策略で仲間なアニメ映画ランキング 1

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76.7 1 策略で仲間なアニメランキング1位
劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲(アニメ映画)

1998年7月18日
★★★★☆ 3.9 (494)
3333人が棚に入れました
幻のポケモン・ミュウのマツゲを元に、悪の組織により戦闘能力などを強化され人工的に作られたポケモン・ミュウツーは、人工的に造られたという不純な生立ちから自身の存在意義を見出せずに答えなき自問自答に苦しんでいた。やがてミュウツーは自分を造った組織を裏切ったことをきっかけに、ポケモンを統制するシステムへの反発や自分を利用するためだけに作り出した人間たちへの憎しみから人類に対する「逆襲」を企てる。
ネタバレ

シェリー さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

歩き続けてどこまで行くの?

ポケモン映画第一作目です。

どんなものでも一作目というのは少し特別です。
作品にもよりますが案外その方が後続の作品より粗削りではあるけれど伝わってくる魅力が強いからです。

ミュウの細胞からより強く作られた最強のポケモン「ミュウツー」。
しかし、彼は自分がいったい何者かわからない。
「生きる」ことに価値が見い出せず思考することを止めて、彼は自分を生み出した人間に逆襲を決め込んだ。
「これは戦争でも攻撃でもない。逆襲だ。」

作品はこどもにとってはえらく重々しく暗い雰囲気を帯びたプロローグから始まります。
この辺は改めて観てみると一度観た作品なのにまったく覚えのない話でした。
小さい頃にここの部分を観てもまったく印象にさえ残らないことが分かります。
その後からの流れは薄っすらと記憶していましたが、
やはり改めて観てみるとその場での言動や立場、行動など「役割」としての意味が物語を鮮やかにし、ひとつの筋が紡がれていきます。
本作の持つ物語の性質はなにも小さい子に限ったことではなく、あらゆる人間に対しなにかを訴えるだけの力を持ったものだと思います。

映像だって今のものに劣っていません。
ポケモンたちはよく動きますし、そこに躊躇いはなくできる限りのリアルが追及されています。
肉迫した戦いの息遣いはすぐそこで聞こえます。
OPのバトルはもちろん良いですし、EDはさらに良いです。個人的にとても好き。
曲といいアニメーションといい最高です。残念ながらアニメ映画のEDでこれを越えるものはいまだにありません。

何度観たって面白さを感じられる少ない作品のひとつです。



{netabare}

こども向けのアニメ映画でよく自己定義について触れました。
僕は高校生2年になるまで考えたこともなかったですw
まあでもあえてテーマを探るならばそれはそこにはなく、
ではどこにあったのかというと、僕は「本物」と「コピー」の戦いが非情にも無意味だということにあると思います。

俯瞰的状況としては
まず初めにミュウツーはトレーナーを呼び込みコピーと対決させて負かすことで
人がポケモンを育てることを否定し、また人につくポケモンも否定しました。
この後ミュウが出てきて「コピーなんかに本物は負けない」なんてアホな啖呵切って大混戦。
もうどちらも後には引けません。
だが、なかなか決着のつかないミュウ、ミュウツーを前に他のポケモン達はだんだんと力尽きていく。
そして最後ミュウとミュウツーの戦いを止めたのがサトシの自己犠牲でした。
なんだかナウシカみたいでした。彼女もまたその体現者ですから。
石化したとはいえ、現実的な死です。死のメタファー。
ポケモンですからさすがに人が死ぬ描写はできません。だからこういうかたちを通してそれを表現したのだと思います。
ここでやっとミュウツーも彼なりの答えを見つけることができ物語は良い方向に導かれ幕を閉じました。

サトシたちは初めから本物もコピーも同じポケモンだと主張していました。
けれどミュウツーにはミュウツーなりの意志がある。
彼は自分の存在と生に悪くも執着してしまったことによりさらに、そのときに多くの人間の悪に触れたために、
出口のない迷路に入り込んでしまい、自分に「逆襲者」という答えしか出せませんでした。
人と人に寄り添うポケモンの全てを否定し、コピーという名の十字架を背負い強く生まれてきた我々こそが本当の存在であると。
だからミュウツーに従うコピー達も戦いました。
傷つき、疲れ果てようが、戦って勝つことでしか報われないから。
一番印象に残っているのはやはりピカチュウです。
泣きながらもビンタを続けるピカチュウ。傷つけることは嫌だとしてもこっちだってやめられない。
にっちもさっちもいかずにはたき続けるピカチュウと黙って受け続けるピカチュウ。観ていてやりきれません。

だってこの戦いはどこまでいっても「戦い」そのものでしかないのです。行き着く先なんてありません。
答えはすでにでています。彼らが今存在していること、そのままが答えなのですから。
それぞれが生きている一匹のポケモンであること。
ミュウツーたちコピーが本物に準じるものではないことに正しく意識を向けることが彼にはできなかった。
サトシのメタフォリカルな死がなければミュウツーはこれに気付くことはできず誰も救われなかったでしょう。

ここをこの映画が映像として表現したのだと僕は思います。
まあそんなものは得てしてあるはわけではありませんが。

最後の締め方はどうだったでしょうか。
「このことはなかった方がいいだろう」とミュウツーは反省しました。
いや反省というより、自分を認めることができたというべきか。
立つ鳥跡を濁さずといったスッキリとした終わり方。これは後々公開されたポケモン映画の大半がそうです。
本編の方に支障がでないようにしているのでしょうか。 少し作為的な臭いもしますw
しかし、やはり意味のある発言であったと認めることの方が意義があったと言えるでしょう。
この台詞は受け取り方によっては深みがありました。
自分がきっかけで起こってしまった今回の一連の出来事。「なかった方がいい」なんて簡単に言えるはずがない。
彼はこうは言いながらも裏ではこのことに関して、自分がすべての罪を背負うことの決意としてみることもできました。
死人が誰かの中で生き続けるように、経験に基づいた記憶は個人の中で反芻されていく。
文字通り何度も思い出すことでそこから大事な栄養得ている。
風化することのないそれは鮮やかなままひとりの人間の宝物として心の奥底でいつまでも火を灯し続ける。
今回の出来事をそれらと同じように人々の記憶に残せばそれは傷であり、苦しめるほか使い道のない記憶なのです。
けれどもひとりの人間の「死」を通してやっと知り得た教訓は決して忘れてはいけないもの。
だったらぜんぶまとめて私が背負おう。そういったミュウツーの決心がここで見られたと思います。

一番印象に残ったのはミュウツーにかけたサトシの最後の一言 「みんなどこに行くの?」
これ聞いた瞬間身震いしました。なんでだろう。
サトシなら「どこ行くんだよー!」とかなのにらしくないほどに優しく訊いていました。
すごく象徴的とも思える一言でした。(『われわれはどこから来たのか。われわれは何者なのか。われわれはどこへいくのか』)


読んで下さった方ありがとうございました。
あ、書き忘れてたけどボイジャーさんかっこよかったです!
「海を知りたきゃ波止場のかもめに訊いてみな。」って声も良いし、台詞もかっこよすぎる!w
この人すごく好きw

海を渡ってるときよくトゲピーは死なずに済んだよなー、なんてw
あでゅー。

{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 20

101匹足利尊氏 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

哀しみの最強ポケモン

これが原点にして最高峰――――――


この今週末公開の本作リメイクCG映画『~ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』PVの宣伝文句。
『~ミュウツーの逆襲』ほどこの言葉が似つかわしい作品も珍しいと思います。

最強ポケモンを作ると言う、人のエゴで産み出されたミュウツーが、
“創造主”への憤怒をたぎらせ、復讐を決意する長いアバンは、
ハードSFと言って良いほどの強烈な先制パンチ。

命とは何か?を問う作品テーマは、
ポケモンバトルの掟では拘束できないほど重厚。

そして“ラスボス”小林幸子さんがEDで歌う命と冒険の賛歌。

もう、何もかも迫力が違い過ぎます。


公開当時、世界は前年発表されたクローン羊“ドリー”の製造を受け、
宗教観、倫理観が揺らいでいた時代。
巷では俄にクローンを題材に命について考える言説で溢れました。

けど本作は決してクローンと言うニュースのネタに乗っかって、
親御さんの歓心も得てみようと言う安易な企画ではありません。

『ポケモン』は初代ゲームの頃から、
カラカラ親子のイベントや、サカキ率いるロケット団との激闘。
TVアニメでも、はぐれポケモン・ヒトカゲのエピソード。
など、人とポケモンの関係を通じて、命について考え抜いてきたコンテンツ。

そして、ついに最強の人造ポケモン・ミュウツーに挑んだ本作は
劇場版一作目にして、熟成した命と言うテーマの集大成でもあります。


あれから20年余り……。

“伝説”を再来させるタイミングとしてはどうだろう?と、
昨年のリメイク発表から私は思案していたところ、
また、俄に世界が騒がしくなって来ました。

狂気の類人猿クローン実験に突き進む中国。
引き続き、中国人科学者に発表された世界初のゲノム編集ベイビー製造の衝撃。

私は、技術的には、そろそろ……と思っていましたし、
“革命”で倫理や道徳の土台を打ち壊した上に立脚した市場経済社会から、
こうした発表が飛び出したのにも、さして驚きはありません。

ただ、唖然とするのは、
マンガのマッドサイエンティストよろしく“成果”を強調する輩に対して、
世界のほとんどが、うわべだけ倫理で飾った、
臭い物に蓋をするような、反撃しかできていないこと。

“ドリー”からも、20年余り……。
自らが、人に産み出された、作り直された、
誰かのコピーであったと言う事実に直面した、
命のアイデンティティーとか……。
こうしたポケモン映画でも問われたような内容ですら、
どうやら世界は受け止め切れていないようです……。


世界は、人類は、もう一度、ミュウツーに逆襲されるべきなのだ。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 15

カリューム さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

実は完全版があって・・・

今度のポケモン映画でミュウツーが出るらしい
ということで、この映画について語りたくなってしまいました(^^)

本作品はなんとまぁ、アメリカで公開された日本映画中最も興行収入の高い作品だったりします
(最新の記録は知りませんがさっきwikiみたら2010年時点では更新されてないそうです)
もちろん日本でもその年の興行成績第二位だって言うのだから、凄いですね
まぁ単純に当時のポケモン人気故なんですけど
でもこのアニメ映画のテーマは個人的にすごく好きです


物語は最強のポケモンと言われる『ミュウ』の化石から、強化クローンとして作りだされた『ミュウツー』を主軸にして進んでいきます
あんま話しちゃうとネタバレになっちゃうので、簡単にこの話をまとめると、

『強化クローンとして生み出されたミュウツーははたして何者なのか?』

って感じです
ぶっちゃけ子供向けのアニメで取り上げるテーマなのか疑問です(^_^;)
『自己の存在を証明する』
『何のために生まれてきたのか考える』
そういった内容を含んでいます

元々任天堂という会社が作った『ポケモン』というゲームにはところどころ暗く深いテーマが潜んでいたりします(もちろん子どもたちが気づかないようにさりげなく)
詳しくはゲームの話になっちゃうので省きますが、任天堂さんは何かしら子供たちに伝えたいこと、考えてほしいことがあるんでしょうね

私はこの作品を子供の頃みて強く印象に残り、後日思い返してみると感慨深くなるという不思議な感覚を体験しました
再放送も何回かされていて、そのたびに思い入れが強くなりました
しっかりとしたテーマ性に基づいている作品なので、きっと多くの人の視聴に耐えうる作品だと思います
ただ、ポケモンらしい作品をお望みならちょっとこの作品は雰囲気が違うので注意してください
自分の思い出に残る名作です



今度公開されるポケモン映画のミュウツーは本作のミュウツーとは違うのかな?
数年前から観なくなっていたポケモン映画ですが、今年は観に行ってみようと思います


実はレビュータイトルにも描いたように、完全版があります
ミュウツー誕生の経緯を細かく描いたものなのですが、観ると本編に対する解釈がより深まると思います
というのも、ミュウツー誕生の経緯を詳しく描いたもので、作中のミュウツーの想いがより理解できるようになります
もし観ていない人がいれば、DVDが出てるのでおススメです

投稿 : 2024/05/04
♥ : 5
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