フルCGで漫画原作なアニメ映画ランキング 2

あにこれの全ユーザーがアニメ映画のフルCGで漫画原作な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月10日の時点で一番のフルCGで漫画原作なアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

72.8 1 フルCGで漫画原作なアニメランキング1位
BLAME!(アニメ映画)

2017年5月20日
★★★★☆ 3.8 (212)
1189人が棚に入れました
テクノロジーが暴走した未来。人類の希望は孤独な旅人に託された――。

過去の「感染」よって、正常な機能を失い無秩序に、そして無限に増殖する巨大な階層都市。
都市コントロールへのアクセス権を失った人類は、防衛システム「セーフガード」に駆除・抹殺される存在へと成り下がってしまっていた。
都市の片隅でかろうじて生き延びていた「電基漁師」の村人たちも、セーフガードの脅威と慢性的な食糧不足により、絶滅寸前の危機に瀕してしまう。
少女・づるは、村を救おうと食糧を求め旅に出るが、あっという間に「監視塔」に検知され、セーフガードの一群に襲われる。
仲間を殺され、退路を断たれたその時現れたのは、“この世界を正常化する鍵”と言われている「ネット端末遺伝子」を求める探索者・霧亥(キリイ)であった。

声優・キャラクター
櫻井孝宏、花澤香菜、雨宮天、山路和弘、宮野真守、洲崎綾、島﨑信長、梶裕貴、豊崎愛生、早見沙織
ネタバレ

waon.n さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

超絶カッコいい!本当に映画館で観たい。

 1時間46分ずっと圧倒されっぱなしだった。絵、音、動き、匂い、熱。匂いや熱まで感じられる気がする。それほどに作りこまれた上質な作品だと思います。ポリゴンピクチャーズさん弐瓶勉さんはシドニアの騎士でしっかりと私の記憶に残っていて、ずっと観たいなーとか考えていたのですがやっと観れた。
 NETFLIXでの視聴だったのですが、映画館で観たかった。2017年の作品という事でなぜ気づけなかったのか後悔ばかりです。(本当に映画館で観たい)

 ネタバレタグ入れますので、未視聴の方はSF好きならぜひ見てもらいたいな、そんでもってその後また読んでもらえたら嬉しいかなと思います。

 魅力を語りたい。
{netabare}
 この作品の最大の特徴は建造物に囲まれている状況であるという事。ここまで閉鎖的な雰囲気の作品も珍しいし、全体的に黒く暗い。アンダーグラウンドを舞台とした物語だという事です。
 アンダーグラウンドというのも、地下という意味だけでは無く、機械の統制を免れて逃げている人間を描いた作品であるので、これは偶然ではなく必然的にこういう雰囲気づくりになったのだろうし、それを映画としてみた時にちゃんと演出されている。
 主人公はあくまでも、キリイという青年の容姿をしたイケメンなんだけれど、それは漫画でも映画でも同じではあるものの、どの視点から観客に見てもらうか意識しているかっていう点でいえば、生き残った人間達の視点からだと思われる。
 彼らは今の私達に一番近い存在です。
 キリイという主人公はサイボーグ化されていて元々は機械側の物だったが盗まれて今の状況になっているという存在。
 シボという科学者は機械が統制を初めてから、それを人間の手に取り戻すために動いていた存在。彼女はキリイに発見されるまで2000年ほど待っていたとかって言っていた(1752万時間位待ってたって)のでちょっと理解しがたい存在になっている。
 そして、機械から逃げている人間達。ある意味一番現在進行形であるはずの人達が視聴している私たちに一番感覚が近いというのも面白いなと思う。
 キリイと科学者の会話に対して「何言ってるか、全然分んねぇ」うん私も!ってなりました。共感できる人達を主体に描いて行くのは、この短い時間でこのハードなSFというちょっと難解な物語を楽しませる上では必要な判断だったと思います。これは英断ではありますが、主人公というキャラクターにスポットを当てる事が難しくなる、なんなら一番遠い存在として描かれているから。
 この不一致に私は最初困惑するも、話が進むにつれて主人公がこの集落にいる人間を助けようと走り出すその行為に感動すら覚えてしまっていた。
 サイボーグ化によって感情がほとんど出ないからこそ、一生懸命に走ったり戦っている姿に、行為そのものに私は感動していたわけです。

更新追記:人間達の機械へのリテラシーは不思議なもので、視聴者からすると完全にロボットに見えるシボに対して、ちゃんと人間扱いしている点は面白い。他の人間を知らない、機械は集落に入れない、会話できない、などが線引きになっているのかなって思いました。これって現代に生きる私達には無い感覚ですが、どこかで機械と人間の線引きを私達だってしているはず。無自覚または無意識なだけで。ものに生命が宿るまたは神がという考え方が日本にはある訳で物に人間と同じような名前を着けるような人だっている。
 そういう意味では線引きは意外に曖昧だし、SFのAIによる攻撃がだとかっていう話になってきたりする訳であります。
 シボというキャラの造形が完全に人間のそれではない、けれど人間はそれを人間と認めることに抵抗がない。という設定は視聴している私達よとはやっぱり違ってちゃんと何千年後の未来を語っているんだという表現になっているんだと感じました。まぁ二回目を1.5倍速位で観て余韻に浸っていたら思い浮かんだことなので、追記という形になってます。
 
 アニメーションとしての魅力。
 廃墟って好きですか?私は割と好きなんです。忘れ去られた地にもかつては人が住んでただろうと思いを馳せるのは好きです。お城を見に行ったりする時にも感じる。これはノスタルジーとも言えるのかもしれませんね。
 あと広い工場とか武骨な建物がその機能のみを意識して作られている純粋さが好きなんですけれど。
 この物語はその巨大な建物が階層のように重なり続けて建設されているって設定のようで、それを表現する絵のカッコよさ、そして不思議にノスタルジックな気持ちにさせられる絵によって世界観を完璧に構築している。画面全体が建物なんです。凄い以外の言葉を見つけられないって感じです。
 そこに、アニメーションとして動きのある機械や人間も3Dでメチャクチャ動きまくります。モーションキャプチャーなのかな?人間の動きがかなりリアルで重力を感じたりすっごい飛んだりする時の踏切とか伸びとか、細かいところまで作りこまれている。
 でも3Dだと、パーツを作りこむのかな?分からんけど装備のデザインも良い。フルフェイスヘルメット必要性がいまいち伝わらなかったんですが、その中で見れるHUDとか好きね。主人公の目とかに入る演出とかも良いくて、FPS視点を入れたりしてSFって感じ出てるのが良いんだよなぁ。
 そして、この作品の一番カッコいいシーンはやはり後半の戦闘シーンですね。主人公の背中を見せながらのティルトアップにより全体像を見せていく演出はマジでカッコいいし、凄く綺麗です。あのシーンだけでも見る価値あるんじゃないかとか大げさに言っておきます。見直したら、これポップのメドローアだ…ってダイの大冒険リメイクしたらメドローアの演出はあれで行きましょう。
 
 閑話休題。
 
 音楽が良いんです。
 音楽って好みによって違うからねーとかじゃなくて、シーンに合っているか、どう見せたいかを理解するための指標にもなったりするから侮れませんな。逆に、BGMをピッタリと止ませて呼気の音だけとかにしたり、上手いんですよねー。
 四足歩行で走り回る機械のシャリシャリした足音とかも気持ち悪いのなんのってもう上手。

 脚本が良い。
 回想から入り、速攻で見せ場、敵との遭遇、主人公に助けられる、主人公の目的、集落の目的、相互の利害関係の構築、中盤で訪れるピンチ、集落への敵の侵入、敵の排除、逃避、エンディング。
 最初から全開で見せ場を持ってくる、中盤でもまたピンチからの脱出後半へのネタ仕込み、後半での最高の戦闘シーン。
 この3幕構成の全てにアニメーションの見せ場を持ってくる。プロットポイントを動かしているのはやっぱり雨宮天さんが演じる づる という少女。この映画ではこの子が物語を動かしているので主人公であるとも言える。ここから見てもこの映画は人間の目線で描かれていて、ちゃんと観ている人を意識した作りになっているんだなって脚本からも感じますね。
{/netabare}

 最高だった訳だけれど、じゃあ物語として、テーマとしてどうなの?ってなると、映画だし良いんじゃない?って感じます。
 結局作り手がどういう作品を作りたいか、どういう物を観てほしいかな訳でそれがハマるかハマらないか。今回は映像として、アニメーションとして最高の作品であるからそれで満足なわけです。私はねw
 テーマがあってそれを見せたいって作品もあるんで、そういう物はそういう物としてちゃんと観れるようにしたいとは常々思っておりますが、この作品に関してそこはあんまり強く描いてないんじゃないかなって思うので、物語としての評価だけは低いです。

 長々と書いてしまいました。全部読んでいただけていたら嬉しいです。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 7

chariot さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

解りやすく入りやすさに配慮の成されたSF作品。

劇場版、約105分程度。
弐瓶勉氏の漫画が原作となるセルルック3DCG作品。
ジャンルはサイバーパンク、バトル的な感じ。

<雑な設定説明>
舞台は何千階層から成る巨大な構造物。
ネットスフィアと呼ばれる都市を管理するシステムがあり、かつての人類はアクセス権となる「ネット端末遺伝子」を持っていた。
突如起きた<感染>によりネット端末遺伝子を持つ人類はいなくなり、暴走するシステムを止める術を持たない人類はネットスフィアを護る為の人工物セーフガードから違法居住者とみなされ攻撃を受ける。
主人公・霧亥(キリイ)は世界を正常に戻す為にネット端末遺伝子を持つ人類を探す旅をしている…

劇場版では霧亥が旅の途中で出会った電基漁師たちをメインとして話を展開する。


◆原作、そして劇場版としての作り。
原作既読ですがこの作品をどう映像化するのか、どんなストーリーでやるのか、非常に気になっていたのですが、感想から言えばアリでした。
まず会話も説明も少なく解りにくい作品である事は有名な作品ですし、全10巻を100分程度の話にまとめるのも不可能。
そこを上手く劇場用にアレンジして初見でも問題なく世界観を掴め、霧亥ではなく電基漁師たちを主軸にする事で感情移入のしやすさにも考慮した良いストーリーとなっていました。


◆物語4.0
序盤でこの世界に住む人々の暮らしを見せ、明確な脅威(敵)を表示し、本来の主人公である霧亥と接触する事で話を動かして行く。
ストーリー的に難しい事もなく細かな設定もストーリーと無関係な部分は削ぎ落とした説明で無理なく受け入れられる作りは親切設計で◎
原作通りの部分とオリジナルな部分とを上手く混ぜ合わせ、緩急のしっかりした展開は劇場版用として良く練られた印象。


◆キャラ4.5
こちらも劇場版用に女性キャラを配し、好感度UPを狙う作戦(笑)
主人公とも言える少女づるは原作にも登場するものの、あちらはファンでももはや覚えている人も少ないと思える程度の存在。
そこを昇華させる事で薄暗い世界にメリハリをつけている。
またタエやフサタといったづるの同年代の仲間を用意し物語に関わらせ、原作との差異を上手く埋めていた。


◆声優4.0
全体的にはもう少し上げてもいいんですが…
何故だろう…
霧亥に櫻井孝宏氏を起用する意味がわかんない(笑)
もうね、喋らないし感情も薄いから別に近所のお兄さんがやってもそんな変わらないです。
づるもタエもシボもサナカンも捨造もおやっさんもみんな良かったです。
(なに、この適当感溢れる感想…)


◆作画5.0
個人的にポリゴンさんの作画というかCGは評価が高いのですが、やはりこの無機質な世界感に非常に合う。
シドニアの騎士から見ても更にCGである違和感が少なくなった印象です。
また背景に関しては弐瓶氏自身も拘りのある方ですが、制作陣の拘りも感じられる素晴らしい出来。
配管の隙間からのカメラワーク、ヘルメッターや網膜に表示される電子情報、建設者や駆除系の動き、重力子放射線射出装置の威力、全てに於いてBLAME!の世界観を損なわない見応えのある映像でした。


◆音楽4.5
音楽というか、音響効果に関しての評価とします。
シドニアの騎士でも細かい音にも拘りを見せていましたが今回も同様。
個人的に凄く気に入ったというか気持ち悪さを最大限に引き出していたと感じたのが駆除系の歩く音。
原作だと歩く音までは表現されていなかったので金属質且つ虫っぽさもある音が非リアルなのにリアル感があって最高に気持ち悪かったです。
重力子放射線射出装置の音も地響きのような轟音で凄かった…

3D音響ドルビーアトモスが体験出来る劇場でも公開されています。
(一番の近場が幕張なのでどうにか時間作って行きたいと思ってますが…)
僕が観たのは7.1chでしたがそれでも十分すぎる程の迫力はありました。


まとめ。
弐瓶氏の描く世界を丁寧に再現し、原作ファンのみに受ければ良いといった一見さんお断りな空気も作らず、すんなりとワールドに溶け込めるように工夫された良作。
単体の物語に関しては突出した良ストーリーとは言えないが構築された世界観や美術、3DCGを限界まで生かしたエンタメ性の高さは特筆すべき事項。
原作ファンやサイバーパンク物が好きな方は勿論ですが、そうでもない多くの方に弐瓶ワールドを体感して欲しいと思います。




最後に…
「俺は霧亥…人間だ」

セーフガードじゃないよ?的な意味で言ったのかもしれないけど、
ここは「お前、人間じゃねえよ!」とツッコムべきなのだろうか…(笑)

投稿 : 2024/05/04
♥ : 14
ネタバレ

しゅりー さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

BLAME!の世界に浸ることができる傑作

2003年頃までアフタヌーンで連載されていた二瓶勉先生のSFコミックが原作。
原作は個人的な感想を一言で表すとある種の変態的な背景フェチ漫画です。
それは人間の制御を離れた機械の無秩序な建築により
どこまでも人工的な建造物で囲われた世界が舞台であるためです。
寡黙な主人公:霧亥はネットへのアクセスと機械の制御が可能な
「ネット端末遺伝子」を持つ人間を探して
「ネット端末遺伝子」を持たない人間を排除する「セーフガード」や
人間と敵対する「珪素生命」と戦いながらひたすら旅をするのですが、
その背景に描かれた世界の圧倒的な書き込みによって読者を魅了していたように思います。

以前にもアニメ化の企画はあったようですがいつの間にか頓挫していました。
二瓶勉先生原作の「シドニアの騎士」のアニメ展開から発展して
劇場用アニメとして2017年5月に公開されたのが本作です。

「シドニアの騎士」同様ポリゴン・ピクチュアズによる制作で
スタッフも2期の瀬下寛之監督とシリーズ構成:村井さだゆきさんなど
共通するスタッフが多いようです。

映像としてはポリゴン・ピクチュアズによる3DCGのアニメーションで
広大な空間が精細に描かれており、キャラクターの衣装や顔の汚しなども
非常にきめ細やかで、さらに抜群のカメラワークで
戦闘シーンの躍動感が素晴らしいです。

物語は原作の一エピソードを素にオリジナルの設定や
キャラクターなども追加されて新たに描かれています。
原作では霧亥、シボを中心とした話に村の人々が関わるイメージですが、
本作では食糧難で困窮した村の人々にスポットをあてた
群像劇として昇華されていて見応えのある物語になっています。
また原作のキャラクターは輪郭線が薄く、表情におぼろげな印象がありましたが
森山祐樹さんのキャラクターデザインにより意志の強い顔立ちで
物語の説得力が非常に増していると感じます。

このキャラクターの意志の強さや村の人々の物語の説得力は
個人的にはBLAME!がアニメになって得ることができた
最大の恩恵だと思っていますので原作をご存知の方には是非見てほしいところです。
もちろん原作を知らなくてもあまり問題ないくらいに
丁寧に世界観を描写してあると思いますので、
ハードなSFの空気が好きであれば是非にとおススメします。

{netabare}
欲を言うなら原作でのサナカンとの初戦闘シーンにおける
セーフガードの気持ち悪い表現(後のガウナに通ずるような)があっても・・・
と思うところですが劇場アニメ的には難しいのかもしれません。
{/netabare}




さて通常のアニメなら上記内容くらいで書き終わるところなのですが
本作には国産アニメではじめてドルビーアトモスという音響システムでの
上映を行ったという特徴があり、音の部分でも是非視聴していただきたいアニメです。
音響監督:岩浪美和さんがドルビーアトモスの「ゼログラビティ」をみて以降、
同じ音響システムでアニメをと求めてきた結果が本作で実現したとのことです。
今まではドルビーアトモス対応の作品を制作するための予算的な制約や
スクリーンの確保が難しいといった制約があったようですが、
某戦車アニメのロングヒットと高い評価によってドルビーアトモスを
使用したアニメの制作、劇場公開が実現されたのだとか。

前述の某戦車アニメでは戦闘シーンの大音響が
特に話題になっていたように感じます。
本作も銃器の音声や巨大な物の衝突音、爆発、
そして主人公霧亥の武器:重力子放射線射出装置の音声など
戦闘関係の音の迫力が素晴らしいです。
ただ、さらに言うなら音が流れていく方向や奥行きが
とても自然に感じられることが魅力です。
特に本作は無秩序に建造されていった都市群という
広大な構造体の中が舞台ですので、その場所ごとに響く音の感触が
全く違って聞こえて菅野祐悟さんの世界観に沿った劇伴音楽と合わせて
まるでBLAME!の世界に迷い込んだような没入感がありました。

残念ながらドルビーアトモスに対応した劇場は全国でも
千葉県、愛知県、兵庫県の3か所しかないとのことですが
もしそうした劇場に足を運べるようであれば
是非体感していただきたいとおすすめします。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 10

59.5 2 フルCGで漫画原作なアニメランキング2位
宇宙海賊キャプテンハーロックSPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK(アニメ映画)

2013年9月7日
★★★★☆ 3.5 (35)
157人が棚に入れました
はるかな未来、もしくは遠い過去かもしれない。 銀河の果てまで進出した時代、残されたフロンティアのなくなった人類は、戻るべき場所=地球への居住権をめぐり紛争を引き起こした。この紛争の切札として建造された四隻のデス・シャドウ級宇宙戦艦。その四番艦・艦長の名前をハーロックといった。 しかし、英雄と呼ばれたハーロックは終戦とともに姿を消した。そして次に姿を現した時、彼は艦首に巨大なドクロを刻んだ海賊船を駆る、呪われた宇宙海賊となって政府に叛旗を翻した。 なぜハーロックは姿を消し、海賊となって現れたのか?彼の目的は? そして今…、ハーロック暗殺計画が発令された!!

声優・キャラクター
小栗旬、三浦春馬、蒼井優、古田新太、福田彩乃、森川智之、坂本真綾、沢城みゆき、小林清志、大塚周夫
ネタバレ

やっぱり!!のり塩 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

大罪を背負い生きる男・・・の物語

■評価
ストーリー : ★★★☆  3.8
演出・構成 : ★★★★  4.0
作画・映像 : ★★★★★ 5.0
声優 : ★★★☆  3.3
音楽 : ★★★★☆ 4.5
キャラ : ★★★☆  3.5

■ストーリー
現代よりも遠い未来が舞台。
人類の銀河探訪の旅が終結し、帰還を望む500億人の
人類が地球に殺到し、移住地を求めカム・ホーム戦争が
勃発。その後、地球は入居禁止惑星として地球連邦政府
から制定され帰る場所を失った人類は鬱屈した世界に
生きることとなります。
そんな世界で、連邦政府に反旗を掲げ抵抗する宇宙海賊
ハーロックと地球連邦政府:元老との戦い、そして
その狭間で翻弄されるイソラ・ヤマ兄弟の物語を描いた
劇場版SFアニメ作品。

■感想
原作は未読・未視聴、初心者レビューになります。
この作品は何故か心に引っかかるものがあり
気になって仕方なかったので、2回目の視聴を
完了してきたのでレビューを更新します。

この作品は二回みても面白い作品でした!!

★★映像と音響★★
まずは作画・映像・音響が素晴らしいです。
3DCGで描ける限界まで挑戦したんではないでしょうか!?
戦艦、銃器類、ボディーアーマー、衣服類は錆び・傷・
質感など細部にわたって作りこまれていますし、今回は
人の表情(毛穴,皺)や効果音まで上手く表現されています。
何よりも、私にとってはアルカディア号を含む艦隊戦や
離発着シーンのデザインや表現はアニメ発想がなければ
描けない秀逸なものだと思ってます。
製作者の熱意を感じます。

★★ストーリーとキャラ★★
心配されるストーリーですが、ハーロックの戦う理由や
過去に犯した大罪、イソラ・ヤマ兄弟の葛藤や苦悩の
物語がテンポよく展開され、起承転結がちゃんと描かれ
てます。また、下記作品テーマが予想外に重く結構見応え
もあります。
『地球と命の輝き』
『人の尊厳と罪』
『人類の発展・繁栄とは何か?』
しかし、テンポやまとまりを意識しすぎたせいか、各キャラ
の背景説明や罪を犯した動機説明が不足しており、人物が
描ききれていないです。あと30分の延長を希望します。

また自分の求めるキャラ(人物像)が描かれているかで
この作品の面白さは大きく左右されます。
私が作品の登場人物に期待するものは、作品の『より厳しい
現実的なテーマ(問題)』に苦悩しながらも、彼らが何かしら
の答えを導き、乗り越える姿(希望)を見せてくれる事です。
そしてテーマ(問題)に対して明確な答えを提示している
もしくは意外性のある答えを提示してくれるものに、より
面白さや魅力を感じます。
本作は私の希望に合致していたので楽しめました!!
 
なので、ハーロックにダンディズムやストイックな強い漢
の姿を求める方、夢や浪漫を求めている方は、この作品の
ハーロックはただ暗くて鬱に見えてしまうと思うので
おススメしません。下手にみると火傷すると思います。

★★声優★★
一番心配である声優は想定通りハーロックと小栗旬さんの
声は全くあっていないので高評価はできないです。
(他のキャラは頑張ってます)
しかし、ハーロックは寡黙な男!!ほとんど喋らず…なので
大体OKぇぇ。原作ファンの方は怒ると思います。

★★考察★★
この作品は中身のある作品で感動できます。
心の引っかかりとなった要因ですが、私の勝手な
妄想ですが、この作品は今の日本社会がどんな状況で
あるのか分かりやすく教えてくれたのでは?と感じます。
これは原発問題を抱える日本の鬱屈した社会と、無知で
あり続けた私自身の罪を投影した作品にも感じました。
ハーロックは許しがたい人物かもしれませんが、私とは
違い自身の罪(真実)と向き合い、逃げずに100年間も後悔と
自責の念を背負い、けじめを付ける方法を探し続けた男です。
小さくても私に『希望』を与えてくれた彼らは、正しく
ダークヒーローです。どうも有難うと言いたいです。

総じて、ネット上の批評板でかなり叩かれている作品ですが
ちょっと可哀想になるくらい・・・です。
私個人としては監督・製作関係者の方々に、この作品に
込められたメッセージをしっかり受け止めました!!
大変お疲れ様でした!!…と言いたい作品です。

視聴前に以下用語は知っておくと良いと思います。
ネタバレはありません。
{netabare}
■デス・シャドウ級戦艦とは
カムホーム戦争時に、地球を防衛するために建造された
4隻の高性能・高出力戦艦の事を言います。
動力機関は古代異星人から伝授されたダークマター
機関を採用しており、銀河最強の戦艦と考えてます。

■ダークマター機関とは?
アルカディア号(デスシャドウ級)の動力機関の名前です。
この機関を使用する事で補給なし無限航行やワープ
艦体のシールド、自動修復機能を可能にしている動力
機関です。まさしく最強の動力です。
しかし、このダークマター機関も暴走すると惑星1個を
破壊・汚染するほどの危険な動力機関でもあるらしい…。

■ガイア・サンクション
銀河系に住む全人類を統治する機関になります。
日本で言うと国会や内閣にあたる機関です。

■ガイア・フリート
ガイア・サンクションを守護する専用の軍事組織です。
{/netabare} 

■説明不足の補完
この作品はハーロックやイソラ・ヤマ兄弟には色々と
説明不足な点があり、誤解を招きやすいです。
この誤解を解くための情報をまとめたので、以下は
視聴した後にみて頂ければ幸いです。
”超長文”と”ネタバレ”になります!!
嫌な方はスルーしてください。

{netabare}
Q1:物語の序盤で、ハーロックは乗船希望者を船から
  突き落として殺すなんて酷すぎるんじゃないのか??
A1:殺していません。湖??に落としただけです。
  乗船希望を『名誉のため』と言っていた男が
  湖から浮き上がっている姿が描かれています。

Q2:ヤマは何故あんな罪を犯したの?
A2:本編ではよく描かれていませんが、彼の母親は
  生物観察官として、火星を第二の地球とし、わが
  子達を鬱屈した世界から救済するために人生を掛けて
  植物の研究をしていたと予想します。
  そんな母から強い影響を受けていたヤマは、ナミと
  一緒に母の夢を実現しようと日々研究に励んでいた
  のでしょう。しかし、何かの悲劇が重なって母の
  夢が実現できなくなった事に絶望し、あの様な事を
  してしまったと考えています。

Q3:イソラは何をしたかったの?
A3:彼は一貫して地球を守ろうとしていました。
  また地球を壊したハーロックと体の自由を奪ったヤマ
  への憎悪に苦しみながらも、愛した人(ナミ)のために
  意志を貫ぬいていました。
  彼こそ隠れたヒーローだと思っています。

Q4:ハーロックは何故あんな大罪を犯したの?
A4:彼は一度は地球を見捨てた人類が都合よく地球に
  戻ろうとカムホーム戦争をおこし、無益な殺し合い
  をしている事を悲しみ、失望していたと予想しています。
  だからこそ、争いの根源である地球を人類未踏の地と
  するために必死に戦っていたのです。しかし、元老達
  の行いにより再び争いの種が撒かれる事に怒り、絶望し
  あの様な事をしたのです。

Q5:元老達はそんなに悪党か??そうは見えませんな!?
A5:悪党らしい悪党ではないですが、大罪人です!!
  彼らは自分たちの利権と保身のために、不都合な
  真実から目を背け続け、一般の国民に嘘の情報を
  植えつけていました。
  何よりも、カムホーム戦争時に和平交渉のため
  という建前で、地球の利権を各惑星の上層部だけで
  牛耳ろうと画策しており、ハーロックの怒りを
  かってあんな事態を引き起こしています。
  諸悪の根源と考えています。

Q6:ラストシーンでハーロックが二人になった!?
  どういう事??何のこっチャイナ??
A6:ダークマターの呪縛から開放された元祖ハーロック
  は最後の戦いで複数の弾丸を身に受け、致命傷を
  受けており、自身の死を持って贖罪を終わらせる
  事を心から願っていた事を考えると、あの後は
  静かに息を引き取ったと妄想しています。
  そしてヤマは新ハーロックとして、元祖から受け
  継いだ意志とアルカディア号で、新たなる戦いの
  ために旅立ちます。再び蒼い地球を取り戻すまで。
  ここからが原作ファンの期待する真のハーロック
  物語が始まると思っています。
  この物語はハーロック・ビギンズだったのです。
{/netabare} 

私の書ける事は全部書きました…ここまでが
私の能力の限界です。この作品のメッセージが
少しでも皆さんの心に届けば幸いです。
長文にお付き合い頂き、ご拝読有難うございました。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 8
ネタバレ

ろき夫 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

想いでの中で飼い殺すか、それとも世代に引き継ぐか

前作からおよそ30年ぶりのアニメ化。
今作の主人公はなんとハーロックではなく、謎の青年「ヤマ」
彼の視点からハーロックの正体に迫っていきます。そしてヤマとは何者なのか!


評判のかなり怪しい映画だったので少し怖かったのですが、思ったより楽しめました。
というのも、序盤でハードルをかなり下げさせられます。

{netabare} ヤマが複数の男たちと、アルカディア号の乗組員の選抜を受けるシーン。{/netabare}

質問者の気に入る解答しないと床の下に落とされるという、お笑いでよく見られる仕掛けを応用。
本来緊張感のあるシーンのはずなのに実際見てみると結構シュールで笑えます。
本編自体もシリアスな話なのですが、些細な不満が積み重なった結果間抜けさを感じる作りに。
海外での先行上映とのことで、そのためか吹き替え感が出ているところにも違和感が。
キャラのルックスも外人さん大歓喜するよう仕様変更。そして金髪のオネーチャン最高。
そしてさらにアルカディア号があられもない姿に・・・。イイ感じにレイプされています。
もうこれは・・・ってことで、亜種として捉えた方が楽しめるなモードに早々と切り替えました。

けど、それぞれのキャラに関して納得のいく描写が与えられ、ストーリーも及第点だったと思います。
結果、こういうハーロックもアリなんじゃないかと思えるまでに。
ただこれを「アリ」とするか「駄作」とするかは旧作への思い入れの強さにもよるのでしょうね。
私は世代ではないし、このシリーズに触れたのは最近のことなので。
旧作を思い出してじんわり感傷に浸るというような楽しみ方は難しいのではないかと思います。

単純に映像はとても綺麗でした。でも想像通りのザ・3DCG!って感じで新鮮さは無かった。
良い意味で印象に残るようなシーンがなかったのも残念。
一つでもガツンとくるシーンがあればまた印象は変わっていたのかもしれない。
あ、でもアルカディア号の頑丈さが完全にネタになっているのは見所かもw
あんな力任せな戦艦戦見たこと無い。
あと、ハーロックのマントがやたらバサバサ仕事しているのも面白かった。
って、全部ネタっぽいものばっかりだなぁ・・・。どこか上滑りしてるんですよね。
そう考えると、セル画ならではの色遣いや独特の渋みこそが
ハーロックのカッコ良さを支えるエッセンスの一つでもあったということでしょうか。

また、個人的にこうして欲しいかったなぁと思うこと↓
{netabare} アルカディア号が今回、幽霊船風なアレンジを受けたのは恐らく、ハーロックの絶望感を反映してのこと。そこでもし、ハーロックの絶望感とアルカディア号の姿がリンクしてるのだとしたら、終盤で彼が希望を見出した際に、アルカディア号の外見に何かしら変化があった方が面白かったはず。電脳化したトチローの精神力で100年前のフォルムに若返えらせるとか。明るい未来への再出発をイメージして。新たなる世界への旅立ちといったような旧シリーズからのロマンもその方が上手く表現できたんじゃないかと。今回の作品に一番足りなかったのは実はそういう演出なんじゃないかと思う。煩わしい権力を跳ねのけて一蹴するような、お前らとは次元がちげーんだよっ!って感じのうっぷんを晴らすような爽快感が無かった。えらそうなこと言って申し訳ないけどw {/netabare}

色々とツッコミどころを抱えた作品になりましたが
「一瞬、一瞬が繰り返されてつながり永遠になる」とハーロックさんが言うように、
ハーロックの活躍する作品がこうして時代の風潮を受けながら作り継がれて
アニメ界に永遠にその名を轟かせ続けるなんてのも面白いかもと、思った。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 7

けみかけ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

福井晴敏が描く宇宙海賊の世界「さあ、ハーロックの時間だ!」

一連の松本零士作品においてメーテルと並ぶ重要人物、「キャプテン・ハーロック」をリブートさせた新作3DCG映画


日本のCGアニメーション映画の最前線に立つ荒牧伸志が監督
『亡国のイージス』や『ガンダムUC』等で知られる福井晴敏が脚本
実制作はセガのゲームムービーや初音ミクのライブパフォーマンスに携わったマーザ・アニメーションプラネットが担当
主演のハーロック、ヤマ、ミーメには俳優の小栗旬、三浦春馬、蒼井優を起用
脇役は沢城みゆき、森川智之など豪華声優陣が固めます


舞台は星間移動が可能となった時代
宇宙開拓の目処が立たず、地球への帰還を余儀なくされた人類だったが既に宇宙で溢れかえった人口を許容できるはずも無く、地球への居住権を求めた人々の争い「カム・ホーム戦争」によって地球圏は疲弊していました
これを収めるべく結成された「ガイア・サンクション」は地球は何人たりとも犯してはならない「聖地」だとして地球圏を永久に封印することを決めた
時は経ち、戦争終結と地球圏封印から100年
戦争の遺産、デスシャドウ級宇宙戦艦4番艦「アルカディア号」は宇宙海賊を名乗る不死身の男、キャプテン・ハーロックの手で蘇る・・・


原作や過去のアニメシリーズとは設定が異なり無関係
純粋に【海賊の生き様】、【アクションエンターティメント】として楽しんで欲しい一作になっています


とにかく注目したいのは美麗なCGで表現される魅力的なキャラクター
不死身の男、ハーロック
かつてのテレビアニメシリーズの「台羽正」をオマージュしたと見れる41人目のアルカディア号乗組員、新主人公「ヤマ」
ハーロックと行動を共にする女性、ケイ


そして、ざっくり賛否が分かれそうなのがアルカディア号の秘密を握る異星人「ミーメ」
ミーメといえば登場する作品によってその容姿や設定がまちまちなことで有名
今作では青白い肌と緑の髪、瞳の無い大きな目と尖った耳
とまあ、思いっきり異形の人として描かれます
(これはオイラ的には正解だと感じてます
下手に媚びた松本美女っぽくならず、『美しい異星人』に仕上がったと思いますし蒼井優の声の演技もミステリアスな魅力を醸し出してます)


ゲスト俳優の演技は良くも悪くも中途半端
決して悪いとは思いませんでしたが物語の後半ではキャラクター達の心情が大きく揺れ動いていくのでその辺りもっと熱の入った声が欲しいとも感じます
かつてのシリーズに思い入れのある人には少し肩透かしを喰らってしまうかもしれませんね
ちなみにモーションキャプチャーを担当しているのは東映特撮ドラマなんかでお馴染みの若手の方々だったりします、こっちの方々は頑張ってますよw


お話の方は二転、三転と展開がスピーディーに切り替わっていくスペクタクル巨編ですが、オイラには少しのめり込める要素が薄かったです
映像は素晴らしいのでCG作品に興味がおありの方にはオススメしたい作品ですね
それとオープニングの酒場で加藤登紀子さん歌声が流れるのはなんかズルイw

投稿 : 2024/05/04
♥ : 15
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