成長で階級社会なおすすめアニメランキング 2

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88.1 1 成長で階級社会なアニメランキング1位
十二国記(TVアニメ動画)

2002年春アニメ
★★★★☆ 4.0 (1681)
9092人が棚に入れました
周囲に合わせるだけの日々を送ってきた平凡な女子高生・中嶋陽子。
ある日、ケイキと名乗る人物に連れられ、たどり着いた異世界。 そこは、十二人の王と十二頭の麒麟によって治められる十二の国々からなる不思議な世界だった。なぜ自分はここへ連れてこられたのか、ここはいったいどこなのか、異世界でケイキとはぐれてしまった陽子は疑問を抱えたまま、生き延びるために見知らぬ世界で生活することとなる…。

声優・キャラクター
久川綾、石津彩、うえだゆうじ、子安武人、相沢まさき、山口勝平、鈴村健一、岡野浩介、釘宮理恵、勝生真沙子、ゆかな、藤原啓治、進藤尚美、石田彰、若林直美、桑島法子、高山みなみ、山崎和佳奈、鈴木れい子、西村知道、平松晶子、川上とも子、千葉千恵巳、大川透、中田和宏、野島健児、西凜太朗、松本保典、大倉正章、家中宏
ネタバレ

てけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

壮大で綿密な世界観と生き方のヒントになる名言の数々。お見事!

原作未読。
NHKの本気。

主人公の女子高生、中嶋陽子(なかじまようこ)は、突如現れた「ケイキ」と名乗る人物に「王になれ」と言われる。
戸惑いを隠せない陽子だが、妖魔という怪物に襲われたことがきっかけで仕方なく承諾。
その後、気がつくと彼女は見たことのない世界にいた。


言葉の力が大きなアニメです。
次々と飛び出してくる名言。

名言に感じるということは、それだけ分かりやすくてグッとくるということ。
例えば、
{netabare}
「どちらがいいか迷ったなら、やるべきほうをやるんだ。同じ後悔するなら、軽いほうがいいだろ」
「つらいことがあると偉いのか? つらいことがあって辛抱してると偉いのか? 俺ならつらくないようにするけどな」
{/netabare}
このようにストレートな表現をしてくれるおかげで、直接心に響いてきます。


そして、もう一つの大きな見所はその世界観。
三国志時代の中国を思わせる風土。
そして、麒麟(きりん)、妖魔、仙人といったファンタジー要素を含んだ、異世界物語です。
その設定の細かさには驚かされます。
Wikiを見たらめまいがしますヽ(´Д`;)ノ


そんな世界観の中、出来事ではなく、人の心に焦点を当てています。
人間の心は、単純にできているものではありません。
小さな肉体につまった、巨大で繊細な概念です。
国という大きなものと、人間という小さなものは、本質的には似たようなもの。
つまり、文明観と人生観を重ね合わせた人間哲学です。


テーマは一言では表せませんが、最も大きなものをあげるとすれば「無知の知」だと思います。
「真理にたどりつくには、まず『自分が何も知らない』ということを知れ」
つまり、自分を疑ってかかれということですね。
{netabare}
「己を知っている者は己が王にふさわしいなどと決して言わない」
「誰が何と言おうと、私は私を疑っている、だから景麒(ケイキ)、絶対に私を信じろ」
この言葉は陽子の決意の表れ。
とてもかっこよかったです。
{/netabare}
人間は、他人との関わりをもって生きていくものです。
他者から学ぶことはたくさんあります。

しかし、常に相手が正しいとは限りません。
信頼しすぎると裏切られたときに大きく傷つきます。
そうならないためには、自分を知り、他人との距離を測り、バランスをとって関わることが大切です。


序盤は、壮大な世界観に飲み込まれてよく意味が分からないでしょうし、キャラクターにもイライラさせられると思います。
未熟な主人公たちが何も分からない土地に放り込まれ、混乱して、疑心暗鬼になり、自暴自棄になる。
しかし、それは登場人物と視聴者を重ね合わせるためです。
つまり、「知らないとはこういうことだ」と見せつけているわけです。

イライラしても、9話あたりまでは我慢。
そこから本番です。

他者と関わりながら成長していく陽子。
苦悩しながらも、強い人間になっていきます。
陽子だけではなく、たくさんの人々の生き方や成長ぶりを見られます。
それと同時に、見ている側もどんどん内容に引き込まれていきます。


人間として強くなるにはどうしたらいいか教えてくれる、アニメの枠をこえたアニメ。
そしてクライマックスとなる36話では、今までの集大成が見られて大感動!
鳥肌が立つほどかっこよかったです。
ここまで見ると、序盤のヤキモキとした展開は、必要なものだったと感じられます。

ちなみに45話までありますが、37話からは陽子とは別の話になります。
続編でないかなぁ……。


絵はクセがありますし、後半加速型です。
慣れるまでは少し我慢が必要ですが、ぜひ一度は見ていただきたい名作です。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 94
ネタバレ

ワタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

この作品に出会えて良かった。

異世界ファンタジーもの、全45話。
物語は大きく分けて3つの章ごとに区切られています。


「月の影 影の海」(1~14話)

平凡な女子高生・陽子が異世界に連れて行かれ、その地で数々の困難を乗り越え成長していく。
異世界ファンタジー系(日常→非日常)の作品と言えば、主人公の華々しい活躍ぶりが
早い段階で描かれるケースが多いと思います。未知の世界であっても割りと柔軟に適応してしまう。
しかし本作の場合、連れて来られた世界のあまりの不条理な現実に弱音を吐き、逃避を繰り返す。
そんな陽子の負の面が強調される展開がしばらく続きます。

観ていて苛立ったり気が滅入ってしまう人も少なくないでしょうが
この極めて現実的な展開・陽子の丁寧な内面描写は、本作の良い点の一つだと思ってます。
何というか「急に成長させない」ところが良いです。
後の展開に説得力とカタルシスを持たせるためにも、間違いなく本作で必須な部分です。

第7話が分岐点、序盤最大の山場。個人的に39話に次いで印象に残ったエピソード。

{netabare}人間不信に陥っていた陽子が自らの迷い(仮面)を「剣で断ち切る」姿が爽快でカッコいい。
人間の真理を突いたセリフの一つ一つに重みを感じます。身に染みる思いです。
「私が相手を信じる事と、相手が私を裏切る事とは、何の関係もなかったんだ」
特にこの言葉にはハッとさせられました。

善意に見える他者の言動に裏があったとしても、それをどう受け取るかは自分次第。
現実的には、なかなか実践するのは難しい理想論ではあると思う。
それでも誰よりも弱さを知り、悩み苦しんできた陽子を今まで見てきたからこそ
その果てに出された数々の言葉がどれだけ力強く響くか。熱い共感を抱かざるを得ない。
そんな陽子の勇ましさが我が事のように嬉しい。私的、本作屈指の名シーンです。{/netabare}


「風の海 迷宮の岸」(15~22話)

本作「十二国記」の舞台は神仙や妖魔が存在する12の国から成り立つ世界。
各国それぞれに国を統治する王と、王に仕える神獣(人と獣の二つの姿を持つ)の麒麟がいる。
麒麟には王を選定する役目があり、それまでは蓬山という地で女仙によって育てられる。

本章では戴国の麒麟として生まれた泰麒というキャラにスポットが当てられ、
慣れない蓬山での生活を経て、自身の過酷な運命と向き合い、王を選定するまでが描かれます。

終盤の展開には非常にハラハラさせられたものの、あっけないオチであったり
結局その後どうなったの?という疑問が残る、イマイチ釈然としない終わり方でした。
原作通りであるならしょうがないけど・・・まあ泰麒の可愛さに免じて許します(笑)
ツンデレ声優で有名な釘宮理恵ですが、ショタキャラの破壊力も抜群で御座いました。


「風の万里 黎明の空」(23~39話)

陽子、そして本章から登場する祥瓊と鈴、3人の主人公の物語。
他人の顔色を覗ってばかりだったり、自分こそが世界で一番不幸であると思い込んだり・・・
多かれ少なかれ、そんな誰もが持つ心の弱さというものを各々の旅路の中で克服していく。

序盤はスローテンポ、状況の説明に手一杯な印象で退屈感は否めないものの
本格的にストーリーが動き出してからは、もう続きが気になり過ぎて視聴が止まりませんでした。
境遇の異なる三者三様の人生が交錯する瞬間や
3人の確かな成長を実感させるシーンの連続に、感慨深さもひとしおです。

そして迎える本章ラストの39話。
この回の素晴らしさは何と言ったらいいか・・・とにかくもう観てもらうしかないです。
「初勅」を発するシーンでの陽子の言葉、その一つ一つが心に突き刺さりました。
ちょっと自分でも驚く程に、鳥肌と涙が止まりませんでした。


・総評

欠点としては、地名や呼び名・役職名等の専門用語が多いので取っ付きにくいところ。
あとは全体的に作画の崩れが目立つぐらいでしょうか。
実質的な最終回は39話なので、40話以降の蛇足感は番外編として割り切りました。

しかしそんな欠点を補って余りある、骨太で壮大なストーリーに引き込まれました。
NHK教育アニメということで啓蒙的な要素も多分にありますが、説教臭さは感じさせません。
独特で良く練られた世界観、そして人間の素晴らしさと愚かさの両面を見事に描いた作品。
OP,ED,BGMどれも文句なしのクオリティ。
声優陣の熱演も光りました。特に陽子役の久川綾さんは本当に素晴らしかった。
魂のこもった演技に身震いする程でしたね。

とんでもないレベルの傑作。この作品に出会えて(あにこれやってて)本当に良かったです。
間違いなく一生忘れられない作品となりました。


多分、ちょっと興奮気味です。
でも、こんなに気持ちを揺さぶられたのも本当に久しぶりです。
原作も読んでみようと思います。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 76

えんな さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

いつか第二シーズンがあると信じたい

02年NHK-BSで放送された本作品ですが、作画がちょっと残念なんですよね~
本作に限らず90年代後半から04年くらいの作品ってどうも作画に変な癖があるように思えてなりません

それはさておき
歴史モノと思いきや異世界モノで、なおかつファンタジーな要素もありとっても面白かったです
設定が中国っぽくて最初は馴染めませんでしたが、見ていく内に気にならなくなりました

主人公ようこの成長と国家運営、官僚との関係、差別や偏見といった事をテーマに物語りは進んで行きます
残念なのは伏線を回収しないで終わってしまったこと
あの国はどうなっちゃうのよお~っと・・・・
03年に終了して以来気になってますが、原作は続いているので
いつかNHKさん、お願いします!

投稿 : 2024/05/11
♥ : 49

72.1 2 成長で階級社会なアニメランキング2位
アルテ(TVアニメ動画)

2020年春アニメ
★★★★☆ 3.5 (270)
911人が棚に入れました
舞台は16世紀初頭のフィレンツェ。絵画や彫刻が盛んな都で貴族の娘として生まれたアルテは、物心ついた頃から絵を描くことに夢中。いずれは画家になるという夢を抱きながら日々を過ごすアルテだったが、時代の流れが「女性が画家になること」を良しとしなかった。そこでアルテは、人生最大の決断を迫られる……。ルネサンス期に、ひとりの少女が夢に向かってひた走る、ヒューマンドラマ。多くの困難にぶつかりながらも、絵を描きたいと願う熱意と「自分らしく」生きようとする前向きな姿を描くその物語は、ふれるすべての人々の共感を呼び起こす。

声優・キャラクター
小松未可子、小西克幸、榎木淳弥、大原さやか、安野希世乃、秋元羊介、鳥海浩輔、M・A・O、田中理恵、戸松遥

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

令和版『世界名作劇場』

原作未読


なんというか素直な作品。主人公アルテは清々しいくらいに裏表がない。
なにげに小松未可子さんが主演はってる作品は私には初かも。
趣味が高じてイタリア語をお勉強した身にとってはルネサンス期のフィレンツェという餌に食いつかない理由はありません。視聴動機はそんなとこです。

素直でウブな娘を表現したいからなのか、男性の手がふれると顔を赤らめるくらいならまだしも距離が近づくと露骨に動揺するみたいなチョロイン設定を除けば、懐かしき『世界名作劇場』のラインナップに推挙できそうな安定感を感じます。

『世界名作劇場』といってもある一定の年齢層以上でないとピンとこないと思います。小学校の図書館に所蔵されてるような児童向け文学をアニメ化したシリーズをその昔やってたんですよ。

実はこれって皮肉でもあって事前の期待値を上回らずこの解釈に落ち着いたってところもあります。
徒弟制度の職人全盛のルネサンス後期のフィレンツェ。芸術家というより職人の色合いの強い絵画業界は男性主導の社会。そこに貴族出身の娘が割って入ってくお話です。因習・慣習やら障害がある中で女性の自立を謳った作品であることは見てとれますし、苦難を乗り越えてく彼女の成長譚でもありました。普遍性ある良いテーマですよね。
だからこそ背景を大事にしてほしかったと思います。16世紀フィレンツェが舞台。人権なんて概念が定義されてきたのは乱暴に言えば近代以降と最近です。ルネサンス期にその意識が乏しいのは当たり前で、むしろアルテが女性を理由に不遇をかこうのはそれくらいの理由でしかなく、薄いのです。

 ・昔だからしょうがないよね~
 ・絵描きだから時代をルネサンス期にしとこ

これ以上のものを感じさせてくれたら『世界名作劇場』+αになってたかと。
ルネサンスといえばまずはフィレンツェ。後期はヴェネツィアが隆盛していったのが史実です。全編完走された方はピンとくるかもしれませんがストーリー展開上このへん注釈あるだけで違っていたと思いませんか?
繁栄の源でもある都市の守護者メディチ家に触れてないのも「どうして舞台がフィレンツェなのか?」を見えにくくしてますし、今のイタリアのイメージで描かれてるため都市国家が林立している当時の情勢を汲んでおらず見誤っていたと思います。
とどのつまり、時代考証を細かくやることでアルテ(女性)の置かれてる状況をより深く理解できて、そこで生じた成長や自立についてはより深い感動を覚えたであろうという仮説です。
フィレンツェのヴェッキオ橋やドゥオーモ。ヴェネツィアのリアルト橋。観光資源でも有名なやつはところどころに顔を出しますので旅行で訪れたことのある方は懐かしく思うかもしれませんね。ロケハンは頑張ってたほうかと。


ここまで「ここ頑張ってくれ~」という注文ばかりでしたが、不足分を抜きにしても楽しめましたよ。
全体を通して無味無臭というわけではなく、序盤と最終話でのアルテを比較しても、力強く意思を感じる目つきになってましたし、背筋もピンとしてなにかを乗り越えた感のある良い佇まいをしてます。それにきっちり1クールでまとめてくれたことには感謝です。
目安としては第4話までは観てほしいです。子供と一緒に観ることのできそうな安心仕様のため物足りなく感じたかもしれない序盤。単純な能天気キャッキャウフフとは違うざわつきが挿入される回に該当します。ここを経験してから判断して欲しいですね。


繰り返しになりますが素直な作品。そして完走後ちょっと「頑張ってみようかな」とポジティブな気持ちになれる佳作です。



視聴時期:2020年4月~6月 

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2020.06.27 初稿
2021.03.07 修正

投稿 : 2024/05/11
♥ : 57

でこぽん さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

ルネサンス時代の女性画家が困難を克服してゆく物語

16世紀初頭、ルネサンスの頃のイタリアで、女性画家を目指す少女アルテの物語です。
いつも元気で明るく前向きなアルテから沢山の元気をもらえますよ。(^_^)

当時の世の中は、男中心の世界。
女性は結婚して家事に従事し、旦那に尽くすことが当たり前の世の中。
貴族の娘アルテは、そんな決められた未来を受け入れることができず、画家を目指します。

でも、女性のアルテには、どの画家工房の人も相手にしません。
女性であるというだけで雇ってもらえないことに憤りを感じたアルテは、長い髪を自ら切り、男たちの前で自分の覚悟を見せます。

男たちはアルテの行動に驚きますが、それでも慣習に拘り、アルテの描いた絵を見ようとしません。
そんな時、唯一アルテの絵を見てくれた工房主のレオが無理難題の条件をだし、それができたら弟子入りを認めると言います。

アルテは持ち前の頑張りで、その難題を突破し、弟子入りを果たします。

その後、アルテは、女性というだけで様々な困難に遭遇します。
それでもアルテは、その困難を一つ一つ突破してゆきます。
時には落ち込むこともあるけれど、決して諦めたり投げ出したりしません。


アルテの声優は小松未可子さん。とても元気で明るい声でした。
オープニングは 坂本真綾さんの「クローバー」元気がもらえる歌です。
エンディングは 安野希世乃さんの「晴れ模様」とても心地よく光にあふれた景色が見える歌です。


人には変えることができないものがあります。
生まれや性別、そして今まで生きてきた環境…
でも、未来は自分の頑張りしだいで、変えることができます。

アルテのように、いつも笑顔で元気に笑って、
それでいて懸命に打ち込める何かを持っていたら、
きっと明るい未来が待っているでしょう。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 56
ネタバレ

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

女性だけでなく絵画の地位も低い?画家志望少女の青春奮闘記

16世紀初頭のイタリア・フィレンツェなどを舞台に、
貴族の女性でありながら、当時、男社会であった画家の世界に飛び込んだ、
ヒロイン・アルテの奮闘を描いた、同名コミック(未読)のアニメ化作品。

【物語 3.5点】
後期ルネサンス初め。画家が宗教画だけでなく
王侯貴族らの肖像画家としても確立されて来た時代。
など舞台、歴史等の考証は成された作品だが、
歴史的事象が前面に出るタイプではなく、有名画家の登場もない。

あくまで前向きな主人公少女・アルテの青春奮闘記として、
予備知識が余りなくても、気軽に元気付けられることができる。

一方で、美術史上の論点が希薄なこともあってか、
アニメ化部分では、時代がどんな絵を求めていて、
それに対して主人公少女がどんな絵を描きたいのかは
今ひとつ見えて来ませんでした。

こうしたこともあって、私はラストのアルテの決断……
{netabare}ヴェネチア貴族がパトロンに……という破格の条件を蹴って、
フィレンツェに徒弟として戻ったのは、本意が定まらぬまま、
貴族出身の女性画家として面白おかしく消費されることを回避したという点でも{/netabare}
良かったと思います。


【作画 3.0点】
イタリアでのロケハン敢行の成果も反映した街並み描写。
ヒロイン・アルテを始めとした、女性の髪のボリューム感。
などの背景、作画への要求を、
限られたソースで実現しようとした跡は見られる。

肝心要の芸術作品についても、
アルテの女性ならではの柔らかな線の肖像画や、
アルテの心の支えとなった師匠の一作
などは良好で演出にも寄与している。

それだけに……最終話、クライマックスを飾る一作の出来が本当に勿体ないです……。
あれじゃ{netabare}天界を描いた天井画というより、まるで銭湯です。{/netabare}
アニメオリジナル回だったと言う点も影響したのでしょうか?
私の加点分を一撃で吹き飛ばした問題作。早急に修復を求めたいです。


【キャラ 4.0点】
ヒロイン・アルテ。
最初は女性の画家志望を白眼視する男性社会に気合いで杭を出すだけにも見えた彼女。

師事したレオ。
物乞いからの叩き上げで、アルテの反骨心にも理解があり、
貴族女性だからと手加減しない師道でアルテも成長。


高級娼婦ヴェロニカ。
女は学ばずに嫁いでおれば良いという時代においても、
男性を癒やすのは教養もある美人。
という需要に応えつつ、決して自分を安売りしない生き方で、
アルテの良き相談相手となる。

アルテもワガママ名門貴族少女・カタリーナの面倒を見る頃には、
貴族出身の女性画家であることが逆風ではなく順風になった時、
自分を見失わずにいるにはどうしたら良いのか?
などと自身の売り込み方や立ち位置に悩む大人の女性へと近付いていく。


様々な人物との出会いがヒロインに深みを与えていく良質なキャラクター構成。


【声優 4.0点】
主人公アルテ役の小松 未可子さんの前向き元気ボイス。
ヴェロニカ役・大原 さやかさんの気品溢れる人生の先輩ボイス。
この辺りは勝手知ったる鉄板の安定感。

あとはカタリーナ役・M・A・Oさんのロリボイスとか。

女性陣がイタリアを彩る中、渋味が効いていたのが師匠レオ役の小西 克幸さん。

寡黙で心情を声に露骨に出せない難しい条件の中、
弟子のアルテへの愛情を好表現。

特に終盤、{netabare}愛弟子がいないレオの一日を描いたシーン。{/netabare}
言動全体から寂しさを演出するハイレベルな表現の中に、
淡々としたボイスを上手く落とし込めていたと思います。


【音楽 4.0点】
劇伴はピアノやストリングスでルネサンス期イタリアの空気もフォローしつつ、
ヒロインの前進をサポート。

OPは坂本 真綾さんの「クローバー」
EDは安野 希世乃さんの「晴れ模様」
共に透明感溢れる女性ボーカルと爽やかなギターサウンドが
アルテの前向きな生き方とシンクロした、元気注入にも適した良曲。


【感想】
本作については、好きなことは自己責任で何とかしろと言う現代日本とは違って、
徒弟制、パトロンが充実した西洋美術界の礎を羨む見方もあるそうですが。

私は観ていて、王侯貴族や富豪だけの物だった芸術絵画を、
市民の誰もが美術館で楽しんだりする今は、
裾野が広い良い時代だなぁ~という感想を抱きました。


そんな私が地味にお気に入りなのが中盤、
レオ師匠と腐れ縁の商人ウベルティーノのやり取り。

{netabare}ウベルティーノ自身は芸術への興味はなく、
絵画も取引先との円滑剤にするための応接間の見栄に過ぎない。
自身の書斎はアートの彩りも乏しくガランとしている。

絵を気に入って注文している訳じゃない商人の依頼を、
画業は貧困脱出の一手だったレオが
相変わらずビジネスライクにこなして行く。{/netabare}

絵を商売道具として人生を歩んでいる互いの生き方を、
毒突き合いながらも認め合っている。

プロフェッショナル二人の渋い一幕として妙に印象に残っています。

投稿 : 2024/05/11
♥ : 42
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