無声アニメで短編アニメなおすすめアニメランキング 3

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの無声アニメで短編アニメな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月04日の時点で一番の無声アニメで短編アニメなおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

66.6 1 無声アニメで短編アニメなアニメランキング1位
つみきのいえ(アニメ映画)

2008年10月4日
★★★★☆ 3.7 (219)
953人が棚に入れました
海面が上昇したことで水没しつつある街に一人残り、まるで「積木」を積んだかのような家に暮らしている老人がいた。彼は海面が上昇するたびに、上へ上へと家を建て増しすることで難をしのぎつつも穏やかに暮らしていた。ある日、彼はお気に入りのパイプを海中へと落としてしまう。パイプを拾うために彼はダイビングスーツを着込んで海の中へと潜っていくが、その内に彼はかつて共に暮らしていた家族との思い出を回想していく。

声優・キャラクター
長澤まさみ

マスルール♪ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

【ネタバレ有】「セリフが無くても心に染みる、“短編アニメーション”作品!」

 

 この作品は、前々から観たいと思っていた作品で、以前に“アカデミー賞”だか“カンヌ国際映画祭”だかで、賞を受賞していたことを知っていたので、かなり期待して観始めた―。



 では早速、レビューに移るが―、「費用対効果」みたいな感じで、「時間対面白さ」なんてものがあるとしたら、この作品は、間違いなくNo.1の作品だろう―。

 「費用対効果」とは、最近で言う“コスパ”(=コストパフォーマンスの略)のことなのだが…、費用が安く、効果が高いほど、コスパが高い(=良い)…という訳である―。
 なので、「時間対面白さ」なんてものがあるとすれば、時間が短く、より面白いほど、評価が高いということになる―。


 ではなぜ、この作品がNo.1かと言うと、まず何より、分母にあたる“時間”が、わずか“12分”しかないということである―。

 分類としては「短編アニメーション」に分けられるのだろうが、勘違いしないでほしいのは、「時間対面白さ」が高い作品ほど、素晴らしい作品だと言っているのではない―。
 例えば、“上映時間が30分で面白さが100の作品”と、“上映時間が1時間で面白さが200の作品”では、「時間対面白さ」としては同じだが、“後者”の方が傑作に決まっている―。


 なので、この作品の「時間対面白さ」が高いというのは、それは、上映時間が短いのが理由だろう、と思うかもしれない…、が、そうではなく―、
 この作品は、どの作品よりも“時間が短く”(=分母が小さく)、かつ、他の名作・傑作と呼ばれる作品たちと同じくらい“面白い”(=分子が大きい)…、そのため、「時間対面白さ」がNo.1なのである―。



 (ちなみにだが)、さっきから「面白い」という表現を使ってしまったので、ここでも「面白い」と言わざるを得なかったのだが、“愉快”や“笑える”という意味での「面白い」ではない―。

 むしろ逆で、わずか12分のうち半分以上の間、泣いていたような気さえする―。この作品は、観ていて“何故か”涙が流れてくる…そんな表現が相応しい、“心に沁(し)みる作品”である―。



 では少し、“物語”の内容を見ていくが…、この作品の凄いところは、“セリフが無く”、“映像とBGMのみ”によってストーリーが進んでいく…、という表現方法を使っており、それが、これ以上ないほど、“観ている視聴者に委ね、感じさせること”に成功している―。


 物語の舞台は、“水に沈みゆく街”で、そこに住む主人公の“老人”が、“積木を積み上げたかのような家”で暮らしているというお話―。

 “地球温暖化”をモチーフにしているため、“海面上昇”によって、昔住んでいた家や街が、海の下に沈んでいく…、ということに“警鐘を鳴らしている”のだが、この作品(の監督である“加藤久仁生(かとうくにお)”さん)の凄いところは、本作をただの“環境問題を提唱するだけの作品”にしなかったということにある―。



 (ここからは、wikiの説明が非常に良かったので、そのまま抜粋させてもらう…)


 ―加藤は、脚本家の平田研也(ひらたけんや)より、「地球温暖化がモチーフなのだから、もっと環境問題としてアピールすべきだ」というアドバイスを受けたが、加藤は、「そういうことではなく、どんな過酷な環境にあっても、人は生きていかねばならない、ということを描きたかった」と主張を貫いた―。
 
 加藤は、「主人公である老人の生活を、淡々と描くことで、“人生”というものを“象徴的に”表現しようと思った」と語っており、「観た人たちが、“人生の中で大切にしているもの”や“過ぎ去ってしまったもの”に対して、どのような“姿勢”をとるのか考えるきっかけになる作品にしたかった」と述べている―。


 この説明を聞いただけでも、“加藤監督の能力の高さ”や、この作品の“本質”を理解できるのだが、この加藤監督の“頑なな信念・こだわり”によって、結果としてこの作品は、“アカデミー短編アニメ賞”を受賞した初の邦画作品となった―(他にも、国内外10の映画祭で14の賞を受賞している)。



 ただこの作品を、他の作品たちと“同じように”このサイトで評価するのは、非常に難しいと思う―。


 なぜなら、(前述したとおり)、この作品は、“セリフの無い作品”であり、音楽も主題歌や挿入歌はなく
“BGMのみ”である―。
 なので、セリフが無いのだから“声優”の評価は0、主題歌・挿入歌が無いのだから“音楽”の評価も低い…、とすべきかと言えば、それは少し“短絡的”なようにも思う―。


 声優(セリフ)や音楽とは、あくまで、その作品を良くするための“付属的な価値”なのであって、ただあれば良いというものではない―。
 この作品においては、間違いなく、セリフや挿入歌が“無いこと”によって、“良い意味での付属的価値”が生まれている―。

 なので、このサイトの評価における“声優”や“音楽”も、作品全体を通しての“統一性”という意味で、
“無いことによる高評価”で良いのだと思う―(が、これはあくまで自分の考え方なのであって、声優がいないのだから評価は0としても、それはその人の受け取り方次第だと思う…)。



 時間が短くて面白い…。観る側としてはこれ以上ない“助かる作品”なのだが、環境問題を訴えたかったら、ただ「NO!」というだけでは意味がない―。

 そこに一つの“物語”を作ることによって、本当の意味で、観ている人たちの心に投げかけることが出来る―。
 加藤監督は、そんな人や物事の“本質”をしっかりと理解している―。

 この作品を観て、その経緯を知っただけで、本作だけでなく、“加藤久仁生”という一人の監督に、興味を持っている自分がいることに気付いた―。


 (終)

投稿 : 2024/05/04
♥ : 4
ネタバレ

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

豊かな人生とは何かを考えさせられました。

 初めは押しつけがましいCO2の環境問題警鐘のアニメかと思いましたが、ちょっと違いました。そういう要素がなくはないですが、一人の男の人生を振り返る話でした。まあ、鉄拳アニメの巻き戻しバージョンといえるかもしれません。

 温暖化で水面が年々上がってゆくために、もとの家の上に家を重ねてどんどん高くするという設定を上手く使って、男は落ちたパイプを拾うために潜ることで、疑似的に時間旅行をするわけです。この演出というか発想が素晴らしいアニメーションでした。なお、セリフはありませんでした。
 昔見た、核で死んでゆく老夫婦のアニメ…イギリスの…名前わすれましたが、ああいう感じかなあと思っていました(「風が吹くとき」でした)。雰囲気は似てますが、全然内容は違います。

 本作の主人公は、老人で独居しています。寂しく見える単語です。ですが、本作はハッピーエンドでした。 {netabare}生まれ育った村が、初めて奥さんと暮らした家は水没しています。でも、彼は自然の中で奥さんと出会い、愛し合い、結婚し、娘を作り、元気に育ち、娘は結婚し家を出ます。奥さんと2人きりの生活は介護でした。そして死別。でも、最後男は、いなくなった奥さんを偲んで、思い出のワイングラスで乾杯します。 {/netabare}

 人生における最高の終わり方だと思います。配偶者より先に死んだほうが幸せかという議論がありますが、これはそういう問題ではないと教えてくれます。2人で過ごした人生があったから、送る方も送られる方も幸せだということです。

 拝金主義または自分に都合のいい権利だけ主張する人権主義では、おそらくこの幸せはわからないだろうなあ、と思います。彼は家族を持ち人生を送ってきました。ただ、そのことが彼の生まれた意味だったわけです。

 これ以上言うと思想的な話になりますし、もっともっとこのアニメーションについては語れることはありますが、これくらいにしておきます。

 本作はたった12分の話ですが、一人の男の幸せな人生を見せてくれる素晴らしい作品でした。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 3

でんでん虫 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

歳月流るる如し

 この話は確か絵本で読んだ記憶がある。高校生の時にだが。テレビかなにかで話題になっていて、学校の図書館に置いてあったから手に取ったのだと思う。他にも『はらぺこあおむし』とか『スイミー』なんかも読んだのだが、もう話は忘れてしまったな。

 住む家が海に沈んでいく中で、家を積み木のように建てて暮らしているおじいさんの話。よほど愛着があるのだろう。
 ある朝起床すると浸水しており、おじいさんは今住んでいる家の上にまた家を建てようとする。しかし荷物を運んでいる最中、大事にしていたパイプを海中に落としてしまう。おじいさんは潜水服を着て潜って取りに行き、以前使っていた家をみて思い出を回想していく。

 潜っていくとピラミッド状に家は拡がっていく。まだおばあさんが元気だった頃、まだ娘が結婚する前の頃、まだ妻と娘3人で暮らしていた頃、そして一番下に着く。だが一番下の家は一番広いわけではない。その頃はまだ妻と二人だけだったので小さな家だ。この家の土台は小さくても二人の男女の出会いから始まった、とても頑丈で大切なもの。だからおじいさんの決意は固い。徐々に狭くなっていく家に一人でずっと暮らし続けることだろう。

 今は核家族化が進んでいるから、じいちゃんばあちゃんと住んでいる世帯はあんまり無いだろう。代々子孫がその家に住んでいけばいいんだろうけど、やはり仕事を得るためにはそうもいかない。田舎に親と家だけが残されていく寂しい時代。
 私の地元も過疎化が進み子供がどんどん減っている。老人の孤独死もざらにある。もう嫌だよそういうの見るのは。都市化ってどうなの?本当にこれでいいのか。

■その他
・家族他にもいたかも。
・海面上昇=時間の経過?
・孝行のしたい時分に親はなし
・絵だけで人は感動できるものだな

投稿 : 2024/05/04
♥ : 5

62.9 2 無声アニメで短編アニメなアニメランキング2位
rain town [レインタウン](TVアニメ動画)

2010年冬アニメ
★★★★☆ 3.6 (166)
812人が棚に入れました
2010年度に京都精華大学マンガ学部アニメーション学科の学生が卒業制作として作った約10分の短編アニメ。その街はいつからか雨がやまなくなって人々は郊外や高台に移り住んでいった。「rain town」。人々の記憶の底に沈む 忘れられた“雨の街”へ時折、誰かが迷い込むという…。

シェリー さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.7

批判します。

「あにこれ」内に批判のレビューが1つもないこの作品。そんな馬鹿なと思ってもないものはない。
おおかたの感想の傾向は、雰囲気が良いってこと、ノスタルジアチックであること、
そしてこの作品を観て感じることはあなた次第だと、抽象的作品の性質の良さを褒めている3つでした。

あらすじは大体このような内容でした。
“雨の止まない街「rain town」では人々は逃げるように、高台へと逃げ暮らしていました。
ある日、小さな女の子が出かけて行きました。黄色いあまがっぱを着た幼い子です。母親は心配そうに見守ります。
女の子が歩いていると、住宅に囲まれたその路地からいつもと何か違うようなものを感じました。
不思議そうに覗き、そのまま入っていきました。「rain town」では、時折”雨の街”へ迷い込む者がいると言います。
その子がまさにそうでした。
そこで女の子はロボットを見つけます。棒人間の体に鉢植えを載せたような、錆びれたロボットです。
2人は街を歩き回ります。廃墟となった街には誰もいません。
電車も車さえも通っていません。電柱は自分の役目を忘れたかのように立っています。
突然、なんの予兆もなくロボットは崩れてバラバラになってしまいました。女の子は急いでおばあちゃんを呼んできます。
おばあちゃんはそのロボットを見て驚きました。実はそのロボット、昔おばあちゃんと仲の良かったロボットだったのです。
2人はそのロボットを持って帰りました。おしまい。”そんなお話。

作品の雰囲気の良さは、数々の賞やたくさんの人の評価がそれを証明しています。
やさしく降る雨の中、廃墟となった街の様子が流れていく。
家や電車など、使いものにならなくなった街そのものの退廃的な雰囲気に観る者はどんどん呑み込まれていく。
少女のイノセントな心にはそれが何なのかわからないところからこそ、僕らの方はますます夢中になる。
声はなく、少女とロボットの足音に、雨の音。淡々と鳴り続くそれらは、雰囲気作りに力を添えている。
画面に広がっている青の世界は、哀しみも慈しみも愛をも包んでいる。
すでに過ぎ去ってしまった多くのものに―少女ではなく、また少女を通して―僕たちが触れ、感じ、思いを寄せ、それが何であるかを考える作品。

初めの2分くらいは割といいんじゃないかな、なんて思いながら観ているけれどだんだんと飽きてきます。
ロボットの話の挿入の仕方で冷めてしまうところもあるし、BGMもだんだんと邪魔になってくるのもあるのだけれど、
それ以上に絵、それ自体にも声のない音だけのアニメーションとしては、魅力に欠けているのではないかと思います。
なぜならば、雨の音と廃墟の街で心地のいい退廃的な雰囲気こそは出てはいるけれど、
これらにはメッセージ性があまり見受けられません。そこに、皮肉や渇望やシニカルな表現があったかというと、ありません。
また、廃墟の街並みをそのまま映しているかというと、作品の方向性からみてそれは違う。
この作品は、不思議な”雨の街”に迷い込むと銘を打っています。
それらの絵はどちらかというと、感覚的に状況や物が選ばれ、描かれたのではないかと感じました。
つまり、パっと見てなんとなく良いものです。だから、込められているものがいまいちないな、という印象を受けました。
この手の作品であれば、ある程度その絵で紡いでいくのであれば、1シーンで何か伝えなければなりません。
そこに、観ていて心をグッと掴まれるような、強いなにかを投影しなければなりません。
これでは「感じの良い風景」止まりになってしまっています。表面的なんです。
「ああ、なんか良い風景だね。俺こういうの好きだよ。」と観る人に言わせるだけで、もうひとつ上に行けていない。
作品の根幹となる部分がこれでは、もしくはこう感じてしまった僕には、この話を面白く感じることはできませんでした。

もうひとつ。
冒頭の表記だと、「人々の記憶の底に沈む 忘れられた雨の街へ 時折、誰かが迷い込むという・・」なんて
言い方をするもんだから、普通の街からいつの間にか異世界に迷い込む話だと思ったら、
ただ単にお城と城下町みたいな高低差の関係にある下の街に行くことだったんですね。
だったらこども以外の人間がどうやったら迷い込むのだろう。
それに、過去や未来のつながりもあり、作品自体は立体的な構造を持っているけれど、
街の描写に関しては平面的な現実を扱うのだから、こういう言い方はないんじゃないかな。
これじゃあ扇情的なコピーと変わらないですし、内容とズレてしまっています。
「時折、誰かが迷い込む」じゃなくて、これはたまたまこどもが好奇心ゆえに入っちゃっただけでしょう。
実際に、ロボットが壊れてもパニックにならずに、ちゃんと自分ひとりでおばあちゃんの家に行っているではありませんか。
それを「人々の記憶の底に沈む 忘れられた雨の街へ」なんて、ピーターパン症候群じゃないんだからw
機関は存在しません。写輪眼も、第3の眼も開きません。左手も疼きませんし、竜の巣もありません。
それはちょっと大きな積乱雲ですw

僕にとってはこの作品は雰囲気だけのからっぽな作品です。
人それぞれに感じることがあるほど広がりのある話ではないですし、何度も観るような種類のものでもありませんでした。

けれど、どの作品を愛し、アニメに、またはアニメだけにどのくらいのものを求めるかは人それぞれであり、
好みの問題まで否定するつもりはさらさらありません。でも、皆が皆口を揃えていうほど良いのかな、と首を傾げたくなります。
僕が1957年アタマーノフ監督の『鉛の兵隊』がほんとうに素晴らしい!と、言ってどれくらいの人が頷いてくれるのでしょう。
ジブリが出している『雪の女王』に収録されている作品なのですが。



最後に、解釈について僕の見解を書いて終わろうと思います。
そんなに、というかほとんど価値のないようなものかもしれないけど。

おそらくではあるが、この作品は「高度資本主義経済へ警鐘を鳴らした作品」ではないかと、思う。
ラストのシーンで、かつて繁栄していた街並みが映されるのを見ると、この街はそのせいで滅んだのではないかと思う。
雨は、その崩壊の象徴であり、メタファーとして降り注ぐ。いつまでも、その余波は街を傷つけ、人々の住処を削り取るのだ。

ラスト間際のシーンで突然ロボットは崩れ落ちる。鉢植えのような形をしたロボットの頭は路地中からのアングルで映される。
街の景色は昔の様子を映し出す。車が走り、人がまだそこに住んでいた時代を。同じアングルで今の街の様子に戻る。
ロボットはこちらを見ている。このロボットの目線こそが本作の一番伝えたかったメッセージではないかと思う。
そのロボットが観ている目線の先には、画面を通して僕らがいるのだから。
その昔の風景は僕らの世界のことを指している。いずれそうなるであろう世界が、今ロボットが倒れている世界ということだ。
崩壊の影が僕らの元にも忍び寄ってきていることを暗示している。自滅までそう長くはないと。

そこには、おばあさんが小さい頃にロボットを捨てたように、”物への愛情が失われている”こともメッセージとしてある。
(あえて言うならば、ラストのシーンで少女がこちらを見つめた数秒間はこれを語っているかもしれない。)
なぜならば、今の僕らの世界では、物は買って捨ててまた買ってというスタンスが基本であり、
それで経済が回っている社会なのだから。ゆえに、われわれは「消費者」と呼ばれる。
けれど、おばあちゃんは幼い頃にどうしても連れてはいけなかったロボットと再び出会たことを喜び、彼を持ち帰る。
そんなおばあちゃんの姿勢を見て、少女は学ぶ。
冒頭のシーンで、高台の街の家から、屋内に入り、おばあちゃんがたくさんの物に囲まれた部屋を映す。
特徴的な黄色の服は間違いなく、かつて”雨の街”をさまよった少女であることを意味する。
そう、あれから少女は物を大切にしてきた。いささか極端なほどに物が溢れているが、それは愛の大きさを物語っている。
かつて少女であった老婆は、失われた価値を今もなお、あの部屋の奥で独り守り続けている。
しかし、雨はまだ降り続けたままだ。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 17

h02dvvd さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

「感じる」アート

【萌え】☆☆☆☆☆ 【シリアス】★☆☆☆☆
【ヒューマンドラマ】★★☆☆☆☆ 【アカデミック】☆☆☆☆☆
【ギャグ】☆☆☆☆☆ 【演出】★★★★★

 アニメは全部アートだとも言えるんですが。あにこれでサムネ(?)に惹かれて観た作品。

 一言で言えば「雨の降る廃都を旅する物語」といったところですが、まあ美しいこと。売上納期等々の事情を気にする必要のない個人製作でだからこそできる映像美でしょう。自らの廃墟好き補正は多少入っていると思いますが、それを差し引いても雰囲気の良さはトップクラスだと思います。

 雰囲気アニメですので雰囲気が楽しめないと面白くないでしょう。物語の方をどう解釈するかについてはまだ自分の中で見解がまとまってないのですが、雰囲気がツボらない人は見解どうこうの前に脱落しそう。

 「アートは何か」というような芸術論をおっ始めるきは全く無いので軽く流しますが、タイトルでは「受動的ではなく能動的に鑑賞されるもの」と定義したつもりです。「観る」より「感じる」としたいのもそのためで、ただ漫然と見てるだけでは眠くなるのでは?

-----以下、この作品とはあまり関係がない小言-----

 声優の評価を星いくつにすれば良いのかということで(この作品には声の出演は一切ありません)他の方のレビューをざーっと見てみましたが、おおかた無難に星3つということで、あにこれの評価方式にはやはり少々問題があるのではーと思った次第。つまりアニメを評価する際の評価軸はそれでよいのかというお話。

 現状の評価軸を素直に受け取るのであれば「物語が良くキャラも立っていて作画・音楽もマッチしている。声優も最高!」という優等生アニメがランキング上位に躍り出ることになります。それはそれでアニメ初心者には良いと思うのですが、人に大きく影響を与えるのは優等生タイプばかりではないでしょう。作画がひどくても心に響く作品はあるだろうし、逆も然り、です。おまけにアニメ初心者のひよっこがわざわざこのようなサイトを参照しに来るのかどうかというのも非常に怪しい。

 「声優」に至っては、アニメの必要条件ではないと思うんですよ、これ。(「物語」「音楽」「キャラ」も必要条件ではないかもしれませんが、そこまでの前衛的アニメには出会ったことがないので断言は保留。)他の軸の評価が同じだとすると、現状は「声優がないアニメ」<「声優がいいアニメ」ということになります。これは少々おかしいと言わざるを得ません。

 声優という観点からアニメを評価すること自体は悪いことだとは思いません。それは「作画」「音楽」「キャラ」ひいては「物語」においても同じだと思います。ただ、全てのアニメにその評価軸を強要するのはおかしい・理にかなっていないのです。思うに、今までの評価軸は残した上で、新たに「満足度」のような何かを導入した上で総合得点はその満足度から算出した方がよいのではないでしょうか。競合の名前をここで出すのは憚られるので名前までは出しませんが、他のアニメ評価サイトはアニメを恣意的にいくつかのファクターに分解した上での点数ではなく、単純に「あなたはどれくらい気に入ったか」という一つの軸に基づいた点数を総合得点としておおかた採用しています。あにこれはUIの分かりやすさが随一なのでこのまま使い続けますけれども。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 8
ネタバレ

とろろ418 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

「あなたの雨は止みましたか?」

一番の評価点は個人製作だということでしょうね。
10分程度の作品ではありますが、一人でこれだけのクオリティは本当に凄い。
良い作品です。未視聴の方は是非。

台詞が一切ないので、人によって解釈は変わりやすいかもしれません。
とりあえず、私なりの解釈を記述してみます。→{netabare}
①昔、おばあちゃんはこの町に迷い込んだ。(冒頭の文章から)
 そこで、あのロボットと友達になり、たくさん遊んだ後にお別れした。
 おばあちゃんとの別れを悲しむロボットの気持ちに呼応するように町では雨が降るようになった。
 (おばあちゃんと遊んでいた時は、晴れていたことから)
 数十年後、おばあちゃんの孫が同じように町に迷い込み、ロボットと出逢った。
 ロボットは雨で老朽化していたため、簡単に壊れてしまった。
 助けを呼びに来た孫に連れられておばあちゃんはロボットとの再会を果たした。

②おばあちゃんとの別れのシーンで雨が降っていたのを考えると、住んでいた可能性もありますよね。
 引っ越しの原因が雨が降り続いたことで、ロボットとは関係ない。最後まで雨が止まなかったのはそのため。

筋は②の方が通っているんですけど、個人的には①の方が好きなので、敢えてそちらを押します。

EDに出ていた他のロボット二体については、おそらく孫が
水溜りに落ちた時に見たのが彼らでしょうね。
いつ、どうしてそうなったのかは謎ですが……。
{/netabare}

そして、ここからは私が多少気になったこと→{netabare}
①登場人物について
  母親とおばあちゃんは同一人物として処理した方が良かったと思います。
  態々別の人物にしたということは何かしら意味があったのかもしれませんが、私にはわかりませんでしたので。
  また、おばあちゃんよりは母親の方が物語としての整合性は高い気がしました。(ここは好みの問題ですね)
②雨について
  先の解釈で述べているように、雨とロボットの気持ちがリンクしてて欲しいので敢えて突っ込みます。
  最後は雨が上がって欲しかった。
③冒頭の文章
  凄く細かいですけど、少し読みにくかったです。
{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 8

63.6 3 無声アニメで短編アニメなアニメランキング3位
紙ひこうき(アニメ映画)

2013年3月23日
★★★★☆ 3.7 (61)
338人が棚に入れました
ある日、駅のホームで偶然出会った女性にひかれた男が、職場の向かいのビルにその女性の姿を見つける。男は紙ひこうきを飛ばして女性を気づかせようとするが、なかなかうまくいかない。そんな時、男の折った紙ひこうきに不思議なことが起こり……。

おなべ さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

想いは中々伝わらない

上映時間約7分のモノクロサイレントショートストーリー。


主人公はプラットホームで一目惚れした女性を、会社の向かい側のビルで発見します。なんとか彼女に思いを告げようと紙飛行機を飛ばすのですが、あっちやこっちやに飛び、彼女の元に中々届きません。しかし主人公が折った紙ひこうきには不思議な事が起きるのでした…。


単純なお話でありながら、そんなシンプルな話を短い時間の中でギュッと凝縮して洗練されているのがこの作品の魅力。起承転結が出来ているので、短編作品のお手本になります。サイレントで台詞もないのですが、キャラクターが生き生きとしているので、物語に支障は何らありません。
製作会社ディズニーの毎度ながらの表情の豊かさはもちろん、細かい仕草や微妙な視線の移動等、キャラクターのモーションが本当に丁寧なんですね。また、登場人物が可愛過ぎず格好良過ぎない等身大のキャラクター像なのも私が感情移入しやすい要素の一つかもしれません。


多くの方のツッコミ所としては、何しろ会社の書類で紙ひこうきを折ってるので「仕事しろよ!」と思わず彼の今後の就業状況が心配になってくるのですが、そんな現実的な要素はこの際ちょっと傍らに置きまして。主人公が想いを必死で伝えようとしても中々上手くいかない、想いを伝えることの難しさを「紙ひこうき」で描いていました。ロマンチックなだけではなく、人並みで共感出来る物語の過程もちゃんと抑えているのが良かったです。


モノクロの世界も場面を盛り上げてくれる音楽も静かで綺麗で美しい。モノクロCGアニメっていうとフランスアニメ映画「ルネッサンス」を思い起こさせましたが、あちらはバリバリなシャープSF様式に対して、こちらの作品は柔らかな曲線で温かい印象があります。また違った表現方法があるんだなあふむふむと感心しました。閑話休題であります。


とても心温まるピュアな作品なので、ドロドロ愛憎人間ドラマにお疲れの方は是非ご覧になっては如何でしょうか。モノクロの美しい世界覧に短い時間ながら浸ってみて下さい。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 17

ワドルディ隊員 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

奇跡が起きた

この作品はシュガー・ラッシュと同時上映されていた
短編アニメである。

おおまかなあらすじとしてはこんな感じ。
主人公はとあるサラリーマン。駅で偶然鉢合わせた女性に
一目ぼれした彼。その後、会社に戻るのだが偶然にも
向かい側のビルに彼女がいたことがわかり、思いを伝えようとする。
高低差を駆使し、紙飛行機を大量に飛ばしていくのだが上手く届かず
失敗に終わる。それからしばらくした後、紙飛行機に異変が起き…。

古くからアニメ制作に携わっているディズニー作品ということもあり
キャラクターの表現方法は卓越している。
シンプルでありながらも、きちんとまとめられており
尚且つテンポも良いので非常に見やすい作りとなっている。
誠に感服した。

サイレントアニメのため、セリフは一切ないが
それがなくても物語が分かるように作られているため
心配することはないだろう。

ツッコミ所もいくつか存在する。
紙飛行機を折ることは、作品の性質上仕方ないと思うが
会社の書類で作るのは、あまりにも危険ではないだろうか。
上司の注意があったにもかかわらず、愛に目を向けすぎて
紙飛行機を折ることを辞めない。その上、置いてあった
書類すべてを紙飛行機にさせてしまったのだ。何をやっているんだか。

仕舞には、自ら会社を飛び出してしまう有様。
これにはさすがに笑うことしかできなかった。彼は大丈夫なのだろうか。
恋は盲目とはまさにこのこと。

途中、紙飛行機に魂(?)が宿るシーンがあるのだが
唐突すぎてすぐについていくことが出来なかった。
しかも、一つではなく彼が飛ばした紙飛行機すべてが対象となるのだ。
それぞれが独立した意志を持っており、恋を実らせるため
彼を後押しする。
その光景は中々の異彩を放っており、多数の視聴者を虜にしたであろう。
良くも悪くもディズニーらしさ全開の作風に仕上がっている。
これがディズニーによる夢の力か。私はそう解釈した。

ディズニーファンなら観る価値のある作品で
あることに変わりはない。個人的には良作だと思う。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 12

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

紙ひこうきの魔法にかけられて…

ディズニーによる6分30秒のショートムービー。

紹介されて観てみたら、あまりにも良かったので
レビューで今の感動を残したくなりました^^


● ストーリー
一人の男の恋は偶然の出会いから始まった。

「紙ひこうき」が織りなすラブストーリー。


モノクロの世界が描き出す淡い恋と、
ディズニーらしい魔法のような出来事。

キャラによる台詞はなく、BGMだけが流れています。

時間は短いけれど、とっても心が温かくなりました。

非常な現実にくじけそうになっても、
魔法は奇蹟を起こしてくれる。

なんとも夢が詰まった内容で、
「さすがディズニー!」と心の中で拍手を送らずにはいられませんでした^^


● 作画
白黒の世界。なんとも味わい深いものがあります。

それに加え、滑らかで見入ってしまう動き。表情。演出。

台詞はないのに、キャラクターの心の動きがものすごく伝わってきます。
(逆に、女の人は心が読み取りにくい表情が多いです。
 それも「何を考えているのだろう…?」と想像が膨らむ奥深さ。)

動きと音楽の絶妙なコンビネーションは、ディズニーの得意技。
お見事でした!


● まとめ
紙ひこうきって昔からいろんなものを乗せたり運んだりする表現で使われますよね。
夢や恋や…。

その良さをぐんと引き出したこの作品の影の主役はまさに「紙ひこうき」。

ちなみに、原題は「Paperman」なのです。

紙ひこうきは英訳すると「Paper plane」なのですけどね。
これがまた「やるなー…!」とうなされたポイントの一つです。

うん、そんな細かな演出一つ一つが本当に素晴らしすぎる!!

ほんの少しの時間、不思議な世界の魔法にかかってみませんか?^^

投稿 : 2024/05/04
♥ : 25
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