花とゆめで少女漫画原作なアニメ映画ランキング 1

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87.8 1 花とゆめで少女漫画原作なアニメランキング1位
耳をすませば(アニメ映画)

1995年7月15日
★★★★☆ 4.0 (1446)
9816人が棚に入れました
読書好きの中学3年の月島雫は、父の勤める図書館へよく通うが、自分の読む本を全て先に借りて読んでいる「天沢聖司」の名前に気がつく。その天沢聖司が同級生だと知るのに時間はかからなかったが、天沢聖司のことが何かと気になる雫。
ある日、図書館への道で変な猫を見つけ、その猫を追いかける。猫は小さなアンティークショップ「地球屋」へ入っていき、雫は店で老人・西司朗と出会う。西老人は聖司の祖父で、彼は地下の工房でヴァイオリンを作っていた。聖司はヴァイオリン職人になるためにイタリアへ留学したいという夢を持っていた。確固たる目標を持っている聖司に比べて、何をするべきかが分からない雫。雫は自分の夢を求め、物語を書き始める。

声優・キャラクター
本名陽子、高橋一生、立花隆、室井滋、露口茂、小林桂樹

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

今更見ましたが、ジブリの…いやラブストーリーの最高傑作でした。

 宮崎駿以外のジブリ作品なんて…と思い見てませんでした。いや、こんなに名作だとは…。正直、ジブリ作品の中で最高の出来だと思います。何が良いって悲劇がないのに、深い深い感動があることです。ヒロインを病気にしないと感動が描けない凡百の作品とレベルが違います。

 中三の成長課題、自分探しとラブストーリー。極めて良質です。ファンタジーがないと物足りない年齢、テーマや文学性よりも刺激が欲しい20歳前に見ていたらもっと評価が低かったかもしれません。
 長じてみると「魔女の宅急便」と重なるテーマもありますが(というかプロット・テーマはほぼ同じでしょう)、本作のほうが現実世界の日本での丁寧な描写が効果的で、感情移入が非常に深くできて感動が深いです。

 まず、ヒロインのキャラがいいです。本好きで好奇心旺盛で多感で行動力があってというのが、画面の活き活きとした動きだけで分かります。中学3年生で進路に悩むこと、作詞と小説とバイオリン。不思議な猫とバロンの物語。どれをとっても全部中三の少女の内外の描写になっていました。

 家族のみんなも好きな道を進むという点で似たもの家族だなあという感じで、キャラのアウトラインがよくわかります。
 
 そして、本好きの少女が図書館カードの名前の子に憧れて…というストーリー。理解が深まり惹かれ合う。最高でした。図書館カードと言えば「四月は君の嘘」でも同じような使われ方をしてましたが、必然性というか少女の心の動きで言えば圧倒的に本作です。そして、時計ですね。あの物悲しいエルフとドワーフのストーリーがヒロインと重なります。
(なお、図書館カードが本に残っているのはおかしくね?と思い調べたら、カードが2種類あるタイプの貸し出しシステムらしいですね。実際にあるみたいです)

 成績が落ちたときの父親の言葉ですけど、いいですねえ。今の時代だと余計に刺さります。そう…勉強も大事ですけどね。ガリ勉の成績なんて社会に出れば意味はないです。お姉さんのキャラ造形は「響け!ユーフォニアム」にも重なってきます。

 やっぱりやりたい事がやりたいと言えるのは大事です。ただ、それが中三である必要はない、ということも併せて描けていたと思います。ヒロインの焦りというのもちゃんと描けていました。方向性が見つかっただけででも大したものです。
 目的とか目標を達成するために勉強したいという気持ちになったのが最高です。

 
 世界観です。1990年代…というよりバブル臭がないので1980年代の感じです。クーラーもスマホもないです。とにかく時代を切り取ったような画面の描写が最高でした。生活感のある部屋のゴチャゴチャした感じとか、団地とか校舎の壁もくすんでいます。この生々しさが時代や町の性格、家族などにリアリティを与えます。
 今から見ればどうやって時間を過ごしたんだ?という時代ですが、個室もなく、本と音楽で内省する時間がある時代。だからこそ中三でもあんなに大人びていたのでしょう。

 あの骨董品屋というか店がいいですねえ。逆方向なら「アナザー」の不気味な店ですけど、夢というテーマにぴったりの場所です。そこにいるおじいさんがまた…過去の悲恋が胸に響きます。それぞれの人生において、どこを切り取っているのか…。

 最後の自転車のシーン。2人でこれから歩んでゆく暗示でしょう。坂道を登って行く彼の根性と、お荷物になりたくないヒロイン…素晴らしい演出です。
 ただし、です。あのおじいさんの悲恋をなぜ描いたのか。うーん。大丈夫でしょうか。まあ、人生はこれからです。ここで確定じゃない感じもいいのかもしれません。

 磨くとつまらなくなる宝石の原石。小説とバイオリンと…中三で進路が決まった少年と進路に悩む少女のアナロジーにぴったりです。

 エンディングでカントリーロードの曲に合わせて中学生の登下校の風景が描かれますが、それぞれの人生に物語がある感じがいいですねえ。まあ、ちょっとした仕掛けもありましたし…本当に隅々まで考えて作られている名作でした。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 15
ネタバレ

Progress さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

懐かしかったり、心が痛くなったり

2017年の金曜ロードショー冬のジブリ三作品もこれで終わりです。
{netabare}
この作品は三回ほどしかみたことのないのですが、
そのときは、「よく分からない」というのが、正直な感想でした。
もしくは、恋愛の部分や綺麗なシーンだけを楽しんでいたのか…


では、少し大人になって、この作品をみたわけですが、
主人公雫の中学生時代の青春が描かれていて、
意味がわからなかったことも、少し理解できたように思えます。

カントリーロードの歌を聞くと、どこかノスタルジックで、暖かく、
帰りたいような気持ちになります。
そして、バイオリンを弾く聖司と雫が一緒に歌うシーンが楽しげで、
大人になってもこの思い出を雫はずっと覚えているのだろうなと、
それほど、大切な時間のように感じました。

何故天沢聖司を雫が好きになるのかわからなかったのですが、
素敵な人という想像から、実は意地悪な同級生で、
目標が決まっている少し大人びた感じの印象にかわっていきます。
貸し出しカードの中の理想の憧れから嫌悪の対象、
そして現実的な憧れに雫の中で聖司の立ち位置が変わっていくのがわかりました。

雫が小説を書く理由についても、憧れの人に少しでも近づきたいという気持ち、
自分になにかないかという悩みのなかにある不安定な状態、
小説という自分の好きな事に関わりたいという願望…色んな思いか重なって、
夢中で書いていたのですね。

そして、現実を差し置いて自分がなりたいものになろうとする雫を少しだけ家族が諌めて、
止めはしないという優しさ。
「人と違う生き方はしんどいぞ」と父親は雫を止めはしないけど、
雫のやりたい事へ覚悟をしなさいというその言葉、
普通のお父さん像を持ちつつ理想的な父親を示したように見えます。

そして、今回こういうことだったのかと感動したのは、
雫が小説を辛い状態で書ききったこと。父親の言った通り、しんどい事になった。
好きな人は側にいない、今まで一緒だった姉はいない、
自分の能力の限界を感じながらも、迫る締め切り。
少し広くなった部屋で寝転がりぼーっとするその姿には、
ぎりぎりで保っている感情を感じました。
それでもやめることは自分の才能を諦めてしまうから、やめたくない。
時間がない中で書ききった小説は支離滅裂だと自覚するような作品。

雫作品を映像化したシーンでは、雫の心の浮き沈みがはっきりと現れています。
最初はバロンが「行こう!~してしまう前に!」と、
せかすように作品世界に飛び込んでいく主人公は、
まさに小説書きに夢中になっている雫の心を表しています。
また、主人公が見つけたと思ったその宝石がネズミだったのは、
自分の才能を無我夢中で探していた雫が、
自分の中にある「自分は才能がないんじゃないか」という恐怖の現れではないでしょうか。

不安をずっと抱きながら書ききった物は、支離滅裂、絶対駄目だと思ってい0たのに、
古道具屋の西さんは「よく頑張りましたね、あなたは素敵です。」といってくれた。
自分がもう書くことを続けられない、才能がないという恐怖からやっと解放されて、号泣。
ようやく雫が泣いた理由がわかった気がします。

そして、才能に向き合うその姿に、自分の中学生時代を思い出して心がいたくなりました。
雫ほどちゃんと向き合っている人はそうはいないでしょう。
自分の限界を知って、次になにをすべきかわかった雫はとても大きな成長をしていますね。

{/netabare}

総評
何になりたかったわからなかった雫が、熱中するものを見つけて、
大きな成長を遂げるその姿に、同じく何になりたかったのかわからなかった時期を重ねて、
心が痛くなったり、少し甘くて青い恋愛劇に恥ずかしさを感じながらも、
楽しくみれる作品でした。

そして、カントリーロードに感じる、ノスタルジックな雰囲気が、
心を穏やかにしてくれて、青春時代の思い出のような作品だと感じました。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 60
ネタバレ

ほったっる さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

あの頃の気持ちを思い出せる名作

地上波で先ほどまで放送しており、せっかく最後まで観賞したのでレビューを書こうかと思います。

私のこの作品との出会いは5、6年ほど前になるでしょうか、私が中学生のころです。
私が観たというわけでもなく、当時大学生だった兄が無性にハマっていて、家で何回も観ていたので、私もついでに観ているうちに台詞を覚えるほどになっていました。

それこそ、私が中学生のころに観た作品ではあるのに、どうにも登場人物たちが大人に見えて、高校生の設定だと当時は思っていました。ところが実際は1つや2つしか変わらなかったわけです。

その当時から印象に残っていたのは杉村くんでした。
普段はおちゃらけているように見えますが、
{netabare}勢いで雫に好きと言ってしまうところは{/netabare}
すごく彼の男らしさを感じて、尊敬していました。
今となってみると、かなりの少年っぽさなんですが笑

月日が経ち、私も当時ハマっていた兄くらいの年齢になりました。

改めて観てみると、この物語で感じ取れなかったストーリーが次々とわかるようになりました。

母親がなぜ勉強していたのか、姉はどういった人物なのか、ボー読みにしか聞こえなかった父の思いは・・・。

そういった大人たちの思いを表情や発言から読み取ることができるようになっていました。

それに加えて、中学生独特の恋愛のもどかしさというのが痛いほどに伝わってきました。
それを感じると、すごく今の自分が汚れてしまったような気もしてへこむ勢いなんですが・・・笑

特にメインキャラクター二人の挙動から、どういった気持ちなのかが本当に痛いほどに伝わってきて、
「あー、自分はもうこんなシチュエーションを2度と味わうことができないんだー」
と思うと、真剣にへこみます。

他の中学・高校の学生が主人公のアニメを見ると、もっとリア充しとけば良かったなと後悔する時が多々あります。
まぁ、不思議とリア充というものに対して理由のない反感を抱くのが中学生というものなのですが笑

もちろん自分の中学・高校のころの思い出はそれらに負けて劣ったものとしても、私にとってはかけがえのないものなんですがね・・・。

と、このように気づけば懐古厨になってしまう恐ろしさを秘めた作品なのです・・・。

作画や音楽については日本が誇るジブリ作品ですので、文句を言えるはずがありません。素晴らしすぎます。
特に、音楽については物語で大きな役割を果たしていますし、作品の初めから最後まで一貫して出てきます。

あの頃の気持ちが思い出せて、明日からの現実に目を背きたくなるほどの副作用がありますが、素晴らしい作品ですので、ぜひ一度ご覧ください。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 10
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