未来で短編アニメなおすすめアニメランキング 4

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早速見ていきましょう!

69.0 1 未来で短編アニメなアニメランキング1位
On Your Mark(アニメ映画)

1995年7月15日
★★★★☆ 3.7 (189)
987人が棚に入れました
劇場版アニメ『耳をすませば』と同時上映で公開された短編アニメで、同映画の制作スタッフだった宮崎駿が監督を務めた。内容は、人気アーティストであるCHAGE and ASUKAの、アニメ映像を用いたプロモーションフィルムである。 汚染が進み、地表に人間が住むことは叶わなくなった未来の地球。カルト教団を殲滅するべくその本拠地に突入した武装警官隊は、施設の奥深くに翼の生えた少女を発見した。その姿から何かを感じた警官二名は、彼女を空へと返すために行動を開始する……。 企画自体はアーティスト側からスタジオジブリに持ち込まれており、本来はコンサートツアーのオープニングフィルムとして制作されたものだった。その完成度の高さから、万人の目に触れるようにと発表されることになったのだ。
ネタバレ

renton000 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4

7分弱を真剣に見る

 初見でした。7分くらいのミュージックビデオ。
 他の方のレビューがきっかけとなって視聴しました。
 最初に通しで見たときは、何が何やら分からないままに、あっという間に終わってしまいました。2回目以降は、一時停止しながら見ていたんですが、結局かなりの時間を費やしてしまいました。30分以上はは確実に画面とにらめっこしていました。

 相当面白い作品です。宮崎駿監督が描く、清々しくも悲しい世界を堪能できます。短編にもかかわらず、長編と遜色ないメッセージ性があります。時間も短いですし、何回でも何十回でも見て、ストーリーと世界観を把握することに努めてみると、この作品の良さを知ることが出来るのではないでしょうか。理解するためには、一時停止が必須レベルです。

対象年齢等:
 音楽や雰囲気を楽しむためならどなたでも。解釈をするのならば、最低限の知識は必要とされますので、子供には難しいかもしれません。中学生か高校生くらいからがいいと思います。

 以下のレビューは、かなりのネタバレです。未視聴の方は、一度以上視聴したうえで読むことをお勧めします。というか、余計な先入観を持たないように、ネタバレ耐性があっても読まない方がいいと思います。


結局どんなストーリー?:{netabare}
 あるカットの解釈に明確な結論を出せていないために、そこで分岐する二つのストーリーを挙げます。
 一つ目は、「助けられなかった翼の女の子を助けることを想像する話」です。
 二つ目は、一つ目を前提に「翼の女の子すら想像だったという話」です。
 個人的には、二つ目だと思っているのですが、ここではその原因も結論も述べずに、後述することにします。ただ、どちらもこの作品の大半が想像により成り立っているという姿勢は変わりません。翼の女の子が亡くなっていると解釈しているのも同様です。以下の考察では、一つ目を前提として進めていき、最後に二つ目の解釈を追加します。
{/netabare}

世界観:{netabare}
 この世界は、原発がメルトダウンをした後の世界です。核戦争後ではありません。正確に言うとするならば、メルトダウン後にも原発に依存している世界です。根拠となるカットを挙げておきます。

①オープニングに描かれている草原と朽ちた鉄線、無人の民家、民家の後ろの巨大な建物
②頻出する放射能のハザードシンボル
③重装甲の車両
④人類の居住空間が地下になっている
⑤居酒屋のメニューで、合成食料が安く、天然ものが時価となっている
⑥地上にたくさんの原発が並んでいる

 ハザードシンボルといくつかの標識から、地上に人が住んでいないことが分かります。人が住んでいないために手入れがされず、草が生い茂り、鉄線が朽ちています。民家が壊れていないのは、爆発性の災害(核戦争・核爆弾)ではなく、放射線の影響だけがあるからだと思われます。
 民家の後ろにある巨大な建物は、おそらくメルトダウンした原発です。原発がメルトダウンを起こしたために周囲を塗り固められた姿です。いびつな形で塗り固められているのは、その際の緊急性と人間が味わった恐怖の表現なのかもしれません。
 地表が汚染されてしまったため、人類は地下に逃げ込みました。耐放射線の装甲車でなければ、地上には出れなくなっています。また、海も汚染されています。安全な天然食品が貴重になり、やきとり・めざしが時価になっています。合成の塩サバとバイオ酢だこは比較的安価に食べられるようなので、人工的な食料の生産体制は確立されているようです。
 地下世界にもかかわらず、電気が煌々と灯されています。また、食料の生産も潤沢に行われているようです。これらを支えるエネルギーはおそらく複数の原発によるものです。
 人類は、原発の恐怖を知ったにのも関わらず、原発の依存から抜け出すことは出来ませんでした。

 こんな感じだと思います。地上の民家に比べ、地下世界はかなり広大で、かつ、発展しています。つまり、地下に進出してから長い時間が経過しているわけです。地上の別の場所に避難しているのではなく、地下の生活が基本となっているってことです。一基の原発がメルトダウンして、地上の全てが壊滅状態ということは考えづらいので、多数の原発がメルトダウンをしているのかもしれません。翼の女の子が飛び立つ最後のシーンで、もう一基塗り固められた原発が写っているように見えます。メルトダウンをした原発は、海洋汚染が進まないように最低限の封印を施して終わりにしているのではないでしょうか。
{/netabare}

二人の男と彼らの現実:{netabare}
 二人の男は、主題歌を歌っているチャゲとアスカだと思われますが、先入観を除くためグラサンとイケメンと呼称します。この二人は警察の中でも下っ端の存在だと思います。ほぼ最下層と言っていいと思います。根拠は二つです。
 一つ目は、地上のパトロール的な任務に就いていることです。世界観で述べたように、地上は汚染された世界です。そこに行く仕事をしていることから、相当下位の立場であることが伺えます。
 二つ目は、指揮官ではなく、戦闘の最前線に立っていることです。前線のどの位置にいたかというと、突入の先端を担う戦闘のエリートではなく、そのあとからついていく補助的な役割だと思われます。

 おそらく初陣だったのでしょう。凄惨な現場にショックを受けてしまったのが彼らです。兵士が女性を持ち上げて死亡を確認するシーンがありますが、この時に部屋の外から部屋の中を見ていたのがこの二人だと思われます。このシーンでは、背後は光で満ちています。つまり、光の世界にいたと思っていたけれど、現実の闇の部分を見てしまったという描写です。

 ここまでが実際に起こった現実のシーンです。つまり現実はパトロールと襲撃と飲み屋だけ。それ以外は想像の中の世界です。
{/netabare}

翼の女の子:{netabare}
 彼女が亡くなっているのは確定だと思います。
 注目すべきは、彼女が初めて登場した時のカットです。壁を見て欲しいのですが、頭の高さの位置くらいのところから、床の位置まで何かの跡があります。その先にあるのが翼の女の子の頭で、その手前に赤い缶が転がっています。
 このカットでは、赤い缶以外の色が消されています。つまり、赤い缶に注目してくれというメッセージが込められています。赤い缶はコーラだったわけですが、当たり前ですがこれがメッセージのはずがありません。見ろと指示したところにメッセージがないんです。
 これは、「メッセージを隠しましたよ」ということがメッセージになっているんです。「赤い缶で隠しましたよ」というメッセージです。
 赤い缶によって隠されたのは何か。それは「血」です。赤い缶によって「血」を隠したんです。壁の跡も、赤い缶も「血」を描いているけれど、それを隠している。つまり、彼女の「死」を隠したというわけです。壁の跡と頭と赤い缶を直線に並べているのも、血の流れを暗喩しているからです。イケメンが彼女に近づき、死を確認するときには、周囲の色が復活しています。「死」を隠す必要がなくなったから、色が戻ったというわけです。翼の女の子の頭の周りは、赤いもので満ちています。

 他にも根拠はあります。
 宗教ビルの目のマークが動いていますが、これも目を見てくれというメッセージで、死んだ女性と翼の女の子の目の類似性(生気のない目)をアピールしているように思えます。瞬きをしていない彼女らは、死を担っているというです。
 翼の女の子が水を飲むシーンがあります。このシーンでは、胸が大きく動いています。これは鼓動が復活した、つまり、生き返ったという表現です。
 また、装甲車に翼の女の子を乗り込ませるシーンでは、ぞんざいに扱われ、脚が出てしまっています。生きていることを前提とすれば、このような雑な扱い方をするはずがありません。しかも、翼の女の子の身体が固いんです。くてっとならずにピンと張っている。これは死後硬直の描写です。
{/netabare}

襲撃後の展開:{netabare}
 翼の女の子の死亡の描写後に繰り返される映像は、想像のものだと述べました。単に想像しているというよりは、イケメンが考え、口に出したことについて、グラサンが現実的な指摘をすることで、想像の世界をより現実的に修正していっているのだと思います。つまり、会話の映像化です。この作品はミュージックビデオなので、会話をさせることが出来ません。そこを逆手に取ったのだと思います。
 イケメンが話しているのは、「あの翼の女の子がもし生きていたら」という内容です。このイケメンの考えに対して、グラサンが現実的な指摘(否定)をするたびに、想像が頓挫しています。何度も会話を続ける中で「翼の女の子が助けられる出口」を探しているのだと思われます。

 想像だと確信できる理由は、「素顔」です。イケメンとグラサン以外の人物はマスクをしているか、防護服を着ているかで、顔を出していません。つまり、危険な環境下にあるということです。そんな中で彼らだけが素顔を晒しているのは、危険がない想像の世界にいるからです。

①最初の想像は、翼の女の子の死を確認した後すぐに入ります。飲み屋のシーンが出てきていませんが、このシーンから既に想像に入っています。
 このシーンで描かれているのは、「理想」です。「もし死んでいなかったのならば、逃がしてあげたい」というイケメンの「理想」だけが描かれています。地上の背景を見て欲しいのですが、原発など描かれておらず、美しい自然の風景しかありません。翼の女の子も満面の笑顔です。これはイケメンの「理想」だからであって、現実が一つも介入してきていないということです。

②次の想像は、グラサンに「生きていたとしてどう助けるんだ」と指摘された後です。生きていたとしても、周囲にばれずに逃げることは出来ず、連れて行かれてしまうだろうという現実が入ってきています。

③「連れて行かれたのならばその場所から救出すればいい」と展開したのがその後のシーンです。グラサンが解除装置を作り、イケメンが場所を探し当てるという分担をしています。イケメンの周囲に花束が写っていますが、この世界では花自体が貴重なはずです。これも想像の中だからだと思います。もちろんチャゲアス人気のメタファーでもあるでしょう。
 施設に侵入した際には、ハザードシンボルを背に制服で悠々と歩いていますが、グラサンに「さすがに防護服はいるだろ」と指摘されたのだと思います。服装が突如防護服に変わります。
 防護服を着た職員が、風船のように膨らんだだけで倒されてしまうのは、そういう物質を注入したというよりは、「凄惨に人を殺したくない」という戦闘後の心理が影響したためだと思います。
 その後、装甲車に乗って地上に出ようとしますが、ここでグラサンの「追手が来るだろう」という指摘がなされて、作戦は失敗へと帰着します。
 翼の女の子の目や身体に生気がないのは死亡しているためで、彼女が一人で逃げずに懸命にイケメンを助けようとするのは、イケメンの中の彼女はあくまでも理想像であり、彼女を純真なものとしか捉えていないからだと思われます。自分たちを見捨てないだろうということです。また、テーマとも関係します。

④どう考えても成功しないため、ここで一旦当初の目的を思い返すカットが入ります。
 その後の想像で、装甲車が飛行機能を有するようになりました。現実的には救出が不可能だと悟り、当初の目的を達成するためにやや空想側へ寄ったのだと思われます。そもそも装甲車に飛行機能が付いていたのならば、③の時点で飛行していたはずです。飛行した装甲車が事故を起こすのは、グラサンの「飛ばし方が分からない」という現実的な指摘が入ったためでしょう。グラサンが重たいであろうタイヤを蹴飛ばせているのも空想の側面が強くなっているからだと思います。
 そして、オープンカーに乗って地上へと到達します。オープンカーの奪取シーンがないのは、地上が汚染されたこの世界にオープンカーが存在し得ないためか、少なくとも下っ端にはどこにあるのか分からないためでしょう。分からないから考えていないのだと思います。トンネル内で追手がかからないのも、空想に寄ったためにハッピーエンドを急いでいるからです。
{/netabare}

エンディングとテーマ:{netabare}
 ④のトンネルを抜けた先からがエンディングということにします。
 ①(④の当初の目的を含む)の理想とエンディングの描写の同異点を見て欲しいんですが、ここの変わったところと変わっていないところがテーマになりそうな気がします。

 変わっていないところ。翼の女の子が生きていることとオープンカーは変わっていません。あと、翼の女の子が遠くへ飛び立ってしまうのも変わっていないですね。
 翼の女の子は、地表に出て初めて目に生気が宿りますから、汚染された世界でのみ生きていける存在です。オープンカーは、人間にとっては、汚染されていない世界でのみ走れる車ですから、意義としては両者は真逆にあると思います。それの両立を目指している、つまり「叶わぬ夢」です。だから、彼女は遠くに飛び立ってしまうのではないでしょうか。

 変わったところ。背景を比較してほしいのですが、①は美しい自然の風景です。エンディングではトンネルの出口周辺の汚染とドライブ中の背後の原発が描かれています。それと翼の女の子の表情が、満面の笑顔から憂いを含んだ笑みに変わっています。ウインクと指へのキスが追加されています。
 背景の補足をすると、オープニングにもエンディングと同じ表現があります。車が通ったところは草がなく、人が入れないところは自然があふれています。人の通行はないはずですから、本来道は轍として描かれるべきだと思いますが、そうは描かれていません。
 このオープニングとエンディングの背景から考えられるのは、「人の近くからは自然が無くなる」ということだと思います。翼の女の子も、人ではない自然側のイメージを担っています。だからこそ、飛び立ってしまうとも考えられます。

 で、これらの要素が集約されたのが翼の女の子の憂いの笑顔です。
 地上が汚染され、自然から隔離され、人間は地下へ逃げ込み、人を守るはずの警察が暴力をふるう。そんな閉塞の世界を自分たちで作っておきながら、夢を捨てることが出来ない。彼女の笑顔は、そんな人間に対して向けられた笑顔です。慈悲ではなく、憐みの笑顔だと思います。
 想像の世界だということを踏まえれば、二人の男が光を背負って闇を見てしまったときに、人間のエゴとか業というものに気付いてしまった。そんな話だと思います。
 ウインクと指へのキスが意味するところは挨拶だと思います。夢や理想との出会いと別れ、両方の意味が含まれているのではないでしょうか。

 タイトルの「on your mark」も、「位置について、よーい、ドン」の「位置について」なわけですが、「やっと現実というスタートラインに立った」みたいな意味かもしれません。オープンカーは最後に道を外れるわけですが、彼らは夢とか正義を求めたら道を外れる(死んでしまう)世界に生きているわけです。想像の世界でしか夢を語れない彼らは、日常に戻って淡々と日常を送ってから死ぬのか、将来革命家になって死ぬのかは分かりませんが、現時点ではスタートラインなんだと思います。まだ走り出してはいないんです。翼の女の子の憂いの笑顔は、そんな二人への憂いでもあると思います。
{/netabare}

二つ目のストーリー:{netabare}
 簡単に。初めて翼の女の子に会うシーンなんですけど、部屋に入るときにイケメンの姿が半透明なんです。つまり、もしこんな部屋があったら、という想像なのではないかと考えられます。
 兵士によって生死の確認をされた女性と翼の女の子の類似点で、目を挙げましたけど、ぞんざいに扱われていることも共通するんですよね。持ち上げ方と車への押し込み方。現実で見たものが想像の世界に影響してしまったのではないでしょうか。この作品で、素顔を晒している人物、つまり、アイデンティティを持った人物は、二人の男と女性と翼の女の子だけですし、女性の顔を見てしまったから、助けてあげたくなってしまって、この女性を翼の女の子に仕立てて想像を始めた、と展開したように思えたりします。
 もう一つ深読みすれば、女性が持ち上げられているのって、背中なんですよね。その位置から自由の象徴である翼を生やしたのが、翼の女の子なのではないかな、みたいに思ったんです。持ち上げられたシーンと翼の女の子の出会いのシーンにおける近影は、同じ構図のようにも見えます。この辺はちょっと深読みが過ぎるかもしれませんけどね。
 最初の直観がこっちだったというのもあるし、エンディングを見たら「理想なんか叶うわけねぇだろ、それでも夢を見るもんだ」、つまり「翼の女の子が幻想であっても、助けたくなるんだ」と言われた気がしたのもあるし、個人的にはこちらの解釈を押したいですね。ここまで状況証拠が揃えば、あながち突飛な意見でもないと思うのですが、いかがでしょうか。
{/netabare}

投稿 : 2024/05/04
♥ : 11
ネタバレ

ようす さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8

On Your Mark―ここには宮崎駿監督からのメッセージが隠れているのかも。

1995年、「耳をすませば」と同時上映されました。

「ジブリ実験劇場」という副題がついたこの作品。

最初は「どういうことだ??」と思いましたが、
なるほど、繰り返し観ているうちにその副題の意味がわかった気がします。

この作品、繰り返し観ないと意味がわからないでしょうね。
映画館では当然一度しか流れなかったでしょうから、
お客さんにはどよめきが起こったことでしょう(笑)


● ストーリー
舞台は近未来。

放射能によって地表が汚染されたため、
人類は地下で生活をしていた。

警官の男2人は、襲撃したオカルト教団のアジトで
天使の少女と出会う。


CHAGE and ASKAの曲「On Your Mark」の
プロモーションフィルムとして制作されたため、
作中の台詞は一切ありません。

音楽に合わせて映像が流れるだけです。
(効果音はあります。)

主人公の警官2人のモデルはCHAGE and ASKAの2人です。


およそ7分の作品。

ちゃんと映画1本分作れそうな設定や構成を持っているので、
ストーリーはものすごく駆け足です。

こちらの想像と理解が追いつかないほど目まぐるしいです(笑)

しかし、意味不明ではないですし、展開が急速な分、
ものすごく内容に惹きつけられます。

細かい描写がカットされていることもあり、
この作品が一体どういう話なのか、解釈は観る人によって変わるでしょう。

私も初めて見た時と、繰り返し観た今とでは
随分解釈が変わりました。


≪ 私の解釈 ≫
*ここからは作品の構成について触れます。

この作品の場合、
いろいろな解釈を知れば知るほど楽しめるところもあるので、
未視聴の方も興味があれば開いてください。
(ネタバレはしていませんので。)

まっさらな気持ちで視聴したい場合はとばしてください☆

{netabare}

初めて見た時には、
構成に疑問を感じました。

宮崎駿監督のことだから、
いろいろなことを考えて構成を作っているのだと思うけれど、

途中で未来の描写が挟まったり、
時間が過去に戻って別の展開が続いたり。

混乱しました。

これによる私の解釈は以下の通り。

◆世界にはいくつかの未来があるということを示唆しているのか。

◆天使やオカルト教団の不幸な境遇と、
 天使や教団の人一人ひとりに待っていた(はずの)明るい未来を対比させ
 ているのか。

◆目指す未来への道程は一つじゃないことを言いたいのか。

◆「実験劇場」だから、いろいろなパターンのラストや演出を
 考えていて、それを音楽に合わせてつなぎ合わせたのか。


ネットでも少し検索をしてみたのですが、
やはり人によっていろいろな解釈がありました。

一つのストーリーのように見えて、実は三部構成であり、
精神の発達が異なる3つの人生を意味しているのだ、
という解釈もありました。

説得力があり、それもなるほどなーと思いました。

{/netabare}


この作品を長編化する、という話もあったそうです。
長編化されてしっかりとしたストーリーを観てみたい気もしますが、

私は7分のこの構成だから、
この作品の良さが味わえると思います。

観る人によって様々な解釈がなされている本作品。

自分なりの解釈を探すのが好きな人にとっては
うってつけの作品と言えるでしょう。

時間も短いから、
とことん見返すことができますしね。

そして自分なりの解釈を深めたり、
他の人の解釈から新たな発見を得たり、

そういう無限の楽しさと可能性をこの作品は持っています。


それにしても、自分の生き様を貫く!という
かっこいい役のモデルとなっておきながら、
現実では今や犯罪者。

2次元の理想と3次元の現実との壁は
なんと高くて冷たいものなのか…。


● まとめ
『On Your Mark』とは、
『位置について』という意味。

この作品は完結しているように思いますが、
実際はそうではないのかも。

主人公の警官2人にとっても、私達にとっても、

あなたの行動から未来は少しずつ作られているのだという、
宮崎駿監督からのメッセージなのかもしれませんね。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 22

nyaro さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3

アニメはさすがのジブリ。ただ意味不明です。

 この作品の登録があると思いませんでした。本作はジブリがいっぱいに収録されています。もともとはチャゲ&飛鳥のPVで6分ちょっとの作品です。
 DVDは3000円くらいなので簡単に手にはいりますが、一応アニメオタクとしてチェックしていますが、1,2回見ればいいでしょう。無理に手に入れるほどではありません。本レビューは記録みたいなものです。

 アニメの出来はさすがのジブリでした。細部の作り込みや世界観が素晴らしいですね。1995年ですからエヴァの年ですね。絵柄は違いますが絵具か技術の関係でしょうか。アニメの色の雰囲気はどことなく90年代後半独特のエヴァと共通する感じがあります。

 正直内容は訳がわかりません。冒頭から核のマークがあって、原子力発電所があるので地上が放射能に汚染されているのはわかります。人類は地下世界にもぐりこんだのでしょう。

 宗教施設のようなところを警察が襲撃します。どちらに正義があるかわかりません。残虐性は警察ですが、宗教施設の雰囲気もかなり怪しいです。
 そこに鳥の翼をもつ少女がいます。何者なのか、どういう理由でそこにいたのかもわかりません。宗教の神なのか、捕らわれた人造人間の実験体なのか。放射能の世界観なので突然変異…というには奇麗すぎますね。

 まあ、少女が最後に自由になるので、捕えていた宗教施設側も正義はなさそうですね。つまり人類全体にどこにも正義がなくなったディストピアなのでしょう。

 チャゲ&飛鳥扮する警察官2人がその翼をもつ少女を奪取します。逃亡し外の世界に連れて行こうとします。ここで不思議なのは、一回失敗して途中で時間が巻き戻っているような感じなんですよね。これが意味するところも解りません。パラレルワールド?タイムリープ?心象風景?

 とにかく翼を持つ少女を外の世界に連れて行き、空に放ちます。少女は嬉しそうに雲の向こうに去ってゆきます。放射能で汚染された世界だとしたら、少女に未来があるかわかりません。地下世界もかなりくたびれた荒廃した感じがあります。人類が滅びの時を迎えているのかもしれません。

 オンユアマークという歌の歌詞を確認したましたが、あまり関係なさそうですね。結局意味はわかりませんが、人類の黄昏がテーマなんでしょうか。
 ナウシカの冒頭の絵巻物、背中に羽がある少女を連想する人は多いでしょうが、関係は不明です。放射能の汚染された世界で人造人間だとしたらあるいはと思いますが、だからどうした、という感じですね。






 

投稿 : 2024/05/04
♥ : 7

61.0 2 未来で短編アニメなアニメランキング2位
ペイル・コクーン(OVA)

2006年1月18日
★★★★☆ 3.5 (187)
833人が棚に入れました
アニメーション監督吉浦康裕の個人制作作品。舞台は遙か未来の地球で、世界は姿を大きく変えていた。どこまでも続く廃墟の世界。海や大地はすでになく、風景は廃墟から発掘される記録の中で見られるだけだった。それら記録を発掘・復元し、過去の世界を分析する""記録発掘局""。そこで働く主人公のウラはあるとき奇妙な映像記録を復元するのだった……。個人制作のレベルを超えたクオリティ、SF的な世界観などよく作り込まれている。膨大な記録をブラウジングするインターフェイスなど、見るべきところはストーリー以外にも豊富。また、背景を手書きと3DCGの混合で行うおもしろい手法から生まれた独特のタッチにも吉浦康裕の味が出ている。
ネタバレ

Witch さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

「30分SFアニメ」の弱点を逆手に取った秀逸な展開

【レビューNo.16】(初回登録:2023/1/8)
「イヴの時間」のレビューを書く過程で視聴。忘れないうちにレビュー。
本作は吉浦康裕の「商業アニメ」デビュー作となる、30分アニメです。(2005年の作品)

(ストーリー)
・地球は自然環境の破壊により、人類が地上で住める環境ではなくなってしまった。
 そのため地下に居住空間を建設し、そこで暮らしている。
 その閉塞空間の中で物語が展開していく。
・主人公は「記録発掘局」の職員。この世界は「過去の世界」の記録データが断片的に埋没しており、
 それら記録データを発掘・復元し、過去の世界を分析していくのが本局の仕事。
 彼は記録データの復元業務を担当。

(評 価)
・製作者の溢れるSF愛
 この作品を観て最初の率直な感想は、「吉浦康裕って本当にSFが大好きなんだなあ」。
 単にそれっぽい画を描いてあるからってだけでなく、作品全体から受けるSFの空気感が凄い
 っていうか・・・(ある意味SFオタのこだわり的な?)
 「日ごろからこんなことばっか考えてるんだろうなあ」ってのが滲み出てる感じですかね(笑)。

・視聴者側の補完がかなり必要な作品
 次に感じたのは「30分のSFアニメを作る難しさ」です。
 SFなのでまずはその舞台設定から説明する必要があります。それをしながら本筋の物語を展開して
 いく。全然尺が足りません!!だから視聴者側でいろいろ補完してやる必要があります。
 まさに視聴者がこのアニメから情報を汲み取り解析していくという「記録発掘局員」のような作業を
 していく感覚ですね(笑)。

・上述弱点を逆手に取った秀逸なストーリー展開
 逆にいうと、「この謎の閉塞空間は一体何なのか?」から始まり、いろいろ考えながら少しずつ世界
 が広がっていく面白さがあり、物語に引き込まれていく感覚があります。
 以下特大ネタバレw(できれば読まずに視聴することをオススメ)
 {netabare}
  ・本(紙媒体)の存在を知らない世代って・・・
  ・そもそも「記録発掘局」の目的って何なの
  ・そこに生きる人々の絶望感
  それらの積み重ねを経て、ラストで「閉塞感漂うこの世界からの解放」までの展開は本当に秀逸。{/netabare}

上述の通り視聴者にかなり負担を求めてくるので、好き嫌いがはっきり分かれる作品となるでしょう。
それに娯楽性も乏しく地味だし・・・
しかし「30分のSFアニメってどんなものなの?」と興味をそそられた方は、観ておいて損はない
作品だと思います。
あとwikiで紹介されていた
「この作品の制作中に公開された新海誠の『ほしのこえ』の影響を受け、自分が考えていた以上に商業
 ベースにやらないとダメだと思いに至った」
のエピソードが興味深く、のちの「イヴの時間」に繋がったのかと思うと感慨深いものがありますね。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 5
ネタバレ

ねこmm。 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

蒼く美しいテラ  【ねこ's満足度:70pts】

今よりずっとずっと遙か遠い未来。
環境破壊により廃れた世界に生きる人類は、深い地中へとその居場所を移していた。
そんな中、過去の記録を発掘・分析している主人公ウラは、復元データのある奇妙な点に気づく……。

『イブの時間』の吉浦康裕監督による自主制作アニメ。
かなり叙情的なので、どちらかというと雰囲気を楽しむタイプの作品のように感じます。
無機質で退廃的な色使いと、モニターからこぼれる光とのコントラストがとても印象的でした。

メッセージ性はとても強く、それでいてわかりやすいテーマなので受け入れやすかったです。
作り手の言いたいこともすごくよくわかるし、実際色々考えさせられもしました。
ただ、ありふれたテーマだけに、できれば作品としての”その先”を観てみたかった気もします。
それでも、そこに至るまでのストーリー展開や演出には惹きつけられるモノがありました。
{netabare}特に終盤プロモーションVの音楽が流れる中、主人公が地上へと辿り着くシーンはお気に入りです。{/netabare}

ちなみにDVDの特典映像には「もう一つの発掘記録」なるものが。
ほとんど文字ばかりの映像ですが、こちらを観てから本編を見直すとまた違う一面が見えてくるかも?



☆おまけレビュー☆
『水のコトバ』
同監督により2003年に発表されたわずか9分の自主制作アニメ。
本作のDVDに特典として収録されていますが、個人的にはこちらの方が好みでした。

舞台はとある喫茶店。
別々に展開する3組の会話が、実は1つの物語として繋がっている……といった内容です。
演出やBGMが醸し出す空気感がとても心地い作品なのですが、見所はやはり”コトバ”遊び。
そしてそれは、1度めよりも2度目、2度目よりも3度目と、観る度にその味わいを深めていきます。

少なくとも3回は繰り返し視聴することをオススメします。きっと観る度に新たな発見があるはず♪



ペイル・コクーン【ねこ's満足度:65pts】
水のコトバ【ねこ's満足度:75pts】

投稿 : 2024/05/04
♥ : 29

takumi@ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1

「イヴの時間」の吉浦監督が手がけた切ないミライ

「イヴの時間」でおなじみの吉浦康裕監督、脚本、制作。
2005年に公開された約23分のアニメーション作品。

歴史という名の記憶が、どこかで途絶えた・・
そんな言葉から始まるこの作品。
舞台は今現在よりずっとずっと遥か未来で。

色合いは限りなくモノクロに近い、極力彩度を抑えたセピア調。
エコノミー症候群になりそうな窮屈さを感じさせる仕事場で、
主人公がみつめているのは、2000年の頃の地球上の風景。
周囲の色彩が沈んでいるせいもあり、その風景の色は眩しく、哀しいほどに鮮やか。

記録発掘局 復元課。
これらの画像から復元するのが彼の仕事。
記録の残骸、過去をさかのぼる唯一の手がかり。
そこにあるのは、太陽光がまださえぎられていない頃の記録。

記憶や記録を探りつつ下層へと行く彼の姿や
最下層には海と呼ばれ多くの人間達がしがみついているエリアが
あるということに、海と人間との因果を感じずにはいられない。

変わらないで欲しいと思うから記録を残すのだとしたら、
変わってしまった今、それはあまりにむなしくて。
たとえそれが遥か太古の風景だったとしても、
写し撮った時の、人の想いは真実そのもの。

緑色の世界があったこと。 青い地球があったこと。
それを壊してしまった人間の愚かさを、これ以上見たくない。

そんなむなしさに、復元課の人間がどんどん減ったという事実。
その事実は、今現在の人間である自分からすると嬉しくもあり、
そんな未来がこの先あるとしたら・・なんて考えると
やはり彼らと同じように虚しくて。

後半で流れる歌 『蒼い繭』(あおいたまご)
とても穏やかで素敵なメロディなのだけれど、
蒼い地球を詠ったその歌詞は、とてもせつなかった。
もし、地球が繭になるようなことがあったら、
ぜひいつかまた、再生して欲しいものだ。

余韻の残るラストも、とても考えさせられ、
きっと何度か繰り返し観ると、さらにいろんなことに気づけそうな作品です

投稿 : 2024/05/04
♥ : 48

72.0 3 未来で短編アニメなアニメランキング3位
帰ってきたドラえもん(アニメ映画)

1998年3月7日
★★★★☆ 3.9 (60)
451人が棚に入れました
人気アニメ「ドラえもん」の映画版第19弾「のび太の南海大冒険」と併映された短編アニメ。未来の世界に帰ることになってしまったドラえもん。突然の出来事にのび太はショックを隠せない。彼はドラえもんを必死でひきとめるが、ついにある決心をする。それは、ドラえもんが安心して帰れるように、これからは自分ひとりで問題を解決しようとするものだった。いよいよせまった別れの日。町へ散歩に出たドラえもんとのび太の前にジャイアンが現れる。いつものようにケンカをふっかけてくるジャイアン。そこでのび太がとった行動とは…。

ASKA さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

ドラえもん併映作品の感動系エピソード。

映画ドラえもん併映作品の中でも感動系シリーズの1作。
今作ではドラえもんが未来に帰る「さようならドラえもん」と帰ってくる「帰ってきたドラえもん」を原作にしています。

特にドラえもんとのび太の友情を描いていてドラえもんファンなら見てほしい1作です。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 4

ビックリヤングコーン さんの感想・評価

★★★★★ 4.6

涙腺が〜!

これはこれは感動もんす!あの、のびたが必死にジャイアンに向かってく姿がたまらないです。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 0

くかす さんの感想・評価

★★★★★ 4.9

感想

ドラえもん屈指の感動する話
ドラえもんが安心して未来に帰れるようにのび太が男を見せる話

投稿 : 2024/05/04
♥ : 1

70.3 4 未来で短編アニメなアニメランキング4位
ブレードランナー ブラックアウト2022(Webアニメ)

2017年9月26日
★★★★☆ 3.8 (38)
200人が棚に入れました
『ブレードランナー2049』へ至る、空白の30年間。2022年に起きた大停電<ブラックアウト 2022>とは?

「ブレードランナー」から「ブレードランナー2049」の橋渡しとなる作品。

視聴はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=MKFREpMeao0
ネタバレ

ブリキ男 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9

人類へようこそ!

映画「ブレードランナー 2049」の公開に先駆けて制作された15分の短編アニメ。

レプリカントと呼ばれる人造人間達の苦悩、人類への反抗を描きます。

舞台となるのは1982年に公開された実写映画「ブレードランナー」から3年後の地続きの世界、人とレプリカントの対立構造がより苛烈になった2022年のロサンゼルス。原作に当たる「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」とは直接関係のないパラレルワールドを描いた作品となっています。

「ブレードランナー」と比べると、ショートフィルムの割に物語のスケールが大きく、その必然として展開は急ぎ足、作風はアクション偏重。人間ではなくレプリカント視点からディストピアを捉えている点にも大きな違いがあります。

アメリカンコミックから飛び出した様な荒い画のコマ飛び映像を交えて語られるプロローグは冒頭の2分間くらい。本編ではCG(トゥーンレンダリング等)をふんだんに駆使した美麗なアニメーションが展開されます。息をのむほど精密に作られた最高級のムービーは一見以上の価値あり。レプリカント少女トリクシーの儚くも華麗な舞に注目されたし!

ただ物語については良くも悪くも生粋のハリウッド印なので、過度の期待は禁物です。
{netabare}
SF設定についてもEMP攻撃に絶大な威力を持たせている点がややマンネリでお約束気味(汗)EMP対策は現代でも着々と進んでいる様ですし、未来社会の大企業ともなれば、より堅牢なデータの保護措置が取られているはず。ネット黎明期では通用するネタだったのかもしれませんが、これについては時代錯誤な印象を受けました。ブラックアウト-レプリカントに関する大部分のデータを消去する=物語を振り出しに戻す-の手段として手っ取り早く、分かりやすい方法だったのかも知れませんけど(汗)

元ネタは色々と挙げられると思いますが、わたしはやや古めの映画「エスケープ・フロム・L.A.」を真っ先に思い出しました。(だってLAだし‥笑)

※:高高度で核爆弾を爆発させて、そこで発生した電磁パルス(放射線)を利用し地上の電子機器に広範囲に打撃を与える戦術の事。
{/netabare}
本作の他に、その後日譚に当たる「2036:ネクサス・ドーン」と「2048:ノーウェア・トゥ・ラン」というショートフィルム(この二つは実写)も公式からYoutubeとかにアップされていますので、劇場版に備えてそれらで予習しておくのもよろしいかと。

おさらいに時系列に沿って並べたものを以下に。

2019年:ブレードランナー(通常版、ディレクターズカット、ディレクターズカット最終版)
2022年:ブラックアウト
2036年:ネクサス・ドーン
2048年:ノーウェア・トゥ・ラン
2049年:ブレードランナー 2049

「ブレードランナー 2049」の日本公開日は今月27日。もう目と鼻の先ですね。前作で主人公を演じたハリソン・フォードが今回もリック・デッカード役で続投するそう。作中でも30年が経過しているので、おじいちゃんハリソンでも違和感無し(笑)活躍が楽しみです。

それにしても新作映画の宣伝の為に本作の様な高品質なアニメも含めたショートフィルムを3本も撮るとは、流石ハリウッド、度し難い(汗)おかげでブレードランナーの名を冠する映像作品が一気に7本に増えてしまいました。

2つで充分ですよ!‥とかはくれぐれも言わないよーに(笑)

投稿 : 2024/05/04
♥ : 25

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

ブレードランナーの視聴が前提ですが素晴らしい短編でした。

 本作は映画「ブレードランナー」と「2049」という続編の間を補完するものだそうです。ユーチューブでお勧めに出てきてその存在を知りました。
 オリジナルの「ブレードランナー」はSF映画の名作中の名作です。ナンバー1と言っても言い過ぎではないでしょう。名作過ぎる故に、その続編である「2049」は蛇足の可能性が高いと思い触れてきませんでした。

 オリジナルの「ブレードランナー」は寿命が4年と設定され感情を持ったネクサス6型というロボットの最後のあがきの物語です。ロイの最後のセリフが素晴らしい作品でした。
 AIと感情の問題を取り扱った、日本のロボットもののアニメの中核となるメッセージを含んでいる作品です。ただし日本には手塚がいますけど。

 その退廃した世界観は本当に画期的で、現在のサイバーパンクの世界観を作り上げた作品と言っていいでしょう。動物が絶滅しかけ非常に高価なものになっている。日本の台頭と環境破壊によってずっと雨が振り続く…などです。セリフではなく物語で読み取ることができます。

「攻殻機動隊」は本作の影響を非常に強く受けています。それが逆に「マトリックス」に影響して行くなど、ハリウッドと日本アニメの相互の交流が面白いですね。

 さて本作です。いや、アニメとしての出来はなかなかいいです。「攻殻機動隊」の「プロダクションIG」が忘れてしまったものを引き継いでいる感じがしました。監督の渡辺信一郎さんって「カウボーイビバップ」の方ですよね。さすがという出来でした。

 短い作品ですが、イギーとトリクシーの関係性は「ブレードランナー」の物語であるロイとプリスの関係性を彷彿とさせます。作画技術もいいですが、キャラと演出・演技は非常に上手く作ったなあという作品でした。

 本作だけだと恐らく話の理解は難しい面があるとは思います。が、本作だけ見てもSF心があれば、そのテーマや世界観は染みわたってきます。素晴らしい作品だと思います。いや、やっぱり「ブレードランナー」という作品の存在が前提かな。日本のアニメを楽しむなら前提として見ておいて損はない作品だと思います。

 そして私は「2049」を見てみようかな、という気にはなりました。


 

 

投稿 : 2024/05/04
♥ : 6

たわし(爆豪) さんの感想・評価

★★★★★ 4.7

「今」の日本

「マクロスプラス」「カウボーイビバップ」「サムライチャンプルー」「残響のテロル」の渡辺信一郎監督が、たった15分のブレードランナーの短編アニメに監督の演出センス抜群の傑作として仕上げている。

いやはや驚きである。まだまだ現役ということか。

ブレードランナー2022はアニメーションと言うよりは「映画」である。コンテの切り方、画面の構図、人物の動きは「マンガ」ではなく「実写」のそれであり、このまま俳優を置いて撮影できるだろう。そこが、「アニメ」ではないリアリズムで、どちらかといえば、アメコミやバンドデシネの世界である。そもそもブレードランナー自体がフランスの漫画家ジャンジローメビウスの世界観であり、名作SF「エイリアン」やデビットリンチの「デューン」、「アバター」などのジェームズキャメロン作品のコンセプトであり、世界的に有名な漫画家である。あの士郎正宗、大友克洋や宮崎駿は彼の影響下にある。映像を目指したことのある人間はその名を聞いたことのない人はいないだろう。

汚れた未来と言ってしまうと古いイメージなので、現代の日本の状況と照らし合わせてみてほしい。情報ネットワークの異常な発達、AI問題、アダルトビデオ問題、少子化、独身率の高さなどをとってみても「現代」がブレードランナーの世界とリンクしているのだ。

そういった意味でも、このアニメ作品はたった10分という枠の中でありながら2017年年間通してもトップクラスなのである。そうそこには我々の社会そのものが描かれている。

あとがき:本編はアカデミー賞の視覚効果賞と編集賞を受賞。どちらの賞もハリウッドベテラン勢が受賞したのでそこまで目新しくはない。どちらかといえば、ギレルモ・デルトロ監督の「シェイプオブウォーター」の作品賞を含む4部門受賞の方が驚きであり、ハリウッドでキワモノ扱いされてきたような映画がその年の作品賞をとることは、アメコミや特撮ブームもあって世の中が変わったのかもしれない。アメリカでもいまやコミックや日本のアニメ漫画はネットの普及で若者を中心に広まっているので、世界的にオタク化の方向に向かっているのかもしれない。

投稿 : 2024/05/04
♥ : 20
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