思っていたけど・・・
けれども私は、私はここにいる!ここにいるよ!!」
そして、拓実を一瞥した後に、
「あなたが、あなたが教えてくれた!想いは声にしないと伝わらないって!
あなたは私の王子様じゃないかもしれないけど・・・
けど・・それでも私はあなたが好き!!」
こんな展開なら私はおそらく号泣してましたw

ベタだけど、こっちは泣く準備ができていたからそういうのを期待していたのに、
それなのに・・・なんだあれ?
すべての始まりである今は潰れたお城(ラブホ)という舞台にあまり文句はないですけど、
(まったくないわけではない)
脇が臭いだの、ピアノが弾けるからってモテると思うなよとか、
それとあの女も同罪だ!ああいうのが一番たちが悪い!とかさぁ・・
マリーさん脚本得意の女子特有のドロドロの本音ってやつなのでしょうか?
その後の拓実への告白シーンはよかったですけど、
その告白の前の生々しい心の叫びというのは絶対必要なんですよ。
自分のおしゃべりによって家庭を壊してしまった後悔、これまで抑圧してきた感情、辛い想い、
成瀬順にはもっともっと叫ぶことがあるだろ。
それなのに、成瀬順の心の叫びを、
恋の嫉妬からくる罵詈雑言に矮小化してしまっているような・・
あれがしゃべれなくなってしまう程のトラウマを抱えた成瀬順の本当の魂の咆哮なのか?
とかなりの物足りなさを感じました。
それに、拓実のリアクション。「うん、、うん、、、」
とひたすら頷いている(成瀬順を肯定している)のにも「なんだかなー」という気持ちに。
これまでは成瀬順が言葉を発することによって不幸が訪れる、
つまり、人間関係が壊れてしまい、成瀬順は否定されてしまっていた訳ですけど、
拓実はひたすら肯定してくれます。そういう対比の場面だと思いますが、
でも、拓実もかなり複雑な家庭環境でしたよね?
だったら、「自分ばかりが特別だと思い込んでるんじゃねーよ!」くらい言って欲しかった。
お互いが本音を言い合い、それでもその関係は壊れない(肯定される)。
それが成瀬順の救いとなり、過去のトラウマからの解放、本当に声を取り戻す。
その流れで告白っていうのを期待していたんですけどね。
これは本作を視聴中に常に頭の中によぎっていたことなんですけど、
皆が皆、成瀬順を甘やかせ過ぎのように思えました。
劇中のキャラってことだけじゃなく、そもそもシナリオレベルでね。
最後の田崎が成瀬順に告白って場面でもそれは思いましたよ。
これは救済的な措置かな?なんてね。
ご都合主義とかじゃなく、やっぱり甘やかせ過ぎっていうのがしっくりくるかな。

私としては、ミュージカルの本番前にトラウマの発端となった舞台(ラブホ)で
拓実とのやり取りがあり、
ここでのやり取りは劇中のような罵詈雑言をぶつける、いや、ぶつけ合ってほしかったですけど、
とにかく、そこで成瀬順は声を取り戻す。
そして、ミュージカル本番に見に来ている母親の前で、拓実の前で、
成瀬順が本当に叫びたがってることを、熱い魂の咆哮をって展開の方がよかったかなと。
ミュージカルの劇と成瀬順と拓実のやり取りをリンクさせる見せ方は上手いとは思いますけど、
流れとしてね。

若かりし頃というのは、満たされないことが多いでしょう。
私も年中欲求不満で、エネルギーを持て余していましたw
私の場合、カラオケで発散していたんですけど、
2~3人で行って、ほぼ毎日6時間超えは当たり前、パンツ一丁で浴びるように酒を飲み、
ひたすら叫びまくるという、まさにクレイジーそのものw
でもそうでもしなきゃさ、
自分だけが不幸なんじゃないかって、他人が羨ましくてしょうがないって、
いろいろやってらんねーぜ!って心境だったんですw
今思えば己の卑屈さや器の小ささに忸怩たる思いを禁じ得ないのですが、
でも、成瀬順よ、お前は違うんだろ? 
あの程度の心の叫びなら、それこそカラオケでも行って発散すればいい。
ただ、そんなものは俺の心には響かない。
心が叫びたがってるんだったら、もっと本気でかかってこいやぁぁぁ!!!{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 54

62.7 3 2015年度のミュージカルアニメランキング3位
ミニオンズ [3D](アニメ映画)

2015年7月31日
★★★★☆ 3.8 (35)
146人が棚に入れました
『怪盗グルー』シリーズのミニオンが主役となる。

Dkn さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

グルーと出会う前のミニオンズ!

“怪盗グルー”シリーズ
から派生した、前日譚。

黄色いボディにまんまる目玉の

“ミニオンズ”

ミニオン達は強者が大好き

恐竜が居た時代から自分たちが仕える

“ボス”を探してる。


そんなミニオン達に、

最高のボスが見つかる、少し前のお話し。


シリーズも多く続いてついにミニオンたち単体の作品が出来ました。怪盗グル―のシリーズって、“怪盗”と
言うだけあってなかなかダーティーなことを平気でやるんですよね。あっ!ついうっかり!で済まされないようなw
それに単眼で毛が3本4本生えてるだけのビジュアルだったりするのであんまり可愛くないように思うのに
ミニオン語ともいえるあの声を聞いてると何か可愛い気がしてくる。

楽しい雰囲気にごまかされますが、アニメーション作品のキャラクターデザインにおいてここまで秀逸なものも
あまり他に類を見ないレベルだったりします。動きも細かく、ニュアンスだけで、目線や指先の動きだけで、
感情の動きやコミカルさを表現する。日本のアニメーションでは中々真似できないですし、オーバーリアクション
の文化は日本にあまりないので独自のものとも言えます。

すごいなと思ったのが、ミニオンが主役なので言葉がまったくわからない上に吹き替えも付きませんww
だからはじめはずっとナレーションと映像だけでお送りします。人間が出てくるまでかなり時間を使うはず。

それでもお馬鹿で可愛いミニオンズを見てると癒やされてます。(あと無茶するのでドン引きします(笑))


今日はゆるいコメディアニメ見たいなーって時に見て下さいw

投稿 : 2024/05/04
♥ : 11

いしゆう さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.9

可愛いミニオンたちの大冒険♪ 

あらすじ
サムネにある豆のような生き物 ミニオン 
彼らが求めるのは 世界一凶悪なご主人様!!
遥か昔から それを繰り返してきた 彼らの奮闘を描いています 
この物語はのちに怪盗グルーに出会う前のお話です。

恐竜が生きている時代の遥か昔から ご主人様を探しているけど
ミニオンたちのドジのせいなどで みんな死んじゃいます・・・

今回はオークランドで開かれている大悪党大会に
ご主人様を探しに行くのだけど・・・
ただ 正直 これ以上 内容を求められると困ってしまいます
あっ映像は とってもカラフルで ミニオンたちがコミカルに動きます♪

怪盗グルーのようなハートフルな感じは ありませんけど
この作品の 見所は 可愛いミニオンたちが動く!これに尽きます♪
( あくまで個人的なものです 評価も極端になってしまいました )

ミニオンたちの喋る言葉は 世界中の言葉をミックスしています
例えば 移動の掛け声が「 ヤキトリー!! 」だったりします。
みんな 同じように見えますが それぞれ名前もあります。
リーダーのケビン ギター好きのスチュワート やりたがりのボブ

他にもたくさんのミニオンたちがいますが今回はこの3人に絞っています
わたしの おススメは ボブ です 
皆さんの おススメは 何ですか?

最後まで読んで下さり ありがとうございました。 

投稿 : 2024/05/04
♥ : 11

風来坊 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

キャラものだけれどテンポ良し

多少のドタバタはあるものの話のストーリーとしては大したものがあるわけではないストレートなものだと思います。メインはミニオンのコミカルな動きと言動でしょうか。

確かに眼鏡バナナのようなキャラは中々ユニークで可愛くはありますが、それだけで大人がずっと観るには中々退屈であるところ、ミュージカルのようなテンポの良さでそれをカバーしているような印象です。

子ども向けにしては少しはしたない部分もあり、どの世代にオススメできる作品というのは難しい。強いて言うなら中高生以上がキャラが好きで何も考えないような作品を観たいときにオススメ……という感じです。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 2
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