ぺー さんの感想・評価
4.4
戦史モノ苦手でも無問題な安心設計
原作未読
なんとなく。。。三国志なら知ってるんですけどね。
内容についてはあまり触れません。まずは唄ってみよう。
アルプス一万尺
小槍の上で
アルペン踊りを
さあ踊りましょ
同じ音階/リズムで
殷 周 東周 春秋戦国
秦 前漢 新 後漢
魏呉蜀 西晋 東晋
宋 斉 梁 陳
お付き合いいただき有難う御座いました。“さあ”の箇所“宋”を“そ~お”と延ばすのがポイントです。なお後続のランラランラン♪ランランランラン♪のとこは
五胡十六 北魏 東魏 西魏 北斉 北周
隋 唐 五代十国 宋 金・南宋 元 明 清
と続きます。歴代王朝の初期の初期。群雄割拠“春秋戦国”時代後期から物語は始まります。とてつもなく昔の話ですね。歴史上の人物ですと、後の“秦”の始皇帝となる男が出てきます。そう“万里の長城”や“兵馬俑”で有名なあの人。
なおみんな大好き曹操が主役『蒼天航路』はそれから400年後の魏呉蜀三国時代。
一部で大ウケ太公望が出てくる『封神演義』は逆に800年前の殷時代末期。
普通に有名な『水滸伝』は北宋時代末期。
時系列で俯瞰してみたり、同時代の日本と比較すると歴史は面白くなってきます。そんな自称歴史好きの私でも躊躇しちゃう理由は以下、
1.長いっしょ
⇒1期38話、2期39話。腰が引けます。
2.人覚えられない
⇒戦記もの登場人物多いじゃん。始皇帝以外知らねーし
3.モグリっす
⇒『三国志』以外よう知らん
コロナ禍で延期になっちゃいましたけど新作3期放送がトリガーになりましたし、こっちも在宅勤務中で余剰時間もあるし、と重い腰を上げました。
{netabare}4000年の歴史と比べりゃ2期までの77話なんて小っちゃいことよ{/netabare}
手のひらを返します。実際始めるとですね、あっという間なんですよ。
※版図も違えば民族も違うので連続した歴史とはみれないですけどそこはご愛嬌。
一点ご注意です。私はデザインや作画の好き嫌いがそれほどありません。クセのあるデザインと2012年当時のCGってことなんでしょう。明らかなCG作画はそのうちに気にならなくなってます。自分の作画オンチぶりに今は感謝ですが、このへん気になる方はけっこうな脱落ポイントになるかと思います。
それ以外は高評価ですね。傑出してると思われる点を挙げときます。
■(演出)名前を覚えられます
都度都度名前と所属のテロップが流れます。とてもありがたい。
正直『三国志』なら武将も覚えてるよって私みたいな人多いでしょう。観る前になんとなくアウェーを感じます。がその点は「ご心配なく」と言いたい。
■(重要)用兵術に触れられます
戦場に於いて、兵の数・配置・攻撃方法なんかの戦術面の説明を懇切丁寧にやってくれます。主人公/信(CV森田成一)の夢が“大将軍になること”というのもあって、それに必要なレクチャーを受けるという体をとってますね。
ただそれだけだと単なるバトルアニメとなるわけで、そうなると画の弱さで見劣りしちゃうでしょう。『キングダム』は兵の心理変化・作戦達成基準・事前準備なんかの戦略面にも明るい。きちんと“いくさ場”での将兵の心の動きに触れてます。これだけで全然違いますね。戦場が増える物語後半で一気に良作度急上昇でした。
とりわけ楽な戦線が一つもないことで緊張感が途切れません。バトルの見た目はそそられるものではありませんでしたが補って余りあるアドバンテージがこの作品にはありました。
なお、戦ってないならないで内政はCHINA伝統の権謀術数っぷり。悪巧みの大好きな汚い大人は楽しめると思います(違っ)。
このあと2期へ続きますが1期だけでも全38話と躊躇うボリュームです。まず踏ん切りつきません。
たくさん人が出てくると知ってるのに『三国志』くらいしか知らないと一から名前を覚えるめんどくささもありそう。漫画読んでないと敷居も高い。
しかしそんなの飛び越えてしっかりエンタメしてる群雄伝でした。本気でおススメです。
※ネタバレ所感
■あのおっさん
{netabare}王騎の最後には泣きました。
{netabare}摎の敵を取らせてあげたかったよ{/netabare}
アレもコレもあと一歩手前で叶わなかった哀しみ。本人が部下の前でそんなん微塵も見せなかったことも、事情を知ってる腹心たちが将のために身を投げ出すこともいちいちアツい。
と散る哀しみと無念を感じて一巡し一息ついて沈思默考。あーそういことか。。。
{netabare}彼は人を残しました{/netabare}
男が惚れる男でした。…あ!洒落にならんか。{/netabare}
■あのお姐さん
{netabare}楊端和(CV園崎未恵)の出番もっと欲しい。とりあえず実写版の長澤まさみが美しすぎて惚れる。{/netabare}
※さらに雑談
中華人民共和国での評判はそれほどでもないらしい。
どうなんですかね?『ラストサムライ』みたいな日本舞台のハリウッド映画を日本人が見る感覚に近いのかもね。
中華でのタイトルは『王者天下』なんですって。
{netabare}『王国』じゃないんだ(笑)
よりによって始めての“皇”帝を題材にするのに“王”国とは喧嘩売ってます。序列は1.皇、2.王の順。
日本との関わりで真っ先に思い出すのは
推定1世紀の『漢委奴国王』で金印を倭国(日本)に送ったとされること。漢代は“王”なんすよね。
史実での転機はこれ↓
日出ずる処の天子
書を日没する処の天子に致す
聖徳太子が小野妹子使って遣隋使で一発かましたやつですね。“王”から“皇”に転じます。なんかこれについて朝日系列ががやがや言ってますが捨て置きます。そして後日談があって
隋→日 皇帝から和皇国書を送る
日→隋 東の天皇、謹みて 西の皇帝に申す
“皇”を使ってのやり取り。さすが一万円札になった人は違います。
そんな先人の努力を顧みず“王”を復活させたのがたしか日明貿易。案の定国は乱れて“応仁の乱”。
大事にしなきゃいけないこともあろうかと。
なお、CHINA向けには『王者天下』でよろしかったのではないでしょうか。日本にとっても『国際連合(UN)』は意図的な誤訳で正しくは『連合国』だったりします。ね?ちょっと嫌でしょ?{/netabare}
視聴時期:2020年5月
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2020.05.24 初稿
2020.12.14 修正