医者で指名手配なTVアニメ動画ランキング 3

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早速見ていきましょう!

77.6 1 医者で指名手配なアニメランキング1位
MONSTERモンスター(TVアニメ動画)

2004年春アニメ
★★★★☆ 4.0 (633)
3497人が棚に入れました
1986年、西ドイツ・デュッセルドルフのアイスラー記念病院に、頭部を銃で撃たれた重傷の少年が搬送されてくる。天才的な手術の腕を持つ日本人外科医・ Dr.テンマは、院長の命令を無視してまでオペを担当しその少年の命を救う。「死」を生む悪魔と「生」を生む医者が出逢ったことで、陰惨な物語の歯車がごとりと廻り始める。
東側の世界では西ドイツ社会を混沌の世界に突き落とすという異常な策謀が進行していた。チェコスロバキア秘密警察のフランツ・ボナパルタらは、子供たちを次々に西側諸国へ送る戦闘要員として教育していく。その過程でヨハンという怪物が生まれた…。
数年後の1995年、テンマと数年ぶりに遭遇したヨハンは確実に巨大な怪物に成長していた。テンマの患者ユンケルスを目の前で何の躊躇もなく射殺するヨハン。自分の中で何かが弾けたテンマは、ヨハンを追いかける。
果たして、テンマはヨハンの殺戮を食い止めることが出来るのか…。ヨハンを衝き動かす『なまえのないかいぶつ』という絵本は何なのか…。ヨハンは何故殺戮を繰り返すのか…。物語はベルリンの壁崩壊後のドイツとチェコを舞台に展開されていく。

声優・キャラクター
木内秀信、能登麻美子、小山茉美、磯部勉、佐々木望

野菜炒め帝国950円 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

助けたあいつはサイコパス。俺の涙は俺が拭く。

ミステリー。
(´・ω・`)タッチも序盤飛ばせって言ったし長いから飛ばしていいよね?
(`・ω・´)ダメ。絶対。
全74話。

コレを飛ばすなんてとんでもない。
タッチに比べれば短いではないか・・。とは言えかなりのボリューム。
しかし紛れも無くキングオブ名作の1つだと思ってる。レビュー数230は本作の面白さを考慮すれば少なすぎる。

どーゆう話なのかと言うと、腕のいい外科医だった主人公が瀕死のガキを救ったのだが、こいつが成長したらどえらいサイコパスだった。
しまった・・なんてものを助けてしまったのだ。やばい、こいつなんとかしないとって感じでサイコパス君の行方を追う主人公。しかも殺人事件の犯人と言う濡れ衣を着せられて警察から逃避行という苦難のおまけつき。
さぁどうなる主人公。大体こんな感じ。

74話の大半は、迫り来る警察をかわしながらヨハン(サイコ)を追って行く話。ほとんどはドイツが舞台。

ストーリー展開は言うまでもなく秀逸。
タグにもあるがまさに1話見たら止まらない感覚。ついつい先が気になり見てしまう。

本作には数多くの登場人物がいるがメインキャラから出番の少ないゲスト的なキャラまで非常に丁寧に描写されてる。このキャラ達と主人公とのエピソードもまた非常に面白い。
メインを張るキャラたちの人間臭さも魅力。

全体的に完成度が異常に高い作品だと思う。

手放しで褒めてるが、当然すべての人に受けるわけでは無い。
100人中100人に支持される作品なんて存在しない。
名作なのは疑いようも無いが、やはり74話の敷居が高いかもしれん。冷静に考えても長い。
でも、これ多分削れないと思うんだよな。確かに無くても困らない回とかは多少あったかもしれないが無駄だったと思える回は記憶する限り1つも無い。いや無かったような気がする。多分無かったと思いたい。
自分的には、ほぼすべての話が面白くもあり泣けもした。
この作品で初めてこの作者を尊敬した。

物語も動く時は激しく動くが全体的にはやや静かに動くような印象。
静かなること林の如く侵略することイカの如くってな感じ。
このへんが人によってはもどかしい。さっさと話進めろやとか言われかねないかもしれない。そんなせっかち君には少し辛いかも。
逆にそんな静かな流れも楽しめるような人であるならばあなたにとって傑作名作になるだろう。

難点があるとするならこんなとこかな。

主軸はあくまでヨハンを追う主人公と主人公を追う刑事なんだけど、この作品の真骨頂は旅先で出会う人たちとの
交流だと思うのよ。これが実にいい話が多くてねぇ・・・。
ちょっと泣きそうになったり感動したり笑えたり。まさに色々入ってる玉手箱ですわ。

長いが時間を取って見るだけの価値は保障する。
見てるとそこまで長さは感じないはず。コレは名作のみが持つオーラの証明。

I recommend this work Please watch it

投稿 : 2024/05/11
♥ : 48

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

長編ミステリーの傑作

随分前に原作を読んで、数年前にアニメ版を観ました。

ベルリンの壁崩壊前後のドイツの社会背景をベースとして、
東西冷戦構造、家族、児童虐待、トラウマ、
果ては病院での権力争いなどをテーマにした作品です。

全75話という長編ですが、
アニメだと音楽や声の魅力もあり
ドイツやチェコの風景にも広がりと奥行きが感じられ、
1日12話ずつ観てしまってたほど引き込まれていました。

ちなみに、デビッド・シルヴィアンが歌う
32話までのED、「for the love of life」
この物語の雰囲気にとてもマッチしていて、好きでした。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 35

お茶 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

愛しくも悲しいけもの(人間)たち

[MONSTER]
浦沢直樹原作。
物語は天才的な技術を持つ医者のDr.テンマが上の命令に背き、双子の子供を助けた。その手術によって出世コースから外れ、時同じくし病院の上層部が殺害され、テンマが濡れ衣を着せされる。その後救った少年のヨハンと言う通称モンスターと出会い、彼を追いながら逃亡生活が始まってゆくミステリー。

本作は全73話で長いったら長い。でも1話も飛ばす気にならなっかたし飽きはあまり無かった。原作に忠実すぎる気がしますが中だるみや引き伸ばしとは違う感じで完走できました。アニメを見ていると萌えるとか、設定が良いとかすぐ感想が出てくるもんですが、これが全く出てこなかった。いやつまらないとか言う訳じゃなく一つに絞りきれないし圧倒されたと言うべきでしょうか。何も言えね~(北島康介)であり、言葉に出来ない(小田和正)でした。

ドイツ、チェコを舞台とした漫画。冤罪、猟奇殺人、医療倫理、病院内での権力闘争、家族の在り方(親子愛、兄弟愛)、人間愛、児童虐待、アダルトチルドレン、トラウマ、東西冷戦構造、ベルリンの壁崩壊の以前以後のドイツ社会などをテーマとしている。wiki参照

このようなのテーマかつ長編でもあるので敷居が高いのは確かですが見てよかったと心底思えた。基本謎の男ヨハンに迫りつつ、逃げるテンマ。テンマを追うルンゲ警部。他にヨハンの妹ニナ、テンマの許嫁や色々出てくる。正直うざったらしい位に。だけどこのキャラ達に影や光を与えつつの締め方が見所の一つ。各方面に散っているキャラ達が、それぞれ情報を掴み伏線が明かされながら繋がる流れが73話全部観れたし、1話完結位の出来で悲しくもあり涙だった。

ドイツで子供に軍事教育が施されそこでヨハンが出来上がる。催眠教育やトラウマになる非人道的な教育が行われていて、その教育についての専門的云々は置いて、浦沢直樹について感じたのは20世紀少年を始めとして、幼少期からの成り立ちにこだわりがあるのかなと。

うちのばあちゃんは良く幼少期の話を聞かせてくれるのですが、トラウマが今になっても残ってて悪夢はその頃の夢なんですよね。高齢の方と話す時も幼少期の話が多くて、私もガキの頃の悪夢をよく見るし、浦沢氏もメディアなどで幼少期の話をよくしている所を見ますね。本作はそこらへんを医療的に浦沢的にエグい位描かれていて正直、苦しくもあった。でも、だからこその感動がそこにはある気がします。

浦沢氏がかつて、一線を超えそう(イカレ)な時があると仰っていましたが、これは一線超えてないと書けないんじゃないかと。このカオスな世界観、人の深層心理まで迫ってくる描写。これは普通じゃない。いい意味で。なんか雑談が多くてすまそですが、積み重ねた怖さ・悲しさの分感動させてくれて〆だけは不気味な程爽快で、チョー気持ちいい!!(北島康介)作品でした。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 32

87.4 2 医者で指名手配なアニメランキング2位
オッドタクシー(TVアニメ動画)

2021年春アニメ
★★★★☆ 4.0 (638)
2119人が棚に入れました
平凡な毎日を送るタクシー運転手・小戸川。身寄りはなく、他人とあまり関わらない、少し偏屈で無口な変わり者。趣味は寝る前に聞く落語と仕事中に聞くラジオ。一応、友人と呼べるのはかかりつけでもある医者の剛力と、高校からの同級生、柿花ぐらい。彼が運ぶのは、どこかクセのある客ばかり。バズりたくてしょうがない大学生・樺沢、何かを隠す看護師・白川、いまいち売れない芸人コンビ・ホモサピエンス、街のゴロツキ・ドブ、売出し中のアイドル・ミステリーキッス…何でも無いはずの人々の会話は、やがて失踪した1人の少女へと繋がっていく。

声優・キャラクター
花江夏樹、飯田里穂、木村良平、山口勝平、三森すずこ、小泉萌香、村上まなつ、昴生、亜生、ユースケ、津田篤宏、たかし、村上知子、高井佳佑、フェニックス、浜田賢二、酒井広大、斉藤壮馬、古川慎、堀井茶渡、黒田崇矢、汐宮あまね、神楽千歌、METEOR
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

タクシードライバーが撃ったものは何か

原案脚本、此元和津也。

冴えないタクシードライバーを、
主人公としたサスペンスフルな群像劇であり、
登場人物は全て擬人化された動物である。
主人公が運ぶ乗客の、何気ない会話から、
やがて失踪中の一人の少女に繋がっていく。

かつてスコセッシ&デニーロは、
戦争で心に深い傷を負った青年を通じ、
虚飾と不正義が蔓延する都会の病巣を描いた。
ここでもそうなのだろうか?
少女の失踪事件が物語の骨子にあるが、
回を追うごとに乗客たちの関係性が、
主人公を通じ点から線へと変わっていく。

{netabare}人が持つ承認欲求、格差が生むもの、
婚活詐欺の裏側、乏しい自己肯定感、{/netabare}
形容しがたいこの有様の底にあるものを、
社会や心の闇とは簡易に片付けるのはよそう。
我々は自覚もないままに人間社会を形成している。
最大の謎は主人公小戸川本人である。
{netabare}彼だけが目にする世界があるのでしょうか。{/netabare}

最終話視聴追記。
まずは設定、演出に称賛を贈りたい。
{netabare}平凡な犯行動機ではあるが返って、
人間社会を生き抜く難しさを物語っている。{/netabare}
少年小戸川の回想が非常に効果的である。

練りこまれた勇敢な物語でしょう。
好みの題材とあり、ほんとに面白い。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 53
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

背乗りタクシー

原作未読

相乗りじゃないよ。
来たよ来た来た!ネタバレ厳禁系。時間延長も使わず1クール全13話で美しくまとめた良作。
タクシーをテーマにすると乗客とのやりとりに様々な人生ドラマを垣間見る秀作ができやすい。フランス映画『TAXI』シリーズみたいにコメディに振るも良し。だが今回のそれはデニーロ主演のマッドでサイコな『タクシードライバー』に近い。

 ふわっとどんな作品か雰囲気だけ
 視聴ハードルとなりそうな先入観

これだけ書いときます。

■ふわっとどんな作品か雰囲気だけ

①オッドだけにオットセイかと思いきやセイウチでした
 ⇒心地よく裏切ってくれます
②あ!?CV花江夏樹さんだったね。納得の最終回
 ⇒演技の幅広げるための意欲作っぽい出だしからの花江節が映えるラスト

月並みですが点と線が繋がる心地よさに身を委ねる作品です。


■視聴ハードルとなりそうな先入観

ずばり動物デフォルメものからくる先入観ですね。あくまで私基準での3類型が以下

1.制作会社/アニメーターや“ノイタミナ”“+ultla”などブランド枠で視聴を決断するやつ
 ⇒『Beasters』『B.N.A』等かっこ良さやメッセージ出てる系。すんなり入りやすい。
2.ケモナー御用達
 ⇒萌え需要供給役。『けものフレンズ』『シートン学園』とかかしら。これもすんなり入りやすい。

1.2.ともに需要はあるのです。私自身2.は興味ないですけど求める層が一定数いることを知っております。そしてこれらグループに入ってすらこないのが

3.みるからに低予算そうな見向きもされないやつ
 ⇒『ビジネスフィッシュ』『アフリカのサラリーマン』等放送した事実すら記憶に残らない系。

この3.に該当しそうなのが本作ではないかと。主要キャラが軒並みアラフォーと巷にあふれてる作品の主人公らより年齢が高い。制作会社聞いたことないし、CVに芸人さん入っててバーター臭ぷんぷんだし、どちらかというと事前の期待はナシですね。
ところがどっこいと掌を返すことなるわけですけど、外形だけでは視聴ハードル高そうなとこあるよねってところご留意ください。

集中して視聴することをお勧めします。早送り厳禁。
そして抑揚のない主人公の発声に眠気との戦いになることも助言しておきます。



※ネタバレ所感

■何を得たのだろうか?

{netabare}ミステリーキッス三矢ユキ殺人事件の真犯人は和田垣さくらということでした。
三矢失踪と内々で処理されたのと並行して後釜に抜擢された娘さん。いかにもな二階堂ルイ逮捕でのびつくり展開だったわけですがちょっと待て。

 デビューご破算じゃないの?

スポットライト浴びる目的での殺人ならその後うまいことスターダムに乗れたのかどうか気になります。背乗り目的の動機で殺人起こしてバレそうになって罪被せただけといえなくもなく、スケールちっさと思えなくもない。{/netabare}


メインの小戸川ストーリーは唸れましたので総じて満足しております。



視聴時期:2021年4月~2021年6月 リアタイ

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2021.07.14 初稿
2022.05.29 修正

投稿 : 2024/05/11
♥ : 52
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

アメリカ的な種の混沌

アニメーション制作:P.I.C.S.、OLM Team Yoshioka、
監督:木下麦、脚本:此元和津也、
キャラクターデザイン:木下麦、中山裕美
音楽:PUNPEE、VaVa、OMSB

絵の雰囲気、話の流れなど、
観るまでのハードルが高い作品かもしれない。
しかし、観始めると良質なシナリオと
連続する謎によって視聴者をグイグイ引っ張る。

登場人物たちが全員動物というのが、
普通のミステリーが得意でない人にも、
新鮮な気持ちにさせてくれる。
まさに私がそうだった。
正直、私はミステリー作品に完全に飽きているので、
そもそも、ほぼ興味が持てないし、
よほど良質なものでないと、
余計な思考ばかりが頭を巡って作品を楽しめなくなってしまう。
しかし、この作品の場合、動物のキャラクターが
そういうミステリー作品鑑賞時の弊害を
ある程度、無効化してくれるのだった。

この作品に興味を持ったことのひとつが、
アメリカの犯罪小説に影響を受けていると
想像できることだった。
日本の昔の犯罪小説やハードボイルドものだと
横溝正史や江戸川乱歩、京極夏彦たちに加え、
大藪晴彦や西村寿行、森村誠一、大沢在昌あたりが挙げられるが、
その影響は皆無に思える。
ところが、ハメットやチャンドラー、ロスマクなどの
アメリカのハードボイルド作品の雰囲気は感じられる。
それは主人公が内省的で気難しいところと、
多種多様な動物たちの絡み合い方に、
アメリカの小説っぽい雰囲気があるからだ。

登場人物がバラエティに富んでいるのも
アメリカっぽい。主人公はタクシー運転手で、
そのほかに看護師、医者、ヤクザ、ヤクザのボス、
悪徳警官、アイドルグループ、そのマネージャー、
キャバクラの店員、お笑い芸人、目立ちたい大学生、
頭の狂った犯罪者などなど。

これだけ多くのキャラについて
それぞれきちんと背景を見せながら、
物語に絡ませて、理由も描いていくのは、
いかにもアメリカの犯罪小説によくある展開といえる。

そのキャラのなかでも面白いのは「ドブ」という存在。
ヤクザの幹部であるゲラダヒヒという動物なのだが、
彼の生き方がとても興味深いし、この「ドブ」という名前が
いかにも社会の底辺をよく表している。

「ドブ」は、昔は街のなかにいくつもあった。
整備されていない下水溝のことで、
ゴミや汚水がいつも垂れ流されていたのだ。
社会の位置づけとしては肥溜めに近い。
最近は全国的にインフラが整備されたため、
「ドブ」は見なくなったのだが、
そんな名前のヤクザの幹部が重要な役割を果たす。
しかも、彼はヤクザとして、男として矜持を
持っているような部分が見え隠れする。

アメリカのブルースの巨星に「マディー・ウォーターズ」と
いう人物がいる。アメリカ音楽が好きなら
ほとんどの人が知っているほどの有名人だが、
彼の芸名を直訳すると「泥水」だったことをふと思い出した。
ボトルネックギターと体の奥底から響いてくるような
太く独特なヴォーカルが一度聴いたら忘れられないほどの
強烈なインパクトを残す。
昔よく使われていた音楽における「アーシー」という言葉は、
まさにマディのためにあるように思える。

私の勝手な想像では、
この作品はアメリカ的な要素に彩られている。
主人公が太っていて、理屈を話すときには
説得力があるのだが、いざ行動すると、
あまり役に立たないのも
アメリカハードボイルド小説の主人公像だったりする。

何だか関係のないことばかり書いてきた気もするが、
この作品は、そういう混沌を広げてみせながら、
緻密な伏線を張り巡らせて、それを1本の線に
上手くまとめていく面白さがある。
常にいくつかの謎が横たわり、想像力を刺激してくれる。
登場人物たちの過去を丁寧に掬い上げ、
ストーリーに組み込んでいく手法も優れている。
おそらく多くの人々がシナリオの展開の妙に
引き込まれていくだろう。

{netabare}この作品のそういう良さが上手く表現されているのが、
ラストの車の飛んでいくシーンだ。
誰もが心に何かを抱え、それぞれが細い糸でつながっている。
そんななか、小戸川が軽々と空を飛ぶ。
関係者は皆、近い場所にいて、その瞬間に直面する。
関係があるようでないような人々が、ある一瞬につながる。
これこそが世界の奇跡のひとつ。
美しい出来事といえるのだろう。
私がこの作品でいちばん気に入っているシーンだ。{/netabare}

人種の坩堝を表現しているような作風だけに、
反面、キャラへの描き方が浅く感じられるのがマイナス点。
ミステリーとしては捻りが足りないし、
そこのキャラの心情表現も描写不足を感じた。
特にドブとの決着については、
私が気に入っていたキャラということもあるが、
あまりにも簡単にまとめようとしているように
見えてしまった。

とは言え、多くの人々を魅了した作品であったことは事実。
4月には事件の裏側と続編を描いた映画
『オッドタクシーイン・ザ・ウッズ』が公開予定。
ローカル局とネット配信だけだった作品だが、
それだけ話題になったのは間違いない。

混沌の先に広がっている景色に着目したい。
(2022年2月5日初投稿)

投稿 : 2024/05/11
♥ : 50

67.1 3 医者で指名手配なアニメランキング3位
錆喰いビスコ(TVアニメ動画)

2022年冬アニメ
★★★★☆ 3.3 (198)
580人が棚に入れました
全てを錆びつかせる≪錆び風≫が吹き荒れる日本。人々は街や生命を蝕む錆に怯えながら暮らしていた。忌み嫌われる≪キノコ守り≫の一族の少年・赤星ビスコは、瀕死の師匠を救うため、全ての錆を浄化する霊薬キノコ≪錆喰い≫を求めて旅をしていた。旅の途中、忌浜(いみはま)で出会った美貌の少年医師・猫柳ミロもまた、大切な姉を蝕む錆の対処法を探していた。愛する者を救うべく、ふたりの少年が手を取る時、新たな冒険が始まる。人の心までは錆びつかない。

声優・キャラクター
鈴木崚汰、花江夏樹、近藤玲奈、富田美憂
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

錆喰い

OZ制作。

全てを錆びつかせる錆び風が吹き荒れる日本、
人々は生命を蝕む錆に怯えながら暮らしている。
指名手配犯ビスコは全ての錆を浄化する、
霊薬キノコ、錆喰いを求めて旅をしている。

初回を観る限りですが、
退廃した終末の世界観が良く描かれている。
東京は爆心地であり、崩壊しているのか、
群馬など県境には壁が並び、関所があるようだ。

独自の社会システムが機能しているのか、
{netabare}現状を打破すべくビスコによるキノコテロ、
いやきっとこれこそが、生存戦略なのでしょう。{/netabare}
キャラクターもまずまず興味深いですね。

世紀末キノコアクション!?

最終話視聴追記。
{netabare}当初は世界設定に興味が持て、
それなりには楽しめたのですが、
9話の衝撃の告白で心が挫け、
どこかで見た滅びの鉄人との超展開、
中盤以降、徐々に興味を失っていました。{/netabare}

アニメでは真価を発揮できずでしょうか。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 36

レオン博士 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

錆びつかない設定と、錆びついたシナリオ

日本中に吹くすべてを錆びつかせる風に怯えながら暮らす人々。
そんな中、錆に蝕まれた大事な人を助けるために2人の少年がコンビ組んで旅をする話でナウシカっぽい世界観設定のアニメ
こういう独特な設定は面白いけど扱いが難しいですね。うまく扱えていない印象でした。
キャラクターは良かったし雰囲気は良くて面白かったけど、シナリオは微妙。

【設定が変わってる】
ビスコの能力や敵の攻撃などがかなり独特で面白い。
キャラクターはビスコの傲慢さがたまに気になるけどいいキャラクター多いです。
ミロがデザインも声も性格も好き。

【音楽】
OPもEDも良曲。

【シナリオ】
序盤、世界観の設定があまり説明されないまま話が進むけど、よくわかんないけどなんか面白くなりそうな感じがずっと続く不思議な作品。
話としては最後まで「面白くなりそう」のまま終わった感じ。絶賛はできないけど、キャラクターが良かったので楽しめました。

二人の目的ははっきりしていますし、旅に出てからはだいぶすっきりして見やすくなりました。

最初は唐突に説明なく過去のエピソードをはさむタイミングが悪くてわかりづらくてとても見づらかった。
そういった3話くらいまでのごちゃごちゃした感じをすっきり作れていれば良かったのと、話の展開が微妙なことが多かった。
それ以外の部分はなかなか良い感じで雰囲気も良く安定して楽しめました。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 25
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

二人のアカボシ

文明崩壊後、全てを錆びつかせる”錆び風”が吹く、荒廃した日本を舞台に、
“キノコ守り”の少年・赤星ビスコと、町医者の美少年・猫柳ミロの旅路を描いた
同名ライトノベル(未読)のアニメ化作品。

【物語 3.5点】
原作1巻分の内容をジックリ1クールで。

序盤3話こそ、トリッキーな時系列前後もあるが、
後は古き良きディストピアを驀進する
アウトロー冒険譚が淀みのないペースで繰り広げられる。

掛け合い含めたノリは良くも悪くも旧世紀末のアクション映画風味。
いつも血塗れなアイツ、ま~た死に損なったのかw
やっぱりラスボスはイカれているのかw
ま~た最終決戦前に{netabare}美女とキス{/netabare}するのかw
洒落たセリフで煙に巻いているけど、これって結局オマージュと称したヒット作からのパクリじゃないかw
芸が無いなと苦笑しつつ、内心は興奮しながらTVロードショーを鑑賞していた
あの頃を思い出しますw
こういうノリが許容できるか否かが折り合いのポイント。
私は、何もかも皆懐かしい……という心境で終始楽しめました。


【作画 3.5点】
アニメーション制作・OZ

聞き慣れない制作会社だが、
陣容は碇谷 敦監督が『ID:INVADED』制作時のメンバーで固めたとのことで、
作画ソースは潤沢ではないが、チームワークは良好だったのか、
工程管理不足による乱調はあまり見られず、
海獣が空を舞う等、尖った世界観の再現に注力できている。

幼少時、動植物、魚、きのこ等の図鑑の写真イラストに、
メカニックの精密さに通じるトキメキを感じた方には刺さるデザイン。
エスカルゴ空機とか最高じゃないかw

銃火器よりも、“キノコ守り”がキノコを咲かせる菌糸を仕込んだ弓矢が上位に来る。
燃費、戦費を無視したバイク、戦車と巨大生物、古代兵器との乱戦。
など戦闘シーンもマニアックだが私は好き。

世間で、右肩上がりの不揃い手書き細字フォントが猛威を振るう中、
ゴツい毛筆調のタイトルフォントや、
太字ゴシックの“群馬”看板などを譲らないのもツッパってます。


【キャラ 4.0点】
“キノコ守り”ビスコだの、町医者・ミロだの、{netabare}チロル{/netabare}だの元気が出そうな菓子名で、
アクが強いメインキャラを固める。
入れ替わりの激しい菓子業界でしぶとく生き残っている菓子名でもあり、
その点からも懐古の主張を感じます。

無敵の最強(恐)アウトロー・ビスコの猛進を、
ひ弱だったミロが知識と医術で視界を補いつつ共闘している内に、
染まっていくのも凸凹バディの典型。

ミロの姉御で凶暴ライダーでもある忌浜警備団長パウーが執拗にビスコを追跡する内に……。
というのもお約束の流れ。


生物では、横歩きより前へ突進する進化を選んだ巨大蟹・アクタガワの“暴れ馬”ぶりが強烈w
上に跳ぶためのジャンプ台でもあるエリンギと合わせ、
動植物ですら下や横道を拒絶して、諦めが悪過ぎるアウトローの生き様の熱量アップに貢献。


【声優 4.0点】
主人公ビスコ役の鈴木 崚汰さん。
個人的には『かぐや様~』の石上会計の草食系な演技の印象が強く、
無頼のアウトロー熱演は新鮮。終盤のバトルなど敵よりビスコの方が鬼気がありました。
ただ、恋バナにはウブなビスコ。動揺する声が可愛かったですw

相方ミロ役の花江 夏樹さん。
優しい町医者さん→空中から弓で狙撃する武闘派へと変貌していく成長度合いを、
声の変化を付けて好表現。最後はどっちがビスコか分からない程ドスが効いてましたw
患者をちゃんと叱れる医者こそ名医です。


彼らに対峙するのが、忌浜県のブラック知事・黒革役の津田 健次郎さん。
クライマックスでは{netabare}テツジンのうめき声{/netabare}までカバーするボスキャラぶり。
ネットリと憎悪を煽る挑発的な声で、メイン二人の怒りの演技をスムーズに引き出す。


シャビ役の斎藤 志郎さん。
荒涼としたディストピアには、ベテランの濁声(だみごえ)のスパイスが欠かせません。


【音楽 4.0点】
劇伴は椿山 日南子氏が多彩なジャンルを駆使して、
文明崩壊後の日本の無国籍感や、心情曲まで幅広くフォロー。
椿山氏に背中を任せた上田 剛士氏が
ハードなロックやテクノを剥き出しにして、思う存分暴れ回るコンビネーション♪
{netabare}最終話ED{/netabare}でもある「ぶち抜け!」辺りは中々のアドレナリンブースターぶり。

OP主題歌はJUNNA「風の音さえ聞こえない」がロックサウンドでディストピアに殴り込み♪
この方どこかで……と思ったら、『まほよめ』OP歌手だったのですね。
曲調、違うから分かりませんでした。意外とロックがお好きなんだなとw
挿入歌「フラクタル」ではバディの結束が深まる瞬間を詩的なロックで捉える。

ED主題歌はビスコ&ミロ「咆哮」
人情ノスタルジー歌謡曲?でデュエットしているのを聞いている内に、
脳裏に浮かんで来たのが、レビュータイトルだったのですが、
この曲、覚えている方どれ位いらっしゃるのでしょうかw

投稿 : 2024/05/11
♥ : 25
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