19世紀で女王なおすすめアニメランキング 4

あにこれの全ユーザーがおすすめアニメの19世紀で女王な成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年05月07日の時点で一番の19世紀で女王なおすすめアニメは何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

79.9 1 19世紀で女王なアニメランキング1位
黒執事(TVアニメ動画)

2008年秋アニメ
★★★★☆ 3.9 (1395)
8135人が棚に入れました
ファントムハイヴ家の当主シエル・ファントムハイヴに仕える執事セバスチャン・ミカエリスとその使用人達の日常とシエルの裏稼業を描く、アクションシチュエーションコメディ。
物語の舞台は19世紀イギリス風のパラレルワールドである(1巻巻末のあとがき漫画より)。作品世界の描写は基本的には史実のイギリスに忠実だが、携帯電話が登場したり、テレビの存在がほのめかされていたりと、独特な世界が形成されている。

声優・キャラクター
坂本真綾、小野大輔、東地宏樹、梶裕貴、加藤英美里、藤村俊二、田村ゆかり、朴璐美、福山潤、遊佐浩二、矢作紗友里、諏訪部順一、鈴木達央、杉山紀彰、矢島晶子、山口孝史、青山穣、菅沼久義、勝杏里、立花慎之介、安元洋貴、日野聡

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0

少年シエルと、あくまで執事のセバスチャン。それぞれの目的のために結ばれた主従関係の結末は…。

「月刊Gファンタジー」にて連載されていた漫画が原作。

人気の高い作品だということは知っていたので見てみることにしましたが、
アニメは原作とは異なるオリジナルエピソードが多めだったようです。

1期できれいに完結しましたが、
2期や3期もあるんですね。

1期は全24話です。


● ストーリー
舞台は19世紀末のイギリス。

名門貴族・ファントムハイヴ伯爵家当主は、
12歳の少年、シエル・ファントムハイヴ。

ファントムハイヴ家は代々政府の汚れ仕事を請け負っており、
シエルも「女王の番犬」として、裏社会の秩序を守る任務を遂行していた。

そんなシエルに仕えているのが、執事のセバスチャン。
料理も武術も、すべてが完璧な執事。

あまりにも完璧なセバスチャンに対して驚く周囲には、「ファントムハイヴ家の執事たるもの、これぐらいできなくてどうします。」「あくまで執事ですから。」と穏やかに語る。

そんなセバスチャンとシエルは、
普通の主従関係ではない特別な関係で結ばれていた。


シエルは過去に両親を殺され、
自分も命を脅かされた過去を持っています。

その復讐を果たすのために、
自分の魂と引き換えにして、
セバスチャンと契約を結んでいます。

シエルが引き受けた事件の解決と合わせて、
両親を殺した犯人に近づいていく。

この2つの物語が並行して進んでいく、
ダークファンタジーです。

幼くて傲慢で「周りの人間は全て駒だ」と冷徹なシエルと、
シエルの魂を頂く日まで、彼を主として仕えるセバスチャン、
その他にぎやかな使用人たちなど。

楽しそうで、幸せも感じられる日々の裏で、
シエルに降りかかるのは、非常な現実。

1話1話すべてに見ごたえがあるわけではないけれど、
それぞれの事件の山場は面白いと思いました。

面白いと言っても、わくわくするような面白さではなく、
時にはショックで、時には衝撃的で、時には残虐で、

でも悲しさとか辛さとかとはまた違って…
復讐や死にまみれた物語なのに、残酷さだけを強く感じない。

セバスチャンのキャラのせいなのか、
全体的に上品な雰囲気は抜けないのです。

後味の悪さもあるし、やるせない展開もあるのに、
鬱な気持ちだけでは終わらない、不思議な作品でした。

何よりも24話で積み重ねた重みに見ごたえがあって、
最終話を観終えたあとの余韻に、満足感がありました。


● キャラクター
やはりこの作品において一番重要なのは、
セバスチャンというキャラでしょう。

あくまで執事な立ち位置の彼ですが、
彼がいなければ、シエルは何もできないだろうし、物語は成り立ちません。

とにかく完璧なイケメン執事、
命と引き換えの契約でも安い!と思う!笑

途中からは、なんだかもう、
何ができても驚かなくなってましたw

話し方も柔らかくて丁寧で、
彼から上品さを学べた気がします。笑

時には色気を武器にしちゃって…なギャップも良いですな(*´Д`)

でもシエルとのコンビが一番安心&安定します^^
二人にならBL展開も歓迎してしまいそうです(*´Д`)ハァハァ

次回予告ではcv.小野大輔さんの遊び心なのか、
しばしば崩壊するキャラも楽しかったですw


シエルのわがままっぷりは少し苦手でしたが、
己の魂に恥じない生き方を選択する、という芯の強さは好きでした。

復讐を果たすことが正しい生き方なのか、そこは肯定できませんが、

周りを利用してでも、己の誇りの為に心に決めたことをやり遂げようとする人間というのはそうそういないと思うので、セバスチャンが魅了されるのも納得です。

他にも個性豊かで魅力的なキャラが多いですね^^

葬儀屋のアンダーテイカーの狂ってる感じが好きでしたが、
その正体には「なんだ、それなら普通じゃないか」と、少し冷めてしまいましたw

…別に狂ってる人がタイプなわけではないけれどw

まっすぐでいい人すぎるアバーラインも好きだったんだけど…
あまりにも救われなさ過ぎて(´;ω;`)

アバーラインに関する展開だけは、
ちょっと鬱な感情が尾を引いています。

最終的にはセバスチャンが一番お気に入りです。


● 音楽
【 OP「モノクロのキス」/ シド 】

最初は1番の、途中からは2番の歌詞が使用されていました。

シドの曲は特別好きというわけではなく、
この曲も以前から聴いてはいましたが、

この作品の雰囲気とよく合っていて、
この作品の曲として聴くようになってから好きになりました^^


【 ED1「I'm ALIVE!」/ BECCA 】

初めは、この作品にしては明るすぎる曲のような気がしましたが、
聴いているうちに気にならなくなりました。

今では好きな曲です♪


【 ED2「Lacrimosa」/ Kalafina 】

明るい曲ではなくなり、OPの雰囲気に近い曲となりました。

でもこの曲も好きです^^

シエルとセバスチャンの、
静かなようで情熱的な関係によく似合っています。


● まとめ
シエルという少年の人生。
それは二つに分かれる。

ひとつは、両親と共に過ごした温かい日々。
もうひとつは、セバスチャンと共に過ごした戦いの日々。

原作とは展開が違うようですが、
アニメの方も24話分の重みと見ごたえを感じられました。

初めはセバスチャンのイケメンさと万能さを愛でる作品かと思ってたけど、
それだけではありませんでした。笑

最終話まで見て、よかったなと感じています^^

とてもきれいに完結したと思ったけれど、
2期もあるんですね。

ちらっとあらすじを見ましたが、
なんだか1期とは異なるお話のようなので、
引き続き楽しみたいと思います^^

投稿 : 2024/05/04
♥ : 15
ネタバレ

♡Sallie♡☆彡 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

“悪の貴族”と呼ばれる少年の側には,必ず一人の“執事”がいた。

これ昔からタイトルはよく聞いてたんですが,わたしがアニメを本格的に観だす前のアニメでなんか偏見もあってこれまで観ずにいました。
でも,「19世紀」「イギリス」「ヴィクトリア朝」「ダーク・ファンタジー」とわたしが好きな要素がぎゅぎゅっと詰まっているような作品で…。
もうアニメを観だした頃と違って偏見とかもあまりないし,これは観るより他ない!!ということで観てみました。
まぁ,こんな感じなので当然オリジナルの方も読んでません。

これ,2008年のアニメなんですね~。もう14年も前だ。
でも,いざ観てみるとそんなに前のアニメって感じはしなかったですね。
この位時間が経ってるアニメだと,作画が不安定だとか,キャラクターデザインに古さを感じたりすることもあるんですが…。
(最近のアニメはほんとに綺麗ですからね~。)
キャラクターデザインでいえば,大人のキャラクターはあまり好きじゃなかったんですが,シエルはけっこう好きでした。
原作のキャラクターデザインはどんな感じなのかなと思って調べてみたんですが,原作の方もアニメとほとんど同じで綺麗な絵だなぁと思いました。
なので,機会があれば原作の方も読んでみたいです。
なんか,さらっと調べたところけっこう原作とはストーリーに違いがあるようなのでそこも気になって…。

物語的には,観る前はダーク・ファンタジーという印象が強くて終始暗い感じで話が進んでいくのかなと思っていたんですが,観てみるとけっこうコメディ感もありますね。
セバスチャンの毒舌というのか慇懃無礼な発言がブラック・ユーモアな感じもあって…。
とことんダークな話も好きなんですが気分まで暗くなっちゃうので,わたしはこういうコメディ感好きでした。
そして,ダーク・ファンタジーをベースにしつつも事件を解決する的なミステリーで話が展開されます。
で,まぁ人が死んだりはします。―が,主人公であるセバスチャンがチートなのでシエルに関してはあまり心配することなく安心して観ていられました。
それ以外だと,イギリス好き,ヴィクトリア朝好きにはたまらないような単語がいっぱい出てきてにやにやしちゃいますね。
「ジャック・ザ・リッパー」とか「クリッパー」とか「1666年のロンドン大火」とかもう盛りだくさんです。
イギリスに限らずヨーロッパは歴史的な建築物が今もいきているので,エリザベスタワーやロンドン塔,タワーブリッジなど名所が出てくるところも見どころです。
カティーサークの船主像がきちんと作画してあるのもにやりとさせられます。
セバスチャンがシエルにサーブするお茶菓子も毎回美味しそう🍰
けど,マナーハウスじゃなくてカントリーハウスじゃないのって思ったけどどうなんだろう??

次はキャラクターについてレビューしていきます。
セバスチャンが主人公と上で書きましたが,わたしの中でセバスチャンはドラえもん的位置づけで,シエルはのび太くん。
なので,物語自体はシエル目線で進んでいきます。
{netabare}セバスチャンは悪魔なので,人間相手には無敵です。
一方,シエルは人間,それも両親とも亡くなっちゃってるみなしご。。
ただ,彼は貴族(それも伯爵!)なのでね。
経済的な部分では安心なのかな。
彼に関しては最初『伯爵と妖精』のエドガーと『それでも世界は美しい』のリビを足して2で割ったようなキャラクターだなと思いました。
地位と傲慢さ,子どもとは思えない知識・才能が備わっているところや冷徹な性格はリビと一緒だし,19世紀イギリスの伯爵という身分や火事で何もかもを失うという身の上はエドガーと一緒ですね。
ただ,上の2人と違うのはそもそもの物語がラブストーリーじゃないという点。
最初は,リビと重なって「くそ生意気なガキ」としか思ってなかったんですが,(セバスチャンは居るけど)メンタル的に支えとなるヒロインが居ない。
高慢な所が目につくけど,実際は孤独なんだろうなっていつの間にか好きになって応援していました。
―というのも,彼のセリフが薄っぺらくないんですよね。
シエルはセバスチャンに頼らなきゃいけない無力な子どもなのに,こういう性格にならなきゃ生きていけないんだなって悲哀を感じたし,だからこそ言葉に力があると思いました。{/netabare}
あとシエルは声が良いですね!!

主題歌はOPが1つとEDが2つあります。
わたしは「I'm ALIVE!」が好きでした。
曲調もアニメーションもダークな雰囲気を吹き飛ばしてくれるような感じですね。
めっちゃ洋楽っぽい!!って思ったらやっぱりアメリカの方が歌ってました♪

こちらの第1期は「えっ。結局どうなっちゃうの!?」って感じで終わってしまい,第2期もあるそうなので続きはそちらを楽しみにしています。
(そのうち観たいと思います。)

(観る前はシエルの名前を知らなかったのですがL'Arc〜en〜Cielのhydeさんがシエルのコスプレしてたのは“シエル”つながりだったのか!!と今頃悟りました(^-^;)

投稿 : 2024/05/04
♥ : 7
ネタバレ

レオン博士 さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

19世紀英国史の影で暗躍する優雅な執事

【紹介】
19世紀のイギリスが舞台、坊ちゃんと執事の関係性がとても良い女性向けの雰囲気重視作品
重めのダークファンタジー×史実の裏側で暗躍する人々×女性向けコメディでとても話が面白い
久しぶりにちょっとだけ見たのですが、今見ても画期的な作品と思うし、当時女子の間でバズったのも必然だと思います

【感想】{netabare}
私は原作は読んだことないです

リアリティは全くなくていろいろ変なことは多いですが、細かいこと気にしなければとても素晴らしい作品です
ダークな世界観や設定・全体的に重くシリアスなシナリオと明るく軽いノリの使用人という明暗のバランスが良くメリハリがきいていて退屈しない良作

セバスチャンはじめ使用人のやり取りが面白くて、仲が良くワイワイ賑やかな雰囲気で女性向け作品に多い空気感です
BL作品ではないですが、それっぽい空気は結構出ててシエルが時々ヒロインみたいな立ち位置になります、女装もしますし
私がBL作品大丈夫になったのは黒執事を再放送で見て女装したシエルとセバスチャンの絵がいいなーと思ったのがきっかけでした、美少年の女装とイケメンの組み合わせアリって思ってしまったらだいぶハードルが下がった気がします
本格的なものにいきなり手を出すと拒否感強いでしょうから、これくらいで慣らしたほうがいいかもしれませんね

女性向け作品特有の馴れ合い空気が苦手な人にはきついかもですが、全体的にメインストーリーは暗いのでちょうどいいバランスかも
男性同士で仲良くしているのを見ているだけで虫唾が走る人以外は大丈夫だと思います

※二次創作でそういうものがいっぱい出ているので腐向け作品とみなされているのも仕方ないと思いますが、二次創作もBL作品ばかりではなく、わいわい仲良くしているだけの二次創作も多いです
ファンは絵がきれいな方が多く話の面白さもあって二次創作のレベルがとても高いので苦手じゃないなら是非読んでみてほしいです

世界観がカッコ良く、キャラクターの性格や雰囲気が良くて話が面白いのでとても好きな作品です
かなり昔の作品で映像自体は古いけどキャラデザや演出に古さを感じないです
むしろ映像が古いことで近代英国の薄暗くじめっとした雰囲気がよく出ていていい感じ

近代欧州の歴史背景や雰囲気で世界観はとても魅力的で掛け合いがスムーズ
主人公を取り巻くキャラクター同士の掛け合いと世界観と雰囲気とヴィジュアルに全振りした作品で、シナリオはかなり「あれ?」って思うところ多いけどキャラクターが好きになれれば楽しめると思います
{/netabare}
【キャラクター】
一番好きなのはセバスチャンですが、シナリオ的にはシエルが好きです
{netabare}
最初はシエルがあまり好きになれなくて、セバスチャンのカッコ良さにばかり注目してましたがそれは間違いでした
使用人たちの明るさでほのぼのした空気のお屋敷で親しみを持てるのですが、とても重くシリアスな現実が襲い掛かってきて
若くして戦うことを余儀なくされたシエルにだんだんひかれるようになった

シエルの女装が可愛くてお嬢様として振舞ってるシーンかなり好きです
女装キャラ苦手なんですが、シエルはアリというか素晴らしい!

なんといってもキャラクターが素晴らしいです、声優もとても良かったですし、建物の内装の緻密さや細かい服飾までこだわった服装がオシャレな雰囲気を作っていて素晴らしいです
とても個性的でカッコいいキャラクターが多く、掘り下げもきちんとされていて誰だっけ?ってならないしいらないキャラクターがいない
{/netabare}
【残念なところ】{netabare}
文明レベルは適当ですし、歴史も史実に忠実ではないので細かいことを気にする人は注意
19世紀の英国には存在しないものやこの時代よりかなり前にはすでに定着しているであろう文化が出てこないなど
その時代や世界観に合わないものは雰囲気を壊しかねないので出さないほうがいいと思います

良くも悪くもセバスチャンセバスチャンセバスチャン
シエルはとても苦しい状況に置かれてますがいくらなんでもセバスチャンに依存しすぎで、強気な態度にあまり説得力がない場面もあるのでもう一つくらい強みが欲しいところ

セバスチャンカッコいいけど戦闘シーンは変なことだらけです、気にしてはいけません
{/netabare}
【主題歌】
OPもEDも作品の雰囲気に合った良曲、とても素晴らしいです

投稿 : 2024/05/04
♥ : 20

72.5 2 19世紀で女王なアニメランキング2位
黒執事Ⅱ(TVアニメ動画)

2010年夏アニメ
★★★★☆ 3.8 (805)
4999人が棚に入れました
19世紀後半、英国名門貴族トランシー家。若き当主アロイス・トランシーは生まれてまもなく攫われ行方不明となっていたが、漆黒の執事クロードとともに帰還した。クロードはアロイスに絶対的忠誠を誓っており、広大なトランシー邸の一切を切り盛りしていたが、名前以外はすべてが謎に包まれていた。
ネタバレ

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

好敵手の出現で1期より見応えがあった

レビューを書くにあたって少し前に1期、2期を通して再視聴したが、
実は僕の場合、「黒執事」を初めて観たのは2期を放送中だった頃の3話からだった。
そのせいもあってか、2期のほうから先に好きになった作品なので、
原作ファンの方とは、だいぶ観方や感想が違っているかもしれない。

というのもこの2期、原作でも1期でも主役であった執事セバスチャンと
その主、シエルの対抗相手として、原作には無関係の執事・クロードと
その主・アロイスが登場し、物語もオリジナルだったからだ。
で、1期を観た上で思うのは、2期のほうがメリハリあって個人的には楽しめた。
でも2クールかけた1期でのセバスチャンの有能さと、シエルとの信頼関係や
細かな設定、人物関係を観ていないと、1クールで終わってしまう2期に
感情移入しにくくなるので、当然1期を観ておくことはオススメ。

ちなみに1期、2期ともシリーズ構成は岡田麿里。
監督、美術、色彩設定のスタッフは変更になったため、違いは随所に見られた。
どちらが良いとか悪いとかは人それぞれ好みもあると思うけれど、
全体的に観て、1期は日常系的な要素のほうが強く、コミカルなシーンも多かったが
2期は笑える部分をかなり抑えてバトル色を濃厚にし、心理描写はさらに細かく深くなっていた。

個人的にキャラデザはクロード&アロイスのほうが好みだったりして、
オリジナルの新キャラであるクロードを、とことん冷ややかな策士にし、
アロイスの傲慢さとしたたかさ、その裏にある孤独や、絶望感と哀しみを
彼の過去とともに描くことで、1期では感じづらかったシエルの正統派お坊ちゃんの
高貴さが浮き彫りになったし、セバスチャンのちょっと人間味のある愛情や甘さも見えて
奥行きを感じ、特に後半は感情移入しやすかった。

OSTのほうは1期同様、ストラヴィンスキーやマーラー、ヴィヴァルディや
ショパンなどのクラシックをモチーフにしたような曲や、
エニグマのようなグレゴリオ聖歌をベースにした曲がいいタイミングで挿入され、
クールな外見に似合わないド派手なアクションや、
エキセントリックな内面を垣間見せるクロードの動きや、
アロイスの歪んだ人間性を哀しげに見せることに成功していたと感じる。

一方、セバスチャンとシエルのほうは、1期の最終回のその直後がどうなったのか
中盤で描かれており、あぁなるほどそういうことだったのかと納得はできた。
そしてセバスチャンがなぜシエルに固執するのか、その理由もよくわかる。
また、それをクロードやメイドのハンナが察知して企てる数々の
エグい展開はなかなか見応えあったし、これでこそ{netabare}悪魔{/netabare}
と満足できた。

特に9話以降は緊迫感で張りつめ、目が離せなくなる。
{netabare} あくまでも悪魔は悪魔ということか。{/netabare}
ラストに対しては賛否分かれそうだが、僕的には2人のひとつの道筋として
そして、実際あるかないかわからないけど3期を期待できる結び方だったかなと。

それにしても、契約を遂行する忠実さは良しとして、悪魔だろうが人間だろうが天使だろうが
やはり女性の持つ母性愛に適うものはないのかもなぁと、しみじみ感じる2期だった。

ちなみに、あにこれでは別作品として登録はされていないが、
この「黒執事」6話あるOVAがすごく面白いのでオススメ。
不思議の国のアリスをモチーフにした物語があったり、ファントムハイブ家を案内してもらう形で
屋敷内のさまざまな場所のことがわかったり、『黒執事』をハリウッド映画に仕立て上げ
オールキャラが俳優としてインタビューに答えたりするのも笑える。
死神たちの裏側のこともちゃんと描かれてたりして、それも楽しいのだが
一番心に残ったのは、アロイスを主人公にした6話の「蜘蛛の意図」
愛情を渇望する彼の痛い心が、2期を観終えた後だとなおさらせつなく。
そして悪魔に関しては、「悪魔としての悦びは悪魔としての苦しみの先にしかない」
って意味がよくわかる話だった。
もちろん、1期2期を観てないと設定や関係がつかめないので観終わってからが前提。

声の出演は以下の通り。

セバスチャン・ミカエリス : 小野大輔
シエル・ファントムハイヴ :坂本真綾
フィニアン : 梶裕貴
メイリン : 加藤英美里
バルドロイ : 東地宏樹
タナカ : 藤村俊二
エリザベス・ミッドフォード : 田村ゆかり
劉 : 遊佐浩二
藍猫 : 矢作紗友里
ドルイット子爵 : 鈴木達央
アバーライン : 菅沼久義
葬儀屋 : 諏訪部順一
グレル・サトクリフ : 福山潤
ウィリアム・T・スピアーズ : 杉山紀彰
アロイス・トランシー : 水樹奈々
クロード・フォースタス : 櫻井孝宏
ハンナ・アナフェローズ :平野綾

投稿 : 2024/05/04
♥ : 34

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

復讐と陰謀に絡めとられた少年の、気高き魂の行方は。

つい先日、黒執事が連載15周年を迎えましたね♪
おめでとうございます^^

1期で物語が完結したと思っていましたが、
これは1期の続編となっています。

原作とは関係のないアニメオリジナルキャラクターが、
もう一人の主人公として新しく登場しています。

全12話です。


● ストーリー
イギリスの名門貴族・ファントムハイヴ伯爵家。
その当主はシエル・ファントムハイヴ。

まだ幼い当主の彼には、
有能な執事、セバスチャン・ミカエリスがついている。

料理、掃除、身の回りの世話まで、
なんでも彼一人で一流にこなす。

完璧すぎる彼に周囲は驚き、
そんな周囲に対してセバスチャンは冷静に告げる。

「私はあくまで、執事ですから」
「ファントムハイヴ家の執事たる者、このくらいできなくてどうします?」


初めは1期の終わりとのつながりが見えず、
時系列や世界線がわからずに混乱しましたが、

とりあえず1期と同じ、
いつも通りなシエルとセバスチャンの日常。

たとえピンチのオンパレードでも、
セバスチャンにかかればなんともなし。

なんでもできすぎて、もう何ができても驚かないよ。
笑ってしまうけど。笑

ただ解決するだけじゃない。優雅に、気品よく。
伯爵家の執事なのですから♪

5話あたりで、
1期からのつながりとシエルの現状がはっきりと語られました。

2期の大きな特徴としては、トランシー伯爵家の当主であるアロイス・トランシーと、その執事であるクロード・フォースタスが登場します。

この二人はシエルとセバスチャンと同様の関係。
つまり、悪魔とその契約者です。

つらい過去を持つアロイスという人物について。
それに加え、シエルを巡るクロードとセバスチャンの争いが2期の見どころとなっています。

2期もお話はきれいにまとめられていますが、
私は1期の終わり方のほうが好きだったなあ。

2期の方がハッピーエンド色は強いので、
こちらの終わり方のほうが好きだという方がいるのもわかります。

2期の終わり方がセバスチャンにとって幸せなのか不幸なのか、
どちらで捉えるかでも、変わりそうですけどね。

1期で十分物語としてまとまりがあったのに、
わざわざ2期を作ったのは、やはり人気があったから?

オリジナルキャラを用意して、
物語にもそれなりに見ごたえはありましたが、

私の中では“おまけ続編”という印象でした。

1期の美しいラストを覆してまで製作されるべきものだったのかは、
やや疑問が残っています。


● キャラクター
1期に引き続き、
シエルとセバスチャンの関係は安定です。

偉そうでわがままなシエルの要求に、
完璧に答えていくあくま(悪魔)で執事なセバスチャン。

シエルの周囲の人たちも、
シエルを愛していて、温かいです。

対して、
2期で登場したアロイスがひどい…。

彼の生い立ちを知ると仕方がないと思うところはあるのですが、
彼の乱暴でわがままな性格がどうも好きになれませんでした。

彼と比べると、
シエルが優しい人に見えるから面白いですね。

普段はぶっきらぼうなシエルの優しさが、
はっきりと浮かび上がってくるw

新執事のクロードは眼鏡イケメンキャラでしたが、
私はセバスチャン派でした。

2期で天使なのは、
アロイスの弟のルカだけです。

ルカの笑顔、可愛すぎる…。


● 音楽
【 OP「SHIVER」/ the GazettE 】

1期と似た雰囲気のOP。

ヴィジュアル系バンドの曲、
この作品には合いますね^^


【 ED「Bird」/ 松下優也 】

OPとは反対に、
こちらは優しい曲。

包み込む愛を連想させます。

包み込まれているのは、
シエルなのか、アロイスなのか…。


【 特別ED「輝く空の静寂には」/ Kalafina 】

最終話など、山場となる回で使われたED。

私はこの曲が一番好きでした。


● まとめ
セバスチャンのイケメンさとありえない芸を楽しむのが、この作品のユニークポイントであり、

シエルの復讐に関わってくるところがシリアスポイント。

このユニークさとシリアスさのバランスがよいと思う作品ですが、
今回はシリアスの方にやや傾いていたように感じます。

もちろん、ユニークポイントもちゃんと描かれていて、
そこは楽しませてもらいました^^

原作を読んでいないのでアニメでのみの印象ですが、
この作品は1期で満足かも。

1期だけでは物足りない、もっと見たい!という方に向けた2期かなと思いました。

3期は2期とはつながりがないようなのですが、個人的にはその方が楽しめそうなので、そのうち3期も見てみたいと思います。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 12

★mana★ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ・・そして、OVAは最高だったのである・・

1期に引き続き~なんて思いきや、
1話を観てみると・・「シエル&セバスチャン」が出てこない(;゚Д゚)
いきなり始まる「謎の執事と、謎の少年」の話。
しかもグロ健在?むしろひどくなってない?
「謎の少年」がメイドを目潰し!(σ´∀`)σ(*□*;)ギャ
これは・・完走出来ないかもしれない・・
と思いきや、颯爽と登場セバスチャン♫
やはり主役は変わらない事に安心し視聴継続しちゃって下さい♪

そうなのです、2期からは新しく「トランシー家」が加わります!
なので1期の「裏家業」とは違い、
「トランシー家」との話が中心になります!
トランシー家の当主「アロイス」・(あくまで)執事「クロード」
は執拗に「シエル&セバスチャン」を狙います( >_[・]) ロックオン
それは何故か・・という所がみどころになって来るのではないかと・・
しかしっ、やはり私が一番に楽しみだったのは、
オカマ死神「グレル」とセバスチャンの掛け合いですかねw
いや~何度観ても飽きないわぁww
\(・д\)ソレハ(/д・)/オイトイテ(グレル再度登場しますので・・w)

そして、注目すべき所は普通なら見逃す「アイキャッチ」
それぞれのキャラがタロットカードを正位置と逆位置で持っているのが印象的でした☆
カードの意味=ストーリーになってるようで、
詳しい方はそこも注目してみたら面白いと思います!

そして次回予告が面白いですね(・∀・)ニヤニヤ
セバスチャンが甘ぁーい声で色々やってくれます!

今回の新キャラの声優、
アロイス役には「水樹奈々」サン。個人的には・・合ってなかった・・かな。
クロード役は「櫻井孝宏」サン。
「イエス ユア ハイネス」が某ギアスのスザクとかぶったのは私だけ?(´・ω`・)エッ?w

1期と違い12話完結で完全オリジナルストーリー
なるほど・・って感じでした。
何で作ったんだ?とまでは言いませんが、
無くても良かったとは言えます・・
3期があってもおかしくないような終わり方。
私はあの終わり方には満足行きませんでした!
「あくまで私の意見ですが、ね|ω・`)」

しかーし、ここで終わらないΣ(*´∀`*;)ドキッ!!
私はレンタルで視聴したのですが、
OVAが収録されていて、ある意味そっちの方が面白かったとも言えます♫

①「シエル イン ワンダーランド(前・後編)」
黒執事版「不思議の国のアリス」ですね~☆
アリス=シエル・衣装が可愛すぎるぅ~(*´ω`)
白ウサギ=セバスチャン・うさ耳(*´ω`)
チシャネコ=グレル・猫耳(*´ω`)
他キャラもたくさん登場!黒執事の注目どころ、衣装が可愛すぎる作品です♥

②「ファントムハイブ家へようこそ」
うぉーーーーーー(゚∀゚)これは自分がファントムハイブ家へ行った感覚になれます♪かわゆいエリザベスのお友達として☆
セバスチャンが手を取ってくれます、シエルが歓迎してくれます、
ソウマに「可愛い」と言われます・・しかし、私には「ある計画」があるんです・・・

③「MAKING OF KUROSHITSUJI2」
黒執事の裏側・・登場人物達が役者のように私服でインタビューをうけたり、NGシーンだったり、グレルが「スッピンを映さないで!」と怒ったり、TVショッピングだったり・・アニメなのに、アニメじゃない・・こういうの好きです(。◕‿◕。)

④「死神ウィルの物語」
事前情報あったので、ウキウキで視聴♪
ウィルとグレルが新人死神に死神派遣協会を案内しながら
2人の過去をご紹介☆
こんな初々しい時期があったのか(*´∀`)
そして、メガネ課?死神にはメガネが必須アイテムらしいです♫

⑤「蜘蛛の意図語」
・・トランシー家の人物紹介?
とりあえず、使用人の3つ子が笑えます( ゚∀゚)アハハッ

Ⅱに満足いかなくても、これを観ればきっと満足出来るはずですよー!黒執事ファンなら是非♥

投稿 : 2024/05/04
♥ : 26

68.9 3 19世紀で女王なアニメランキング3位
ヴァニタスの手記(TVアニメ動画)

2021年夏アニメ
★★★★☆ 3.5 (174)
589人が棚に入れました
吸血鬼が存在する19世紀のフランス。吸血鬼の青年ノエは、吸血鬼に呪いを振り撒く魔導書「ヴァニタスの書」を探すためにパリへ向かい、その途中の飛行船の中である事件に遭遇した。その最中、吸血鬼の専門医を自称するヴァニタスと名乗る青年がノエの前に現れるが、ヴァニタスはノエの探す「ヴァニタスの書」を手にしていた。
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

ある吸血鬼フェチの実像

原作未読 分割クールの前半12話


“手記”と書いて“カルテ”と読みます。
いわゆるヴァンパイアものですがわりと変化球。
不老不死吸血鬼と命限りある人間が対峙する物語とは違い、吸血鬼に降りかかる災厄が柱となります。
その吸血鬼の“真名”いわば魂みたいなものが奪われちゃうと正気を失って、まるで渋谷交差点ど真ん中で佇むTウィルス感染済の中島美嘉ちゃんみたいになってしまうという呪いに怯えているのが本作の吸血鬼“ヴァンピール”たちです。その呪いからヴァンピールを救うお医者さん役を担うヴァニタス(CV花江夏樹)と呪いについて含みありそうなヴァンピールのノエ(CV石川界人)のW主人公もの。
作中で言うところの“呪い持ち”になったヴァンピールは発症すれば殺処分の運命が待ってるわけですが、唯一ヴァニタスのみが手持ちの“ヴァニタスの書”を使って真名を取り戻すことができる唯一無二の存在というのがポイントです。ジョーブ博士みたいなもんですかね。またこっちは名前を返してもらう書ですが、名前を返してあげる『夏目友人帳』と本質的には変わらなさそうな作品でもあります。

前置きそれくらいで、事前情報からはこちら↓

 ボンズ制作 梶浦由記劇伴

こちらが吸引力となりました。まあ綺麗ですもんね。梶浦さんは事後知りましたがくどいくらいドラマチックで壮大ないつものノリは控えめな印象です。さはさりながら19世紀後半のパリの情景にはよく似合うBGMなのはさすが。美術は総じて美しく印象的だったのはOPアニメーションでの早朝太陽の光具合。綺麗な朝焼けです。ちな本作の吸血鬼は太陽の光浴びても灰にならない設定です。

一通り前半終わってポジティブな印象を持ってます。理由は3点

1.綺麗
 →前述の通り
2.続きが気になる
 →{netabare}「そして…その旅路の果てに」「彼をこの手で殺すまでの物語」{/netabare}
  第1話ノエのモノローグが示唆する結末はぜひ見てみたい
3.俺の好きなヴァンパイア
 →吸血鬼ものにはどこか“退廃”“耽美”を求めがちな私の趣味に合っている

とりわけ3はフェチシズムの世界ですね。美形男子のバディもので女性作者とバイアス入りがちなのですがどうなんでしょう。矢印はノエ→ヴァニタスでも性格や見た目に惹かれてというより「ヴァニタスの血が美味そう」と吸血鬼の本能に則した動機ではあるんでそれほどでもないなぁと見ております。
それよか禁じられているとされる人間への吸血行為の描かれ方が素敵。まぁえっちいです。欲求・衝動・理性との葛藤ないまぜの吸血シーンは親と一緒に観てると確実に気まずくなる水準です。
やはりヴァンパイアものは“耽美”なとこないとね。作品評価は分割前半のため例によって保留ですがこれは好物です。来たる後半待ち~



※余談

■ペース配分

ここ一年くらいで『SLAM DUNK』『空手バカ一代』『カウボーイビバップ』『エヴァンゲリヲン』とクラシックを堪能してたからかもしれません。
{netabare}近年の深夜アニメの1クール2クールサイクルでの話の詰め込みっぷりに慣れてる自分に気づきます。本作は新作の中ではゆっくりめ。
昔のって最初から最後までやるんですよ。なんかしらの大筋があって伏線張りながらゆっくりめの尺の中で丁寧に回収する感じ。最近は大筋があっても描写を削ってスピード解決します。それに慣れてるから“ゆっくりめ”と感じるんですよね。
普通の早さの作品が遅く感じる弊害みたいなのはあって、期を跨ぐものやとりわけ分割クールものにそれは如実に表れると思います。とどのつまり「遅せーな」と感じてしまう。{/netabare}

{netabare}ジェボーダンの獣と新展開をチラ見せして中締めしてエンタメの体裁は保ってるものの、展開自体は??が依然として謎のままのハーフタイム。

 丁寧にやってるので期待がもてる or よくわかんねーまま終わったよ

私は前者の感覚ではありますがみなさんどうでしょう?
分割ものは後から一気にGOも手段でして、とりわけ本作のゆっくり展開でこそアリな選択肢かも。{/netabare}


■耽美

{netabare}ジャンヌ(CV水瀬いのり)良かった。
まずは水瀬さんやってるとはわからんのが良かった。
古今東西チョロイン枠って顔を赤らめてもじもじして照れ隠しのプンプンするようなリアクション芸に長けたの出しときゃ安パイなのに彼女は自ら欲求を満たそうと行動するんですよね。
ハリウッド映画ならそこチューするだろ?みたいなとこでなにもしないのがアニメに対する数少ない不満だったりするんですけどそこを突破する本作のヒロイン。
なお、ただのチューよりいやらしかったです。
ロエの幼馴染ドミニク(CV茅野愛衣)も悪くない。{/netabare}



視聴時期:2021年7月~9月 リアタイ   

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2021.09.19 初稿
2021.11.16 配点修正 -0.1

投稿 : 2024/05/04
♥ : 32

♡Sallie♡☆彡 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

わたし好みのテイストです✧

原作は知らなかったのですが,タイトルに惹かれて観てみました。
わたしが好きな19世紀が舞台で吸血鬼もの,そしてスチームパンク!!
19世紀やスチームパンクというと,イギリスを舞台にしがちだと思うんですが,こちらはフランスはパリ。
そこら辺は珍しいと思いました。
出てくる用語もフランス語が用いられてて雰囲気あって良いですね☆
こちらは分割2クールでやるらしいのですが,第2クールはまた別に出るかもしれないので,取り合えず第1クールまでのレビューをしようと思います。

話自体はファンタジックでとても好みですし,雰囲気も好きです。
ただ,原作を読んでいないこともあり1回観ただけでは用語を覚えられずなんだかよく分からないままお話が進んでいった感はあります。
そもそもこの第1クールでは謎が多すぎて結局それぞれが何を目指しているのか分からないまま終わってしまいました。
ただ,それぞれの回自体は面白くて毎回時間があっという間に感じました。
あとちょいちょい出てくる色っぽいシーンのエロ度が丁度よくて好きでした(笑)。

作画はとてもきれいだと思いました。
まぁ,そもそも元々の原作のキャラクターデザインがあまり好きではないとは思いつつも,背景の19世紀フランスはほんとに素敵だと思ったし,飛空船もとても美しかったです。
最近同じ時代のイギリス・ヴィクトリア朝を舞台にした小説を読んでいて飛行船が出てきたり,パリでタイムトラベルをしちゃう「ミッドナイト・イン・パリ」という映画を観たり,別の吸血鬼もののアニメを観ていたりしたのでなんだか今の気分にもぴったり合っていて観るべくして観たという感じでした。
特にOPの夜のパリはうっとりしちゃいますね♪

キャラクターは上記のとおりデザインがあまり好きじゃないなと思いましたが,キャラの性格自体は割と好みでした。
主人公がトリックスターな感じも他にはあまり無いのでわたしは好きです。
最初,ヴァニタスの髪型がどうなってるのか気になって仕方なかったけど(^-^;
ノエはヴァニタスに振り回される役ですね。
この2人は夢枕獏「陰陽師」の安倍晴明と源博雅の感じに似てると思いました。
初め,ヴァニタスはめっちゃ強い奴なのかなって思ったんですけど,1話目で早くも無様にやられてて面白かったです。
彼は最初からトリックスターな雰囲気が出ていたので,ジャンヌにいきなり無理無体をはたらいた(笑)のにはびっくりしました。
色恋には興味ないキャラかと思ってたので…。
しかも歯の浮くようなこと平気で言うし…(´∀`)
でも,ほんとにジャンヌに惚れてる感じはしなくてただからかってるだけに見えるけどね。
ジャンヌはジャンヌで業火の魔女とかいうからどんなキャラかと思ったらチョロQだし…。
そこら辺も面白かったです。
彼女の性格は好きなんだけど,わたしはショートヘアの女の子のキャラクターがあまり好きではなくて…。
それに,19世紀にショートヘアの女性なんて居なかったよね!?
それが残念でした。
もっとわたし好みの女の子が出てきてくれたら嬉しいのに…。
1番好きなのはルカ様かな。可愛すぎますね,彼は♡
あとムルのふてぶてしい感じも可愛い♪
あと,やばそうな人シリーズですが…
ベロニカはなんで着物を着ているの!?
ジャポニズムがお好きなのかしら??
あと,先生とルスヴン卿は怪しいですよね。
ルスヴン卿はいかにも悪役っぽいですけど,先生の得体の知れない感じも怖い。

OP・EDはわたし好みでした♪
アニメーションも好きです,特にOPの!!
オープニングテーマはそれ自体は良い曲ではあるんだけど,このアニメに合ってるかと言われると合ってないと思いました。
日本的な楽曲だと思ったので…。
エンディングテーマは合ってると思います。

正直,まだまだ分からないことだらけなので第2クールに期待です☆
第2クールは来年の1月~らしいです。
待ち遠しいなぁ。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 10

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

呪いと救いの吸血鬼譚

この作品の原作は未読です。
2021年夏アニメにおける花江夏樹さん主演3作品のうちの一画に位置する作品です。


蒸気機関による技術が発達し、吸血鬼(ヴァンピール)が存在する19世紀のフランス。
吸血鬼の青年ノエは、吸血鬼に呪いを振り撒く魔導書「ヴァニタスの書」を探すためにパリへ向かい、
その途中の飛行船の中である事件に遭遇した。

その最中、吸血鬼の専門医を自称するヴァニタスと名乗る青年がノエの前に現れるが、
ヴァニタスはノエの探す「ヴァニタスの書」を手にしていた。

吸血鬼そのものとも言える刻まれた真名を崩して狂わせることも、
そして復元して正気に戻すこともできる機械仕掛けの魔導書。
それをめぐる人間と吸血鬼の物語。


「ヴァニタスの手記」「あらすじ」でググった結果を引用させて頂きました。

この作品のジャンルは「ダーク・ファンタジー」や「スチームパンク」に分類されるのだそうです。
「スチームパンク」の作品といえば、「甲鉄城のカバネリ」や「プリンセス・プリンシパル」が代表格かと思いますが、言われてみると雰囲気が合っている気がします。

完走して振り返って思ったこと…
やっぱ同クールで花江さん主演3作品はちょっとお腹いっぱいになりますね。
特徴のある声質なので、花江さんだと直ぐに分かりますし…

一方、いのりちゃんも今期は3作品に主演として出演されていました。
・「現実主義勇者の王国再建記」のリーシア・エルフリーデン
・「死神坊ちゃんと黒メイド」のヴィオラ
・「ヴァニタスの手記」のジャンヌ
こちらについては、全く違和感を感じませんでしたけどね^^;

この作品に出演していたいのりちゃんや、かやのんもですけど、一時期に比べてTVアニメ出演する作品が減っているような気がするのは私だけでしょうか。
…と思ったら、お二人ともゲームのCVを沢山演じられているようでした。

しかし、お二人の演じているゲーム作品を改めて見てみると、膨大なゲーム数は世の中に蔓延しているのが実感できます。
正直、これほど需要があるかは疑問ですけれど…

私もアサルトリリィのラストバレットをプレイしていますが、本格的なゲームは正直1つで限界です。
ガチャ回すのもそれなりにお金掛かりますし…

ヴァニタスの内容から思いきり逸れてしまいましたが、分割2クールの前半クールが終了した段階なので、現時点での評価は難しいかな。
個人的には、終盤でのジャンヌの…いのりちゃんの「デレ」が最高だった、というところでしょうか。

物語の方は最終話で次の展開が頭出しされるという、分割2クールならではの構成でした。
100年以上前に人々から恐れられた輩が出現するという、これまでとは全く異なる展開が後半クールで展開されるようです。

作画もしっかりしていて見易い作品だったと思います。
気になる方は是非本編でご確認頂ければと思います。

オープニグテーマは、ササノマリイさんによる「空と虚」
エンディングテーマは、LMYKさんによる「0 (zero)」
個人的にはエンディグの方が好みでした。

1クール全12話の物語でした。
そう言えば、この作品は分割2クール作品ですが、後半クールがいつ放送されるかは情報がありませんね。
後半クールの視聴も楽しみにしています。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 17

74.1 4 19世紀で女王なアニメランキング4位
憂国のモリアーティ(TVアニメ動画)

2020年秋アニメ
★★★★☆ 3.7 (271)
1044人が棚に入れました
19世紀末。産業革命が進む中、着実に勢力を拡大し栄華を極めたイギリス。しかし技術の進歩と発展とは裏腹に、古くから根付く階級制度によって、人口の3%にも満たない貴族たちが国を支配していた。当たり前のように特権を享受する貴族。明日の暮らしもままならないアンダークラス。人々は生まれながらに決められた階級に縛られて生きている。ウィリアム・ジェームズ・モリアーティは、そんな腐敗した階級制度を打ち砕き、理想の国を作り上げるために動き出す。シャーロック・ホームズすら翻弄した“犯罪卿"モリアーティ。犯罪による革命が、世界を変える――

声優・キャラクター
斉藤壮馬、佐藤拓也、小林千晃、日野聡、上村祐翔、古川慎、小野友樹
ネタバレ

fluid さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.9

貴族社会で差別されたり、復讐したり、弱者救済系アニメ

よくある差別社会の不満を晴らす系のアニメ。推理もの。探偵もの。
大筋はなかなか楽しめる仕上がりになってますが、目新しい展開は無く、どこかで見たことあるストーリーがほとんどですし、細部におかしな点が目立ちます。沢山あるので各話ごとに感想として書きます。

■倫理観がおかしい、教育に良くないアニメ
被害者が復讐して加害者を殺すのは理解できます。でもモリアーティ自身は被害者でも何でもない、まったく関係性の無い相手を殺してるわけですが、この点は【倫理観】がかなりおかしいですね。Aから見て悪人に見える人でもBから見ればかけがえのない家族や恋人だったりするわけですし、善悪というのは視点を変えれば簡単に切り替わるあやふやなものです。
例えば、仮に、モリアーティが女の子と親しくなって好きになり、ある日、おじいちゃんが殺されたのと泣きついてくるとします。そのとき、自分が殺した相手の孫だと気づくモリアーティはどういう反応になるでしょうか?そういうことです。ただの人殺しでしか無いのに、このアニメは綺麗に描きすぎてる。

■いじめや差別と同じ
これ見て悪人が殺される展開がおもしろいと感じた人は倫理観がおかしいので善悪について学んだ方が良いと思います。そのおもしろいと感じる感覚はいじめや差別する人と同じ感覚です。それが、いじめや差別じゃないと思ってるのは本人だけ。調子乗っててムカつくとか、何で気付かないの?とか、性格がすごく悪いとか、いじめや差別をする側にもそうするだけの理由があります。本人にとってはそれが正義なんです。でも他人から見ればただの差別やいじめでしかない。それが正しいわけないだろ!と思えそうなことでも実はそうだったりします。人の価値観の違いというのはおもしろいですね。

そもそも悪役に見える貴族ですが、彼らにも殺人をするほどの何か理由があるかもしれませんし、殺された貴族の親や子供からすれば、復讐した側もただの復讐の対象でしかない。そういう冷静な視点で見ればモリアーティもやってることは同じ、ただの人殺しです。

本人に直接関係の無い相手への復讐や殺人や犯罪をアニメで描く際には、それは「悪いこと」だという印象付けが重要になります。悪いことだが国をよくするために成し遂げるみたいな、大義を目指しつつも殺した相手やその親類に申し訳ないと感じる気持ちを表現したり、自分はただの人殺しだと自虐的な重苦しい表情を見せるとか。それがこのアニメには一切ない。善悪を何も理解せずに、ただ人を殺してるだけの頭の弱い人にしか見えません。

■人物を悪く見せる描写が安っぽい
悪役を用意 → 解決 という展開が多いですが、人物を悪く見せる工夫が単純すぎて物足りない感じがします。汚い暴言や見下す発言を見せるだけだったり、殺人現場を見せるだけだったり。なんというか、善悪の基準が小学生レベル。もっと人の暮らしや悩みにどう影響を与えてるのか、実際にどんな被害が発生してるのか具体的な問題を描かないとおもしろくならないです。それモリアーティと何の関係があるん?という感じの悪人しか出てこない。自分に関係の無い所に首を突っ込んでへーいい人ですね、くらいにしか共感できないです。おもしろく無くは無いけど微妙な感じ、中身が薄いです。もっとモリアーティ本人に関係するような展開を描いてくれないとおもしろく無い。1話で消えて居なくなるモブキャラのドラマ見せるくらいなら、名探偵コナン見たほうが何倍もマシですね。

人間ドラマや感情の変化を楽しむアニメでもないです。

■貴族社会が悪いという作者の考えは間違ってる
社会に無くてはならないシステムが【貴族】です。その特権を悪用する一部の貴族が悪いだけですし、現代社会はその権力が集中しづらい構造に作り変えられたという点しか違いはありません。昔と今の違いはたったそれだけ。(詳細は6~7話感想に書きます)
というか、貴族を悪く描いてるけど、モリアーティさん、あなたも貴族じゃないんですか、とツッコんだら負け?貴族社会を無くした後は自分も平民に戻るのかな?

■以下、各話感想。
{netabare}
■1話、殺人犯をつきとめるモリアーティ
子供を殺された父親が最後に犯人を殺すのは理解できますが、被害者でも何でもない無関係のウィリアムたちが手を貸すのは何か違うと思いました。その点だけ見ればむしろウィリアムの方が悪人だし、ただの人殺しだし、まったく共感できなかったです。父親には共感できますがストーリーがテンプレすぎてふつうに面白いかなというレベル。
あと、証拠を残さない完全犯罪と口で言ってるだけで、何をどうやって完全に消してるのかが描かれてない。
静かな早朝にどうどうと表でタバコを吸うって、それ動いてるの自分だけで目立つし、タバコの煙も目立つし、犯行現場でそれはダメでしょう。

■2~3話、モリアーティの過去と秘密
まず、長男のアルバートがなぜ平民に肩入れするのかが分かりませんでした。最初からその違和感が頭から離れず、終わってみてもその理由が一切描かれていない。
例えば、小さいころから平民の子供と遊び、その友達や恋人が差別や虐待される様子を描くことで視聴者を共感させる、みたいなのがセオリーですが、そういった理由付けは一切ない。
貴族が貴族に囲まれて育つだけでは、平民との違いに気付くことも無ければ、嫌悪感を抱くこともありません。そもそもなぜ、孤児たちの住まいに訪れるようになったのか。
しかも家族を殺しますかねふつう?まったく理解できない。家族を殺すほどの理由付けが無いのにこの展開は無理があると思いました。
よくあるテンプレ設定をまねたのは良いけど肝心な部分が抜けてる感じですね。おもしろく無くは無いけど、微妙な感じ。

■4話、子爵とグレープフルーツ
助けなかった子爵は確かにひどい人間ですが、子供が死んだこととは直接的な関係は無いですし、命まで取りますかね?ただの逆恨みにしか見えませんでした。
例えば、1000万で助かる命があるとして、1000万くれないお前らは人殺しだ!と言ってるのと同じ。
子供が死んだのは村の医者が出かけて居なかったことが原因。もっと言うなら24時間医療体制の整っていない時代に病気にかかってしまったことが原因んですよね。
医療を受けられるのがあたりまえ、助けてもらえるのがあたりまえという考え方は、ぬくぬくと育った現代人だけの発想ですね。
それに復讐したところで子供が死んだ悲しみは消えませんよね。なのに、すべて解決したみたいな描写も不自然です。人の感情が単純に描かれすぎですね。全然違います。
人目に付く酒場で目立つ貴族の格好で屋敷の関係者と会話したり、茶会で殺人したり、どこが完全犯罪やねん!とツッコみたい。

■5話、貴族と平民の恋、騙されアヘンで錯乱して死亡
4話までは普通に面白かったのですが、今回は特にひどい。
おそらく元ネタは、貴族と平民のあいだに障害が沢山発生して乗り越えさせる様子を描き、視聴者を共感させる系の展開なのでしょうけど、このアニメにはその描写が一切ない。共感要素ゼロ。酒場の女がチラっと二人の出会いを語って終わり。これはひどすぎる。メインに描くべき部分を省略してどうでもよい部分を表に残した感じ。

■6~7話、ノアティック号、劇場殺人
「この国の歪みの原因は階級制度そのもの」これは全然違いますね。
貴族は民を他国から守ったり、国の経済を担ったり、人が住める環境に整えたり、社会に無くてはならいシステムが貴族です。その特権を悪用してる一部の貴族が悪いだけですね。

そもそも、昔の階級社会よりは権力が一か所に集中しづらいというだけで、現代の社会構造にもその名残はありますし、権力が集中しないわけではないですし、それを悪用することも可能です。「貴族」みたいな、一目で分かる目印が無いから表面化しづらいだけです。あるいは、それをあたりまえだと感じてしまっているだけです。昔の人たちにとってもそれは同じですね。生まれた時からあるシステム(貴族)に違和感を感じる人の方が少なかったと思います。一部の悪い貴族に対して嫌だなという感情があったとしても、それは具体的に何が悪いのか言葉にしたり、形にして表すのも難しかったんじゃないでしょうか。昔の人にとってはまだ存在しない新しい概念でしたから。人々にその新しい概念を理解してもらうのにもかなりの時間を要すると思います。「制度は変わりづらいけど、人の心は変わりやすい」いや、むしろ逆ですよ。人の考え方や常識ほど変えづらいものはありません。人の考え方を変えることに成功さえすれば、制度や法律なんてものは簡単に変えられます。

「可能性を一つ一つ潰せば真実にたどり着く」これも全然違いますね。
哲学や概念の話になるので説明は省きますが、そもそも可能性というのは次から次へと増え続ける際限のないものですから、一つ一つ潰したところで答えが一つには定まることはありません。どこまで突き詰めても絶対はなく「おそらく」としか言えません。

そういうのを上手くストーリー展開に時間をかけて丁寧に組み込んでる名作は結構ありますが、このアニメは一言二言で済ますだけだったり、理解が間違っていたり、ちょっと安っぽい感じがします。無理してカッコいいセリフとか使わない方が良いと思います。

■8~9話、シャーロック・ホームズ
シャーロック・ホームズというよりは、頭の悪いチャラチャラしたイケメンという感じ。
何でも見通せる人間はあんな風に表情豊かにならないと思います。起こる前に知ってるわけですから、起こるタイミングで表情が変わるのはおかしいです。すべてがあたりまえという表情やポーカーフェイスの方が似合うんじゃないかな。

■10~11話、列車殺人、モリアーティとホームズが協力して事件を解決
敵対関係なのか、仲良しなのか、二人の関係がちょっとおもしろいですね。
今回は、純粋な探偵アニメという感じ。被害者の状況から推理し、順に順にと筋道立てて分析し、どちらが謎を解決するのかという競争のような展開が良かったです。でもこういう展開、他でもよく見ますね。
{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 8
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6

目的は手段を正当化する

原作未読 そういえば原典も未読


 これはかの名探偵シャーロック・ホームズをすら翻弄した
 犯罪狂モリアーティ教授の物語


海外ミステリだとアガサ・クリスティは読んだことあるけど超有名なシャーロックホームズは未経験です。おおむね三毛猫ホームズ止まりな私。
その赤川次郎氏の連作『三毛猫ホームズ』だって数多あるオマージュ作品の一つ。アニメでも“家頭”と書いてホームズと読ませる京都の骨董品屋のお話をついぞ最近やってたり。ホームズの冠をつけなくても『ミシシッピー殺人事件』たしか助手の名はワトソン、と匂わせグレーゾーンを漂ってみたり。この二人の名前を出しとけば謎解きものであることを万人に共有せしめる現代用語の基礎知識。

とどのつまり説明不要な名作をモチーフにしてるわけで。そしてこの私。ホームズとワトソン君とベイカーストリート何番は知っているものの本作の主人公モリアーティは初耳。
知っていれば視聴前にもろもろ脳内整理できたかもしれません。あ、そういう人がいるのね~とニワカ全開で本編突入しました。

原典の挿絵みると禿茶瓶なおっさんですが、本編はそのおっさんの若かりし頃ということでブロンドイケメンになってます。こういうの元ネタ知ってると差分を楽しめそうですね。

 主人公の敵役で稀代の悪党の前日談

STARWARSのepisodo1であのダースベイダーの幼少期をかわいらしい少年が演じたのと同様に、人は無垢で生まれ何かのきっかけや積み重ねで進んではいけない分岐へと歩を進めた物語になってそうです。「なってそうです」と推定なのは分割2クールの前半だから。断定するにはちと早いのでお預け。
彼(モリアーティ)にとってのきっかけは『階級制がもたらす不条理』ということになるのでしょうが、そこの描かれ方を好意的か否定的かどのように捉えるかによって作品評価が分かれそうな印象です。私はやや好意的に捉えた側。来たる後半戦も観るつもり。

原典をご存じの方はその差分を探ってもよし
私みたいなニューカマーは100年前の英国の空気を浴びにいく心持ちでよろしいかと。

ちなみにタイトル『憂国のモリアーティ』。
どこらへんが憂国かをなんとなく理解できる仕様になってるのは好感です。
リスクを丁寧に潰していき真相に迫らんとする探偵ホームズと、完全犯罪をもくろむモリアーティ。方向や立場は違えどアプローチは似たようなもんだというツボもおさえておりますね。
奇抜さよりも丁寧な仕事。作中のライバル二人の仕事ぶりよろしく、アニメ制作もなんやら怪しいとこありますが少なくともきっちりやろうという姿勢はうかがえた手堅さを感じる一品となってます。


なお、CVさん歌唱の主題歌は映像含め楽しめました。
{netabare}ゴールデンカムイ尾形弟の役をされてた方ね。いい声だわ。{/netabare}



※ネタバレ所感

■目的は手段を正当化する

謎解きよりも稀代の犯罪者の生成過程に興味が向いた本作。スパイスとなるはイギリスの階級制度。

 なんでこの人そうなったん?

共感はできませんが説得力はあったかなぁ…。

{netabare}貴族階級の傲慢さへの怒り。それを許してる社会への怒り。根本となる階級制度の破壊を志向していくことになります。階級制度そのものについては長くなるので割愛。

受け取ったメッセージひとつは破壊志向、アナーキズムの限界といったらいいでしょうか。とある不満があったとして「それを破壊orガラガラポンしちゃえ!そしたら万事ハッピー」って発想は規模が大きくなるほど難易度が増し国家規模ではまず不可能。やらかしたら歴代とてつもない混乱を経て落ち着く以外に例外はなし。フランス革命もギロチン送りしてすぐ革命勢力は瓦解したでしょ? 明治維新だってガラガラポンに見えて禅譲だし、それでも鳥羽伏見や戊辰戦争が起こるくらい急激な変化には相応のハレーションがつきものです。現実は粘り強く改善するのが近道だったりします。
それ(地道な改善)を放棄したらこうなりました!がモリアーティだったかと。起点は“憂国”で理想をぶつ姿に魅力を感じるやもですが、実際の行動は崇高(仮)な目的と合致してません。しまいには目的そっちのけに見えてしまってるところが“あるある”だなぁと思って眺めてました。そのうち“貴族”だけがターゲットだったところから“労働者”に刃が向くんじゃねーの?と予想してます。手段が目的化することで本末転倒になる。その時のモリアーティ一派の心情の機微に注目したい。{/netabare}


{netabare}ふたつめは善意の思考停止。来たる後半ではモリアーティ家の義憤にかられたお兄ちゃんにも注目したい。冒頭、モリアーティと共謀し自分の家族をポアしちゃった少年です。高貴なお方がもつ富める者特有の後ろめたさからのダークサイド突入。西園寺公一や近衛文麿なんかそんな感じでしょ? 前者は意図的、後者は無自覚に国家を破壊へと導いたってのが一般的な見解です。ヘタに力があるだけに悪影響は絶大なのよね。
だからこのお兄ちゃんに「で、英国の階級制はどうなったん?」と当初の目的に関しての結果報告を求めたいですね。きっと答えられないか「道半ば。俺たちの革命はこれからだ」的回答になることでしょう。彼らが軌道修正する可能性はゼロに等しく、常に搾取されていると自己肥大化させ続けているのです。犯罪を正当化する理由なんてないのにね。

あくまでモリアーティ視点なので貴族階級層の人間が持つ良い点、ノーブレスオブリージュみたいなのに作品では触れてません。目が曇り見えないのかあえて蓋をしてるのか、おそらく両方あるのでしょう。
ノーブレスなんちゃら“持てる者の責任”と言われてピンとこないかもしれませんが、直近なら鬼滅の煉○さん思い出していただければよろしいかと。あれがノーブレスオブリージュの好例です。
さすれば少しは貴族層に好意的な視線も注がれそうですが、彼らがそうなることはなく、支配構造を終わらせるには、敵を倒し、社会を変えるしかないとの思考から抜け出せません。妥協したら引きずりおろされますからね。そもそも支配者階級と彼らが考えている層を“支配を維持・強化することしか考えていない悪人”と捉えています。となれば耳を塞ぎ純化の道まっしぐら。
そして倒した後のことは考えてません。“倒せば良くなる”それだけ。
後に控えるさらなる受難そっちのけで○獄さんに向かって「偉いんだからてめーが責任取れ!タヒんでこいや!」が基本姿勢の彼らに一般人はドン引きすることと同じです。{/netabare}


{netabare}最後みっつめは犯罪コンサルタントというポジション。いいですよね姑息で(笑) 当事者にならず批評家のポジションに安穏とする。ここはシンプルに“四列目の男”。モリアーティその人は、お遍路好き元総理のものすごく頭の切れるバージョンにしか見えなかった私でした。
だってすでにブロンドイケメンな若い頃にホームズと交錯していて、禿茶瓶になる程の年月を重ねるまで逃げおおせたわけでしょ?(適当) 改革を口では標榜しそれでいて矢面に立たない。いくらイケメンで弁が立とうが私は信用しません。

そこはしっかりと悪人に嫌悪感を抱かせる仕上げをしていたともいえ、キャラ設定よい感じでした。{/netabare}



階級社会へのアンチテーゼはまあよいとしてその解決に導く方法論が間違ってると思わせる一品。
だからこそキャラの口からあちら界隈の用語でいう“総括”を聞いてみたい。

 アンチ貴族社会の理念のもとに行動した結果有効打を打てたのだろうか?

そしてそのしどろもどろの言い訳をニヤニヤしながら「まあそのへんがきみらの限界だよね」と侮蔑する未来を想像しながらSっ気全開で待機します。
{netabare}…とここまで煽ったところで語られることはないでしょうね。逃亡/責任回避は彼らの常套ですから。{/netabare}



視聴時期:2020年10月~12月 リアタイ   

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2021.02.28 初稿
2021.09.30 修正
2022.06.02 修正

投稿 : 2024/05/04
♥ : 42

えたんだーる さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

もちろん、あのモリーアティです。「憂国」は、なるほどそういうことなんですね…。<シャーロック・ホームズ>シリーズのメインキャラクターが軒並み登場!

[総評]
お話は<シャーロック・ホームズ>シリーズのジェームズ・モリアーティが何を同期に事件を起こしたかという観点の二次創作ものです。

ウィリアム・ジェームズ・モリアーティのやっていることは「毒を以て毒を制す」じゃないですが、素直に「ダークヒーロー物」と思うのか、それでも「社会秩序を破壊しようとしているテロリスト」と思うのかは視聴者の価値観にもよりますよね。

「貴族がやっていることが横暴だから民衆のために制裁する」というのは崇高な理念とも捉えられますし、単に彼が楽しみたいだけのお題目なのかもしれません。

もっともシャーロック・ホームズの側も、名探偵ではあっても必ずしも人格者であったり正義の味方であったりはしないわけで、謎に挑みたいという欲求を表に出しているぶん正直な人だとは言えます。

とりあえず二人の関係については、才能を持つ者同士が違う立場に立った結果として対決するというまさに「ライバル関係」といえるんだと思います。

物語は必ずしも勧善懲悪である必要はないので、フィクションをフィクションとして楽しめるのであれば本作を面白いと思える素養は充分にあると言えそうです。

== [下記は第4話まで視聴時のレビュー: 以下、追記あり。] ==
第4話まで視聴時点でこのレビューを書いています。

コナン・ドイル作の「シャーロック・ホームズ」シリーズにおいて、「犯罪卿」として名を馳せるジェームズ・モリアーティ。

本作はそんな彼が「犯罪卿」となる動機として十九世紀末のイギリスにおける階級格差の解消を掲げる、異色のクライムサスペンスです。

ジェームズ・モリアーティに兄弟がいるという設定は「シャーロック・ホームズ」シリーズから引き継がれたものですが主人公ウィリアム、兄アルバート、弟ルイスの名前は本作オリジナルのものですね。

当然ですが主人公ウィリアム・ジェームズ・モリアーティは犯罪を仕掛ける側です。基本的には特権階級に属さない「被害者」がただ揉み消されてしまう悲嘆に明け暮れているところを「クライム・コンサルタント」としてウィリアムが復讐をサポートするというストーリーであるようです。

第1話ではストーリーのテンプレートとして労働者階級や貧民の少年たちが巻き込まれた猟奇事件の犯人の特定と、被害者の父親による復讐をウィリアムがサポートする様を見せてくれました。

第2、3話の前後編ではクライム・コンサルタントとなるに至ったジェームズ・モリアーティ三兄弟の生い立ちが描かれ、第4話では使用人に恨みを買った子爵が復讐される様が描かれました。

ということで作品との相性は概ね第3話か第4話まで観れば判断できると思います。私は結構面白いと思っているので、このまま視聴継続予定です。
== [第4話まで視聴時のレビュー、ここまで。] ==

2020.12.3追記:
第8話まで視聴終了。サブタイトルは「シャーロック・ホームズの研究 第1章」で、これは元々の「シャーロック・ホームズ」シリーズの第1作『緋色の研究』へのオマージュなんでしょうか。

第6話でのシャーロック・ホームズに続いて、ついにジョン・H・ワトソン登場です。人名は小説準拠のようですが、事件自体はいろいろとアレンジされている模様。

2020.12.8追記:
第9話まで視聴終了。ラストのカットでのワトソンの日記(?)の開かれたページの左上には「A STUDY IN SCARLET」の文字(原作のタイトル: 邦題『緋色の研究』)が書かれていましたね。

2020.12.29追記:
最終2話(第10、11話)で前後編を持ってきました。ウィリアムとシャーロック・ホームズが直接対面するストーリーでしたね。

二人が互いに興味を深めて、さらにストーリーには王室関係の何かがありそうな描写で2021年4月から予定されている第2クールへの良い助走だったと思います。

投稿 : 2024/05/04
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