心理学でカウンセリングなTVアニメ動画ランキング 2

あにこれの全ユーザーがTVアニメ動画の心理学でカウンセリングな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月08日の時点で一番の心理学でカウンセリングなTVアニメ動画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

66.1 1 心理学でカウンセリングなアニメランキング1位
空中ブランコ(TVアニメ動画)

2009年秋アニメ
★★★★☆ 3.8 (267)
1406人が棚に入れました
不眠症を患うサーカスの空中ブランコ乗り・山下公平は、着ぐるみを着た謎の精神科医、伊良部(いらぶ)一郎の診察を受けた。
それからというもの往診と称し公平につきまとう伊良部だが、公平のもとを訪れるヘッピリ腰の区役所職員やスキーゴーグル着用のヤクザといった、ちょっと変な人々をおもしろがってばかりいた…。

声優・キャラクター
三ツ矢雄二、朴璐美、杉本有美、森川智之、三木眞一郎、浪川大輔、平田広明、入野自由、高橋広樹、岩田光央、羽多野渉、置鮎龍太郎、古谷徹

四畳半愛好家 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

伊良部先生…なんか変に格好良すぎない?(求めてない)

 簡単に言うと、精神科医伊良部の元に、たくさんの精神的な問題を抱えた患者たちが現れ、回復していく短編集。
 なかなかポジティブな気持ちになれる良い作品です。
 
 原作は奥田英朗の「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」「町長選挙」の伊良部シリーズの既刊三作(2016春現在)から。
 私は奥田ファンでもあるので、すべて読んでいて、特に「空中ブランコ」は直木賞を立派に受賞している名作。「イン・ザ・プール」はギャグ色ばかりが強く、「町長選挙」は正直つまらない。「空中ブランコ」はギャグと一種の感動も詰まっている名作なので、読むならこれだと思う。(時間があるならイン・ザ・プールから読むべきですし、普通にオススメしときます。)

 このアニメ「空中ブランコ」についてですが、独特な作画・演出に独特な内容…変わったアニメが観たい方はチェックしとくべき作品です。
 いい感じにスッキリEDに入る話が多くて、気分のいい作品だと思います。
 電気グルーブのOP・EDは凄く癖になるいい曲です。


以下やや批判的な長めの駄文

このアニメの好き嫌いが分かれそうな演出
・患者の男たちを演じる声優が豪華なんですが、たびたびキャラの顔が演じられている声優さんのものになる
・福井謙二アナウンサーがたびたび解説を加える
・エロい感じのナースが実写である
・色合いが過剰にカラフル
・主人公「伊良部」への原作イメージが崩れないよう伊良部は3パターンある

 個人的に声優の顔になる演出は、慣れたので大丈夫でした。
 アナの解説は、正直いらないです。ただ、トンデモ医学って感じの原作に比べ、アニメ伊良部は割としっかり医学してるみたいなので、解説はあっていいのかも…
 ナース実写も、色合いも正直好きじゃないです。伊良部は変わった人間ですが、あんな芸術的な部屋で診療してるイメージは全くありません。

 そして伊良部に3パターンの演出ですが…正直意味が分からないです。伊良部は「色白のデブ」で「マザコン」で「小学生並みの思考」で「常識が一切通じない」タイプだったはずでは?
 アニメの伊良部は基本的に知的であり、ふざけてるシーンも計算で、決めるところはクールに決める、まるでイケメンな感じの精神科医。
 一方原作伊良部は、適当な解説を加えつつも、基本的に考えずに行動して患者を振り回し、患者さんはあきれる中でヒントをもらい、勝手に回復に向かっていく…。まさに「愛すべき馬鹿医者」
 テイストが全くもって異なっていて、イメージを壊さないための演出だとするなら、感性が全くもってずれている気がする。
 むしろ原作との乖離を際立たせる演出だと思います。

 最後に物語ですが、一話「空中ブランコ」を観た全国の原作ファンは「違う、そうじゃない!」と感じたでしょう。クスッと笑える良いラストシーンなのに…何故変えた!伊良部の阿呆さ加減を変更しているのだから仕方ない気もしますが、勿体ない!話もなんかフワフワしていて、分かりづらく、これだと1話で離れてしまう方が多い気が…。

 あと3話の「恋愛小説家」は原作では「女流作家」なのですが、患者の友人のキャラが個人的に大好きなのに、一介のモブに格下げされていて、目茶苦茶がっかりしました。本当に格好いいキャラだと思うんですが…是非原作「空中ブランコ」をチェック!

 アニオリについては、10話と最終回の11話は、アニメオリジナルだと思うのですが、10話の「オーナー」は演出を含め、凄く良かったです。逆に、最終回の「カナリア」はなんか嫌でした。無理矢理最終回っぽくしたって感じですかね…

 なんか長くいらないこと書いた感じですが、すごく特徴的なアニメで、合う人には合うアニメです。アニメ好きならチャレンジしてみてはいかが?

投稿 : 2024/05/04
♥ : 10
ネタバレ

manabu3 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

この滅茶苦茶な作品は「完璧なものは存在しない」と身を以て示している

色々な意味でぶっとんだ作品。作画には実写が混じり、主人公は三体に分裂し、色彩は眩しいほど派手やかで、扱う内容はデリケートな「心の病」という、一癖も二癖もあるアニメ。お勧め出来る作品とは決して言えないものの、心の病という日の当たらないテーマを扱ったことだけでも意義があり一見に値する。精神科が舞台とはいえ内容は重くなく(寧ろ軽い)、症状も身近なものを扱っている。話は一話完結型であるが、すべての話が繋がっており一つの作品としてしっかりと完成されている。

主人公である精神科医・伊良部一郎はとにかく破天荒だ。そんな主人公の元に様々な症状を患った人々が訪れるのだが、訪れた患者は「とりあえず」ビタミン注射を打たれてしまう。主人公と患者、「どちらが症状を患っているのか?」、そんなことすら思うほど主人公(クマ)の破天荒ぶりは凄絶だ。それをイラッと感じるか、クスッとするかは人によるだろうが、精神疾患という微妙な題材故に好みや評価は極端に分かれるかもしれない。それに加えてこのアニメは「ふざけること」に主眼を置いているようにも思える。

{netabare}このアニメの最後は「No one is perfect!(完璧な人間なんて存在しない)」という言葉で締めくくられる。みんなどこか欠けているから人間は人間であるのだと感じさせる言葉だ。全知全能の神さまじゃない人間は(当たり前だけど)欠点を持つ。辞書には「欠点、欠ける」について「短所、劣っていること、あって当然なことがないこと」と説明してあるが、(辞書の意味を否定するつもりはないけど)それはあくまで考え方の問題であり、必ずしも「悪い意味」に直結しないと私は思う。何故なら繰り返しになるが人は根本的に完璧ではないし、そもそも「欠けていること」は善悪の問題なのかに疑念を抱くからだ。

話は逸れたが、この作品が示唆するであろうことの一つは、もし何か「欠点」で悩みを抱えていることがあるのなら、それは本当に精神を病むほどまで悩む問題であるのかを一度熟慮する必要がある、ということである。詰まる所、作画・色彩・主人公に至るまで「何故か」滅茶苦茶なこの作品は、「自分のことをオカシイと思っているアナタより、この作品の方がよっぽどぶっとんでるよ(笑)」と、身を以て示しているように私には思えるからだ。殊に「医者」の言動・風貌が来訪した「患者」より「狂っている」ように思えたのだが、それは以上のような理由からだろう。デリケートなテーマの中でのそんな型破りの主人公に私は笑ってしまった。些細な悩みが一瞬だけぶっ飛んだような気がした。とはいえ、「狂っている」と上記したが、主人公の治療法は(専門家ではないので分からないが)あながちアリかなとも思える。

最後に、最終話での「カナリア」についての(真面目な)話は示唆に富む描写だった。心の病を患った「カナリア」は、我々が気付かないだけで身近に存在するし、我々自身無意識にカナリアになっているのかもしれない。殊に「カナリアは周りがおかしいことを知らせてくれる英雄」という言葉には考えさせられた。カナリアは「周り(自分も含む!)がおかしいから」カナリアになったのかもしれない。
まず、カナリアの声に気付くこと。
そして、問題の根源はカナリアだけではないということ。
カナリアになるには、理由がある。それは必ずしも先天的なものとは限らない。自らの言動を自己省察すれば「“おまえは”おかしい」という言葉は自ずと使わなくなるのではないか。そしてきっと「カナリア」も減少するのではないかと思う。{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 5
ネタバレ

じぇりー さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

「精神科」を題材にしているという時点で、既に賞賛に値する

かなり視聴者の間で賛否の分かれたという、斬新なテーマ性と演出が際立つ本作だが、私は大いに「賛」の方に一票入れたい。

今でこそようやく日本でも「メンタルヘルス」などという言葉が聞かれるようになり、精神疾患に対する認識も広がっては来ていると思うが、まだまだ偏見や誤解は多い。

この手の病に関わったことのない人がこのアニメを見ると、主人公の精神科医・伊良部を「心を病んだ患者に破天荒な荒療治を施すアホ医者」と評するかもしれない。

逆だ。確かにアニメとして・娯楽作品のエッセンスとして、現実離れしたぶっ飛んだ行動を伊良部は取っているが、本質的には実際の治療で用いられる「行動療法」を、人を食ったような態度を取りつつも、その実、一人一人の患者の症状に合わせて、向き合い・実践している。

これができる医者は現実には少ない。伊良部はそういった意味では十分過ぎる程に、名医なのである。

演出に関しては、ビビッドな色使い、3変化する伊良部、実写のナース、通行人などのモブキャラは段ボールに絵を描いたようなペラペラ姿…というだけで、他に類を見ない演出だというのに、加えて…

各話の主人公となる患者の声優の顔が、アニメにコラージュされて、時々(顔だけ)実写になるという点には驚いた。新しすぎる。

しかし、作り手側にとって本アニメの最も挑戦的だったであろうこの「声優の顔コラージュ」に関しては、関連項目の★を下げさせてもらった。

なぜならば、重要なシーンでの患者の表情がアップになる場面や、そのエピソードに於いては最もキーとなる台詞が語られる場面で、急に患者の顔がアニメから実写になると…

「金歯…」「わ!この人、女の子みたいに眉剃ってる!」「ここで、その表情はないわー…」

…と内容に集中できず、気が散ってしまうのだ。
何気ないシーンにだけ、実写顔を使っていたら、「面白い!新しい!」と思えたのだろうけれど…

逆に、作中最も雑な扱いを受けているのが、段ボールタッチで描かれているモブキャラ達である。

仮に「モブキャラ=健常人・社会全般」と捉えると、この描き方に私はある種の爽快感を感じたが、実はこれ考えようによっては非常に残酷な現実を表している。

要はこういう「薄っぺらな社会」や「他人の気持ちを顧みない人々」が、不器用でも真面目に生きようと懸命にもがいたり、繊細な心を持つ人々を「病」に追いやっているのだ。

最終話で伊良部が放つ{netabare}「普通の人が一番厄介」「あなたは気付かなきゃいけないね。周りにいるすべてのカナリア(精神疾患を持つ人あるいはその予備軍、と私は捉える)の声に。」という言葉{/netabare} は、実に「その通り!」と私は声を大にして言いたい。

一見ギャグタッチで描かれ、現実離れしているように見える本作だが、内容そのものは決してオーバーではない。
特に患者の言動や症状は、どれもある種テンプレート的な典型例だ。

あらゆる人に、是非お勧めしたい作品。

そして、これを見て身近に似たような状態の人が思い当たるようなら、できる範囲で手を差し伸べてあげてほしい。

ただ、伊良部のようなアプローチ方法は、超高等技術なので絶対に真似してはいけない!(笑)

投稿 : 2024/05/04
♥ : 13

71.9 2 心理学でカウンセリングなアニメランキング2位
ワンダーエッグ・プライオリティ(TVアニメ動画)

2021年冬アニメ
★★★★☆ 3.6 (313)
1003人が棚に入れました
「高校教師」「家なき子」「高嶺の花」ほか話題のドラマを多く世に送り出した、脚本家・野島伸司さんが初めてアニメ作品の原案・脚本を手掛けるオリジナルアニメーション。監督は「22/7 あの日の彼女たち」キャラクターPV、「僕はロボットごしの君に恋をする」アニメーションPVの監督他、数多くのアニメ作品に携わる気鋭の演出家・若林信さん、アニメーション制作は「空の青さを知る人よ」「約束のネバーランド」などのCloverWorksが手がける。2021年1月より日本テレビほかにて放送予定だ。

声優・キャラクター
相川奏多、楠木ともり、斉藤朱夏、矢野妃菜喜
ネタバレ

剣道部 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

(視聴開始10秒で思う) あ、これ、適当に観ちゃいけないアニメだ。

[文量→特盛り・内容→雑談系]

【総括】
テーマは、どストレートに「いじめ」。それに付随する、「不登校」「自殺」。

はっきり言って、かなり重いアニメです。観るのが疲れます。過去に、いじめられた経験がある人なら、胸にズシンとくるだろう描写もあります。

それでも、クオリティの高さは確かです。

私の最近の視聴スタイルとして、「クールの始めに、1~3話くらいまでをまとめて観て、切る作品を決める」のですが、本作は、視聴開始10秒くらいで、(作画や演出等から)「これ、適当な気持ちで観ちゃいけないアニメだ」と直感し、1度、視聴を止めました。そして、全話放送後、腰を据えて観ました。

もし本作に興味があったら、負荷が強いアニメなので、じっくり時間をかけて観ることをオススメします。私は、2話以上一気に観るのはムリでした(笑)

ちなみに本作は、「途中」で終わります。数ヶ月後にこの続きがあるみたいなので、アニメそのものに対する感想は、そちらに書きます。この、レビューでは、いじめや不登校に関する私見を。


《以下ネタバレ》

【視聴終了(レビュー)】
{netabare}
先日、「学校に通っている人はロボットに見える」との理由から「不登校系YouTuber」になった少年が、(ほぼ通学していない)小学校の卒業証書を破り捨て、「中学校には進学しない(不登校を続ける)」と宣言したという記事が、Yahoo!のトップページに載っていた。

その少年は、「死ぬこと以外はかすり傷(だから不登校は大した問題じゃない)」と言っています。

それに対して、こんなコメントがありました。

「死ぬこと以外はかすり傷、というのは正しい言葉だと思いますが、それは、人とぶつかり合い、傷つき、それでも立ち上がった人の言葉です。かすり傷すら負わないように生きている人の言葉ではないと思います」

ど正論だなと。

このコメントを借りるならば、本作の4人の少女は全員、「死ぬこと以外はかすり傷」と言える資格があると思います。

物語は途中で終わっていて、評価が難しいアニメですが、この傷つき、戦う4人にそれぞれ、救いがあって納得感があって既視感のない(そしてSFもしっかり回収)、そんなラストが用意できているなら、本作の評価は爆上がりですね。

さて、この直接的なアニメを観た以上、いじめについて書かなければならないかな。

私は、いじめられたことはありませんが、学級の大半から無視されてた時期はあります。小学校4年生くらいの時です。

「それはいじめじゃないのか?」と思うでしょうが、まあ、客観的に観ればいじめなのでしょうが、私はプライドが高くて、「自分がいじめられてる」という状態が許せなかったので、、、

とりあえず、自分を無視しているクラスメイトを、片っ端からぶん殴っていきました(笑)

まあ、小4にしては身体がでかく、剣道で鍛えていたのはラッキーだったのでしょう。無視はすぐになくなりました(勿論、男子しかぶん殴っていませんが、4人目くらいで、他の皆も無視をやめましたよw)。

ようは、「いじめっ子(首謀者)」より、自分の方が怖く(面倒くさく)なったということでしょう。小学生のいじめなんて、しょせんそんなもんです(以降、無視はなくなりましたが、危険人物として避けられましたw)。

ちなみに、その首謀者が、保育園から一緒の幼馴染みで、自分の人生で一番最初に(3歳くらいで)できた友達だったと知ったのは、二十歳を過ぎてからですね。

私自身、もう忘れていたくらいですが、ある同級生と久しぶりに呑んでいたら「実は」と謝られました。曰く、皆も「何でそんなことしなければならないんだろう」と思いながらも、裏では彼が色々やってて、それが怖かったらしいです。

彼は、いわゆる「陽キャラ」でコミュニケーション力が高くて友達も多い。学級のムードメーカーみたいな存在でした。私は単純に昔馴染みの友達の1人として、「頼りになるな~」「凄いな~」と思っていたのですが、そんな彼がまさか皆から「慕われている」のではなく、「怖がられていた(から友達風の奴が多い)」だけで、実はメッチャ嫌われていたことを大人になってから知り、自分がいかに鈍感だったか、何も分かっていなかったかを痛感し、逆に笑えました(笑)

ちなみに、そんな彼はもう地元の呑みには呼ばれなくなりましたね。大人になれば、怖いとかないし。

ちなみにちなみに、クラスの大半が私を無視している時でも、毎日一緒に登下校していた、実家の三軒隣に住むA君は、今でも唯一の親友で、めっっちゃ良い奴です。ガキの自分が折れなかったのは、彼の存在が大きかったのかもしれませんね。

さて、本作はかなり直接的にいじめを取り扱っています。

詳細は余談にありますが、私は、昔より今の方がいじめがひどい、とは思っていません。質はともかく、数は間違いなく昔の方が多かったと思っています。マスコミが報道するかしないかの問題かなと。

いじめについて、昔と今で違うことがあるとすれば、昔はピラミッド型、今はダイヤモンド型と呼ばれていることです。

ピラミッド型とは=ガキ大将型。一部の強者(ピラミッドの頂点)が弱者(ピラミッドの底辺)をいじめるという構図。

この時、いじめられっ子は多数派であり、いじめらっ子同士の連帯感があります。ちょうど、ジャイアンにいじめられる、のび太やその他モブ達が悩みを共有できるという構図に近いですね。

それに対してダイヤモンド型(菱形)とは=数の暴力。ダイヤモンドは中心部分が一番面積が大きい。集団の中で数として最多なのは、「普通」の人。上位と下位は少人数。ダイヤモンド型のいじめは、多数派が少数派をいじめます。この場合、劣等生も優等生も等しくいじめの対象になります。普通(目立たない、はみ出ない、空気を読めること)こそ正義。

ドラえもんに例えるならば、主要キャラになれないモブ達が、のび太も出来杉君もいじめることになります。金持ちのスネ夫も、美人のしずかちゃんも、いじめの対象になるかもしれませんね。

ピラミッド型は、それが腕力であれ学力であれ、「力」がある者がいじめっ子になるのですが、ダイヤモンド型の場合、何の「力」もない「普通」の奴らがいじめっ子になるため、「数の力」(見てみぬふり)しか頼る部分がない。よって、いじめられっ子は少数派となり、孤独に潰されそうになります。

この「いじめられっ子同士の連帯感の有無(孤独になること)」が、昔のいじめ被害者と、今のいじめ被害者の違いと言われています。

さらに、LINEなどコミュニケーションツールが発達したことで、いじめっ子が隠れて連携でき、24時間いじめを行えるのが、現代型のいじめの特徴です。

こういう、現代のいじめの特徴を色濃く、直接的に反映しているのが、本作。

愛は「オッドアイ」という、超少数派。それに加え、イケメン先生に贔屓されているという嫉妬も加わります。7話で「アンチ」が出てきた時、「いじめられっ子はヒーロー」ということを言っていましたが、ある意味で的を射ていたと思いました。

まあ、いじめられる側からすれば、ふざけんなよ、ですがね。

また、愛が登校を再開した後、いじめられなくなったという描写は、凄くリアルだと思います。なぜなら、人が1人死んでいるから。いじめっ子達はビビったことでしょう。自分が逮捕されるのではないかと。

いじめっ子とは、本質的に弱い存在です。「弱い犬ほどよく吠える」と言うけど、正にそれ。自分に自信がなく、他者を貶めることでしか自分を確立できない。

そして、想像力が欠如した、平和ボケ。

以前、テレビ番組のなかで、千原ジュニアさんが、「街中でイキッてる奴いるけど、あいつら、めっちゃゃ強くないとつじつま合わないよな。相手がナイフもってて刺しにきても、余裕でかわせるくらいじゃないと、あんなにイキれないよな」

と言っていましたが、本当にその通り。いじめて、それでただで済むと思っています。「人を呪わば穴二つ」という言葉を知らないのでしょう。バカなんです。

これも詳しくは余談にあるけど、いじめは犯罪なので、いじめっ子にはきちんとした制裁が必要だと思います。ただしそれは、自分が死ぬとか相手を殺すだとかそういうことではなく、きちんと法律に則った方法で。ボイスレコーダーでも、スマホでも良いから、証拠を持って。

私みたいに、周りをぶん殴るというのは極端な行動としても、いじめっ子なんて強くも怖くもなんでもないです。だから、いじめられている人は、あんな雑魚共に屈せず、司法を味方につけて下さい。正義は、自分にあるはずです。

ちなみに、完結編の予想?を少し書くと、彼女らは最終的に皆救われてほしいのですが、それには、マザー・テレサの言葉がヒントになってくると思います。

彼女は、「私は多くの人を救っていると言われますが、逆です。私が多くの人から救われているのです」と言っています。つまり、人を救うことで、自分自身の心が救われるという感覚。

前述の「人を呪わば穴二つ」と真逆の考え方ですね。

彼女らは、エッグを通してたくさんの人の心を救ってきました。もちろん、それは自分自身の目的のためではあるのだけれど、事実として、たくさんの人を救ったことで受けた、感謝の気持ち、得た自信、自己肯定感。繋がれた、友達。

弱いのではなく、優しい彼女らは、他人の心の痛みを考えられるから、傷つくし、攻撃する側に回れない。そんな彼女らが、そして、彼女らのような視聴者が救われるようなラストを期待しています。
{/netabare}

【余談 ~「いけにえの教室」から転載~】
{netabare}
昔あにこれで、この「いけにえの教室」のレビューを書くのが局地的に流行り、その時に書いたレビューを転載します。

私以外でも、何人かのレビュアーさんが、それぞれに「いじめ」に関する私見を書いていますから、興味があったら覗いてみて下さいね♪

↓以下、転載内容

まず私が言いたいのは、「今の子供達は、ここまでバカでもないし、タチが悪くもない」ということです。

このような事案が0だとは言いません。もっと酷いこともあるでしょう。でも、それは本当に一部のことであり、総体として、今の子供達が昔の子供に達に比べ、明らかに人間性が低いとは思ってほしくないです。私感ですが、いじめは昔の方が酷かったように思います(本当に私感です)。

今は、いじめが多いんですか? 酷いんですか?

これは、少年犯罪にも言えます。今の子供達がダメ? 本当にそうですか? それは、マスコミに作られたイメージではないですか? 懐古主義ではないですか? 警視庁の統計を見ると、少年犯罪の件数は勿論、犯罪率も基本的には過去から右肩下がりです。

高度経済成長期の日本はどうだったのでしょうか。ゴミは捨てっぱなし、川の水は汚い、街角で殴り合いの喧嘩はする……例えばそんなこともあったのではないでしょうか。私、個人の見解ですが、日本人の「モラル」は、特に子供世代においては、むしろ高まってきているんじゃないかと思います。

また、本作では、教師が超無能に描かれています。

本当に今の先生が無能かと言えば、正直、疑問です。生徒は勿論、先生方(学校)も頑張っていると思っています。確かにダメな教師もいます。でも、この国の教育は先生方の献身と良心で成り立っている部分もあるように思うのです。

OECDの調査でも、日本の教員は世界の教員の中でぶっちぎりで一番働いていることは明白になっています。給料も特段に高いわけではありません。学力に関しては、GDPにおける公的教育費の割合と学力は基本的に比例していますが、日本だけが異質。日本のGDPに占める公的教育費の支出額の割合は3.2%と、OECD加盟国で最下位(2014年)なのに、学力は大体ベスト10以内で頑張っているのが日本の教育です(とはいえ、このような劣悪な環境で、しかも世間から尊敬されず、アニメでまでバカにされるような魅力のなさでは、よい人材が集まらず、先生の質は下がっていくでしょうね。学力世界一のフィンランドは、博士号をとらないと先生になれず、給料や待遇もよく、子供がなりたい職業1位が教師らしいです)。

このアニメは、現代の子供たちや教師の悪い部分や一部の例を、これでもかと誇張して描いているアニメに感じるんですよね。

と、なんか、ちょっといじめの描写が極端で、(私は基本的に、近頃の若者は的な考え方には反感をいだきがちで)やるせない気持ちになったので、感情的になってしまいました(苦笑)

とはいえ、教育アニメとして、一定の役割はあろうかと思います。ただ、そのメッセージのひとつが「あなたも誰かをいじめたら、いじめ返されるかもよ」では、ちょっと寂しい(決して教育的ではない)。まあ、痛烈ではありますが。

このアニメがうすら怖くて、胸くそ悪くなることには激しく同意なので、このアニメをみて、一人でもいじめに対しての嫌悪や恐怖を抱き、ひとつでもいじめがなくなることを切に願います。

あと、学校現場から、表面的にでもいじめがなくなるためには、以下の言葉が指針となると思います。

『いじめを無くすには、いじめ、という軽い言葉をなくせば良いと思う。いじめ、ではなく、「暴行」「虐待」「恐喝」「殺人」という言葉を使う。いじめは立派な犯罪なのだから、いじめっ子は犯罪者と言う。犯罪という言葉を使い、罪の意識を重くすれば、いじめは減ると思う。』

by 美輪明宏

……激しく同意ですな。さらに言えば、もしいじめられたら、とっとと被害届出して、警察が動く仕組みにすれば良いと思います。「いじめをしない人間に(心を)育てる」のは教育の役割ですが、「いじめをしたこと(行為の結果)に責任をとらせる」のは司法の役割です。

もしいじめで自ら命を断ってしまうくらいなら、警察の力や裁判所の力を借り、いじめっ子の人生に痛恨の一撃を加えてやればいい。遺書でリベンジなんかしなくても、十分に勝てる。今はボイスレコーダーでも隠しカメラでも何でもある。したたかに証拠を集め、出るとこ出てやればいい。

(私はあまり思わないが)もし、いじめっ子の将来まで考えたい(前科をつけたくない)なら、義務教育の間は親に責任をとらせても良い(罰金とか)。いじめを助長、隠蔽する動きがあるなら、教師や学校を訴えても良い。

勿論、いじめられている子どもが精神的に追い詰められ、そんなことが思い付けない情況もわかる。だから、親でも教師でも、周りの大人が遠慮なく訴える。また、訴えるぞと警告できる。訴えがあったら事件性の有無に関わらず警察が動いてくれる。そういうシステムを、雰囲気づくりを、国が率先して行えばやってやれないことではない。学校現場に警察が介入することをタブー視する、教師の努力放棄だとする論調を捨て、むしろ英断だと評価する世論があれば良い。

勿論、それがいきすぎれば、「弱者の強迫」や「国家統制」など、別種の問題を引き起こすかもしれない。でも、いじめによって心に深い傷を受けたり、命を失ってしまうことを考えれば、まだマシかと思う。

そのぐらい、私はいじめが嫌いです。まあ、過激な意見なので、賛否はあるだろうけれど。
{/netabare}

【各話感想(自分用メモ)】
{netabare}
1話目 ☆4
作画良いな。オッドアイだし、不登校だし。いじめ。心の傷とか、そういうこと? 見て見ぬふりをするか否か。なるほど、いじめられたのは自分ではなく、友達か。カラコン、つければ? 

2話目 ☆4
OP、巣立ちの歌か。卒業式の歌で、一番好きなんだよな~、日本語の流れが美しい曲。先生、お母さんとデキテル? いじめを見過ごしてきたくせに、てところかな。今度は、先生がトラウマ。

3話目 ☆4
新キャラ。明るいけど、影がある。がっつり、リストカットを映したアニメは初めて観たな。担任、そっちかい。それ、小糸ちゃんが死んだのは、沢木先生が手を出したから? リスカの位置が、細かい。外側ではなく、内側なのは闇が深い。でも、アイドルだから人目につきにくい二の腕の内側。

4話目 ☆3
ママ、糞過ぎるだろ。男と女の自殺は違う。んなことないと思うけど。

5話目 ☆4
女でいたい毒親ね。なんで私を観るの?(笑) なんか、この4人の友情が深まるのを、誰かが死ぬ前フリとしか思えないな(苦笑)

6話目 ☆4
友達ができたからな。リカ、悪役やってやってんだよ。重いな~。

7話目 ☆4
アンチね。虐められっ子が、ヒーローか。まあ、その流れだろうけどさ、いやいやいやいや、先生も母親もクソだろう。タイミングが違う。子供が苦しんでいるこの状況で、それはない。普通は卒業後、せめて、学校復帰してからでしょう。かなり突っ込むな~。実際、あるしな、連れ子への虐待。ここで学校に行く。先生を、好きなの? 通り雨、なんて、そんな素敵な比喩、とっさに言えるか(笑)?

8話目 ☆4
りか。なかなか闇が深い。悶々はやらしい(笑)。そりゃ、自殺者が出れば、誰ももういじめないだろ。パパ活(笑) 笑いながらする話ではないよな、酔っ払い。共依存。どちらもいない。妄想しちゃうんだよ、逆に。リスカは、ムリに止めたら止めたで、危険なんだよね。宗教か。守られる者、守る者。超電磁ヨーヨー(笑)

9話目 ☆4
ねいる、いわゆる試験管ベイビーか。どんな風に生きたいか。寿、アルビノでオッドアイ。アカ、裏アカ。

10話目 ☆4
男子だと思われ、男子から告白。絵描きとしてが本当の夢。とりあえず髪伸ばせば良いと思うけど、それで女子と見られるのが悔しいというのもあるんだろうね。LGBTは複雑だよな。「体の性は男、心は女、でもレズとして女子が好き(だから普通の恋愛に見える)」とかもあるみたいだし。剣道部の顧問、剣道家の片隅にも置けないクズだな。死の恐怖。トラウマ。

11話目 ☆4
フリル。ここにきて、新しい要素というか、本題に入るか。

12話目 ☆1
よく分からんが、ここで終わりか。一応、後で完結させるみたいですが、やはり、ここを最終話とするなら、この評価です。
{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 23
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

いい作画とは?ここ10年で作画の最高作品かも、と思います。

リアルタイムで評価、22年12月に再評価、今回23年12月に再々評価です。

 といっても、内容については今回は評価せず、作画についてです。いろいろとアニメを見てきましたが映画は別にしてTVシリーズではこの10年くらいでは最高作品は本作ではないかと思います。

 いい作画の定義は私のような素人には難しいですが、私の見解だと回転(振り返り、身体の向きを変える、首を向ける・そむける等含む)を入れているか、構図は横からだけでなく上下左右遠近から見せられているか、構図は的確か、演出と連動して優れたアニメ表現になっているか、手足を丁寧に自然に動かせているか、キャラの表情が自然か、顔の演技に首や肩の動きが含まれているか、髪や衣装にこだわりの動きや工夫があるか、線が丁寧かなど、動きの部分があります。それと重量感ですね。ちゃんとGを感じられるか。季節感・天候、風や温度が読み取れるか。

 そして瞳や髪、アクセサリーの光沢、肌の質感の部分と背景とのバランスなど、原画ではないでしょうが着彩も大きな部分です。

 背景美術は質感。実写ではなくアニメになっているか。遠近法は空気、焦点など工夫があるか、人物の動きを引き立てる色彩・密度か、世界観を表現しているか、陰影・光は美しいか。時間帯や方角、国や場所がわかるか。
 エフェクト頼りにならないか。3D酔いや光酔いはしないよう調整しているか。

 と考えて行くと、本作の完成度の高さは群を抜いているように感じます。そして、そのスタッフの参加作品を見てみると「ダーリン・イン・ザ・フランキス」「明日ちゃんのセーラー服」「その着せ替え人形は恋をする」「ぼっち・ざ・ろっく!」などが並びます。CloverWorksだから当たり前のラインナップではありますが。
「22/7」「アイドルマスターシンデレラガール」は未見ですがアニメータは重なっています。

 プラス「Sonny Boy」「白い砂のアクアトープ」「ゆるキャン△」「DO IT  YOURSELF」など独特の作画で感心したアニメのスタッフも参加しているようです。

 これらのこの何年かで感心したアニメのスタッフが集まって、多分潤沢な予算で贅沢に作ったのでしょう、見返してみると私の好きな作画の条件が高いレベルでほぼ満たされている気がします。

 他に「おにまい」「ヤマノススメNEXT SUMIT」が作画で気になる作品で、本作とこの2作のスタッフの参加率と予算で作画のクオリティは決まるのではないかという気がします。「ヤマノススメSUMIT」は作画の個性ですぎと背景美術、構成で難ありですが、あれも作画はいいと思います。
 あとはサンライズですね「UC」はすごいところはすごかったですから…

 スピード感やバトルシーンなどはいくら凄くても私はあまり楽しめません。ですので「鬼滅の刃」「呪術廻戦」「チェンソーマン」などはすごいんでしょうけど、響きません。(いや、技術だけならチェンソーマンも評価すべきかも…)
 
「ヴァイオレットエヴァーガーデン」はちょっと考えてしまいます。絵はすごいですが、動きとか演技がどうかな、というのはもう1度確認してみます。「甲鉄城のカバネリ」「映像研」「リトルウィッチアカデミア」など気になる作品もありますが、本作とは関係ないのでこれくらいで。

 







再評価。初回時よりは好印象。含意はあるかも。が、あざとい。

 死をテーマにした作品を見たくなって再視聴しました。本作は難解というより煙に巻いている印象を持つ作品なので、設定・裏設定などを考察するよりも大まかな意味を取ったほうがいいかなあと思います。

 アカ・裏アカ・ドット・ハイフンなどが現れます。ネットワークが関連するでしょう。ミテミヌフリ、アンチは当然ネットワーク上の悪意でしょうが、ひょっとしたら現実社会も包括して大衆の悪意と見ることもできます。

 人工人間=AIのフリル=2次元美少女でしょうか?これがひまり=実際の子供を殺す=子供が生まれなくなる。あずさ=妻を殺す。つまり、ネットワークのせいで、結婚・子作りができないということかもしれません。

 あるいはこれは読みすぎかもしれませんが、2次元美少女が実在の少女の存在を消して行く…というような、あるいはアニメによって男性の性が歪むような意味にもとれなくはないです。だから、エロスの戦士=現実の少女が…みたいないみかもしれません。

 少女たちの自殺の原因は主に虐め、大人の論理、性的な原因などでした。フリルはまた誰でもない一般的な少女たちの悪意の象徴でもあるかもしれません。普通の子に作ったフリルが他者との比較での嫉妬で、裏で攻撃をする。

 これの原因を取り除くのがエロスの戦士でタナトス=自殺と戦う。やはり、ここで問題になるのが「エロスの戦士」の意味です。フリルの存在があるのでちょっと分かりづらくなっています。ネットワーク上の性消費に見えてしまいます。

 最後の結論は、ネイルが作り物だったことも踏まえると、ネットワークでつながった友達という風にも見えます。小糸が現実では友達ではなかったと考えると、どうも脳内友達っぽく見えます。
 その小糸が自殺したのは、どこの世界かというと元の世界で、元の世界が夢だとすると抹消せざるを得なかったということでしょうか。ある意味では世界観はSSSSグリッドマンのような印象を受けました。

 全体としては、ワンダーエッグの数字がアドレスとかそういうものにも見えますので、バーチャル=SNSとかネットワーク上の悪意、性消費などで心が殺されるとか、そういう事が言いたいのかもしれません。

 なんとなく、感じるものはあるので、1回目の視聴ほど悪い作品とは思えませんでした。

 しかし、少女の性的な部分を並べて「引き」にしている、あるいは「深み」があるような印象を作っている。大きく見れば含意になるかもしれませんが、本作の制作者側が、自分自身で性消費してるように見え、自己矛盾じゃん、という気がしました。アニメは見ないで実写を見ろとも見えます。

 正直いえば、それっぽいパーツをばらまいて置けば、私みたいな考察厨が適当に意味を付けてくれるだろう?みたいなあざとさを感じなくはないです。

 作画・色合いのビビッドさは素晴らしいと思います。

 良くも悪くも印象に残るアニメで、再視聴できるクオリティはありますね。13話がポカーンで評価を落としたかもしれませんし、改めて見ても説明不足すぎて、そこは仕方ないとは思います。テーマが少女の性消費とかイジメなどを問題にしているようで、あざとい意図も見え隠れするので、素直に評価はできませんけど。




以下 一回目の視聴時です。

{netabare} Ⅾアニメにあったから見ましたけど、あれが特別遍?総集編でなく?たしかに後半は訳の分からない新作パートがありましたけど…?だったら初めから90分の映画にすりゃあいいじゃんという感じでした。
 なお、言葉が過ぎたレビューでしたので若干修正しました。

 総評しますと、現実世界での性的な少女たちの事件・苦悩、パラレルワールド(ことぶき)、AIの死の後押し等々やちちらかすだけやりちらかして、結局結論が出ないような話。
 風呂敷を畳めないので、訳の分からない結末にしています。

 脳死状態の人間の生命維持装置を外すことの意味は、いわゆる尊厳死の問題でおバカな少女たちが感情的に議論しても意味がないでしょう。
 アルビノは単なる色素異常で天才性とは全く関係ないです。貴重な検体って意味が解りません。
 エロスとタナトスという言葉を単純に性と死という言葉に置き換えて、タナトスをエロスの戦士でなんとかする?なんなのそれ?生命を持たないAIの対抗軸でエロスが人間的だって話でしょうか。
 オッドアイの意味は?パラレルワールドに関係している?
 ただし、パラレルワールドは少女たちの救済にも可能性にもなっていない気がします。だって、そこで生きている少女は隣のワールドの少女とは関係なく生きているけど。
 などなど。ギミックを散りばめて雰囲気で何とかしようとしているように感じます。

 私の個人的な感想では、深みも論理性もないと思います。バックボーンも読み取るべき回答もないまま、雰囲気で作ったとしか思えないアニメでした。ただし、エンタメとして楽しもうと思えば楽しめた水準だったと思います。

 ひどいのが今回の特別遍でした。12話までにあったエンターテイメント性がどっかにいっちゃいました。謎を造るだけ作って、最後にあのネイルのはなんなんですか。それともネイルが○○なら、ストーリー全体を解決できる伏線がありましたか?うーん。わかりません。

 特別編は、こんなんだったら作らないほうがましだと思います。



以下 本編のレビューです。

タイトル;性に翻弄され、死を選ぶ少女と救済をテーマ…に見えるが…あれ?

 まず、作画はさすがネット限定のアニメですね。驚異的な美しさです。キャラデザも美少女だらけです。

 ストーリーも、死を選んだ知人の少女を救済するために戦う少女たちが、実は自分たちの心の傷と戦っているような展開で非常に面白かったです。最初のうちは。

 ただ、おや?と思ったのが、引っかからないんですよね。象徴とか謎とかに。スルリとスルーしてしまうような、考察する気にならない。演出の問題なのか、キャラに厚みがないから、エピソードが単調だからなのか。

 と、考えたときに、急に女の子たちの過剰な肌の露出、特に脚の露出や、話題が性的な問題ばかりフォーカスされていることが鼻につきだしました。で、痴漢や性的なイジメ、レイプ、同性愛等々まあ、出るわ出るわの性的なエピソードのオンパレード。

 それが少女たちの人格とか性格の形成にどうかかわっているかとか、何かの問題提起になっているように見えないんですよね。視聴率?(ネットはなんていうのかわかりません)のための、言葉遊びというか…。

 最終的にモロモロ過去の出来事とかSF的な何かがいろいろ出てきて、世界観を見せてくれますが、うーん、やられた!、とか、へー!とかまったく感動がないというか…性的なこと自殺のことを扱っていることに理屈はつけますが…。

 元に戻って、1話を確認したら、第1話のヒロインの心の変化的なものにまったく意味付けがないことに気付きました。ああ、万事がこんな感じだから、引っ掛かりがなかったんだなあ、と。

 私の考えが浅く、解釈が追い付かないのかもしれません。ただ、私にとっては、エロスを全面に出して、稼ごうというお金の匂いがする作品でした。

 なお、面白くないことはないです。見て、損した、という感じでもありません。
 あえて、難解にしないで、このクオリティーでもっと娯楽に寄せたら良かったのに、と思います。 {/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 19
ネタバレ

フリ-クス さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

伝わらない、野島イズム

長いこと待たされた特別編、やっとOAされました。

野島伸司さんらしいというか、なんというか
  う~~~~~ん…………
この人ぐらい『やりたいことが明確なのに理解されない』タイプって、
そうそういないのではないかと思います。

本作もそうなのですが、
野島さんの脚本の多くは重く、痛々しく、時には陰惨でさえあります。
彼は視聴者である若者に対して、
大人がひた隠しにするものを隠そうとしないんです。
(だからPTAとかにぎゃんぎゃん言われたりもするのですが)

人生、お花畑の中だけを最後まで歩いて行ける人はめったにいません。

挫折したり、理不尽な暴力や悪意に苦しめられたり、
努力を揶揄されたり、愛するものを奪われたり、酷い妥協を強いられたり、
騙されたり、裏切られたり、人間扱いされなかったり。
リアルに目をやれば、
いままさにそういう『裏の現実』にさらされている若者が大勢います。

野島さんは、そういう若者たちに中途半端な慰めなどせず、
むしろそういう現実を包み隠さず突きつけたうえで、

             それでも生きろ

というメッセージを作品の中で叫び続けている方です。

{netabare}
本作のタイトルが、そのまま彼の『言いたいこと』に直結しています。
ワンダーエッグ、直訳すると『奇跡の卵』は、
作中に出てくる不思議な卵だけでなく、
なんにでもなれる『無限の可能性を持った若者』にかかっています。
そしてプライオリティ、その若者が最優先で成さなければならないのは、
作中でも明言されていますが
              生きることです。


いじめ、裏切り、教師のパワハラ、同性愛、レイプ、性同一性障害、
まるで三面記事のオンパレードのごとく、
無慈悲な現実にさらされて自死を選んだ子供たちが次々と登場します。

だけど、何があっても野島さんはその死を肯定しません。
それを肯定する声を、断罪し続けます。

生きていたらこんないいことがあるよ、なんて無責任なことは言いません。
ただ『ミテミヌフリ』や『アンチ』をくだらない小者に描き、
次々と爽快にぶった切っていきます。

そしてフリルは『自死の背中を押す第三者』の具象化です。
その存在を前面に出すことによって、
あなたは本当に自分の意志で死にたいの、という問いを投げかけます。

パラレル・ワールドというのは、
  あなたは今よりずっと良いようにも悪いようにもなる、なれる
という無限の可能性を示唆しているように受け取れます。

そして特別編では、ねいるが『あっち側』に行ってしまい、
桃恵は戦意喪失して白旗をあげ、
共にフリルと戦った仲間たちは自然消滅してしまいます。

それでも、アイは最後に『復活』します。
理不尽な自死に対し、
自分の意志で、たった一人で抗い続けることを決めたのです。

          たとえ一人になっても生きろ、戦え。

それが本当に野島さんの言いたかったことではないかと、僕は愚考いたします。
{/netabare}


ねいるはどうなったのかとか、フリルとの決着、
四人組は復活するのか、小糸の自死の真相はなんだったのか、など、
特別編で積み残した課題はたくさんあります。

だから二期なり劇場版なりがあっても不思議ではありません。
むしろある『べき』なのでしょう。

だけど、野島さんはもう言いたいこと言っちゃってるので、
次が『ない』なら『ない』で、
それはもう仕方ないかなあ、と僕は秘かに思っています。

それに、たとえ第二期があったとしても、
野島さんが伝えたいことが
視聴者に届きそうな気がまったくしませんし。

届かないだろうと予想する理由は、大きく分けると三つあります。

{netabare}
ひとつめは『ギミック盛り過ぎ』。

アニメファンに関心を持ってもらおうとしたのか、
全体的なエンタメ性を意識したのか、
プラティだのAIだのパラレルワールドだのワンダーアニマルだの、
いろんなギミックが、これでもか、と詰め込まれています。

だけど、1クールものでここまで詰め込むというのは
  やはり『盛り過ぎ』ではなかろうか、と。
実際、伏線すら回収しきれなかったわけですからね。

いかにもそれっぽいものを配置しすぎちゃったおかげで、
あっちこっち目移りして焦点が定まらず、
逆に根底にあるものが見えにくくなっちゃっている気がします。


ふたつめは『脚本の字数多すぎ』。

野島さんってネットドラマなどで30分枠ちょこちょこ書いてるんですが、
それってだいたい、実尺22~3分ぐらいあるんですよね。
だけどアニメの30分枠って、
ABパ-ト合わせても、実尺20分しかないんです。
それなのに、これまでと同じ分量書いちゃったのかな、と。

だから「テンポがいい」と言えなくもないのだけれど、
どうしても『タメ』と『余韻』にとれる尺が少なくなって、
重い話がさらっと流れちゃっているんです。

作品が扱っているテ-マの重さから考えても、
最低一割、あるいは思い切ってぐらい三割ぐらい字数減らし、
ダイナゼノンぐらいの『間』でやった方が、
どっしりと見ごたえのある作品になったと思います。

 ただし、これは野島さんのせいではなく『監督の責任』です。

 野島さんは、あくまでもアニメは初めての方です。
 彼の言いたい内容を表現するには何枚(文字数)ぐらいが適切なのか、
 あらかじめきちんと伝えておくか、
 上がってきた原稿にリテイクをかけなければなりません。
 決定稿の責任は、すべて監督にあります。

 若林信さんは、この作品が初監督だそうです。
 だからそこまで気が回らなかったのか、
 あるいは野島伸司という名前に気後れしたのかはわかりませんが、
 はっきり言って、大チョンボです。


そしてみっつめ、これが最大の要因なのですが、『ミスキャスト』。

はっきり言って、
メインヒロイン四人では楠木ともりさん以外、
野島さんの脚本を演れるだけの実力がありません。

主役の相川さんは、まだ高校生。
別に若いからダメだということではありませんし、
『ちはやふる』の瀬戸さんみたいに、
回を追うごとに目覚ましい進歩を……と期待したのですが、
最後まで『ちょっとカンのいい高校生』のままでした。

あとの二人、斎藤さんと矢野さんは、
年齢こそ楠木さんより上だけれど、もろ、歌手・アイドル寄り。
テンプレに毛が生えた程度の芝居しかできてません。
ただ『それっぽい』だけで、
少なくとも僕の耳には、痛みもつらみも伝わってきませんでした。

  野島さんの脚本にこのキャスティングは、ないわ。

ただでさえ、前述のように文字数が多くて『タメ』の作りにくい作品です。
ゲストで入った実力派の役者さんたちも苦労していました。
それなのにメインを彼女たちに任せるのは、荷が重すぎました。

ですから正直、誰に対しても感情移入しづらかった、です。

それぞれが『痛み』や『やりきれなさ』を抱えているのはわかります。
だけどそれが全部、軽く感じられるんです。
それはそっちの話だよね、みたいに割り切れちゃう。

最後、アイが復活したときも「あそう、よかったね」みたいな。

せめて楠木さんをアイにあてていれば少しは違ったのでしょうが……
四人が会話していても全然引き込まれないし、
なんかもう作品全体が『他人事』みたくなっちゃっていました。

 これも、監督の大チョンボです。
 楠木さん含め、四人ともみんなSMEがらみのキャストですが、
 グループ会社なんだから、
 楠木さん以外はぜんぶ蹴っ飛ばしちまえばよかったんです。
 それをせず首を縦にふった段階で、
 この作品の失敗が決してしまったと言っても過言ではありません。


{/netabare}

おすすめ度としては、限りなくCに近いBランクです。

映像はすごく素晴らしいですし、
大切なことを伝えようともしてくれているのですが、
いかんせん、伝わりにくい、伝わらない。

ふつうに流して見てたら
  野島は結局なにが言いたかったんだ
みたいな感想しか出てこないだろうと思います。

いろんな伏線を投げっぱなしジャ-マンのまま話を畳んじゃったのも、
アニメなれした方にはマイナス要素かと。
もしも二期があれば、それは回復いたしますが……どうなんだろう?


ただ、レビューでは野島さんを非難する声が多いようですが、

     それは違うだろ、どう見ても監督責任じゃん。

初監督で経験不足だったのか周囲の圧力にびびったのか、
詳しいところはまったくわかりません。
だけど監督は、出来上がった作品が全てです。
  野島さんの世界を届けるだけの力量がまだ備わっていなかった
という評価は、避けることができないんじゃないかと。


これに懲りず、
野島さんにはこれからもアニメに挑戦して欲しいと思います。

  もうね、人のカタチすらしていない『マンガ映画』はうんざりなんです。

もちろん、アニメ専業の作家・脚本家さんのなかにも、
素晴らしい方がたくさんいらっしゃいます。
野島さんにも、時々でいいからその輪に加わってもらい、

  ジャパニメーションの発展に貢献していただきたいと、
  心から願う次第であります。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 22
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