2022年度の恋愛アニメ映画ランキング 4

あにこれの全ユーザーがアニメ映画の2022年度の恋愛成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月12日の時点で一番の2022年度の恋愛アニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

67.2 1 2022年度の恋愛アニメランキング1位
僕が愛したすべての君へ(アニメ映画)

2022年10月7日
★★★★☆ 3.4 (34)
140人が棚に入れました
両親が離婚し、母親と暮らす高校生の高崎 暦(たかさき こよみ)。
ある日、クラスメイトの瀧川和音(たきがわ かずね)に声をかけられる。
85番目の並行世界から移動してきたという彼女は、
その世界で2人が恋人同士であると告げる・・・。

でこぽん さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

物語終盤の展開が大いに感動します

おそらく、この物語「僕が愛したすべての君へ」だけを見ても、あまり感動しないと思います。そして物語の展開についていけないでしょう。
でも、この物語の前に「君を愛したひとりの僕へ」を見ておくと、物語終盤で大いに感動します。

この物語ではパラレルワールドが当たり前のこととして研究されています。
主人公は暦(こよみ)。彼には高校の頃から和音(かずね)という仲の良い女性がいました。
暦も和音も秀才で、二人は共に虚質科学研究所に入所し、研究に明け暮れます。
やがて二人は結婚し、子供ができ、そしていつしか孫ができます。

暦が年老いて寿命がつきかける頃、ある出来事が起きるのです。
そしてそれは思わぬ展開でした。
・・・・・・
このラストは大いに感動します。
詳しく語りたいのですが、語るとネタバレになるので語れないのが残念でなりません。

もし、あなたが誰かを幸せにしてあげることができたら…
パラレルワールドの別の世界でも、きっとあなたは誰かを幸せにしてあげているでしょう。
この物語は、そんな物語だと思います。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 14
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

探し物が見つからない?→並行世界間移動(パラレル・シフト)したからに違いありません

「パラレル・シフト」が観測、数値計測され実用化されていく近未来の日本。
SF設定を引き立て役、障害の壁役に据え、恋する男女の生涯を描いた
原作小説『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』(未読)を、
二作同時公開でアニメ映画化。

私は『僕愛』→『君愛』の順で同日劇場鑑賞。


【物語 3.5点】
『僕愛』から見るとちょっと切ないbitter LoveStory
『君愛』から見ると幸せなsweet LoveStory

見る順番で結末が大きく変わる恋愛映画として宣伝されていたこの二作。
人を愛することがシナリオのテーマなので間違ってはいないのでしょうが……。

やはり本質的にはカップルに訴求するのではなく、
並行世界や“虚質空間”などの設定に時めくSF少年(“大きなお友達”の私なども含む)
科学アドベンチャーシリーズなどのテキスト型ゲーム及び、
そのアニメ化作品等を履修したような層にアピールする内容だったかと思います。
移動した並行世界の遠さを計測数値化して、危険性だの言う展開などワクワクします。

カップルどころかお客さん自体もまばらな劇場にて私は、
プロモは五流の日本映画界がまたやらかしたか~と歯噛みしていましたw


見る順番のオススメもアニメファン向けに噛み砕くと……

『僕愛』→『君愛』の順番は、とりあえず展開が欲しい1クールアニメの短距離走に馴染んだ人向け。
『僕愛』を本編、『君愛』を解説編、スピンオフとして消化する感覚で捉えれば楽しめます。

『君愛』→『僕愛』の順番は、大作ギャルゲーのプレイヤー向け。
『君愛』にて、難解なSF用語を土台から地道に解説された後、ある選択肢で痛い目を見たりする。
『僕愛』にて、設定解説も生かした伏線回収がなされ、全ての選択肢が報われるグランドエンディングを迎える。

私は中長距離走の方が性に合うので、『君愛』→『僕愛』の順番で観れば良かったと少し後悔しました。


脚本の方は2作とも坂口 理子氏が担当。
『僕愛』から見る人にとっては伏線になる要素を『君愛』から見る人にとっては解答になったりする。
しかも{netabare} 恋愛、結婚、子育てから人生の終末{/netabare} まで描く人生記を限られた尺に押し込む。
2作で複雑に絡まり合ったシナリオを、苦慮を感じさせながらも、まずまずの脚本でまとめる。


【作画 3.0点】
『僕愛』はBAKKEN RECORD、『君愛』はトムス・エンタテイメントで分担。当然、監督も別。

個人的にはこの分業体制が悪手だったと悔恨します。
2つのスタジオによるパラレル映画制作は世界初!などとアピールしてくるわけですが、
今まで誰もやってこなかったのはメリットがないからだと思います。

シナリオ解説の都合上『僕愛』で見た場面を『君愛』でも見るシチュエーションがあります。
1つのスタジオ・監督の元で統率していれば、同じカットでもアングルを変えた作画にしてみたりして工夫して再提供することもやり易い。
でも、2つのスタジオで分担していると、共作相手が制作した映像をそのまま拝借する位しかできない。
『僕愛』で数時間前に鑑賞した映像を、『君愛』で重複して見せられる時間。
睡魔に襲われるくらい退屈でした。

最近では『もういっぽん!』の柔道描写にも好感できるBAKKEN RECORD。
本作でも作画自体は、難解なSF設定の表現も含めて健闘。
応援したいスタジオだけに、意欲が報われる企画を望みたいです。


【キャラ 4.0点】
『僕愛』のヒロインはポニテのメガネ娘JK・瀧川和音。
外面は、頭脳の明晰さの面で主人公少年・暦をライバル視している内に……という典型的なツンデレ属性。
が、突如、{netabare} 並行世界から来ましたと{/netabare} などと言い出す辺り、やはり本作はSF。

主人公、ヒロインとも高校時代より成人してからの方がくすぐったい関係。
{netabare} 研究に熱中するあまり数式を下着姿の互いの肌に書き合う{/netabare} 件、中々エロティックでしたw
年を重ねるごとに味わいが滲み出てくる関係性が、
何気ない日々に幸せを噛み締める本作の隠し味になる。

この方向性に序盤から鑑賞者を誘導するのが、暦の祖父・康人。
愛犬・ユノと共に「パラレル・シフト」上も重要になるキャラですが、
その教育方針で、暦の人生にも影響を与えたという意味でも大切な存在。

個人的に老人が味を出している人物相関には外れはありません。


【声優 3.5点】
主人公・暦役の青少年期を宮沢 氷魚さん。ヒロイン・和音役の青少年期を橋本 愛さん。
鍵となる少女・栞役に蒔田 彩珠さん。
メインキャストは若手俳優陣で固める。
総じてまずまず無難に声を当てて、恋愛映画観るようなカップルを釣り損ねた感じ。
正直、暦の幼年期を演じた田村 睦心さんのようなアニメ声優陣で見たかったという私の願望を払拭するには至らず。

ただ老年期は暦を西岡 德馬さん、和音を余 貴美子さん。
『火曜サスペンス劇場』でも始まるのかwというベテラン俳優陣が演じ、独特の渋みを醸し出す。


【音楽 3.5点】
劇伴担当は2作とも大間々 昂氏。
ピアノとストリングス、アコースティックギターの素朴な日常、心情曲が中心。
ただ挙式で{netabare} メンデルスゾーン「結婚行進曲」{/netabare} はベタ過ぎてビックリしましたw
本作だけでなく『水星の魔女』でも意外なSF対応力で魅せる大間々氏のサウンド。
今後SF・ロボットアニメでの活躍にも期待したいです。

『僕愛』主題歌は須田 景凪さん「雲を恋う」。他、挿入歌あり。
(『君愛』はSauty Dogが担当。こちらの役割分担はアリだったかと。)
須田さんは今期TVアニメ版『スキロー』OP「メロウ」でもそうなのですが、
ありふれた日常から幸福を抽出するのに適した歌い手。
その観点から『僕愛』での起用も、用法用量を守った正しい活用法かと。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 11
ネタバレ

テナ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

本当の幸せとは……

この作品の最初の印象は「難しい」「ややこしい」「堅苦しい」の第一印象でした。
しかし、見始めて直ぐに気づきます。

確かに、この方法なら、見る順番で結末が変わると言われるのもわかりました。
そうなると……映画と映画のつなぎ方とクライマックスの見せ方がこの作品の評価の鍵になるかと……

しかしながら、こちらから見ると最初は中途半端で主人公が1言目の意味もよく解らず……この辺りは、もう1つの物語で説明されてます。

さて、最初は「パラダイムシフト」とか世界線とか入れ替わりとか小難しい事ばかり……
いゃいゃ、私は恋愛アニメを見に来ていて科学アニメを見に来てるんじゃないんだよ(><)*。
って思ってましてたが、しっかり恋愛してくれましたね。

この作品の学生時代に込められているのは「出会い」と「世界観」ですね。
ヒロインの瀧川との出会いや、この世界で行われてる研究や認識されてる現象など。

寧ろ恋愛は社会人になってからです。
だから、社会人の恋愛を描いた作品ですね。
恋愛って言っても幸せはしっかり書かれてはいますが、少女漫画の様なドキドキ感はないかな?

でも、リアリティのある恋愛かな?と思いますw
少女漫画の様なセリフを言う人も私の周りには居なかったし、少女漫画の様な展開の恋愛は残念ながら未経験ゾーンですよ(*꒪꒫꒪)
アニメの様な綺麗な恋なんて中々w

だから、この作品の出会い→カレカノ→告白→結婚→子育て→孫誕生→歳をとる

人の恋の生涯を短くもしっかり描いて居たのは評価点!

物語で私が感じたのは……

「おじいちゃん」

{netabare}これは主人公の暦がパラダイムシフトを身をもって経験する事で視聴者にわかりやすく説明する事が出来てるエピソードだったと思います。

後、おじいちゃんの死は主人公の暦が母親を選ぶ事で発生します。
母の実家に行った暦の役割は飼い犬のお散歩です。

別の世界線では逆に飼い犬が死んでいます。
それは暦が父を選ぶ事で発生します。

おじいちゃんの死は暦が犬の散歩当番となり、おじいちゃんは運動不足で体調を崩して亡くなったのかな?と思いました。
犬の散歩がおじいちゃんの運動であり日課だった。

逆に、ワンちゃんの死は、おじいちゃんが散歩をしているから健康的で元気でした。
しかし、おじいちゃんです。
力が衰える……ワンちゃんは成長して大きくなり力も強くなる、おじいちゃんは不意をつかれワンちゃんの手網を放してしまう……そして道に飛び出して亡くなってたのかな?と思いました。

このように、1つの選択肢の中に夫々の分岐点がある事を視聴者側に説明しています。
正直、このエピソードで、タイムシフトが、どう言う物か、この世界で言う選択がどう言う意味を結果をもたらすのか……凄くわかりやすかったです。 {/netabare}


「婚約」
{netabare} 和音と結婚した後の暦「俺は誰と結婚したんだろ」には、えっ!!!!!となりました。
世界線移動がいきなりのタイミングで行われるから……ややこしい……
目の前には愛した人が居るけど、もしかしたら、それは別次元の愛した人と同じ人物であり他人でもあるかもしれないと考えたらなんだろ……なんか違う気もするかもしれない。{/netabare}

「事件」

{netabare} 暦と和音と息子でお出かけをした時に事件が起きます。
その事件で息子は亡くなってしまう。
そこへ、パラダイムシフトをしてきたのは息子に会いたくて息子の元にパラダイムシフトをして来た別世界の和音。

これは気持ちは解る。
自分の子供……いゃ、大切な人の死なんてのは回避したい……

子供を失った和音は世界線を移動して息子が生きている世界線で息子と生きていこうとする。
2度と失いたくないから……彼女は多分息子を失い参ったのだと思う……心が……気持ちが……
向こうの世界の暦が手伝ったらしいけど多分、暦は見てられなかったんだと思う。
日々弱る彼女の姿に……

だから、彼女を息子に一目合わせたかった。
息子を守れななかったと自分を責める彼女に元気になって欲しいから……

けど、それは息子が生存した世界の和音が息子の死に直面した世界線に行く事を意味する。
同じ場所に同じ人間関係は留まれない。

けどさ、気持ちは解るけど、ダメだと思う。
確かに現実なんて受け止められないし人の死なんて当然……辛くて悲しくて苦しくて涙が止まらない……でもダメなんだよ。

例え、相手が自分でも死なんて悲しみの重みを誰かに背負わせるなんて……
何より死んでしまった息子の存在を生きてきた証を否定しちゃう……別世界で個人なんだ。
自分の息子が居なくなって別世界の息子を代わりにしちゃっダメなんだと思いました。

息子の「ママはどこ?」には心が痛かったなぁ。
目の前のママは別世界のママでやっぱり解るんだよ。
小さな仕草や笑い方や喋り方、色々な事から子供は感じとれるんですね。

でも、裏を返せば、例え別世界の自分でも自分の代わりにはなれないと言う事ですね。{/netabare}



「手紙」

{netabare} 孫も産まれ幸せに暮らす中、和音の元に手紙が届きます。
別世界の和音からです。
別世界の和音から、その世界の暦が栞と言う幽霊に恋をしていると聞かされます。

だから、和音に暦をその幽霊に会わせてあげて欲しいと言います。
コレが君恋のエピソードなので詳しくは伏せます。

和音は暦に幽霊に会いに行く様に背中を押します。
私はこの選択が凄いと感じました。

自分の好きな旦那を別世界の恋人の元へ送り出す。
正直、別世界なんて知らないし無視も出来たと思う。
好きな人を他の女性の元に送り出す?
仮にも恋敵ですよ!
私なら出来ないです……最低であり薄情だし心が狭いし束縛乙と思われるかもしれません。

でも、やっぱり私には出来ない……もしも気持ちがそちらに向いたら?
もしも自分の知らない人になっていたら?
何か起きるかもしれない……そうした不安や心配から私はそこまで強くはなれない……

しかし、和音は何故、その選択が出来るのか……
多分、同じ選択が出来る人達は世の中に沢山いると思う。
どうして、そんな事が出来るのか私は考えて見ました。
多分それは「本当にその人を想ってるから」です。

暦も和音も全ての暦と和音を愛していると発言してました。
それは暦を全ての世界の暦を愛していから背中を押せた。
その世界の暦は自分に気持ちに向いては居ないけど、そんな暦も愛している。
それだけで背中を押せる勇気になる。
恋愛って凄いなぁ〜ってなりましたw {/netabare}


「交差点の幽霊」

{netabare} 再会を果たします。
しかし、暦は幽霊が誰なのか……解らない。
認識出来ても別世界の暦の記憶を知らないから……
そんな時に、病が暦を襲う……
薬を飲もうとするも薬のケースを落としてしまう……手を伸ばしても届かない……このままでは…………

そこに1人の老婆が薬を拾ってくれる。
助かった、暦は不意に質問する「今、幸せですか?」と……その答えは「幸せ」{/netabare}


「ただいま」

{netabare} 暦が帰ると和音が待っていました。
多分、心配だったんだろなぁ〜色々とw
送り出せるのは不安や心配がないからじゃないもんなぁ〜 {/netabare}


【この作品を見終わって……】

君愛と僕愛、見る順番で結末が変わるって言うけど……私はこちらの作品、僕愛がラストの方がいい気がしました。

なんか、幸せを感じる事が出来た。
勿論、それがテーマだけどなんか……
丸く収まってる様な……そんな気がしました。
後、主人公の全ての世界線の自分と大切な人達への気持ちが込められたセリフがあるのですが、それが終わりって感じがして、見終わって「おわったなぁ〜」と感じたので

投稿 : 2024/05/11
♥ : 8

75.3 2 2022年度の恋愛アニメランキング2位
映画 五等分の花嫁(アニメ映画)

2022年5月20日
★★★★☆ 4.0 (172)
641人が棚に入れました
「落第寸前」「勉強嫌い」の美少女五つ子を、アルバイト家庭教師として「卒業」まで導くことになった風太郎。これまでの努力が実を結び、高校3年生に進級することができた五つ子は、修学旅行も無事に終わり「卒業」に向けてそれぞれが将来を見据えていくことに。共に過ごす中で風太郎への恋心を自覚した五つ子と、段々と惹かれていく風太郎。風太郎と五つ子の恋の行方はいかに…!?そして未来の花嫁は果たして…
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

究極の五つ子ゲーム……ファイナルアンサー?

【物語 4.5点】
高校生活最後の学園祭。上杉が五つ子の誰を選ぶのか?
すなわちシリーズ通じて謎だった結婚式の場面。
上杉と共に歩くウエディングドレスの女性は誰なのか?

核心部分が解答されても五つ子全員が尊重されるよう
(推してるファンも冷めずにリピートできるように)
最後の学園祭を、五つ子ごとの“ルート”に分け、繰り返す構成により、尺は136分と大作化。
原作未読組の私から見ても色々削ったのだろうな……というシーンも散見。
例の如く、TVアニメ版でじっくりと……となりそうな所。

ですが、五つ子それぞれの心情を並べ、選択を迫る。
過去の経緯、現在の学園生活、未来の結婚式を俯瞰する。
その上で、五つ子たちの成長曲線と恋心の上昇カーブがシンクロする奇跡は、
高校生活のこの瞬間だけだったと納得させられる青春賛歌。
このエネルギーを一作品で表現し、ぶつけるのは劇場版でしかできない試み。
細かい不満より作品の熱量が上回った感じ。
(大体、これを1クール以上でじっくりやったら
放送期間2ヶ月くらいエンドレス学園祭をやる羽目になるかとw)

告白後の五つ子たちの葛藤も描くことで、
結婚式の“五つ子ゲーム”が上杉さん(および謎の解答をお預けにされた視聴者)をからかうお遊びではなく、
必然のファイナルゲームだと分かった時は、これはヤラれたと感服しました。


【作画 3.5点】
アニメーション制作は2期以来のバイブリーアニメーションスタジオが続投。

劇場版クオリティを求める方にとっては物足りない部分も。
ただTVアニメ版の乱調ぶりを知った上だと、
絵が崩れる心配をせずにファイナルを堪能できるのは素晴らしいですw
(……と手放したい所ですが、やはり四葉の顔立ちなんかには、やはり不可解なシーンが……。
四葉のキャラデザは一貫性を保つのが難しいのでしょうか)

撮影、光源処理にはTVアニメ版にない繊細さがあり。


【キャラ 4.5点】
カリスマ塾講師で{netabare}五つ子の本当の父親の{/netabare}無堂先生。
五つ子の青春恋愛パワーを焚き付けるヒールであり、
上杉が高校で恋愛も知らずガリ勉していたらどうなっていたか?
のifも示唆する合わせ鏡のようなキャラ。

『ごとよめ』には、教師とは、教育とは何か。
勉強だけが学校ではないとしたら、学園生活とは何のためにあるのか。
を改めて問い直すテーマも内包。
クライマックスに向けて、上杉→五つ子の他にも先生と教え子の人物相関が組み込まれ、
{netabare}五月{/netabare}の進路などに絡むことで、テーマを捉える視点も多角化。
大人たちが示す人生の失敗例、多様性が、
上杉と五つ子たちの選択を受け止めるクッションとしても機能。
ただ一番削られたと感じたのも、この大人たちの関係性。
ですが、そこまで掘り下げると3時間映画になりかねないのでw致し方なしか。


推しは最後まで決められないままでしたが、
歴女属性から何となくシンパシーを感じていた三玖。
自分の想いをしっかり伝える力を得た瞬間。
エネルギーを頂きました。


着地点としては四葉が花嫁だったら綺麗なのかな?とは思っていましたが、

(核心的ネタバレ)

{netabare}その通りになりました。やっぱり幼少期、上杉と関わりがあったのは大きいです。
中学のグレた?四葉じゃダメだった、高校に入って変わった四葉じゃなきゃダメだった。
その点からも話の筋は通っていたと感じました。
無論、他の五つ子にもチャンスあったとの悔恨は残りつつですがw{/netabare}


【声優 4.5点】
一花(CV.花澤 香菜さん)二乃(CV.竹達 彩奈さん)三玖(CV.伊藤 美来さん)
四葉(CV.佐倉 綾音さん)五月(CV.水瀬 いのりさん)

後世、凄い人気声優が配役されていたなぁ~と
懐古されそうな中野家の豪華布陣も集大成。
内容も小中学生~転機となる高校学園祭の繊細な心情~花嫁姿と
道中、性格が変化する曲折も経ながら、半生記を凝縮する流石の演技。


ピックアップしたいのが五つ子の母・中野 零奈役の京花 優希さん。
2期では上杉が昔、出会った五つ子の中の“誰か”の役をイメージを崩さず演じつつ、
正体の“声バレ”も阻止していた方。
今回、五つ子たちに様々なものを継承する母親役への抜擢は心にくいキャスティング。
京花さんは他にも上杉の幼なじみ・竹林役で、二乃や三玖を慌てさせるポジションも兼任。
起用な方だなぁ~と感心します。
今後、大役が回って来たら、この方かと嬉しくなります。


【音楽 4.0点】
劇伴担当は1期以来の中村 巴奈重氏&櫻井 美希氏。
ピアノやストリングスで場面を包み込む優しい音色は変わらず。
劇場版ではフィルムスコアリングで、心情とのシンクロ率がさらに上昇。

主題歌は五つ子が担当。

OP「五等分の軌跡」
一大決戦を前に「君が 大好きなんだ~ 誰にも負けない~」と競り合う。
相変わらず一人称視点で聴くとニヤニヤが止まらないラブソング。

ED「五等分の花嫁~ありがとうの花~」
5人で競い合った彼に嫁ぐ日は、五つ子の誰かが中野でなくなる別れの日。
哀愁を醸しつつも、決着すればノーサイドの清々しさも心地よいバラード。

あとは挿入歌の「ラブ☆バケーション」
{netabare}センター・二乃しか歌わないスクールアイドル?(苦笑)
二乃推しならずとも{/netabare}即死級の萌え殺しウェポンです♪

投稿 : 2024/05/11
♥ : 26
ネタバレ

レオン博士 さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

愛に時間を

【紹介】
劇場版ですが五等分の花嫁1期・2期のあとの話で完結編です、必ず2期視聴後にご覧ください
アニメ2期見てることを前提としていて、あらすじみたいなものはないですが、それで正解だと思います
映画館の客層は大人の男性が多いのかと思いましたけど、思っていたより子どもがかなり多かったです

【シナリオ】{netabare}
視聴前は最終的に結ばれる子中心の話になるのかな?と思ったらそこまで偏っていないのが好印象
文化祭の3日間を、5人それぞれの個別ルートで風太郎とのエピソードを入れてあるので、誰を推していても楽しめる作りになっています

1期2期通して四葉は明らかにエピソードが不足していたので、この子が昔会っていた想い出の子なのかなってのは思っていました
想い出の子は四葉で、最終的に結ばれるのは次にエピソードが薄い五月だと思っていたのですが、予想は外れでそのまま四葉でしたね
五月は信頼関係が強くて恋愛描写がほとんどなかったですが、こういう設定の作品ではとても珍しいですね、これはこれでアリだと思いました {/netabare}

【感想】{netabare}
シリーズ全体を通して、良いところはやはり五つ子の魅力の高さで、話自体は不自然なことが多くてちょっとモヤるけど
美少女の魅力を描くことに長けた作品で、シナリオの微妙さをカバーして余りあるものがありました
風太郎が最初は他人に興味がない→五つ子と接点を持つ→仲良くなったけど見分けはつかない→なんとなく見分けがつくようになる→恋愛を意識しだす→全員を識別できるようになるっていう変化が最初から最後まで一貫していて距離感がわかりやすくて上手いなーって思いました、それと対比した実の父親なのに娘を見分けられないことや、「愛があればわかるはず」っていう言葉、これらはすべて繋がっていて、最初からちゃんとした構想があったのでしょうね、いい作品だと思いました

四葉は思い出の女の子で、温泉旅館でも四葉だけは真っ先に風太郎が見抜いていたというフラグもあるので四葉と結ばれる説得力はあると思いますが、四葉は作中で個別の話が他の4人と比べて極端に恋愛から離れているし薄いのですよね
想い出の女の子で、五つ子が風太郎に会うきっかけを作ったとか色々出てきたけど、どうしても後付けという印象が強くて
アニメを追っていくと直接的な恋愛描写が少ない四葉に思い入れがあるファンは多くないと思うのですよね
振り返ると、勉強会に最初から協力的で風太郎に最初から好感度高そうだったり、旅館でちょっと話しただけで言い当ててたりちゃんとフラグは立ってるのですけど、映画を見ても正直、四葉がどれだけ風太郎のことを想っているのかは小学校の時の想い出以外には特に感じられなくて、
ニノが納得いかない風だったのも無理もないと思うのです
風太郎への恋愛感情の描写が多いミクやニノは視聴者の人気が高いようですし、やっぱり二人が仲良くなるエピソードが作中でないと、唐突感が大きいと思いました、想い出の女の子っていうアドバンテージ以外の魅力やエピソードが不足していると思うのです
つまり何が言いたいかって言うと、四葉の風太郎とのエピソードももっと見たかったってことです!

とはいえ、五人全員に風太郎との強い絆が描かれたシーンが用意されているし、それぞれ将来の目標を定めて弱かった自分を克服して頑張る姿も描かれて、さらにそれぞれの道に進んでもちゃんと繋がっていて、これからも仲の良い6人のまま人生が続いていくって感じで締めていて、五人全員が可愛いなーって印象で終われる良い映画でした {/netabare}

【残念なところ】{netabare}
風太郎の幼馴染のエピソードと五つ子の実の父親のエピソードはどっちも話が唐突で、原作の描写をカットしているのかな?って思いました
こんな薄くて唐突なエピソードならいっそまるまるカットしたほうが良かったように思います
幼馴染のほうはただの薄いエピソードだから我慢できたけど問題なのは実父のほう
五つ子の実父のエピソードはあまりにもリアリティがなくてただ不快なだけで、完結編の劇場版で見たいようなエピソードじゃなかったですね
五月を愚弄するだけで何の愛情も感じられませんでした
揚げ句に五人の父を「無責任」呼ばわりまでしてて、無責任の代名詞みたいな人が何言ってるの?って思った
この人今まで全く示唆するような描写なかったのになんで急に出てきたの?
最低な親でしたね、こんな最低なおじさんの遺伝子が五つ子に受け継がれてなさそうで良かったです
五月にとっては重要なエピソードなのはわかりますけど、それにしても他の4人とこの実父ほぼ何も話してないのも変ですよね
4人が話もしたくないのかもしれませんが、そのへんも今まで何の示唆もなかったのでよくわからないままモヤモヤするエピソードでした
ただ、これによって今までドライで冷たかった五つ子の父に対する好感度が爆上がりでした {/netabare}


【作画・音楽】
劇場版なだけあってとても作画も音楽も良かったです、いい場面でBGMが流れて大事なシーンをロマンティックに演出してくれています、主題歌も良かった!
ただ、劇場版にしては引いた絵になると不安定になるのが気になりますね。

【キャラクター】
わたしはミク推しで、次点がニノですが、二人とも持ち味が良く出ていたし成長も感じられたので満足です

投稿 : 2024/05/11
♥ : 24
ネタバレ

ninin さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

「五つ子と恋愛するお話」完結

原作未読 136分

5/23観に行きました!

テレビ版「五等分の花嫁」の続きです。テレビ版の1・2期を先に観ることをおススメします。

同学年で高校生の五つ子の家庭教師になった主人公の上杉風太郎、家庭教師をして交流していくうちに色々なことが起こり五人と風太郎との距離が縮まっていくのでした。

1期から気になっていた(煽っていたw)五人の中から誰が主人公の上杉風太郎のお嫁さんになるのかが焦点でしたね。

お話は学園祭がメインでした。3年生で最後の学園祭、色々ありましたね。
{netabare}
五人それぞれの風太郎とのシュチュエーションがあるとはw
きちんと繋がるお話でしたし、最後だからあってもいいかなぁと思いました。

色々なエピソードがありましたが、その中で今まで冷たい感じがしたお父さんとのシーンが印象的でした。

1・2期で語られていたかもしれませんが、本当のお父さんではなかったのですね。

私の押しは三玖ちゃん、やっぱりだめでしたかw

予想では本命は五月で大穴が四葉と思いましたが、まさかの四葉wでした。

よく考えたら五人のうち初めて出会ったのは四葉でしたね。

初志貫徹、風太郎と他のキャラとの恋愛絡みが多かったので予想外でしたw
{/netabare}
五人が精神的にも成長して、それぞれが別の夢に向かって走っていく、でも五人は繋がっている、観ていてちょっと羨ましくなってしまいました。

最後は綺麗に終わっています。観終わって凄く清々しい感じがしました。

主題歌は五人の中の方(花澤香菜さん、竹達彩奈さん、伊藤美来さん、佐倉綾音さん、水瀬いのりさん)が歌っています。

最後に、終わって観客の方から拍手が起こりました。私も観て大満足でした。上映時間が2時間以上ということで同じ姿勢で観ていたらお尻が痛くなりましたねw

投稿 : 2024/05/11
♥ : 21

70.2 3 2022年度の恋愛アニメランキング3位
夏へのトンネル、さよならの出口(アニメ映画)

2022年9月9日
★★★★☆ 3.6 (81)
290人が棚に入れました
あの日の君に会いに行く。

ウラシマトンネル――そのトンネルに入ったら、欲しいものがなんでも手に入る。
ただし、それと引き換えに……

掴みどころがない性格のように見えて過去の事故を心の傷として抱える塔野カオルと、芯の通った態度の裏で自身の持つ理想像との違いに悩む花城あんず。ふたりは不思議なトンネルを調査し欲しいものを手に入れるために協力関係を結ぶ。

これは、とある片田舎で起こる郷愁と疾走の、忘れられないひと夏の物語。
ネタバレ

でこぽん さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

過去ではなく未来へ向かって生きてゆく

これは主人公にとっては、ほんのひと夏のできごと。
でも、現実世界では…

ウラシマトンネル。これは過去で失ったものを手に入れることができる魔法のトンネル。
トンネルに入ると過去へ行くことができるそうです。
但しトンネルの中と外とでは時間の流れが違います。
トンネルの中ではわずか数秒の時間でも、トンネルの外では数時間も時間が経過します。


主人公は塔野カオル(とうの かおる)。彼は過去のできごとにより笑顔を失った高校生。

彼には、とても仲の良い妹がいました。
{netabare}でも、些細なことで喧嘩して、その日に妹は亡くなった。
妹は兄に大好きなカブトムシをあげて仲直りするつもりだった。
そのために木に登り、木から落ちて…

その後、家庭は冷え切ってしまい、母は家を出て行きます。
それから父は、酒に酔うたびにカオルを責め続けるのです。
{/netabare}
こんなことがあったら、誰でも笑顔を失います。
だからカオルは、未来を向いて生きていません。
彼の願いはたった一つだけ。{netabare}「妹が生き返ってほしい」それだけです。

それは無理な願いだと、彼にも十分にわかっています。
でも、それができるのならば、他は全ていらない。自分の命すら… 彼にはその覚悟がありました。{/netabare}


そんな彼が駅で出会った転入生の花城あんず(はなしろあんず)。
彼女も決して笑顔を見せない女の子。
{netabare}
大好きだったおじいさんが売れない漫画家だったため、彼女の両親はおじいさんを嫌っていました。
でも、おじいさんの影響で漫画家を目指そうとするあんず。
両親は、彼女の将来の夢を全く認めようとしません。{/netabare}


その二人が偶然見つけたウラシマトンネル。
このトンネルをめぐって物語は進行します。


トンネルの中で咲き誇る紅葉が幻想的で、とても奇麗でした。
二人とも無口で笑顔を見せませんが、お互いに相手を思いやる気持ちが十分に伝わってきます。
だから、この物語は意外と優しい物語です。

私は、ウラシマトンネルよりも、カオルの心の葛藤にいたく感情移入しました。

亡くなった人は、決して戻って来ません。
喧嘩をした後で後悔して、今度謝ろうと思っても、その人は、そのときまでに生きていないかもしれません。
だから、仲の良い人と喧嘩をしたときには、すぐに謝ったほうが良いですね。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 23
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

ウラシマ効果と願いの狭間で浮き彫りになる若気の至り

【あらすじ】
{netabare}欲しいものが何でも手に入る「ウラシマトンネル」
鹿との衝突事故により電車が止まるくらいの田舎を舞台に、
{netabare}亡き妹・カレンと幸福な家庭{/netabare}を取り戻したい高校生男子・カオル。
{netabare}漫画で世界に爪痕を残せる才能{/netabare}が欲しい女子高生・あんず。
二人が願望の代償として世界を捨てるに等しいウラシマ効果をもたらすトンネルを前に、
“共同戦線”を張る内に、距離が縮まる同名ライトノベル(未読)の映画化作品({netabare}83{/netabare}分){/netabare}

【物語 4.0点】
監督・田口 智久氏。

実写「デートムービー」も意識して、主人公の少年少女二人に焦点を絞り原作を再構築。
ヒロイン視点補強を試みて、二人の出会いなどの節目を詳述するため、
三度にわたる駅のシーンをアニメオリジナルで追加し、ボーイ・ミーツ・ガール成分増量。

「ウラシマトンネル」になかなか飛び込めずに事前調査を重ねる二人。
浦島太郎が予め竜宮城に行った後の顛末を知ってしまったら、
亀に乗るのにメッチャ逡巡して物語が停滞するでしょうがw
これが青春を生きる高校生二人なら、人生経験の少なさもあって不安定なアイデンティティや居場所のなさ。
“共同戦線”に下心や恋心はないのか?など整理できない自分の気持ち。
モヤモヤが些細な衝撃で暴発しかねない危なっかしさ。
若さは逡巡すらメインストーリーとして魅力十分な甘ずっぱいドラマに昇華させます。

トンネルの先を描いた終盤も、既視感は覚えるものの見応え十分。
何を言ってもネタバレになりますが敢えて一言だけ叫ぶと、
{netabare}気づくのおせーよ{/netabare}ってことでしょうか。


ガラケーがスマホに駆逐される前の時代が舞台とあって携帯メールが活躍するシナリオ。
連絡事項に改行スペースを重ねてスクロールさせ末尾に{netabare}「塔野くんてちょっとエッチだよね」{/netabare}と本音を仕込む技もベタですがあざといです。
ケータイ共々爆発して下さいw


【作画 4.5点】
アニメーション制作・CLAP

草薙(KUSANAGI)提供の細密な背景に押し負けない映像作りで、夏を始めとした季節感を好表現。
同スタジオの前作『ポンポさん』でも多用した、
色トレス(近景等の色彩に人物の主線の色を合わせる)も駆使して、
世界と登場人物の一体感をアップ。

小物に“演技”をさせる演出も上々で、
特に上記アニオリシーンで“助演俳優賞”級の活躍をしたビニール傘については、
描き込みが面倒な透明色にもめげずに二人の仲を橋渡し。
終盤の{netabare}錆{/netabare}の描写も良い仕事してました。

ただ私としては“助演俳優賞”は笑顔を彩ったヒマワリに授与したい心境です。

ケータイ画面やビニール傘が濡れる心情演出も文学的。
CGで構築された水面もまた波紋で揺れる男女の言動を反映する“役者”ぶり。


【キャラ 4.0点】
主人公の高校生男子・塔野カオル。
携帯プレイヤーは音楽鑑賞じゃなく外界の音を遮断するために使う系。
家庭に安寧の場所はなく、斜に構え、田舎で朽ち果てつつある典型的な疎外感を抱えた主人公少年。
世界から外れかかっている彼のメンタルこそが「ウラシマトンネル」を招き寄せた
という作中での考察、一理あります。

ヒロインの女子高生・花城あんず
東京から田舎に転校して来た、これまた典型的な孤高の黒髪ロングJK。
寄らば斬る(むしろ{netabare}殴り倒すw{/netabare})
そんなテンプレでツンツン、デレデレされたって俺は萌えないぞ。
……と頑なになっていた私ですが、彼女が{netabare}カオルに初めて自作漫画を読まれ論評{/netabare}されるシーンの足芸で、
あっさり萌えて陥落しましたw

それ以上にあんずにグッと来たのは世界に爪痕を刻むと決意する強さ。
特に{netabare}絵で物語る漫画がなくなるはずがない{/netabare}と熱弁する件。
「特別」を目指すヒロインのカッコ良さには異性としてではなく人として惚れ込みます。


【声優 3.5点】
実写とアニメの中間領域を志向し、メインキャストは俳優をオーディションで選出。

主人公・カオル役の鈴鹿 央士さんは声優初挑戦。
スタッフ陣はナチュラルなボイスがハマり役と好評していますが、
私は走って息切れるシーンの演技にしても、自然さより経験不足を感じてシックリ来ませんでした。

声に人生が滲み出る演技だなとも感じはしましたが、
哀しみ故に荒れた生活を送るカオルの父役の小山 力也さんにはまだまだ及ばない印象。

その点、ヒロイン・あんず役の飯豊 まりえさんは、声優経験もありまだ安定感がありました。

それでも、脇に回った畠中 祐さん&小宮 有紗さんじゃ駄目なんでしょうか?
という私の疑問をかき消すほどの演技ではなかったかなと。

ただし、カオルの妹・塔野カレン役の小林 星蘭さんは子役時代のスキルも生かした幼女ボイスで上々。
塔野家の天使に免じて評点は基準点+0.5点で。


【音楽 4.0点】
劇伴は富貴 晴美氏のフィルムスコアリング。
氏のBGMは管弦楽の迫力でねじ伏せるよりも、ピアノを中心に心情にそっと寄り添う方が味わい深いです。
本作でも遅効性の恋に繊細な音色がマッチしていました。

主題歌、挿入歌はeill。
アップテンポな劇伴ソング「プレロマンス」では二人の恋愛未満を的確に射抜き、
主題歌バラード「フィナーレ。」では濡れるリスクが増える相合傘の利点を恋愛面から力説。
一番刺さったのは既存曲のアコースティックアレンジとなった「方っぽ」
世界から外れそうな位の喪失感が痛切で抉って来ます。


【付記】
イケメン俳優&朝ドラヒロインをキャスティングして、
実写恋愛映画の如く、カップル集客も目論んでいるという本作。
ですが初週鑑賞時、まばらな観客は私も含めてアニメ&ラノベファンと思しきソロの男性ばかりで、
デート中のカップルなんて一組も見当たりませんでしたw

プロデュースが滑っている以上、上映期間も長くはないと思われるので、
興味がある方は、夏が消え去る前に、お早めに劇場に行くことをオススメします。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 17

テナ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

青春の共同戦線~ビニール傘をかして返してもらうまでの時間~

この作品は私が、ずっと楽しみにしてた作品の1つです。
原作を知ってる訳でもありません。
私はよくアニメ映画を見にくのですが、その中に必ずある映画告知でよく流れていたからです。
その時に、面白そうと感じたのが「夏へのトンネルさよならの出口」です。

2022年10月も凄く気になる作品がありますが、見に行きたいなぁ(*´˘`*)ニコッ
見たらきっとレビュー書いてると思います。




さて、私がこの作品に感じた事を書いていきます。
物語は、ウラシマトンネルと言う外と中では時間の流れが違うトンネルを発見する。
そのトンネルを潜ると欲しい物が何でも手に入る。
その対価として100年歳をとる。

そんな都市伝説的なトンネル発見した主人公とヒロインはお互いの願いの為にトンネルを攻略する共同戦線を張る!


主人公 カオル

彼の願いは「妹を取り戻す事」
妹のカレンは優しい女の子でした。
彼女は人の幸せを心から願える女の子です。
彼女の夢は「人が幸せになる世界にする事」
この幼い年齢でこの願いは凄いw

この歳だと、普通に可愛いぬいぐるみとか、欲しいゲームとか、願いませんか?
自分が恥ずかしくなるww

主人公のカオルの願いは「カブトムシが欲しい」コレコレ!コレが子供の夢よww

ある日、兄妹喧嘩をしてしまいます。
カオルは妹に「大嫌い」と言われて「大嫌い」と返して家を出ます。
妹はすぐに「嘘!大好き!いってらっしゃい!」と返すのですが、兄はそれも無視します。

彼が帰ると妹は木から落ちて事故死してました。
兄と仲直りしようとして兄の欲しいカブトムシを取りに行ったから起きた事故でした。

うん、これって結構キツいよね。
喧嘩なんて当然します……
でも、喧嘩をして永遠に会えなくなるのは……
私も似た経験あって中学生の時の思春期におばあちゃんと喧嘩しました。
その後、数日後におばあちゃんは亡くなってしまいました。

二度と謝る事もなく一緒に暮らしてる訳でも無かったので、それから言葉も交わさずに……
今でも心残りです。
だから、カオルの気持ちって凄く解ります。

彼が妹を生き返らせたいってのも凄く解る。
正直、多分、ずっと心残りになると思う。
いつになっても、「あの時なぁ〜」ってなります。

それに彼は妹が自分と仲直りしようとしての事なら尚更……
何を犠牲にしても叶えたい願いだと思いました。



アンズ

彼女の願いは「特別な才能が欲しい」
彼女のお爺さんは、漫画家でした。
しかし、売れる事もなく借金してまでも漫画を描き続けた。

そんなアンズも漫画を書く楽しさをお爺さんから教えて貰って彼女も漫画家になりたいと願うも踏み出せないでいました。

父に「お爺さんと同じになるつもりか!」と原稿をビリビリに破かれたそうです。
だから、彼女は漫画家になりたかった。
お爺さんを反面教師扱いする両親を見返したかった。

でも、自分の漫画は、どうしても普通にしか見えなかった。
出版社に持ち込んでもダメだと思い込んでしまう。

でも、自分も何か残したいと考えていました。
それが、彼女にとっては漫画でした。

実は私は彼女に凄く共感出来ました。
私も産まれて来たからには「世の中に何かを残したい」と思ってしまいます。
せっかく産まれてきたのですから私が私個人が生きていた証を……

で、私が他にも共感出来たのは自分の作品を自分の線引きで出版社に持ち込めないって点です。
自分の作品は普通だから……勿論書くがわからすれば面白いから書いてるけど、世の中には更に面白い漫画は沢山ある……だからこのレベルではダメだと……

実は、私も物語を書いていました。
今は書いてませんが……当時は、文庫本作家になってみたいなぁ〜とw
電撃大賞とかに出したいなぁ〜と思って書き上げたりしてましたが、結局は私も同じ理由で足踏みしてました。
文才も言葉も拙いのでw

結局、彼女は最後に編集に持ち込むので私なんかとは全然違うのですけどねw
で、アンズと私って多分、そんなに年齢変わらないです。
2005年になってたから1つか2つ先輩かな?
でも、同年代の子だと考えたら凄いなぁーって本当に思いますね。


だから、彼女の気持ちって色々共感出来ちゃいました。


ウラシマトンネル攻略 8月2日

攻略前日……アンズから自分の漫画を出版社に持ち込んだら気に入って貰えたそうなんです。
担当さんが付いて一緒に漫画を作りませんか?と提案されたのだと。

相談されたカオルは攻略の延期を持ちかけます。
それはウラシマトンネルの中と外では時間の流れが違うので数時間で数年経つ……すると多分、この漫画家への道は失われる……

しかし、カオルは1人でウラシマトンネルへ行きます。
アンズが気付いた頃には手遅れでした。

カオルのした事って正しくはあると思います。
共同戦線だからって最後まで付き合う必要はないし、トンネルは願いを叶えるのではなく、失った物を取り戻すトンネルだからです。
つまり彼女の才能は手に入らない。
それなら、尚のこと自分で掴んだ才能とチャンスを手放してまで一緒に来る必要はないのです。


でも、カオルはその反面考えが足りなかった。
アンズが自分の漫画が気に入られた時に相談したのは一緒に考えたかったのだと思います。

2人で共同戦線を辞めて2人で共に過ごす時間と、一緒にウラシマトンネルで妹のカレンを取り戻して3人で過ごす時間

その為なら、全てを投げ出してでも一緒に居たかった。
彼女は恋をしていたのです。

特別な才能が欲しかった彼女は、今はカオル特別な存在になりたかったのでしょうね……

でも、彼の決意は硬かった。
カレンダーを8月2日から破り捨ててました。
それは、それから先の時間は彼にはないからです。
更にはメールも全て消して、携帯も捨てて……
だから、決意の強さが伝わりました。


カオルは妹に再会します。
妹と兄の失われた時間。
カオルも子供になってました。
つまり時間が戻ったのです。

妹は自分が捕まえたカブトムシを兄にプレゼントします。
あの日、兄と仲良くする為に捕まえようとしたカブトムシ。

2人は幸せそうに話をする。
けど、カオルは気づく。鏡に映る自分の姿は高校生である事に……

そこに捨てたはずの携帯がメールの着信音を鳴らします。
そこには消したメールが全て復活してました。

ウラシマトンネルは無くした物を取り戻すトンネルですが、これでは言葉足らずです。

ウラシマトンネルは大切な物を取り戻すトンネルってのが正確だと思います。

過去の時間に戻ったって事は、元の時間の世界の大切な物を失ったと言う意味です。
だから、携帯もメールも戻った……そして自分の気持ちも。

妹も大事だけど妹と同じくらい好きな人……

実はカオルとアンズの2人はトンネルの外から中へのメールは届かないと実験していました。
しかし、今はメールが届いた。
それは、アンズの時間軸から無駄だ……届かない……そう知ってても送らずにないられなかったメール

経過する時間の中、アンズが送り続けたメール。
そのメールは、カオルが失った時間に送られたメールです。
だから、失った物としてトンネルを通じて彼に届いた。

彼は現実世界に戻るために走り出す!
カレンは知っていたのかもしれません。
兄が別の時間軸の兄だと……だから背中を押した。

カレン「大好きだよ!いってらっしゃい!」
自分に囚われてないで、気にしないでって彼女なりの優しさで。
喧嘩した時に本当に言いたかった言葉を添えて。

彼女の願いはなんだったけ?
「人が幸せになる世界にする事」
彼女が生きた時間のアンズは、引きずってる……カオルの事を……夢を叶えて連載を持っても彼女は笑えなかった……カレンの言う、人が幸せってのはアンズも含めてです。
だから、兄の背中を押した。
兄の幸せを考えられる強さを持ってるから。

私は死んだ人に生きてる人が出来る事って多くはないって思います。
でも、カレンにカオルがしてあげられる事がある。

それは現実世界で幸せになる事です。
人の幸せを願える妹の兄に出来るのは自身が幸せになり好きな人を幸せする事だと思います。
何故ならそれがカレンの願いだから……その1歩になる事が彼女に唯一してあげられる事なのかな?と思いました。

そうして、カオルとアンズは十三年ぶりに再会する。
13年……ウラシマトンネルの時間差……
13年間、ずっと待ち続けてくれたアンズ。
彼が戻る確信なんてなかった。
それでも、彼を待ってくれていた。
本物の愛なんでしょうね。
好きな人にそこまで待って貰えるカオルが幸せ過ぎますねw

理由はどうであれカオルは13年間アンズに心配を掛けて悲しませてきました。
これからの時間は、全力でアンズを幸せにしてあげて欲しいですね(*´˘`*)ニコッ

正直、この作品、ウラシマトンネルの調査中に大幅カットされてるような描写もあるけど、私に共感出来る事が多い作品でビックリしました。


因みに、ココに出てくる大人は最低の象徴として描かれています。

酔って暴力を振るうわ、息子が体調を崩すと心配すらしないで暴言暴力を振るう父親。

娘の夢を反対して原稿を破るわ、田舎に転校させ1人で暮らして頭冷やせとか言う両親。


この2人の出会いに……「親なんか居ないわ」「いいねそれ」って言葉があります。
最初は、カオルのいいね発言にビックリしましたが、これは2人が友達ではなく理解者であるんだろうなぁ〜と見ていて感じました。
ウラシマトンネルの共同戦線もお互いの利害が一致してるからでしょうし、お互いに理解者から恋人になるまでが描かれているのかな?とw

さて、この作品のタイトルって、「夏へのトンネル」はカレンの死んだ夏への入口、「さよならの出口」ってカレンへの未練を断ち切る為の、さよならの出口なんですね。
劇場版みた後に気づきました。
ある意味タイトルで盛大なネタバレされてるけど意外と気づけない上手いタイトルですね。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 9

73.7 4 2022年度の恋愛アニメランキング4位
四畳半タイムマシンブルース(アニメ映画)

2022年9月30日
★★★★☆ 4.0 (51)
338人が棚に入れました
八月、灼熱の京都、左京区。おんぼろアパート「下鴨幽水荘」で唯一のエアコンが動かなくなった。悪友の小津が昨夜リモコンを水没させたためである。「私」がひそかに想いを寄せる後輩の明石さんと対策を協議しているところに、見知らぬ青年が現れた。

彼は25年後の未来からタイムマシンに乗ってやってきたという。そこで「私」は、彼のタイムマシンで昨日に戻り、壊れる前のリモコンを持ってくることを思いつく。ところが、タイムマシンに乗り込んだ小津たちが、リモコンを持ってくるだけにとどまらず勝手気ままに過去を改変しようとするに至り、「私」は世界消滅の危機を予感する。
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

夢破れて四畳半あり

サイエンスSARU制作。

灼熱の京都、下宿先の下鴨幽水荘で、
クーラーのリモコンが壊れ絶望していた私の前に、
タイムマシンに乗ってやって来た青年が現れる。
真夏の大騒動、そして私の恋の行方!?

夢破れて四畳半あり、私の不毛な学生生活も、
下鴨荘を取り巻く面々は変わらず賑やかである。

{netabare}タイムマシンが本物だと知った私たち、
水没したリモコンを救いに、前日に戻るも、
過去の改変は世界を消滅させてしまうのではと、
辻褄合わせに奔走するコメディである。{/netabare}

かみ合わない会話と勘違いに笑える。
娯楽性に溢れ、物語の収まりも良く楽しい。
キャラクターの役割分担も良いし、
単純に映像が美しくなりとても観やすい。

やがて物語の局面が重なり全容が見え始める。
{netabare}私が約束した五山送り火、恋の行方は、
夏の終わりに素敵な余韻を残し心地が良い。{/netabare}

今ここにいることへの祝福、
とても良質な物語だと思います。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 25

「ひろ。」 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

明石さんにまた出会える幸せ♪。

「四畳半神話大系」×「サマータイムマシンブルース」

コラボ作品だったのですね!。視聴途中で知りました^^。
「サマータイムマシンブルース」は、放映当時に気になってましたが
観たのか観なかったのか・・うろ覚えで覚えておらず、タイトルだけは強烈に印象に残ってました。

本作を観るにあたっては、先に「四畳半神話大系」の視聴が必須です!!。
いちおう続編的な構成だと思われます。

劇場版では視聴できなかったので、今回配信版での視聴となりました。
配信版では全5話+配信限定完全オリジナルエピソードとなってますね
今年の年末に発売されるBD-BOXには、劇場版と分割版全5話が収録されるようですね。
となると、第6話は配信版限定になってしまうみたいですね><。


で、視聴開始。

ああ~、なんということでしょう。
ほとんど違和感がありません^^。
自分が知っている「四畳半神話大系」の世界そのものです!。

OP曲の第一声の声が聴こえた時点で鳥肌立っていました♪。
(ASIAN KUNG-FU GENERATIONは既に本作の世界観の一部になってますね)

TV版から10年以上経って作られた続編で
このクオリティは驚愕に値すると思われます!!。

まず作画、ほぼ当時そのまんまですね。
キャラデザイン関係のスタッフ様方が、共通の方が担当されてるのが大きいですね。

声優さんは、どうしても交代せざるをえないキャストとなってしまいましたが
ほぼ問題なく仕上げてくれていました。
個人的には、ガーリッシュナンバーでのくずPのイメージがオーバーラップしてきますがw。

監督さんは残念ながら交代されてしまっているようですが
しっかりマインドが継承されているように感じました。


本作を観て、作画による世界観の表現は言うまでもありませんが
そこに声でキャラ達に命を吹き込む声優さん方の演技・個性が
いかに作品の仕上がりを左右しているのかを再実感させられてしまいました。。

「夜は短し歩けよ乙女」ではこのあたりで断念してしまった自分ですが
本作は、冒頭からすぐに夢中にさせられました♪。


ただ、序盤の登場開始からしばらくは
明石さんに、「あれ?、これ明石さん?」
と感じてしまうこともありましたが
中盤から終盤にかけて微妙に変化していくところが上手いなと思いました。
ぜひ視聴してみてください^^。


本作のタイムマシンを初めて見た時の第一印象。
・・これってドラえも・・・・w


終盤のタイムマシンネタ
・・これってシュタゲ・・・・
・・いや、サマータイムマシンブルースでもそうなのですねw。


もちろん創作作品である以上、どの作品においても
何らかの類似要素やオマージュ等は、ある程度あって当然と思います。
今回はそもそもコラボ作品ですからね。
本作での取り込み方は、本作ならではの絶妙なマッチ・融合具合で、とても気持ち良かったです♪。
どっちが先だとか後だとかはどうでもよくて。


~最後に総括~

ホントもう、明石さんにまた出会えた幸せ♪。
これに尽きます。

本作を作ってくださったすべてのスタッフ・関係者様方に感謝感激なのです!。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 10

ウェスタンガール さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

フラクタル

入れ子細工である。

四畳半という無限ループで惰眠を貪る腐れ大学生、あるいは“のような”存在たちが繰り広げるドンチャン騒ぎを笑う自分を嗤え。

先日、未だエアコンのお世話になる前の夜のこと、ふらりと出かけた枡形商店街の中にある出町座で観ることができた幸せ。

映画館を出た時、そこにはやはり四畳半のフラクタルが静かに、しかし、確かに広がり続けているのだと感じたのである。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 8
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