てけ さんの感想・評価
4.5
恋は儚い人の夢
「夏目友人帳」の緑川ゆきが原作で、同作品のアニメスタッフによって作成された短編映画です。
恋は儚い人の夢。
蛍の様に光り、白銀の雪のように輝き、やがて……。
誰もが開始3分で「あっ……これは」と思うはず。
分かってるんですよ、分かってるのに30分後には泣いている私がいる。
蛍は裏表のない、明るくも利発な女の子。
ギンは雰囲気こそ神秘的なものがあります。
しかし、その行動は迷い、恋し、決断する、真っ直ぐな男。
ピュアなキャラによるピュアなラブストーリーです。
{netabare}気軽に触れられる{/netabare}男子生徒。
蛍から{netabare}のプレゼントのマフラーを身につける{/netabare}ギン。
二人が{netabare}会えない季節も{/netabare}どんどん距離が縮まっていく。
ちょっとしたシーンにも説得力がありますね。
夏のイメージが強い本作ですが、冬があるからこその夏。
それが夏の風物詩である「蛍」と冬のイメージがある「ギン」という名前に込められた意味なのかもしれません。
そしてラスト。
涙が止まらない。
{netabare}
お面越しのとてもとても美しいキス。
その後ギンは転びそうになった人間の男の子に触れてしまいます。
「来い、蛍。やっとお前に触れられる」
お面の向こうの蛍の顔はそれまでにないほどの笑顔でした。
……でもね、これは事故ではないんです。
何年も何十年もお祭りに参加しているギンが、うっかりミスをするとは思えない。
「何があっても、私に触らないでね」
この約束がある限り、ギンも蛍も直接お互いに触れることはできません。
そして、後の妖怪の言葉。
「ギンはやっと人に、触れたいと思ったんだね」
つまり、これはギンの意志だったわけです。
確固たる意志を持っていたわけではないのかもしれません。
しかし、ギンは、蛍との約束を破ることなく、罪悪感を残すこともせず願いを叶えたかった。
そのためにギンは事故を装い、{netabare}「人の手というチャンス」{/netabare}を掴んだのでしょう。
{/netabare}
わずか45分という短くシンプルなストーリー。
それでいながら洗練されていて、温かさ、切なさ、色んな感情が溢れてきます。
美しいお話で完成度が高く、今まで見たアニメ映画の中では一番。
本当に大好きな作品です。