宮沢賢治で蒸気機関車なおすすめアニメランキング 1

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67.9 1 宮沢賢治で蒸気機関車なアニメランキング1位
イーハトーブ幻想〜KENjIの春(アニメ映画)

1996年12月14日
★★★★☆ 3.7 (28)
237人が棚に入れました
周囲に認められない詩や童話の創作を行っていたケンジは、農村の小学校の教師となり、生徒達に自然との対話を説いた。しかし退職後、過酷な自然環境の中でケンジの理想は揺らぎ、挫折しかけた彼は不思議な世界に幻惑される……。宮沢賢治の自叙伝的ストーリーをデジタル技術を駆使した美しい映像で描いたファンタジー・ロマンで、宮沢賢治生誕100周年を記念して制作された。『超時空要塞マクロス』シリーズや『地球少女アルジュナ』などで知られる河森正治が監督・脚本・絵コンテを手がけている。
ネタバレ

ビアンキ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

宮沢賢治のことも、宮沢賢治の作品も大して知らないけど

2015年の12月頃にDVDを購入して、何度か視聴。

1996年に放送されたテレビスペシャルアニメ
全1話

宮沢賢治生誕100周年を記念して制作された、宮沢賢治の自伝的一作。
監督・脚本がマクロスシリーズの原案者であり、メカモノ・ロボットモノのアニメでメカデザインとしてよく名前を見る河森正治氏だったりする。
まぁこの作品ではロボット出てきませんが。


じゃ久々に感想を


まず見て印象に残ったのが、作中ケンジが想像し創造するシーン。

主人公のケンジは作品中で何度も詩的な空想や想像を行うのだが、その空想や想像を見事に映像化している。

教師である主人公が生徒を引き連れ外に飛び出し、いきなり大きな木の前で立ち止まり手帳を出し、「鳥とは青い紐である」
と言うシーンでの多数の鳥が飛び回り、青い紐になるイメージ

主人公が妹のトシと一緒に綺麗な石を光に当てて覗き込み「この石がまだ宇宙に漂うガスだった時…」と言うシーンでの、ズームした石の結晶のイメージから宇宙に銀河のような光の粒が飛んでいるイメージ

特に「鳥とは青い紐である」のイメージでは、大きめの音楽や効果音を付けつつ、映像は3DCGを駆使し飛んでいる多数の鳥が青い紐になっていく様を見事に描いており、
「この石がまだ宇宙に漂うガスだった時…」のイメージは、このあとのシーンの妹の歌が被るように作られており、絵だけでも美しい結晶や銀河の美しさや神秘性をさらに上げている。

この2つだけでも、映像的・演出的に中々レベルの高い作品なのが分かって頂けるかと思うが、極めつけは物語中盤のペンシルアニメーション。

ケンジが妹に自分の書いた物語を語るところからイメージが広がり始め、主人公の語りが切れると
そこからクラシック(?)音楽に乗せて、ケンジの創造した世界、イメージの広がり・暴走が
ほぼ色鉛筆やクレヨンのみで創られたアニメーションで約3分ほど展開される。

これがシュールで、そして美しい。
…なんかもうハイレベルすぎて細かく語れない。
気になった方は是非見て頂きたいです、ほんと凄いので。

ちなみに私が挙げた3つ以外にも主人公のイメージのシーンはたくさんある上、どれも印象的で良い出来なのでご安心?を。


そういった演出的・作画的な部分もさることながら、物語も良く出来ている。

主人公が教師で、時折妙な行動を取る人物であることと、身内や友人との関係性や過去をうまく物語に練り込みつつ説明。
そして紆余曲折を経て教師を辞め農業に勤しむことを決意。
農民に馬鹿にされつつも、新たな農業を模索し努力していく。
 
という物語。
細かくは書かないが起伏がありテンポも良く、見応えのあるシナリオになっていた。

しかし終盤
正直どういう意味なのか何度見ても分かりそうで分からない。
{netabare} 力尽き畑に倒れこむ主人公、そして幻想・幻覚を見る。
幻想の中で長いこと自問自答し、妹の最後の言葉を聞いた結果立ち直り、自分が躓いた石を持って道を走りながら「俺はひとつの修羅なのだ」という結論を出し
{/netabare}
終わり。

…という流れなのだが
{netabare}この主人公の自問自答の意味。
そして畑に倒れているはずの主人公が、死ぬ寸前の?妹に雨雪を持っていくシーン
立ち直る寸前というか立ち直った直後の、2つの汽車が空へグルグルと螺旋状に上っていくクライマックス的なシーン{/netabare}

もっと言うと本作の冒頭のシーンが終盤と似たシーンでありながら、色々微妙に違うというのも…

様々なシーンやセリフが繋がりそうで繋がらない。
色々と解釈を考えてみたりしたが、どれもなんか腑に落ちない。

もしかしたら「何が起きたのかは主人公が分かっていればそれでいいもの」つまり視聴者には理解させる気の無いものなのかもしれない。
主人公が立ち直るときのシーンのクライマックスぶりから見て、ただ単に「色々ウダウダ悩んでたけど吹っ切れた」ってだけなのかもしれない。

この感想を書きながら改めて終盤を見返しているが、やっぱりよく分からない。

宮沢賢治本人や、宮沢賢治作品に対して詳細な知識をお持ちの方なら、はっきりとした意味や解釈が分かるのかもしれないが…
どうなんだろう?


でも意味や解釈は分からなくとも
主人公の自問自答というタメからの、
立ち直る寸前というか立ち直ったシーンには勢いや強いカタルシスがあり、圧倒的で素晴らしかった。

そのシーンと、あとスタッフロールで流れるアヴェ・マリアでもう、終盤のよく分からん部分もひとまず置いといていつも気持ちよく見終わっちゃう(笑)

終盤なにが起こってるのかほとんど意味分かってないですが、私のようなはっきり分かってない奴でもスッキリ見終われる凄く良い終わり方だったと思います。



宮沢賢治の半生を描いた一時間ほどのテレビスペシャルアニメ。
物語はテンポよく起伏があり面白く、所々に挟まれる主人公の空想を見事に映像として視覚化しており非常に見応えのある一作。
終盤が抽象的で、私は正直良く分からなかったもののクライマックスのカタルシスは素晴らしい。

宮沢賢治のことやその作品をロクに知らない私が見ても、1時間ほどで凄く満足できて且つ何度も見返せる大傑作だったという評価なので、
宮沢賢治の作品が好きな方で見てない方は勿論、特別宮沢賢治が好きではなくてもこの作品に興味を持った方は見てみて下さい。
作画的にも全編安定していてスタッフも豪華でペンシルアニメーション凄いので、作画オタな方にも是非!


稚拙なレビューお読み頂きありがとうございます。

初投稿日:2016年8月2日

投稿 : 2024/05/04
♥ : 12
ネタバレ

Dkn さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

難解そうな作風の中に キラリと光る映像の妙

宮沢賢治の半生を追った本作。彼の主義や作風を反映した映像は、
河森監督作品の中でも実写的な表現とファンタジー色の強さが融合された、
特筆すべきアニメーションであるといえる。

映像としての妙を強く感じるアニメで、アニメ映画の「銀河鉄道の夜」よろしく、
擬人化した猫が人物としてデザインされている。

宮沢賢治という人は、裕福な家庭に生まれ自己犠牲の精神にあふれコスモポリタンであったと言われ、
その人物像を映し半生を追うと同時に彼の豊かな創造性を、アニメの様々な手法で描写していた。


話は変わり、アニメーションで一番難しいこととは?

それは、緻密な描き込みでなく激しいバトルシーンでなく1コマで撮ったフルアニメーションでもない。

私個人としては、カメラワークであると思う。

実写映画を撮るときは、イマジナリーライン(想定線)を決め、それを守るための立ち位置や動線を決める。
セットか実際の建物であるかどうかで、カメラが撮りたい位置に行けない場合もあるので、
そういった意味では実写にも制限される部分や表現の幅も狭まる。

その点アニメーションではすべてが架空の空間で行われるため、壁に埋もれようが、地面にめり込もうが、
宇宙からティルトダウンしようが、人体の中を駆け巡ろうが、お構いなしではある。

なら何故カメラワークが難しいのか。

お分かりかと思いますが、虚像だからこそ、一から生み出さねばならず、
コマ毎にすべての“画”(背景,動画,着彩等)を用意しなくてはいけない。
ただでさえすべての作業を分業でやらなくてはいけない、映像を撮る効率として最低レベルの
アニメーションの世界で、実写作品のような撮り方をしてしまうのはナンセンスである。

前提が長くなってしまいましたが、この時代のアニメとして、
この「イーハトーブ幻想〜KENjIの春」は、そのカメラワークの難を解消する、
3DCGと手描きの融合を上手く果たした映像といえる。
{netabare}
冒頭のSL。そしてその後のパッカリと地面が割れ、機械じかけの巨大な歯車が
顔をのぞかせるシーンなど、随所にCGを使用していた。
このシーンも含め宮沢賢治のオノマトペを具現化したような表現が好きな部分である。

ここで感心したのが、CGが浮かないよう手書き作画側の色彩設定や実線などをCG側に寄せて描いていること。

教室で生徒に語りかけるシーンでは、教室の後ろから机の間をわざわざ抜け、
(しかも一度カメラを左に振り、リアルな動きをさせるところなど細かい)
教壇までカメラを動かす場面で、当時では拙かったCG技術を逆手に取り、
教室に差し込む自然光のみを使って影を多く作り、像をぼやかせることによって違和感を軽減している。

映画などの撮影でもあることだが、セットの稚拙さを見せずにかっこ良く撮る手法で、
多用すると飽きが来てしまうが、ここでは上手く嵌めこまれていた。
教室や机はCGだが、主人公や生徒などは手描きであると思われる。
{/netabare}
開始4分で上述の流れがあり、その後もCG以外のアニメーション技法でも物語が展開されていく。

難解さはさほど無く、表題通り架空の理想郷“イーハトーブ”の心象世界を具現化させた部分での
想像力を求められる以外はすんなりと読み解けるかと思う。


すべてを記述するととてつもなく長いためここまで。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 10

あーるぐれい さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

『新しい時代のコペルニクスよ、あまりにも重苦しい重力の法則から、この銀河系統を解き放て!』

『雨ニモマケズ』や『銀河鉄道の夜』で有名な宮沢賢治の半生を描いた作品。所要時間は1時間程度。

宮沢賢治生誕100周年記念の作品なので、
大前提として、賢治の人生や作品についての予備知識がないと楽しみ半減です。
というか、きっと意味不明です。
Wikipedia等で予習してからの視聴をオススメ。

劇中では、明治の貧しい岩手の農村風景と、
童話作家である賢治のファンタジックな空想シーンの対比が印象的。
中盤のペンシルアニメーションを使った空想パート、
そして終盤のCG銀河鉄道の発車シーンは、まさに圧巻のひとこと。
未来を担う若者に向けた『生徒諸君に寄せる』という詩の一節『新しい時代のコペルニクスよ~』の引用は、教育者としての彼の人生、理想、想いをすべて込めた、未来へ贈る魂の一撃。
鳥肌立ちました。

キャラが擬人化猫である点は好みが別れそうですが、仮にシリアスなキャラデザだったら、
きっと重すぎて見てるのが辛くなる物語なので。。。
「にゃ♪」が可愛いし。。w






ここからひとりごと。

大人になって改めて宮沢賢治作品を読み返しましたが、独特の世界観に改めて衝撃を受けました。
そこらに落ちてるステレオタイプなファンタジーとは違って、彼の確かな世界観と天性のセンスに溢れています。
『銀河鉄道の夜』だけでも、白鳥の停車場、プリオシン海岸、アルビレオ観測所、蠍の火、などなど、ネーミングだけで幻想的に感じません?

理想と現実に苦しんだインテリっぽい生き様ですが、死の前夜まで農民の相談に乗り続けた彼の人生は
まるで気高く静かに燃えあがる、青白い炎のよう。
そして『雨ニモマケズ』で語られる、平凡にして完成された理想の人間像。

もちろん美化されてる部分は多々ありますが、100年も前に、こんなに美しく幻想的な物語を書いた人って、すごいと思いません?

投稿 : 2024/05/04
♥ : 17
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