おすすめ純文学人気アニメランキング 3

あにこれの全ユーザーが人気アニメの純文学成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2019年09月20日の時点で一番の純文学アニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

61.0 1 青い文学シリーズ(TVアニメ動画)

2009年秋アニメ
★★★★☆ 3.5 (155)
860人が棚に入れました
 本作は、太宰治の「人間失格」と「走れメロス」、坂口安吾の「桜の森の満開の下」、夏目漱石の「こゝろ」、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」、「地獄変」の6作品からなる全12話のTVアニメ。ただし物語や設定は大幅に変更・脚色されており、必ずしも原作小説に忠実な内容ではない。
 企画の発端は、2007年6月に集英社文庫の「夏の一冊 ナツイチフェア」企画として週刊少年ジャンプで連載する漫画家が、名作の表紙を新たに描きおろしたこと、さらに太宰治生誕100周年という節目の年であるということから始まった。それぞれ、「人間失格」と「こゝろ」を『DEATH NOTE』や『ヒカルの碁』の小畑健、「桜の森の満開の下」「蜘蛛の糸」「地獄変」を『BLEACH』の久保帯人、「走れメロス」を『テニスの王子様』の許斐剛がカバーイラストを担当。アニメ化にあたり、カバーイラストを担当した漫画家がキャラクター原案を担当し、それぞれの作品は、オムニバス形式で放送された。

ねここ時計

★★★★☆ 4.0

文学が身近に

このアニメ作品、皆さんの評価が低いのですが私はすきです。

日本の代表する文学をアニメ化。

冒頭で語っているのですが、
「若い世代にとっては昔の話、上の世代にとっては昔読まされた話」
・・確かに!

図書館や図書室でいかにも難しそうな書籍たちが並び、その中にこのアニメで表現された作品たちは置いてあります。

人間失格、こゝろ、桜の森の満開の下、蜘蛛の糸、走れメロス

本を開くと、印刷部が古く滲み、茶色くなったページ。まるで読む気にもならない。

けれど、本の中の人たちは特別難しい人間ではなくて、私たちと同じで
青さや愚かさ、悲しみや喜び、時には焦り、怒り、涙。 動く心、衝動。
とても人らしい感情をもった主人公たちが描かれています。
小さな、汲み取らないような感情を丁寧に表現するさまは惹きつけられます。


アニメ化にあたり、それぞれのキャラクター原案が、週刊少年ジャンプの有名な漫画家たちということで
観やすく、文学との距離をとても近いものにしてくれたのだなぁと感じました。

想像していたのと少し違ったり、制作した方たちの原作とは違う解釈があったりしたのですが、
今の人たちに、受け入れてもらいやすいように表現して
もう一度読み返そう!と思ったり、ちょっと読んでみようかな?と思ったりして
本を手にとってもらえたら・・ということなのかな。

鬱々とした雰囲気や堕ちてゆく様、狂気ギリギリの心理描写など、見所満載でした。

投稿 : 2019/09/14
♥ : 26

ソーカー

★★★★☆ 3.5

名作も真っ青?

各エピソードとも作画も演出もまるで違うので、各々別物として見る必要があります。

「人間失格」
原作既読。ほとんど覚えてないので純粋に楽しめたと言えば楽しめました。
しかし自分のイメージしていた主人公像とちょっと違っていた気がします。
共感出来る部分が結構あったと思うんですが、このアニメの主人公はあまりそういう部分がなかった。
しかし、綺麗に纏めていてぐっとくる内容だったので、アニメとしての出来は非常に良かった。
いずれ読み返したいと思わせる面白さだったので、全然アリだと思います。

「桜の森の満開の下」
原作は読んだこと無ければ粗筋すら知らないが・・・これは唖然とした。
打って変わってコメディタッチで描かれてるわけですが、
時代劇なのに英語喋ったりミュージカルしたり意図がよく分からない。
内容は至極残酷なものなので、そのギャップが悪趣味にしか映らなかったです。
オチの意味もよく分からなかったですが、原作がどんなもんか知りたくはなりますね。

「こころ」
原作既読。Kが自殺に至るまでを過程を2つの解釈で描いた作品。
前編は先生の視点、後編はKの視点で展開されている。
先生からの視点の回は、Kの容姿・性格・心理描写全て酷すぎる出来に映ったのですが、
原作にはないKからの視点の回を見てみると、Kの心理描写はまだまともになりました。
ただ、全ての登場人物が原作と乖離しすぎているので、解釈として成立しているとは思えないです。
作品の要であるKの自殺理由を扱うのであれば、Kの人物像だけは守るべきだと思うんですが・・・
「こころ」を真っ二つにしているような酷い出来だと思いますw

「走れメロス」
原作既読。これは鮮明に覚えています。
アニメ「魍魎の匣」のスタッフということで、さすがという出来。
走れメロスの劇と小説家をリンクさせるというやり方はありがちではありますが
原作を巧く活かしてるという面では一番良い印象を受けました。
ただ本当に小説を執筆する様や汽笛の音まで「魍魎の匣」とかぶり過ぎて笑ってしまったw

「蜘蛛の糸」「地獄変」
「蜘蛛の糸」は既読。「地獄変」は未読。アニメでは同じ世界観で続きものとなっています。
カンダタの生前の描写から始まるのですが・・・とにかく色彩鮮やかな作画が美しかったなと。
地獄の禍々しさとか炎に包まれるところは素晴らしかったと思います。
「地獄変」はよく知らないので、内容についてはなんとも言い難いですが。

原作を結構改変してるので、この辺をどう受け取るかですよね。
良いと思えた作品と悪いと思えてしまった作品の差は結構激しかったです。
原作を読み返そうという気にはさせられたので、そういう意味では良かったのかな。
ただこのアニメを見る時は原作とは違うということを念頭に置かないとひどく痛い目に合う。
繊細な人物描写を、割合とざっくり描写してしまっているのは残念ではあるけど
アニメとして表現するのであれば、ある程度は仕方ないことではあるんでしょうね。

投稿 : 2019/09/14
♥ : 22
ネタバレ

takumi@

★★★★★ 4.4

文豪の名作×人気漫画作家によるオムニバスコラボ

文豪の名作×人気漫画作家によるコラボを
全12話のオムニバスにしたアニメ作品。
しかしながら、原作を忠実にアニメ化したわけではなく、
作品によってはかなり勝手な解釈による脚色や書き換えもある。
でも、「走れメロス」など、作品によってはそれがすごく良かったりもして、
独自の切り込み方での脚色も悪くないものだなと思った。
また、こういうオムニバスは好きな作品から観ていけるのも良いよね。

■1話~4話 『人間失格』(太宰治)

キャラクター原案=小畑 健(「DEATH NOTE」、「バクマン。」)
脚本=鈴木 智
美術監督=清水友幸

表題作だけあって、この物語だけ4話使っていた。
個人的に好きな昭和一ケタの時代背景と
東京の銀座を中心にした街並みが、アニメで観れたのは嬉しかった。

幼少の頃から、自分という人間にもがき苦しみ続けた主人公の
波乱に満ちた半生と、行き場のない生き地獄を味わいながら堕落し
狂っていく姿は、小畑氏の得意とするダークで繊細な人物描写が
すごくマッチしていたと思う。

また、主人公の父親が発する「人間失格」についての言葉、
主人公が苦悩の末ふともらす「生まれてきてすみません」という台詞、
タバコ屋の娘の「世間なんてひとりひとりの集まりじゃないですか」
という台詞は、自分の中のある想いに、特に強く心に響いた。


■5話~6話 『桜の森の満開の下』(坂口安吾)

キャラクター原案=久保帯人(「BLEACH」)
脚本=飯塚 健
美術監督=一色美緒

いきなりコミカルな山賊のお出ましで、わぁ~これはまた。。と。
原作から僕がイメージしていた世界とはかけ離れすぎていて、
唖然としてしまった。それに、大柄で筋肉質な主人公の雰囲気に、
堺雅人氏のか細い声はまったく合っていなかった。
背景からくる不気味さと狂気が伝わる美しさだけはあるものの、
途中の変なギャグで台無しになってるとしか思えなかった。
桜がとても美しく妖しげに描かれていただけに、残念。


■7話~8話 『こころ』(夏目漱石)

キャラクター原案=小畑 健(「DEATH NOTE」「バクマン。」)
脚本=阿部美佳
美術監督=上原伸一

前編を冬編、後編を夏編として、2通りの解釈による設定と展開で
見せたのが秀逸。 原作をどう受け取るかという問題そのものを
物語に組み込んだのは、すごく面白いなと思った。

登場人物は、先生、Kという男、お嬢さん、未亡人の4人だけ。
Kが自殺をするまでの出来事を、冬編でのお嬢さんは奥ゆかしく、
夏編でのお嬢さんは積極的でしたたかな女性という設定のもと、
物語の中の大まかな台詞は同じなのに、ニュアンスの違う言い方にして
まるで正反対の展開になってしまうところが、興味深かった。


■9話~10話『走れメロス』(太宰治)

キャラクター原案=許斐剛(「新テニスの王子様」)
脚本=川嶋澄乃
美術監督=金子英俊

物語が始まってまず、自分の大好きなアニメ作品の『魍魎の匣』と
まったく同じ演出と音楽と語り口だったことに感動してしまった。
なるほど、スタッフが同じだったので納得。

縁側に舞い込む桜の花びら、やわらかな光に包まれた部屋、
穏やかで懐かしいピアノのメロディー、美しすぎる万年筆やインク瓶。
それだけでも個人的にはしっかり鷲づかみにされたのだが、
原作の『走れメロス』を劇中劇としてうまく取り入れて再現しつつ、
原作のテーマとなっている約束と友情と信頼を、
このアニメの主人公である作家とかつての親友との甘くて苦い過去に
うまく重ね合わせてあって、それがまた僕の甘くて苦い記憶と
ぴったり一致してしまったものだから、
つきあげる胸の苦しみで、どうにも切なくなってしまった。

川嶋さんの練られた脚本に、胸をこじ開けられて参ったw
心の奥底に仕舞い込んでいたはずのものが一気にあふれ、
「うわぁ~~やられたな・・」と、しばし身動きできなかった。

待つほうがつらいのか、待たせるほうがつらいのか。
{netabare}
「待つことも待たせることも必要なくなってしまうことが一番つらい」
と主人公の独白に、自分も深く共感。
{/netabare}

ただし、どの作品にも言えることだけれど、観る人によっては
まったく違う解釈や感じ方があって当然なわけで、
自分が感動した、良い作品と思ったからといって、
感じる部分は人それぞれだし、逆に受け付けない人もいるとは思う。

でも・・・ほんとうに、この中の『走れメロス』は、
このオムニバスの中でひときわ美しく、味わい深い作品だった。


■11話   『蜘蛛の糸』(芥川龍之介)

キャラクター原案=久保帯人(「BLEACH」)
脚本=小林雄次
美術監督=金子英俊

全体通して原色を使い、特に赤と緑と青が強烈な印象を残す。
サイケデリックで不気味な地獄の様子や、悪の限りを尽くした主人公の
殺戮シーンは、なかなか迫力があった。
それだけのことをしておきながら、子どもに刺された後の彼が、
目の前にいる蜘蛛を殺さなかったのはなぜか。
それがやがて、地獄での蜘蛛の糸に繋がるわけなのだが、
蜘蛛にささやかな情をかけたあの心理描写には、
もう少し丁寧さが欲しかったなと思った。
しかし・・・悪人は地獄に堕ちても悪人というこの物語、
なかなかシュール。


■12話   『地獄変』(芥川龍之介)

キャラクター原案:久保帯人(「BLEACH」)
脚本=小林雄次/いしづかあつこ
美術監督=金子英俊

「蜘蛛の糸」から物語は続いており、
こちらでは国王の悪人ぶりが描かれる。
地位と名声を得ながらも、愚かな人間はどこまでも愚かで。
そしてその国王に目をかけられている絵師の、「地獄を描きたい」
という欲望が強烈で悲惨な犠牲を生み出すにも関わらず、
絵師はどこまでも絵師で・・・
なんとも、最終話にして一番後味の悪いエンディングだった。

それでも、アジアンチックな雰囲気を独特の色彩で描いた背景は
強い個性が感じられて、なかなか良かった。

投稿 : 2019/09/14
♥ : 30

62.9 2 バーナード嬢曰く。(TVアニメ動画)

2016年秋アニメ
★★★★☆ 3.4 (189)
703人が棚に入れました
バーナード嬢こと町田さわ子と読書家の友人たちが図書室で繰り広げるブンガクな日々。古今東西あらゆる本への愛と、「読書家あるある」に満ちた“名著礼賛”ギャグ!

声優・キャラクター
喜多村英梨、小松未可子、市来光弘、洲崎綾

蒼い星

★★★★☆ 3.5

原作は文章だらけ。

アニメーション制作:Creators in Pack
2016年10月 - 12月に放映された全12話のTVアニメ。
原作は、施川ユウキにより『月刊ComicREX』にて連載中の漫画作品。
5分枠でCMを除きEDを含めると3分30秒です。

【概要】

学校の図書室に入り浸ってる4人の生徒の読書ネタ話。

とりわけ、
本の内容を理解する気がないのにファッション感覚で読書通ぶりたい町田さわ子。
本についてこだわりまくりのガチの読書マニアの神林しおり。

お互いに無いものを持ち合わせている二人が小説をネタにトークをして、
互いの知識量と見解の相違から来る会話のズレを楽しむ作品です。

【感想】

絵的に『キルミーベイベー』ぽいアニメなのですが、
原作を読んだら全然違っていて、アニメ向けにキャラデザを可愛くしていますね。
登場人物が少ないのもキルミーっぽいですし、
“ド嬢”こと“さわ子”が“やすな”みたいなものかな?と観てみました。

まず、作家の人名の引用と固有名詞がやたら多くて、
読書家じゃないと会話の中身があまり理解できないのじゃないか?と。
知ってる人なら、ニヤリと出来るのでしょうけどね。

ただ、本をあまり読まない自分でも、
作中のやりとりをみて学生時代を思い出しましたね。

・ちょっと本を読んだだけで本を読まない奴は頭が悪いバカだと見下す奴。
・本を読んでも中身を咀嚼せずに、覚えたての知識を自慢する奴。
・小説の中の台詞を意味もなく前後の文脈を無視して引用してドヤ顔を晒しては場をしらけさせる奴。
・フィクションと現実を混同して『銀河英雄伝説』を引用して、
 いきなり日本の政治と皇室の批判を始める痛々しい奴。

実際に中学・高校時代に周りにいた連中なんですけど、知識との向き合い方が稚拙なんですよね。
私も当時若くて、失敗したこともありましたがw

この作品のなかでは性格の悪い読書好きは、存在しませんけどね!

たかが漫画原作の軽くて短いアニメなのですが、
上記のような傾向のある人間に観てもらいたい、
本との向き合い方に一定の方向性を与えてくれる、
本を好きになるきっかけを与えてくる作品かな?
と私は思いました。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2019/09/14
♥ : 42

shino73

★★★★☆ 3.5

「へぇー」と「あるある」 これは傑作

これは短編アニメの傑作かもしれない。
文学全般が好きな僕には、
共感出来てクスっと笑える読書あるあるが満載。
ここに出て来る小説を全然知らなくても大丈夫ですよ。
主人公が名著を読まずに読書家ぶりたい“バーナード嬢”ですから。
いかにして本を読まずに読んだ風に語れるかとか、
映像化前に小説を読んで通ぶるにはどうするかとか、
村上春樹作品の批評はそっちのけで、
村上春樹作品との適切な距離感はどれが正解だとか、
そんなお気楽な小ネタ話ばかりです。
作者には知識だけ豊富な高尚ぶりたい読書家への、
批判も入ってるのかもしれませんね。
でも「本」が好きなんだろうな。
超短編なので好きな時に見れますね。

バーナード嬢、曰く
「人生を変えた1冊について語ってみたいけど、
 人生変えるのが面倒くさい…」

参考までに出て来た作品
「シャーロックホームズ」
「古典SF作品全般」
「銃・病原菌・鉄」
「日本3代奇書」
「フェルマーの最終定理」などなど

サクッと見れてお勧めですよ。

投稿 : 2019/09/14
♥ : 39

ato00

★★★★★ 4.2

バーナード嬢の意味がわかりません。まあいっか。

世にも不思議な読書ショートアニメ。
でも、読書のススメではありません。
本を愛でつつ、個々人の読書観のずれで笑いを誘うコメディーです。

会話がまさに機関銃。
大量の情報が詰まっているので、置いてかれそうになります。
読書好きなら、あるあるネタ。
本を読まないなら、それなりに。
そのテンポ感が心地いいです。

自称バーナード嬢、町田さわ子が主人公。
「さわ子」だけあってひたすらさわがしい。
読書しないで本を語る。
要はとんでもなく横着なお調子者です。

そんなさわ子に、
読書オタク女子、しおり
真面目女子図書委員、長谷川
常識男子、遠藤
が横槍を入れるのがこの作品のお笑いパターン。

中でも、激しいつっこみを見せるしおりがダイナミックです。
「しおり」だけあって、きっちりしたわかりやすい読書オタク。
もちろん、本を語らせたら止まらない。
空気も本も読めないさわ子に激怒することしきり。
このふたりの化学反応が爆発的に楽しいアニメです。

アニメタイトルは堅いけど、予想外に笑わせてもらいました。
コメディー作品としては良質と評価します。

投稿 : 2019/09/14
♥ : 33

計測不能 3 杜子春(TVアニメ動画)

1981年春アニメ
★★★★☆ 4.0 (2)
16人が棚に入れました
芥川龍之介の同題の原作を、TVスペシャルアニメ化。唐時代の末期。幼い頃にただ一人の肉親だった母・白蓮を盗賊に拉致された孤児・杜子春。15歳の現在の彼は、洛陽の都で窃盗団の若き首領となっていた。苦難の半生から人間に絶望した杜子春は仙人に頼み込み、自分も貴方のようになりたいと願う。だが相手の仙人が出した課題、それは試練の間、絶対に口を利かないというものだった。壮絶な苦難の中、無言を貫く杜子春だが……。番組制作は『まんが世界昔ばなし』などのダックス・インターナショナルで、アニメ実制作はスタジオ古留美が担当。古留美の『さすらいの少女ネル』や東京ムービー(現トムスエンターテインメント)の『ガンバの冒険』などの名アニメーター樺島義夫がキャラクターデザインと作画監督を担当。樺島と縁が深い演出家・西牧秀夫がチーフディレクターを務めた。実写映画『天平の甍』の美術スタッフ・木村威夫も、美術考証を手がける。
ネタバレ

スガル72

★★★☆☆ 3.0

芥川龍之介は過大評価されている

特に優れたところもない凡庸なアニメです。
ただ、そのエンディングを観た時に、納得出来ないものがありました。

【杜子春】は大正9年の芥川龍之介の小説【杜子春】をアニメ化したものですが、唐の牛僧孺(780-848)の小説にも【杜子春】があります。
つまり芥川龍之介は、中国の古典小説を、筋を変えずにエンディングだけを変えて、自分の小説として発表したということです。
エンディングを原作者の意図とは真逆にしているので、杜子春の原作者に対するリスペクトが少しも感じられません。
アニメも杜子春の原作者として、芥川龍之介の名前しか出てきません。
芥川龍之介は、牛僧孺の書いた杜子春のエンディングが気に入らなければ、オリジナルの作品を書くべきでした。

私は別の作品としてなら、芥川龍之介の情に流れるエンディングはありだと思います。
でも、(日本では仏教の方がメジャーなので仏教で例えますが)、仏教でも親子の愛や男女の愛は渇愛と言って執着に過ぎないと教えますが、もし日本の古典仏教文学の結論だけを改変したものを、外国人が自分の作品として発表したらどんな気持ちになるでしょうか。


以下二つの杜子春の粗筋の比較

{netabare}【芥川龍之介】①唐の時代。
【牛僧孺】①北周~随の頃。

【芥川龍之介】②洛陽の西門でたたずむ貧乏な青年、杜子春。
【牛僧孺】②長安の東市の西門でたたずむ貧乏な青年、杜子春。

【芥川龍之介】③通りかかった一人の老人から大金を貰う。
【牛僧孺】③通りかかった一人の老人から大金を貰う。

【芥川龍之介】④1~2年放蕩してまた貧乏になる。
【牛僧孺】④1~2年放蕩してまた貧乏になる。

【芥川龍之介】⑤門でたたずんでいると、再度同じ老人に出会い、大金を貰う。
【牛僧孺】⑤門でたたずんでいると、再度同じ老人に出会い、大金を貰う。

【芥川龍之介】⑥3年放蕩してまた貧乏になる。
【牛僧孺】⑥1~2年放蕩してまた貧乏になる。

【芥川龍之介】⑦門でたたずんでいると、再度同じ老人に出会う。
【牛僧孺】⑦門でたたずんでいると、再度同じ老人に出会う。

【芥川龍之介】⑧また大金をくれると言うのを断り、老人に仙術を教えて欲しいと頼む。
【牛僧孺】⑧また大金をくれると言うので、この金で世の中に対する義務を終えたら、老人の望むことを何でもしますと答え、大金を貰う。

【芥川龍之介】⑨大金を断った理由は、金のある内は人々が友人だと言って擦り寄ってくるが、金が無くなると皆去っていくので、人間に愛想が尽きたからだと言う。
【牛僧孺】⑨杜子春は一族に孤児や寡婦が大勢いたので皆呼び寄せ、多くの家を立て、田畑を買い、要所に店舗を設けて彼らに分配し、適齢期の者を結婚させ、墓地を整える。

【芥川龍之介】⑩老人は仙人で、杜子春に沈黙の修行をさせる。
【牛僧孺】⑩老人は仙人で、杜子春に沈黙の修行をさせる。

【芥川龍之介】⑪老人は、『いろいろな魔性が現れて、お前をたぶらかそうとするだろうが、決して声を出してはいけない。たといどんなことが起ころうとも、決して声を出すのではないぞ。もし一言でも口を利いたら、お前は到底仙人にはなれないものだと覚悟をしろ。』と言う。
【牛僧孺】⑪老人は、『神々や悪鬼、夜叉、猛獣、地獄、あなたの両親が縛られて数々の責め苦に苦しもうとも、すべては真実ではないのだ。ひたすら動かずに、無言でいなさい。』と言う。

【芥川龍之介】⑫杜子春は色々な幻の中で苦しめられ、最後に地獄で苦しめられる父母の幻を見せられる。
杜子春はこらえ切れずに、『お母さん』と叫んでしまう。
【牛僧孺】⑫杜子春は色々な幻の中で苦しめられ、最後に地獄で苦しめられる妻の幻を見せられるが堪えきる。
杜子春は閻魔大王から情が薄いと判断され、杜子春の魂は女として生まれ変わる。
女に生まれ変わった杜子春は、成人するまで一言も喋らないので迫害されながら育つ。
杜子春は結婚して聡明な男児を生む。
杜子春の夫は、結婚して子供が生まれても口をきかない妻に怒り、逆上して我が子を殺してしまう。
杜子春は子供に対する愛から、『ああ!』という声を漏らしてしまう。

【芥川龍之介】⑬幻が消えて老人が現れると、『もしお前が黙っていたら、おれは即座にお前の命を絶ってしまおうと思っていたのだ。』と打ち明ける。
【牛僧孺】⑬幻が消えて老人が現れると、杜子春が全ての感情を捨て去ることが出来なかったので、仙人にはなれないと告げる。

【芥川龍之介】⑭杜子春は仙人になりたいという気持ちが無くなったので、これからは『人間らしい、正直な暮らしをするつもりです。』と答え、老人から畑つきの家を貰って物語が終わる。
【牛僧孺】⑭杜子春は後悔して物語が終わる。{/netabare}


芥川龍之介に自身の青年時代の思い出を綴った『あの頃の自分の事』という作品があります。

学生の頃は作家を目指す友人たちと集まっては、プロの作家達を扱き下ろして批判していた毎日。
教室でよくタバコを吸い、先生に見つからないように、要領よく窓の外に捨てる。
大学の純文学科は無駄だ。これははたして学問だろうか。文学概論や何かは美学の授業で十分じゃないか。文学史なんかは歴史の授業で一緒に教えればいい。
大学の純文学科というのは、先生の読書感想を聞かされるだけの場だ。
こんな学科は廃止したほうがいいと芥川龍之介青年は思った。
友人の松岡の部屋に行くと、松岡は原稿を書き終わって寝ていた。
ふと松岡の顔を見ると、眠りながら睫毛に涙を一杯ためていた。
頬には涙の流れた跡が残っている。
『「莫迦(ばか)な奴だな。寝ながら泣く程苦しい仕事なんぞをするなよ。体でも毀(こは)したら、どうするんだ。」
「よくそれ程苦しんだな」と、内証で褒めてやりたかつた。さう思つたら、自分まで、何時の間にか涙ぐんでゐた。』


生意気ざかりの芥川龍之介の青春時代。それがプロになると、精神を病んで35歳で自殺します。

投稿 : 2019/09/14
♥ : 2
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