19世紀でフランスなTVアニメ動画ランキング 3

あにこれの全ユーザーがTVアニメ動画の19世紀でフランスな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年06月08日の時点で一番の19世紀でフランスなTVアニメ動画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

73.0 1 19世紀でフランスなアニメランキング1位
異国迷路のクロワーゼ The Animation (TVアニメ動画)

2011年夏アニメ
★★★★☆ 3.7 (953)
4406人が棚に入れました
私ハ…このギャルリの家族ニナリタイ・・。
19世紀の仏蘭西、巴里――。 近代化の流れに忘れられた小さな商店街、ロアの歩廊に、 ある日、小さな日本の少女が足を 踏み入れました。彼女の名前は湯音。 長崎から一人、パリへ奉公にやってきたのです。 全く違う異国の文化や慣習に戸惑う毎日。 それでも一生懸命な湯音は、鉄工芸品店「ロアの看板店」で働きながら、店主のクロード、そしてパリの人々との温かな出会いを通じて、一つずつ、文化や言葉の違いを乗り越えていくのでした。優しい日差し差し込む、この時代遅れな商店街に 迷い込んだ日本人形。 いつか、ギャルリの家族になれるよう、少女は今日も奉公に励みます…。
ネタバレ

大和撫子 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

湯音がお人形さんのように可愛いのです

湯音ちゃん、私の家に奉公にきて~!!

◆この作品の概要は・・・
時は19世紀後半、長崎一の看板娘だった小さな女の子の湯音が家のしきたりによりパリへ行き、鉄工芸品店で奉公するというお話。

◆まず主人公の湯音が・・・
と~ても可愛いのです!
黒髪のおかっぱ頭でお人形さんみたいです!
第1話目のピンクの華やかな着物姿や、下駄をコツコツ音を立てて小走りに歩く姿を一目見た時からその可愛らしさに目を奪われました。
人の言いつけを必ず守りしっかり者、でも小さい小柄な容姿から危なっかしくて目が離せない。
また可愛らしい外見とともに、その仕草や豊かな表情がとっても微笑ましいです。
始めて体験する異国の文化や食べ物に戸惑うものの、好奇心旺盛。
微笑んだ顔・悲しそうな顔・驚いた顔・ふてくされた顔・泣いた顔など・・・。
ひとつひとつの表情にとっても癒されます。

◆声優陣は・・・
主人公湯音の声優の「東山奈央」は現在19歳の新人です。
しかし、綺麗な透き通った声でこれから大いに活躍が見込めるような声優さんではないか?と思っています。
そしてメインキャラであるアリス・ブランシュの声優は「ゴシックのヴィクトリカ」を演じた「悠木碧」。
このアニメの舞台が19世紀なのでゴシック感も漂うこのアニメでの「悠木碧」のキャスティングはとてもイキな計らいですね。

◆タイトルが示す通り・・・
日本では長崎一の看板娘でも、風習や文化が違うパリではいろいろ厳しい事が待っていると思います。
異国迷路というように、日本とは文化が全く違うパリで生活するというのは迷路に迷い込んだようなものです。
19世紀ヨーロッパの異国情緒あふれる舞台で、この可愛らしい日本人の小さな女の子がどのように過ごしていくのか非常に楽しみですね。

◆ストーリーは・・・
ストーリーはとてもゆっくりと進みます。
特に中盤あたりでは中だるみ感も感じられるかもしれない。
この作品は全12話(本編11話+TV未放送エピソード1話)。
原作1、2巻の内容を1クールで11話に納めています。
作品にもよるけど、原作がノベルやコミックからくるアニメはだいたい五巻~十数巻の内容を1クールで納めてしまう作品が多いのではないでしょうか?
原作2巻分の内容を1クールで描いているので、とても丁寧にゆっくりとした繊細なストーリーで仕上がっています。

◆なぜあのエピソードを放送しなかったのか・・・
最終話は屋根の上のお話。
原作を読んでいる人には、最終話にこの話を持って行った事に疑問を感じるのではないでしょうか?
パリに来た湯音の一番の見せ場?ともいうべきあのシーンが削られていたのは非常に残念でした。
ストーリー的にもハラハラさせられたシーンなのに・・・。
2期が制作されるのか?OVAに追加シナリオで制作されるのかはわかりませんが、せっかくなので内容を以下に紹介。
知りたくない人は回覧はしないで下さい。
{netabare}
百貨店を毛嫌いしているクロード、しかし百貨店に行きたい湯音の為に2人で行くことになります。
複雑な想いのクロードとは逆に湯音は興味深く周りを見て楽しみますが、2人ははぐれてしまう。
さらに湯音は百貨店の店員に盗人の疑いがかけられます。
そんな中、百貨店は火事に・・・。
お店の中は逃げ惑うお客達でごった返し。
大きな身体の外国人達の群衆にあの小さな身体の湯音が巻き込まれたらひとたまりないと焦るクロード。
そんな時に湯音がとった行動は・・・・。
{/netabare}
このエピソードに私泣けましたよ(゜-Å) ホロリ 。
興味ある人は原作をぜひ^^。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 70

せもぽぬめ(^^* さんの感想・評価

★★★★★ 4.8

湯音ちゃんの笑顔で癒されました(´ー*`)キラーン

■湯音ちゃんと出会ったときの日記(*^-^)
舞台は19世紀ヨーロッパ。フランスの古き良き街並みの雰囲気を丁寧に表現できている作画には圧倒されました♪
 
そんな素敵な背景の中でひときわ輝いていたのが、湯音(yune)でしたね(゚ー゚☆キラッ
艶やかな着物姿が一見ミスマッチと思われる背景に、不思議と溶け込んでいるのですよ♪
そして、湯音が歩くたびに、「こっぽり」「ぽっくり」 と舞妓下駄の奏でる心地よい音☆彡
まるで「こっちだよ」って呼びかけられている様な、素敵な音色がいつまでも耳から離れませんでした♪
 
湯音は小柄で、黒髪で、ショートカットで、献身的で、真っ直ぐな瞳で、環境の違う異国の地で、何を感じ、何を想い、様々な人と出会い、どんな風に日々を過ごして行くのでしょうねo(*^▽^*)o~♪
今後の展開にとっても期待が持てる第一印象だったのです!!
 
 
■最終回を観終わって(・ω・)ノ
(〃´o`)=3はひーって感じで体の隅々まで癒されちゃいました♪
最初から最後まで湯音ちゃんの魅力を存分にひき出す演出は秀逸でした。
フランスの情緒溢れる雰囲気を引き立てるBGMと、スクロールやズームの仕方でゆっくり流れる時間を演出したカメラワーク。
さらに、さりげなく耳に残るドアの開閉の鈴の音や下駄の音などの音響効果や、やわらかい光の差し加減で優しいほんわかした雰囲気作りなど、癒し系の作品のお手本となるようなハイクオリティな作りは作画だけで考えればARIAを超える出来栄えだったと感じました♪
 
そんな雰囲気の中、湯音ちゃんの生き生きした表情や仕草がとっても魅力的で、アリスお嬢様が湯音ちゃんに抱きつきたくなっちゃう気持ちが良くわかります♪
健気でいつも一生懸命な湯音ちゃんだけど、たまに見せる頑固な一面は、今のNOと言えない日本の政治家にも見習って欲しいくらいです( ゚ー゚)( 。_。)ウン♪
 
 
■総評
遠い異国の地、日本から来た湯音ちゃんの魅力が、ギャルリ・ド・ロアやブランシュ家の人達に少しずつ変化をもたらす様子が本作品の一番の見所だったのだと私は思います♪
頑固で不器用なクロードさえも、ちょっとずつ湯音ちゃんのペースに振り回されてだいぶ考え方も変わってきたように見えましたね♪
 
また、湯音ちゃんが失敗したり戸惑ってたりした時に、さりげなく声をかけるオスカーさんも素敵でしたね♪
ときに「魔法」と表現するくらいに湯音ちゃんにとっては、オスカーさんの言葉って心の支えになってるんだなって感じられました(*^-^)
 
ブランシュ家のカミーユ姉さまは地味な役回りでしたけど、妹のアリスちゃんの事を愛し、とっても大事に思っているのが良く伝わってきましたね♪
アリスちゃんに少しでも自由に過ごさせてあげたい気持ちや、クロードとすごしてた幼少の頃の思い出や、貴族としての立場など、複雑な心情をさりげなく描写してましたね♪
 
とにかく、本作品「THE ANIMATION」では湯音ちゃんと街の人達との触れ合いから、次第に第2の故郷となりえる場所となるまでの心温まるストーリーでしたけど、是非2期を見てみたいですね♪
2期では、各キャラ毎の掘り下げたストーリーや、今回は変化がなかったカミーユとクロードの関係を是非見たいなぁって思ってます♪
 
こういう癒し系の作品は、つまらないと言う人もいると思います。
ただ、人生の中でいつかいいなって思える時期が来るのもこういった作品だと思うのです♪
なので、つまらないと思ってもそっと覚えておいて欲しい作品です(o*。_。)o
σ(・・*)アタシみたいに癒し系大好きな人はたくさん観ましょうね♪
 
 
■MUSIC
OP曲『世界は踊るよ、君と。』
 歌:羊毛とおはな
 アコースティックギターの音色が心地よい、温かいサウンドです♪
 
ED曲『ここからはじまる物語』
 歌:湯音(東山奈央)
 湯音ちゃんの声優さんが歌ってくれてるだけで、ほのぼのしちゃいますね(*^-^)
 
ED曲『遠く君へ』
 歌:アンヌ(中島愛)
 4.5話を思い出す曲ですね♪やっぱりランカちゃんだねw
 
ED曲『Tomorrow's Smile』
 歌:A.m.u.
 カミーユお嬢様全快の8話限定のED曲でしたね♪
 優しくしっとり歌ってくれてます♪名場面を思い出させてくれる歌声です(*^o^*)
 
 
2011.07.07・第一の手記
2011.07.08・一部言い回しを修正
2011.09.21・第二の手記(追記:■最終回を観終わって■総評■MUSIC)

投稿 : 2024/06/08
♥ : 62

てけ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

とっても癒されるアニメ。L面に墜ちそうになった……

原作未読。


時は19世紀。
湯音(ゆね)という少女が奉公の目的でパリへ渡る。
ギャルリ・ド・ロアという商店街にあるアンセーニュ・ド・ロアという看板店に住み込みで働くことに。
当初は右も左も分からない湯音。
彼女がギャルリ・ド・ロアになじむまでのストーリー。


笑顔になれる癒しアニメです。
日常系ではありません。
ストーリーはしっかり進みます。

主要人物は以下。

・湯音 → 日本からパリに奉公に来た13歳の少女。ロリッ子
・クロード → アンセーニュ・ド・ロアを経営する青年。ツンデレ
・オスカー → 湯音を日本からパリへ連れてきた老人。いい歳をしてプレイボーイ
・アリス → ギャルリ・ド・ロア全体を管理する大富豪の少女。高飛車だけど湯音にぞっこん


湯音の行動は日本人なら大いに納得できるものです。
しかし、パリでは不自然に見えます。
クロードがそれをどう扱うかが、話の軸です。
したがって、湯音よりもクロード目線のストーリーと言ったほうがいいかもしれません。
そして、間を取り持つのがオスカーじいさんの役割です。

オスカー「日本では~」

と、毎回解説してくれます。


また、湯音にとっては異国で右往左往するストーリー。
しかし、それはクロードにとっても同じこと。
異国から来た少女をどう扱っていいか分からず迷走します。
異なる方向に歩いているふたり。
迷路のように、あちらこちらに行ったりしながらも、クロワーゼ(交差点)で出会います。


演出面では、キャラクターの細かいしぐさにこだわりを感じました。
湯音が危ない行動をしたら、おろおろしたり、はらはらしたり。
また、舞台がパリなので、湯音はカタコトでしゃべります。
これがかわいいんだな(*´д`*)
……L面に墜ちそうになりました。


いざこざは起きますが、毎話のようにニコニコできます。
癒しのツボをしっかり押さえていると思います。

「クロワーゼ・レ・ドワ(うまくやれますように)」

十分うまくやれていると思います。
毎回とってもいい気分で見られました。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 53

78.2 2 19世紀でフランスなアニメランキング2位
ふしぎの海のナディア(TVアニメ動画)

1990年春アニメ
★★★★☆ 3.9 (580)
3131人が棚に入れました
西暦1889年、パリ万国博覧会中のエッフェル塔で、飛行機の発明を夢見るジャンは、サーカスの団員ナディアと、彼女の友達である赤子ライオン(キング)に出会う。彼女の持つ謎の宝石ブルーウォーターを狙うグランディス一味から逃げ、ナディアの故郷を目指す旅のなかで、悪の組織ネオアトラン(ネオアトランティス帝国)の首領ガーゴイルが占拠した島で生き残った少女マリーと出会う。しかし、マリー、キング、ナディアの3人は、ガーゴイルに連れ去られる。初めはブルーウォーターを狙っていたグランディス一味と共にナディア達を助けるうち、ジャンは万能潜水艦ノーチラス号のネモ船長とガーゴイルとの戦いに巻き込まれていく。

声優・キャラクター
鷹森淑乃、日髙のり子、水谷優子、滝沢久美子、堀内賢雄、桜井敏治、清川元夢、大塚明夫、井上喜久子
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

『ブルーウォーター』はアニメOPの金字塔

2018.07.26記


現在ではおそらくもう作られないであろう要素がてんこ盛りの古典。最近のアニメとは違った風に吹かれてみたいと思ったなら手を出すのは一興です。

個人的には思い入れの深い作品です。リアタイで衝撃を受け、2012年の地上波再放送と20年ぶりの視聴でも普通に完走できました。思い出補正があったとしても、作品に魅力がなければ無理だった話でしょう。

とかく「エヴァ前夜」的文脈で語られがちな作品であり、たしかにファンが目を細める描写もありますが、ジョジョ以前のバオー来訪者や、幽々白書以前のてんで性悪キューピッドのような扱いでは決してなく、独立した作品として白眉ものの出来かと思います。

同様に「ラピュタ」の亜種という側面も、出自を考慮すればそれも納得するわけで、決して劣化コピーではありません。


【物語】
大筋は、ブルーウォーターという宝石を巡って繰り広げられる冒険奇譚といったところでしょうか。海洋を舞台にした冒険活劇と言い切れないのは長丁場の作品の最終盤でこれまでの伏線を回収し一気に哲学的、宗教的昇華をみせるからかもしれません。
前半ラピュタの後半エヴァとは言いえて妙とは思うものの、できれば先入観を廃してフラットな視点で作品に向き合えるといいんでしょうね。

30年前の作品とは思えないほど今でも使える数々の仕掛けとそれでも少し埃を被った古典の味わいと両方を堪能できるハイブリッドアニメです。


【キャラ】
主役はナディアとおそらくジャンもそうなのかな。彼ら彼女らを中心に、グランディス一味(グランディス、サンソン、ハンソン)、マリー、キング、ネモ船長、エレクトラさんなど個々にファンがいるほどの魅力的なキャラ達が脇を固めます。敵役{netabare}ガーゴイル{/netabare}も充分憎たらしい役回りを担ってくれてます。彼らの掛け合いの中にも心揺さぶられる明言が多い。

ヒロインのナディアは今でいうところの「ツンデレ」。だがしかしそこは30年前。PDCAサイクルを経てある意味様式美と化した現在のテンプレには該当しません。水戸黄門ばりの様式美を期待してると裏切られたと感じるかもしれないし、逆手にとってとても新鮮と感じるかもしれません。
当時、雑誌アニメージュの人気投票において、マンガ連載中という地の利を活かし数年王座を守っていたナウシカからトップを初めて奪ったのがたしかナディアだったと記憶してます。そしてしばらく1位2位をこの二人で争ってたような。それだけ魅力あるヒロインだったんですね。


【声優】※評価というより思い出話
ジャン役日高のり子さん。浅倉南の爪痕が生々しい当時に少年役とはびっくらこいた記憶があります。
ナディア役鷹森淑乃さん。正直これ以外存じ上げないのですが、最近は進撃の巨人エレンのお母さん役で安否を確認できました。お元気そうで何よりです。{netabare}ネモ船長に「生きろ」と言われた後、一世代を経て今度はエレンに「生きるのよ」と。命のバトンを繋げております。 {/netabare}
{netabare}少しだけ演技に言及すると、フェイトさんの最期とか、「裏切りのエレクトラ」回のエレクトラさんとか演技で魂震えてたような気がする。{/netabare}
それと、マリー役水谷優子さんですね。同時期に放送開始したちびまるこのおねえちゃん役と声全然違ってたものですから、私が「声優ってすげーな」と思った最初の声優さんだったと記憶してます。つくづくもうお声が聞けないのは残念でなりません。

それでレビューを書くにあたりあらためてキャストを見ると、当時人気だったり実力のある方たちで固めていたようですね。どうりで感情移入しやすかったわけだ。


【作画】
メカやキャラデザは素晴らしく、物語中盤の作画崩壊?については他の方のレビューにもあるとおりなので特にここでは詳しく言及しません。
今でも鑑賞に耐えうる作画といいますか、30年後の今のクールでもナディア未満の作画はけっこうあることを考えれば上出来じゃないでしょうか。
特筆すべきは、海だし宝石の名前だしと青色を基調とした絵が多い作品における青の表現でしょうか。OPアニメーションの色合いなんて味わい深いものですよ。
{netabare}「島編」のカオス作画だって、当時における「外注することの対価としてどういった代償を払ったか?」ですとか、はたまた「今ではマシになった韓国からの納品物がいかばかりのものだったか?」と歴史遺産であるとの見方をもって楽しむと・・・いやムリか・・・
でもこれ勢いでNHKのゴールデンタイムで流してたわけですから、イケイケドンドンのバブル時代ならではだったからなのかもしれません。{/netabare}


【音楽】
OPED 森川美穂さんのシングル買いました。サントラだって買いました。
鷲巣さんの劇伴、今でもたまにバラエティで使われたりしてます。印象的な曲が多かった。
OPブルーウォーターのイントロが流れた時、「1週間お待たせ!いざ開幕!」のワクワク感は当時たまりませんでした。突き抜ける高温&ビブラートは心地よく、EDのロッカバラード的な曲調に静かに余韻に浸ったものです。
森川さんについてはバブル全盛期の見た目上等!の世相の中で、ボーカル一本で勝負するぜという潔さに痺れて憧れてましたね。確か自分で作詞作曲はやらずにいただいた曲をボーカリストとしてどう向き合うかに必死です的なインタビューを読んだ気がします。間違ってたらごめん。



■閑話休題 ※そこそこネタバレします
{netabare}
放送年度が1990年。前年にパリ万博100周年、フランス革命200周年とことフランスに焦点が当たった翌年に放送されたアニメです。物語の舞台設定は1889年、まさに万博開催中のパリにて興行中だったサーカス団の花形少女ナディアが事件に巻き込まれるところからスタートします。同じく巻き込まれてしまったジャンと一緒に、ブルーウォーターを狙うグランディス一味からの手に汗握る逃避行。ガキンチョだった自分がワクワクしないわけがないのであります。

私は1986年のラピュタに感動して冒険ものが好きになり、そうこうしてNEXTラピュタが登場するのを待ってたきらいがあったと思うのですが、ラピュタ以降でやっと心震える冒険ものに出会った気がしたのがナディアでした。NHKではこの数年前に「心っに冒険をぉ~」とのりピーが歌ってたアニメもあるにはあったのですが、実際のところ「冒険」感は控えめでした。やっとです。

放送の数か月前にはドラクエⅣが発売し、ミネアとマーニャというエキゾチックな女の子も魅力的だなと思ってた矢先に、ヘソ出し褐色の少女が主役のアニメに出会ってしまったのが運のつきでしたね。

世間一般の評価の一面として視聴率は悪かったと思います。18:00か19:00のゴールデンの時間で5%いったかいかなかったくらい。今よりもっと多くの人がTVを観てた時代、これは致命的に悪い数字です。
ナディアを機に購入し始めたアニメージュでの凄い盛り上がりとは対照的にクラスの友達に話を振ってもあまり観てるやつがおらず反応が薄いという状態。これまで北斗の拳やキン肉マンでは一緒に盛り上がれてたのに、と断絶を感じた瞬間でした。
{/netabare}


NHKという制約があったものの、丸々1年間の猶予期間を与えられた庵野秀明監督を筆頭とする当時のGAINAXの面々が思いっきり好きなことをやったらこんなん出来ました、という傑作です。


-----
2019.01.17追記
《配点を修正》


思い出補正しときます

投稿 : 2024/06/08
♥ : 45
ネタバレ

ポロム さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

いとしのナディア

アニマックスで視聴。
以前エヴァ好きの兄に熱烈に勧められ1話視聴したけれど、
何故か1話だけ観て満足してしまいそれっきりだった。
スカパーでHDリマスター版が放送されたので、録画して少しずつ観ました。

色んなアニメとの関連性やオマージュを見つけるとワクワクしました!
夢と冒険と格好良いノーチラス号やメカ・・それにキュートな女の子(?)キャラ。男のロマンたっぷりで男の子が好きそうな感じのアニメですね!
キャラクター1人1人の個性や生い立ちが強烈で心に残っています。

<私の中で好きなキャラのグランディス嬢>
{netabare} 最初はイマイチ物語に入り込めなくて、私は11話辺りからハマりました。
ネモ船長に恋するグランディスちゃんが可愛すぎます・・!
特に彼女、本当に苦労しているんですよね。過去の回想シーンで思わず感情移入しました。
普段はまさに姐さん!って感じがネモ船長の前では恋する乙女に変わるところツボです。
特に、エレクトラさんとの恋愛バトルやネモ船長が「チョウチンアンコウのグランディス風ラブコール」を見た時の表情が忘れられない(笑){/netabare}

<ジャンとナディア>{netabare}
ジャンはメカの天才ではあるけれど、意外と不器用で嘘をつけないほどの正直者。
ナディアは感情の起伏が激しく、気難しいところがあり、しかも頑固で意地っ張り。
普通「可愛げがないなぁ」で終わってしまいますが、
一目惚れを一途に貫き通したジャンに拍手を送りたい。

島編での二人の初めてのキスシーンが非常になめらかで自然だったのでドキドキしてしまいました・・っ
ナディアがジャンにキスした後、明らかジャンを異性と意識して優しくなったりデレてみたり、「これがツンデレの魔力か・・」と思わずナディアを可愛いと思ってしまいました。
ジャンがその前のファーストキスを覚えてなかったという事でナディアは相当怒ったんでしょうね。
そしてアフリカ編で他の男の子に一目惚れしたけれど失恋して、ジャンの想いに改めて気づく流れがリアルな恋愛らしいと思いました。{/netabare}

<アフリカ編>
島編は作画崩壊酷かったですが、ドタバタっぽさやナディアのデレが見れたのでそこそこ楽しめました。
ですが、アフリカ編の34話が許せなかった。
キャラソンと謎のMVと尺稼ぎ。作画外注のせいですね・・これはひどい。
全自動ウクレレ演奏機を私は忘れない。

まさに、この気持ちをわかりやすく表現したら・・
この間電車に乗って、向かいの座席に座る女性が「綺麗だな」とチラッと眺めたら目の前で凄い表情で携帯見ながら鼻に指をinしてTreasure Hunt始めたのを見てしまった衝撃的な気持ちと(見てはいけないものを見てしまった)

小さい頃好きで買ってたパンケーキを久しぶりに買い、添えてあるマーガリンの成分を見たら上の方に「シリコン」と書いてあって「今までシリコン食べてたのか」と言う気持ちが入り混じったような残念な気持ちです。
忙しい母もナディアにハマったので、島編の一部とアフリカ編ほぼ削って(34話なんてなかった)見せることにしました。

<最終回>{netabare}
最終回のストーリーと作画の気合いが凄かったですw
ネオ皇帝の最後は衝撃的だった。ナディアの心にも深く残ってしまったんだろう。
ジャンの死に方が音もなく、くたっと・・あっけなくて。
しかも受け身を取らずに打ち方が悪くて、頭から大量の血で床が染まる描写が無意識に残ってます。
他に死の描写で気になったのは、死の恐怖に耐えきれなくなって泣き叫びながら死んでいったフェイトさん。
フェイトって英語でFate=運命、宿命と言う意味を改めて感じさせられました。
ネオ皇帝にジャン(ジャンは生き返ったけど)フェイトさん。皆、綺麗な最期ではなくて生々しいのは庵野さんがコメントしているように
「死を美化することへのアンチテーゼと、ジャンに科学は万能でなく物事に二面性があることを知って欲しかった」らしい。
物語に生と死のリアルさが出ているのはこのせいだろうか。

さて、あの時ブルーウォーターをネモ船長に使いたい所、ナディアにジャンを生き返らせるように進めるなんてエレクトラさんは成長しましたね。
中盤でネモ船長に激情をぶつけてた時とは明らかに違う。

今更気づきましたが、ネモ船長髪伸びるの早いですね。
キャプテンハーロックにどこか似ているような・・?気のせいか。

ネモ船長の最期の時、エレクトラさんがお腹さすってて、
「この二人付き合ってたんだ!・・この描写、NHKやるなぁ・・。」と思いました。その瞬間のグランディスの表情がまた・・。

一番驚いたのが、サンソン×マリー。
23歳差でしかもデキ婚なんだぜ・・ウィキペディアを見ると「美しく成長したマリーの初恋と、マリーに惹かれるサンソンの苦しみを描く物語」を描く書籍の「ふしぎの森のマリー」があるらしい!みたい!!

サンソンは初登場時「気障なキャラだな」と思ってたら、
グランディスへの片思いとネモ船長への嫉妬。実は怪力で力が強くて、信念も格好良いと気づいて、後から惚れ惚れしました。
この二人は超絶幸せになって欲しいですね!好きなカプです!
最期のEDに繫がる描写と演出に思わず笑顔になってしまいました!{/netabare}

ふしぎ海のナディアは、今観ても新鮮でロマンたっぷりの作品でした!
(ただしアフリカ編を除く)
ノーチラス号での「その人の役割」「人との関わり方」を作中で表現していて、子供の役割と大人の役割について考えさせられました。
ジャンやナディアの思春期特有の気持ち、不安定さもいつしか愛おしく感じて、
主役二人の年代の頃の気持ちを思い出しながら、楽しく視聴できました。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 42

Smog さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

1990年代の代表作。今の話題作と比較して見るという楽しみ方ができる作品。

SF小説が原案。
全39話。原案未読です。

19世紀後半のヨーロッパが舞台のSF作品。
過去の代表作として興味を持ったので視聴しました。
元はNHKと宮崎駿が企画したものとして有名ですね。
ラピュタと設定や世界観が似ているのはそのためだそうです。

一番の見所は、序盤と終盤のストーリーでしょう。
序盤と終盤は、「この先どうなっちゃうんだろう」という引きの強さが素晴らしかったです。
人の死について切なく扱っているところにも好感を覚えました。
序盤と終盤のシリアスパートは今の作品と比べて遜色はなく、一見の価値有りだと思います。

中盤はゆるい雰囲気やギャグパートが中心でした。
良く言えば序盤の暗い雰囲気を和らげ終盤に向けて息抜きができる展開、悪く言えば中だるみ感が目立ってしまった展開という印象でした。
メインの登場人物に感情移入させるための内容だったのでしょうが、今からするとちょっとあざとい感じがしました。

音楽について、OP/EDが印象的でした。
言わずと知れた名曲ですので、懐かしくてついつい毎話聴いてしまいました。
作品をきちんと見たのは初めてだったのですが、当時耳にすることも多かったので記憶の片隅に残っていたのでしょうね。

作画について、22年前の作品ならではの味わいがありました。
セル画による作画のなつかしさが楽しめました。

今となってはご都合主義な設定や展開が多々あり、ありがちと感じる部分もたくさんあると思います。
しかし、1990年当時にかなりの人気があったということを考慮し、今の人気作と比較して楽しむことができる作品だと思いました。
例えば、律儀に毎話30秒以上時間をとって、あらすじナレーションを入れる丁寧な作りは、1990年ならではの演出でしょう。
過去作はこういった楽しみ方ができるのも魅力ですね。

2012年4月からNHKでデジタルリマスター版が放映されています。
ちょうどクライマックスに入るところのようです(2012年11月26日現在)。
毎話、丁寧なあらすじナレーションがありますので、途中から見ても楽しめると思います。
気になる方はご覧になってはいかがでしょうか。

ナディアという単語が少しでも気になった方、過去の話題作が気になる方にオススメしたい作品です。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 41

67.7 3 19世紀でフランスなアニメランキング3位
レ・ミゼラブル 少女コゼット(TVアニメ動画)

2007年冬アニメ
★★★★☆ 3.9 (84)
479人が棚に入れました
フランス革命以降、いまだ混乱のなかにある19世紀前半のフランス。ファンティーヌは3歳の娘・コゼットとともにパリ郊外の村・モンフェルメイユにやって来る。ファンティーヌはそこで出会ったひと組の母娘の微笑ましい光景を見つける。それはこの村で宿屋『ワーテルロー亭』を営んでいるテナルディエ夫人と娘のエポニーヌ、アゼルマの母娘が遊ぶ姿だった。その風景にファンティーヌは安心し、夫のテナルディエにも丸め込まれたこともあり、金を払って夫妻にコゼットを預け、仕事があるというモントルイユ・シュル・メールに旅立つ。

声優・キャラクター
名塚佳織、松元環季、菅原正志、萩原えみこ、松山鷹志、小林由美子、勝杏里、笹本優子、大塚友稀、間宮くるみ、鎗田千裕、矢部雅史、堀越真己、かないみか、小村哲生、島田敏、竹本英史、岸祐二

ななりす さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

隠れ過ぎている名作!涙なしでは観られない感動ストーリー、もっと多くの人に観てほしい

全52話
ジャンル:感動
テーマ:人は変われる、親子愛

世界名作劇場シリーズとして、BSで4クール1年かけて放送された作品。このアニメはとにかく何度も感動して涙が出ました。4クールと少し長いですけど、凄く良いストーリーです。

物語は19世紀のフランスが舞台。当時の貧困に苦しむ人々の生活を中心に描かれています。前半はとにかく観るのが辛い。まるで同じ世界名作劇場シリーズの「小公女セーラ」を彷彿させる展開。理不尽過ぎて、もうやめてあげて~!と言いたくなる。それに鬱な展開もあってブルーな気分になりますが、とにかく前半は辛くても我慢が必要で、コゼットの健気さに心を打たれます。

この作品はうまく丁寧に伏線を回収していくので、その伏線を回収していく中盤からが特に面白いです。途中群像劇が楽しめ、私の好きな「MONSTER」を観ているようなのがとても良いです。その中でニアミスやすれ違い多数で楽しめ、私はもうハラハラしっぱなしでした。

ジャヴェールという刑事が「MONSTER」のルンゲ警部のように、キレ者で職務に忠実かつ信念を曲げなく、執念深いような所が凄く似ていて良い味を出しています。もう一人、テナルディエというキャラがいるのですが、こいつは終始イライラさせられます。でも、物語を盛り上げる良いキャラだったような?気がします(苦笑)。私はエポニーヌがコンプレックスを持って人間らしさを持った良いキャラだったと思う。前半は嫌いなキャラだったけど、中盤から後半は感情移入してしまいました。38話とかかなり見所だと思います。

また、前半から後半まで人生観を変えるような名言が沢山出てきます。もう良い言葉ばかりで一つ一つに感動を覚えました!次に恋愛もあって、「ロミジュリ」みたいに胸キュンな純愛に描かれています。あるキャラのおかげで恋愛作品によくあるような甘酸っぱく切なく描かれているのも特徴。想いが中々伝えられないとか凄く切ないです。

前半から最終話まで親子愛も丁寧に描かれていて、私の心に凄く響いてきました。優しい愛に包まれている感じが凄く伝わってきます。人と人との繋がりや絆も描かれていて感動しました。全体的に運命的な展開が面白く、とてもドラマチックな内容で、また心温まる作品でした。特に後半は涙が止まらない。あにこれに登録していなければ観ることのないようなアニメだったので、偶然の出会いに感謝しています。少し長いですけど子供から大人まで楽しめるアニメで、ストーリー重視で感動したい人は是非観てみてください。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 17
ネタバレ

yuugetu さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

桜井弘明監督より、現代の子供達とビクトル・ユゴーへ捧ぐ名作

2007年放送のTVアニメ。全52話。
原作は小説『レ・ミゼラブル』。言わずもがな、1862年ヴィクトル・ユゴー執筆の名著。
原作未読です。

以前から本作は気になってはいたのですが今年NHKで放送したTVドラマ(2018年イギリス・アメリカ制作)が良かったため、本作の視聴を開始しました。
※このレビューで比較する場合は2018年TVドラマ版となりますのでご承知置きください。

【物語】
筋立てはさすが名作の貫禄で、アニメ化にあたり細やかな改変がなされた世界名作劇場の名に恥じない子供向け作品。
本筋がある程度わかっているため、細かな部分に集中して見られて良かったです。

余談ですが子供向けの本作でさえ次回への引きが暗くてちょっと疲れたので、時代と共に私自身の感性も変わったのだなと。原作小説どうしようかな…。

【声優】
キャスティングも素晴らしかったですし、演技も自然で作りすぎておらず親しみやすい。皆さん名演技でした。
公式サイトのインタビューを読んだところ、あまり作らず自然体でやっていこうという方向性だったようです。

【作画】
キャラクターデザインとても良かったです。毎回の作画班も力のある人たちで、芝居付けがとても丁寧でした。
街の人達やアベセーの友の若者達、兵士や御者が何人も出てくるシーンの顔立ちの描き分けが素晴らしかった!子供達もコゼットも生き生きしていて愛があって良かったです。

【音楽】
OP,EDは共に名曲でアニメーションもとても好きです。
勿体無い…というか好みの問題だけど、BGMが主張しすぎると感じるシーンが多かったです。楽曲そのものではなく、使い方の問題ですね。
作画でしっかり表現できているからこそ音楽は少な目でも良いだろうと思うのですが、もしかしたら贅沢な文句かも(苦笑)。

【キャラクター】
少女コゼットは子供向けとしてレトロながらだいぶコミカルやほのぼのがあって、長い尺を活かしてキャラクターの掘り下げもしっかりしています。
オリジナルキャラクターや少ししか出ない人物も、作品内での役割と活躍を与えられています。
子供視聴者のため、作品のテーマのため、キャラクターの言動と描写を念入りにコントロールするという辛抱強い仕事をこの作品のスタッフは全52話やりきりました。素晴らしかったです。

{netabare}
ジャンの慈悲深さがずっとぶれなかったのが特に素晴らしかった。アベセーの友のアンジョルラスとの語らいは特に胸に来ましたね。
コゼットは活躍の場が少ない主人公ではありますが、ジャンの人生の見届け人でもありますし、マリウスと共に父の志を引き継ぐという一番大切な役割を担っていました。夜の庭で語り合うシーン、静謐な雰囲気が好きでした。


あとは変更点が多かったキャラクター達について少し。

・ガヴローシュとシュシュ
テナルディエ一家に虐められるコゼットの辛さを緩和する役でした。
TVドラマだとガヴローシュは特に仲良くしませんし、シュシュもいません。鍛冶屋に奉公に出ることもなくて家族には蔑ろにされるばかりですが強く生きています。原作だと子犬は死んでしまったし、ガヴローシュも革命のさなかに命を落とします。
本作ではガブローシュとシュシュを生存させることで、コゼットの生活が重苦しいだけにならないよう工夫しているんですよね。
ストリートチルドレンとして逞しく生きる姿は原作にもあるそうですが、その後幼い二人の少年を世話することでガヴローシュもまた誰かに何かを「与える」側として描いています。

・アラン(オリジナルキャラクター)
マドレーヌ市長に救われた男の子ですが原作にはいません。もちろんTVドラマ版にも。
彼は幼い甥姪のためにパンを盗んだ若き日のジャン自身でもあるでしょうし、モントメイユ・シュル・メールでは最も視聴者の視点に近い登場人物です。アランがいることで市長は孤独な人物ではなくなり、ジャンが救うことができた者の代表でもある。
市長が姿を消した後、市長代理としてモントメイユ・シュル・メールを守っていると知ることができます。市長が急にいなくなって大丈夫?という不安が解消されたのが私は有難かったですね。
そしてコゼットやマリウスと同じくジャン・バルジャンの志を受け継ぐ者でもあることが、49話で描かれます。

・エポニーヌ
子供向けとしての改変を入れたことで、エポニーヌが可哀想すぎる印象に…。でもこればっかりは仕方ないんですよ…。
エポニーヌは両親の影響によって性格が歪み、誰かに何かを与えることなく生きてきた少女です。TVドラマ版では(おそらく原作でも)彼女は犯罪に加担することに抵抗のない娘に育ってしまっています。
そのエポニーヌがマリウスへの純粋な恋心で変わっていき、マリウスに全てを与えて命を落とす。この役割は彼女にしか果たせないし、この作品には必要なのだと思います。
エポニーヌ、毎回作画班に愛されてましたね(泣)。いやこれは仕方ないって。依怙贔屓じゃなくてせめてもの手向けですわ…(´;ω;`)


ジャベールとテナルディエの顛末については原作既読の人には賛否ありそうだけど、日本的な感性と視聴者層と本作で新たに加わったテーマを考えれば必要な変更点かと。

・ジャベール
ジャンの信念「人は変わることができる」へのアンチテーゼ「人は変わらない」という信念の持ち主。TVドラマ版(及び原作)ではジャンを逮捕せず、自身の信念を失ったことでセーヌ川へ飛び込んで自殺します。
本作ではアンチテーゼの役割を勤め上げた上で、本人も考えを変え自殺はしませんでした。ジャンが「変えた者」と言っても良いかもしれません。
橋の上で朝日が差してくる演出、綺麗でとても好きなシーンでした。

・テナルディエ
同じくジャンへのアンチテーゼ「変わらない人間、変わろうとしない人間」そのもの。TVドラマ版ではマリウスが最後に父を救ったテナルディエと知り、礼として金を渡し、テナルディエは姿を消します。
本作ではマリウスが金を与えるのはもっと早い段階であり、最後はジャベールに逮捕されます。ジャンが「変えられなかった者」でもあるのでしょうし、ジャベールのような人が存在する理由とも言えます。
テナルディエは「世間を喰ってやる」と言っていて、エポニーヌやガヴローシュとの対比が凄いなって思った。多分唯一誰にも何も与えない人だったなあ。{/netabare}


【原作の主題を守りつつ、現代の子供達に伝える工夫】
原作の辛い描写をただマイルドにするだけでなく、オリジナルのキャラクターや設定を追加・変更し、それを使い尽くすことで新たなメッセージ性を加えた点は評価が高いです。
{netabare}
TVドラマ版ではジャン・バルジャンの献身がなかなか報われずファンティーヌの死に方も凄惨なので、見ていて結構辛いんですよね。ジャンがいかに運命に翻弄されても良心を保てるかを、私達も見届けなければならないような部分がある。
けれど、それは今の時代で子供向けとしては少々辛すぎるでしょう。
本作ではコゼットが主人公として健やかさも可能な限り描かれ、ジャンは報われることも増えています。
特に顕著なのは27話で、コゼットとファンティーヌによく似た境遇の母娘を助けることになる。この回でジャンは過去の後悔を少しだけ払拭し、貧しい人のために働くことを再度誓う。コゼットは母親の娘を想う心に触れてファンティーヌの気持ちを少しだけ理解し、母娘の再会を喜ぶ。この回はシリーズ構成の金春智子さんが手掛けた完全オリジナルエピソードなんですね。


誰かに何かを「与える」ことも一貫されたテーマだと思っています。
ミリエル司教が銀の燭台を与えたのに始まり、ファンティーヌの苦労、ジャンとファンティーヌのためにシスターサンプリスが嘘をついたこと、ジャンの社会貢献、アベセーの友が民衆のために命を懸けたこと、エポニーヌがマリウスを守ったこと。
顔見知りでもそうでなくても、金銭でも行為でも、様々な「与える」行動が見られたなと。

子供向けとして誠実だと感じた事柄として、社会支援があります。
ジャンの行う支援には短期的なもの(食料や金銭を配る)と長期的なもの(労働の確保や学校の設立)がありそれらを同時に行っているのがとても良い。ガヴローシュのように貧しくても子供達の面倒を見ている様子も、お金が無くても出来ることはあるよと言っているようで好きなんですよね。
それでも、最終的にガヴローシュもブレソールもユーグも、ジャンやコゼットと家族として暮らしながら学校に通うことになるのがさらに良い。

また、世代を超えた継承の物語でもあると思います。
ジャンからコゼットとマリウス、アランに受け継がれた志は特にわかりやすく描かれました。
マリウスがコゼットからジャンの志を知ることが革命への原動力になり、アベセーの友が残した遺志がマリウスに様々な決断をさせる。
ファンティーヌがコゼットに尽くした行為がモントメイユ・シュル・メールに託児所を建設させる。
そしてコゼットが我が子を純粋に愛し育てる。
現代と当時の共通した普遍的な問題と、世代を超えて受け継がれるものを描くことで、現代の子供達へも身近に感じられるようにする狙いもあるのではないでしょうか。
だから「人は変わることができる。人類も同じだ」というスケールの大きな言葉で物語が締めくくられたのだと思います。{/netabare}



【ジャベールが最後に呟いた詩について】
{netabare}
「彼ここに永眠す。数奇な運命にもかかわらず、彼は生きた。天使を失うや、彼はみまかった。死はひとりでに訪れた。さながら昼が去り、夜が来るように」

これは原作ではジャンの墓石に木炭で書かれていたとされる詩なのだそうで。{/netabare}
この作品、原作リスペクトも相当行き届いているのではないでしょうか。
とても素敵な作品だと思います。


【視聴中のメモなど】
メモやらツイッターへの投稿やら混じってるので雑多で読みにくいですが、纏めきれなかった内容も残っているのでお暇ならどうぞ。
{netabare}
序盤で、自力で何とかしようとしすぎて自分を追い詰めてしまったファンティーヌと、何人かの大人に頼ることで自分らしさを保ったコゼット、上手く対比させた所が良かった
ファンティーヌが唯一頼ろうとしたのが市長で、そこですれ違ったことが次第にファンティーヌが人間不信になっていく切っ掛けになってしまうのとても良かった

12話、ここでガブローシュをコゼットから引き離すんだ…ガブローシュがいたらジャン・バルジャンが迎えに来てもコゼットは躊躇うんじゃないかと思ってたから上手くかわしたなあ

オリキャラの追加も適切だなって思う
市長が救った万引きの少年アランが子供向け作品に必要な役割を沢山担ってくれてて、アランは子供の視聴者に近い視点を持ってるし、マドレーヌ市長の人間性を引き出してくれるのがとても良い

エポニーヌの個別エピソードがあって、憎たらしいだけにしないの好き
エポニーヌとアゼルマは親の影響でああなってしまっただけで、根はごく普通の女の子。コゼットを羨んだりいじめたりするのは良くはないけど、普通に抱いてしまう感情だと思う
こう言うのも何だけど女の子はこういう所があるのは当然だと思うので

コゼットとガブローシュの別れもちゃんとやってるよこのアニメ!どんだけ丁寧なんだ…
ていうかアニメスタッフ、自分たちが作った設定全て使い倒すつもりだこれ

コゼット、TVドラマでも黒い服だったんだけどこれ原作からそうなのかなあ…似合うけど明るい色の方が好きだなあ、それこそ第1話みたいなピンク色とか
って思ってたらコゼットの黒い服は喪服なんだろうかと思い至る

うん…追悼の旅なのは解ってたけどね…泣かないコゼットが逆にキツイんですけど…ていうかこれまだ受け入れられてないよね…コゼット…
EDこれなの反則だよね…一気に追悼の歌になるじゃん?先がわかってるのに地味につらい
次回予告がちょっと面白い系のノリなの絶対わかっててやってるよね…
ここでちょっとでも癒されてくださいってことですか?笑えないよ…いや面白いしよく出来てるんだけども

16話めっちゃ良いな…コゼットはファンティーヌとの思い出を追ってきちんと心の整理を付けて母親の死を受け入れる、で自然に「お父さん」て呼べるようになるの本当に綺麗な流れ


修道院での様子もほのぼのする
マドレーヌとフォーシュルヴァンのコゼットを想うやり取りも好きだし、本物の監獄や外の世界の事を知ってるマドレーヌ(ジャン・バルジャン)はコゼットの事を思えば修道院内で生きて行って欲しい
でも最終的に子供の決断を認めることになる

元々子供向けではないから大人の世界の描写が多くなるのは当然ではあるけど、子供を物語の中心に据えるために色んな工夫をしてるのが良い
マリウスの祖父にしても悩む様子が色々描かれていてフォローが行き届いてる

この作品血が繋がってない親子の方が見てて和む
ガブローシュが鍛冶屋出るときの会話好きだなあ

23話
未だ出会わないコゼットとマリウスの新しい生活が始まり、他界した親に思いを馳せる二人の対比が上手いなあと
エポニーヌ、アゼルマ、ガヴローシュも顔見世してるけど時の流れが彼らをどんな風に変えたのかすごくわかりやすい
あと、家政婦のトゥーサンがかないみかさんで、この年齢の女性を演じるのがなかなか無いのでそれだけでも希少な作品だなと、シスターサンプリスもかないさん
このアニメのキャストはイメージ通りなのに普段あまり演じないような役をあてている気がするのでたまに驚く

25話の動画が繊細で眼福だった!エポニーヌが一番力入ってる気がするなあ
話の流れも綺麗に整理されてて、色んな誤解やら何やらですれ違うのが上手
ジャンとユリウスの関係がどんな風に展開するのか気になる

少女コゼット、やっぱり27話はオリジナルなんだ
話数が潤沢+子供向けとして削らざるを得ない内容があるために余裕が出来た尺にこういう単発の小品を入れてくれるのがとても良いし、暗い作風にしないよう気を使ってるの凄く感じる
ジャンにとっては禊、コゼットにとってはお母さんの様子を想像させる経験

この作品富める人も貧しい人も「与える」ことがめっちゃ多くて、父親と同じ家に住んでいるエポニーヌさえ育てた花はマリウスやコゼットが心を寄せる存在になっていて(叶わぬ恋の象徴だとしても)、貧しいかどうかは関係ないなあと
だからテナルディエが世間を喰う(奪う)と言うのがホント皮肉

34話
貧しくとも逞しく生きるガヴローシュが小気味良くて、しかも小さな子供達に生き延びる術を教える
協会で配られているパンは病気の人やお年寄りのためのものと言えるのが凄いな…
テナルディエのような父親を持ったからこその矜持なのかな

ストリートチルドレンを哀れに描かない、お金が無くても弱い人のために出来ることがあるというのをやってるのがとても好き

富める者として慈善活動を行うジャンとコゼット、パンを配って今目の前にある命を救うと同時に長い目で見て人を救う学舎を作ろうというのが凄く良い
短期的な支援と長期的な支援を描くのが子供向けとして誠実な作品だと感じる

そして27話の少女のことやコゼットから伝え聞くジャンの生き方から、マリウスは真剣に社会問題に向き合う
マリウスとコゼットの逢瀬が清廉に描かれてて、監督とシリーズ構成の采配が素晴らしいと思う

今や聖女のようなコゼットとボロボロで彷徨うエポニーヌ、こうなるのは仕方ないけどギャップが悲しい
TVドラマ見た限りでは、エポニーヌは犯罪に荷担するくらいでないとバランス取れないんだなと思ってしまう
何一つ他人に与えなかったエポニーヌが愛する人のために…というのが原作の肝なのかなって

39話
コゼットとエポニーヌの会話とても良かった
ファンティーヌとコゼットはよく似てるけど、エポニーヌアゼルマは母親に全く似ていないのも狙い通りなのかなあ
ガヴローシュの生活をしっかり描いてるのも好き

クールフェラックの「奴には奴の人生がある」という言葉がこの作品の一面を言い表している気がするなあ

ファンティーヌとコゼットは顔立ちが面長で上品、エポニーヌとアゼルマは童顔気味で素朴と、キャラデザも良く出来てる
コゼットは子供の頃にあったお茶目な所が修道院にいたからか無くなって少し寂しい気もするけど、エポニーヌの女性らしい妬みと一途さも見ててちょっと悲しくなるというか(´・ω・`)


エピローグに尺を割いたのはキャラクター達の「これから」を意識したからなのかなと。

そして少女コゼットは本来想定されていない子供のための作品。
ジャンが守り導いた若者はコゼットにとどまらず、アランというオリジナルキャラクターを設定したのに顕著だけれど、世代と時代を越え志と行為が継承される。52話という長さで丁寧に積み重ねた描写がそれに説得力を持たせた。
{/netabare}

【公式サイトより自分用メモ】
概要と監督インタビュー。興味があればどうぞ。
{netabare}
原作はフランスの文豪ビクトル・ユゴー作「レ・ミゼラブル」(邦題:「ああ無情」)。

貧しさゆえに一欠けらのパンを盗んだ罪で19年間も投獄され、出所後、ミリエル司教との出逢いにより良心に目覚め改心を誓うが、その過去によりその後も波乱の人生を送る主人公のジャン・ヴァルジャン。ナポレオン失脚後の王政復古・市民暴動に激しく揺れる19世紀初~中期のフランスにおいて、貧しき人々が運命に翻弄されながらもたくましく生きる姿を素晴らしい筆致で描ききる大河小説です。

経済が発達しグローバル化が叫ばれて久しい現代においても、社会の歪み、矛盾、人心の荒廃などといったユゴーの描くテーマは今も我々に問いかけられている普遍のテーマです。虐げられた人々、世間の片隅に追いやられた人々を愛情こもった目で見つめながら、社会の矛盾や悲惨を描写すると同時に、個性豊かな、魅力的なキャラクターたちがドラマチックな展開で我々を夢中にさせます。

この不朽の名作を、弊社の代表作である“世界名作劇場”の新たなる第一歩として取り上げ「少女コゼット」に視点を当てるという新たな切り口で現代によみがえらせる意義は大きく、広く世の人々に訴えかける良作であると確信します。{/netabare}

【桜井弘明監督インタビュー一部】
レビュータイトルはここから。

「原作はバァーン!ってあるんですけれど、時代が何しろ19世紀に書かれた物語ですし、今21世紀の皆さんに見てもらうためには少し時代に合うように変えないといけない部分もありますし、変えてはいけない部分もちゃんと見据えて、ビクトル・ユゴーの墓前に「これができました!」って持っていってもいいようなものにしたいという心構えでいます。」

(2020.10.31)

投稿 : 2024/06/08
♥ : 13

タケ坊 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

フランス文学を代表する原作力 もっと視聴されるべき、不朽の名作 

-----物語-----

普段アニメばかり観ているという人でも、
この作品の名前くらいは聞いたことある人は多いはず。
かくいう自分もどういう物語かは知らずに視聴しましたが、
原作やその他の媒体からアニメへ、という流れで視聴するよりも、
まずアニメからこの物語を知ることができたことは、本当に良かったと思います。

世界名作劇場の原作は、実際そこまでメジャーなタイトルではないものもありますが、
こちらの原作はフランス文学を語る上では、それ抜きにしては語れない、
ヴィクトル・ユーゴー作「レ・ミゼラブル」
世界中でこれまで数えきれないほど舞台化され、
映画やドラマ化もされている有名な原作ですが、
(最近では英BBCが制作したドラマ全8話がNHKで2020年春に放送された)
名作劇場のタイトルは副題が「少女コゼット」となっており、
このサイトのパッケージイラストも母ファンティーヌとコゼットになっていますが、
実際の原作の主人公はジャン・バルジャンというおっさんです。

アニメ化に際してコゼット視点を中心に描くことで、
硬くシリアスに振りすぎないよう(通常のアニメとしては充分過ぎるシリアスさではある)
ある程度の子供からでも観れるよう、
原作をアレンジし観やすくバランスを取っているように思いますが、
本来の主人公がおっさんなので、
内容がシンプルかつ明確なメッセージを持っているのが特徴である、
他の多くの名作劇場の作品に比べると、数多くのテーマを扱い、
また何よりその内容が濃く奥深いものとなっているのが特徴と言えます。

その他、終盤にかけては原作者自身が体験したという、
実際の歴史上の事件を絡めて描いている点も特筆すべき点ですね。
原作は5部に別れており、アニメも52話とかなりのヴォリュームですが、
ある程度簡略化し、オリジナル要素も取り入れて解り易く構成されています。
描かれる時間の経過と共に舞台も移して、一言でいえば、まぁ〜ほんとに大作ですね。
よくこれだけの物語を考えたもんやなと…ただただ凄いとしか言えません。

〜これから観る人へ〜

物語は全編通してシリアスですが、
特に序盤のコゼットの幼少期、母ファンティーヌのエピソードは悲惨で辛いです。
コゼットの常に味方であるガブローシュやシュシュは居るものの、
悪役のテナルディエ夫妻たちやファンティーヌの周りの人間のせいで、
かなり胸糞悪いし哀しいです。
(それでも原作よりかなりマイルドとのことですが…)
でも、何とかここを耐えて観続けてほしいですね。
哀しみの中にも心温まる感動の名場面もあるので。
実際のところ序盤はコゼットを主人公に描くためのオリジナルが多いようです。

中盤以降コゼットの存在感がやや薄れてくるにつれ、
スローペースになる印象も受けますが、
後半〜終盤にかけてはどんどん目が離せなくなってきます。
すべてはラストに向けての必要な展開で、しっかりとオチも付けており、
視聴後には何ものにも代えがたい大きな感動と余韻を貰えることでしょう。

〜既に観た人への感想〜
(ネタバレではありません)

当時思想家でもあった原作者は死刑廃止論者であり、
作品の根底にはキリスト教的な赦しの思想があると思いますが、
キリスト教徒ではない一般的な日本人の思想とはやや異なるかなという気がします。
自分にとってはこれが良い意味で考えされられるものでした。

ジャン・バルジャンの「人は変わることができる」という作品内の名言に関して、
とても感銘を受けましたが、自分は100%の共感はしていません。
テナルディエのような根っからの悪党が、
ジャン・バルジャンほどのレベルにまでは決して変わらないでしょう。
なので、ジャベールの信念や葛藤にも共感できる部分があります。
罪を償ってまともな人間になったとしても、
それが本来の普通であって、過去のマイナスを帳消しにして、
プラスに転じるまでのことをやる人間なんて、実際どれだけいるでしょうか。
だからこそジャン・バルジャンの行ったことに胸を打たれるんですが。

作品を観た後で自分が言葉を付け足していいなら…
「人は変わることができる(かもしれないけど、よっぽどのことが無ければ変わらない)」と。
ジャン・バルジャンはよっぽどのこと(ミリエル司教との出会い)があったから変われたけど、
そもそもジャン・バルジャンは小さな罪を己の優しさから犯したのであって、
元々は善人だったと思います。
貧困や弱さ、世の中の不条理が人を変えてしまうということを、
作品を観て改めて痛感されられました。

-----声優-----
アニメより吹替などの仕事が多いせいか、
ジャン・バルジャンを演じた菅原さんの低音で落ち着いた声が新鮮で渋かったです。
自分にとってはスカパー!内での釣りビジョンで以前から聞き馴染みがあったので、
アニメで実質的な主役をやってたのが驚きではありましたが、
できればまたアニメの仕事もやってほしいなと思いました。

コゼット演じる名塚佳織さんも声優として充実期を迎えるタイミングでの抜擢とあって、
少女役なんかは年月を経た今となってはなかなか新鮮ですね。
その他登場人物がそこそこ多いながらも、
やはり名作劇場で起用される方々の演技は安定しており安心感がありました。
今では人気声優の沢城みゆき、戸松遥さんがちょい役で出ているので、
注意していれば気付けるかもしれません。

-----キャラ-----
名作劇場に出てくる主要キャラはそもそも聖人的なタイプが多いものですが、
この作品に出てくるジャン・バルジャンは元徒刑囚という設定が特筆すべき点です。
彼の波乱万丈かつ激動の人生を通じて、
その言葉や行い、苦悩や葛藤から本当に大きな感銘を受け、
人生に於ける人として大事な事を学ばせて貰ったように思います。
因みに彼にとっての運命的な出会いである、ミリエル司教とのエピソードは、
本編では過去の出来事として、そこまで掘り下げられてはいませんが、
小学校での道徳の授業でも取り上げられているほど素晴らしいもので、
この部分だけで1話使っても良かったと思えるほどです。

登場人物は結構な数になりますが、本当にドラマチックで、
序盤からのキャラを殆ど使い捨てにしていないのが凄い。
ジャン・バルジャンやコゼット、マリウスとの関わりを、舞台や時間が経過しても、
絡み合う運命、宿命ともいうべき描かれ方で見事に繋げています。
途中で正直もうお前は出てこんでエエわ、と思うこともありましたが笑
終盤に見事なオチがついているので納得できます。

原作とは異なるオリジナルキャラや死ぬはずの人間が生きているなどの改変がありますが、
原作未読でアニメから観た自分には全く違和感なく、
むしろこちらの方が良いのでは?と思える良アレンジになっていると思います。
これが原作を読んでアニメを観た人だと、相違にケチをつけたくなるかもしれませんから。

-----作画-----
名作劇場は長らくセル画で作られていましたが、
10年の中断期間の間に制作環境も変化し、
本作がデジタル化されてから初めての作品となっています。

大きく変わった点として、キャラデザインがこれまでの作品とは異なり、
コゼットの幼女時代など、やや萌えを意識したものになっているのは、
以前の名作劇場の作品と比べると賛否両論あるかもしれませんが、
昨今のアニメ事情を鑑みれば、特に違和感はないかもしれません。

デジタル化して以降の作画レベルとしてみれば、あまり高度なものではないとは思いますが、
(普通に考えて52話途切れずハイレベルな作画を続けられるわけがない)
セル画時代から受け継がれている、味わい深い背景描写は健在です。

-----音楽-----
OP,ED共に斉藤由貴が歌っていますが、
これは日本で「レ・ミゼラブル」のミュージカルが1987年に初上演された際に、
彼女がコゼット役を演じていたことに関係しているようです。

自分は先に曲を聴いて直感で視聴するかどうかを決めましたが、間違いなかったですね笑
OPアニメーションも同様に感動的なものです。
物語のラストにOPの2番が初めて流されますが、涙なしには観れません。
また、挿入曲として名塚佳織さんが歌った「夢であおうね」と、
44話のクライマックスでのみ流れた「私にできること」も共に胸が締め付けられるもので、
名場面を彩る極上のものとなっており、こちらも感涙必至です。

名作劇場で一番力を入れていると個人的に思うのがBGMですが、
本作も同様に本当に素晴らしい楽曲の数々です。
曲数もさることながら、オーケストレーションメインで、
アコースティックな生音の温かみが感じられ、
サントラが欲しくなる、とても素晴らしい仕上がりだと思います。
ややドラクエっぽいところがあるなと思って後で調べてみると、
これまでにすぎやまこういち氏と共同でゲーム音楽などを制作されている方のようで、
なるほどと納得しました。

-----最後に-----
世界名作劇場が地上波での放送を終了して10年という月日が流れ、
BS枠になって復活した際に放送された作品ということもあってか、
名作劇場の作品群の中でも世間的にはあまり認知されていないように思います。
実際「ロミオの青い空」などと比べると「あにこれ」におけるレビューも少ないですが、
ここまで素晴らしい作品が隠れた名作として埋もれているのは本当に勿体ない。

本当に素晴らしい物語を観たいという人へ、
52話は確かに視聴をためらう長さですが、
中途半端な作品を5本観るより、よっぽど価値がある内容だと思います。
なぜこの物語が不朽の名作として時代を超えて世界中で愛され続けているのか、
ぜひ確かめて頂きたいですね。

投稿 : 2024/06/08
♥ : 7
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