
いとしのレイラ さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
隠れた名作では
2018年の作品だそうで、これは不覚でした(^^♪
有名作「あしたのジョー」のオマージュ作との事ですが
近未来ボクシングの二次創作モノとして結構面白かったです
時代も現在となっては追いついた感はしますが
過度な発展が招いた退廃と発展が混在した世界を描いた
映画「ブレードランナー」の様な近未来都市で行われる
メガロボクスという新たなボクシングが題材です
未認可地区という隔てられたスラム的な地区という
身分や職業が卑しい中で、スポーツ賭博で八百長を
演じていたボクサーが、成り行きながらも頭角を現し
表立った世界で頂点に君臨する王者へ挑戦する
そんな下層から上流へという王道的な話なんですが
特徴として未確認地区という下層社会で否応なく生きる
そんな泥臭い世界に焦点を当てた、言わば競技性というより
人間ドラマにシフトした趣き、ちょうど香港ノワールでお馴染み
バイオレンスの詩人として名高い「ジョン・ウー」監督の描く世界感
裏社会で生きる飢えた狼、トレードマークの二丁拳銃を拳に変えた
そんな男達の生き様に通じる作品の様に感じました
◆「相対する世界」
川の向こうの起立するクールな摩天楼
荒廃したディストピア的な趣きの未確認地区
二つのロケーションを用いて相対感を演出する訳ですが
そういった荒廃したマッドマックス的な世界観の中で
アルミタンクにスーパートラップにブロックパターンといった
ネオクラシックっぽい雰囲気のロードモデル発生のスクランブラー
片や60年っぽいフォードのリーフ・リジット式のピックアップ
後半、ミヤギとアラガキが乗って来たシボレーK10風と言い
適度に「くたびれた」経年劣化具合が良いですな(^^♪
また、後半でちょいと登場する「ゆき子」の乗る
跳ね馬ディーノ246っぽい流線形クーペも洒落てる
やはり、母体としてアニメや映画では外せない様な
こういったロードムービー的な趣も見逃せないポイント(^^♪
◆「人情味溢れる南部贋作」
懐の寒い奴は犬に賭ける… 少しばかし温い奴は人に賭ける…
名前もIDも無い非合法なメガロボクサーが日銭を稼ぐ為に
未確認地区というスラム的な場所で出来レースを演じるのですが
アンダーグラウンド的な巣窟感と試合展開に呼応する観客の熱気
下馬評を崩す様な大幅に優勢な展開を演じる訳だが
言わば「負け側」へ賭ける人間を集める様に演じながら
胴元に大きな利益が転がる様に展開を指示するペテン師ぶり
外れたドッグレースの犬券の意味する台詞とか…
一早く脚光を浴びる為にギアを装着しない
「ギアレス・ジョー」を演出する策士ぶり
人生の表と裏を熟知した経験値が成せる人情味たっぷりで
一連の南部語録が最初から最後まで、とても印象的だったのですが
ホント「ズバリ」といったキャスティングはマジお見事でした(^^♪
◆「補助的ギア」
1話のエキシビションで勇利の確信有る一撃に沈み
相当なダメージの予想も甚だしく立ち上がり捨て台詞も吐く
粗削りで未知数な力を秘めた飢えた狼の様なジョー
そんな性格が災いメガロニア出場という展開になりますが
劇中で登場するギア、これは身分という経済的な側面も兼ねた
ある種の隔たりも関与して来る訳でレギュレーションという点で言えば
全て統一すべきだと思いますが、それを逆手にとったカタルシスにも
繋がって来ますので、限られた時間で起伏の有る展開で有ったり
サチオを初めとするチーム番外地とも関与するきっかけとなる
舞台装置としても大きな役割を果たしているのではないかと…
◆「順風満帆」
視覚聴覚が遠くなり意識が薄れて行く感覚で有ったり
外国語ローマ字の電光掲示板、初めてギアを外し挑んだ試合で
一時的なイップスに陥ってままならないジョーを経験に基いた
セコンド役で巧く導く南部、懸命なサチオの姿を見て感じた事は
野球で言う投手と捕手の関係性にも通じるものかなと…
有名な野球アニメ「メジャー」で主に3Aで活躍する
ちょうど「サーモンズ」「バッツ」時代に日本から飛び出し
挫折しながらも周囲に支えられ奮闘する姿を連想しました
◆「天歩艱難」
戦争で派遣された任務でで両足を損傷し、身も心も失意の底に付くも
南部に教わったメガロボクスに賭ける熱い思いで見事復活を遂げた強敵
キャリア、実力も上回るアラガキだが、過去の任務との因果関係を
上手く婉曲させて描く事により、あざとくならない様にハンデとして
両雄の力を拮抗させるギミックしても機能してる様にも思える
それは単なる噛ませではなく、個人的には敬意とも取れる
過去の師弟関係としての確執、現在の師弟関係への複雑な想い
戦争の負の側面を上手く絡め合った味わい深いエピソードでした
◆「もう一つの壁」
話の上では泥臭い過去を背負ったキャラが多かったが
認可地区の大企業「白都コンツェルン」という華やかな肩書を持つ
そんな「高嶺の花」を絵で描いた様なヒロイン「白都 ゆき子」
そして次なる相手として立ち塞がる、その実兄にあたる「白都 樹生」
会社の後継者争いに敗北した結果だが、その恵まれた環境を生かし
相手の攻撃を先読みし、自らの意志に反して攻撃と防御に自動で反応する
テクノロジーを集結させた、ま、とんでもないギアの研究に情熱を注ぎ
試合で勝ち上がる事で後継者として再び名乗り出る試みを企てるが
一方で、汚い手を使って不戦勝を狙うやり方に不信を抱く南部は
藤巻の証言を元に始めた探索が功を奏し、ギアの欠格を見抜いたかに…
そんな南部、藤巻、サチオ絡みの掘り下げも去る事
最終的には改良を重ね欠点を克服したギアは
身体に及ぼす影響が大きく多大なリスクが付き纏う
南部「勝負を決めるのはギアじゃねぇ」
勇利「そのガードはお前か?ギアか?」
最強のギアか…生身の体か…予測不能の展開にチャンスを伺い一撃に賭ける
そんなテクノロジーに抗うカタルシスが上手く作用したエピソードでした
◆「最終決戦」
未認可地区メガロボクス闘技場の元締め
「藤巻」から多大な借金をしている「南部」
より多額の利益が動く上位グループで行われる
メガロニアまで何とか勝ち上がり、そこで八百長をする様に
指示する「藤巻」と保身に回る「南部」といった図式
借金とギャンブルが足枷になってる様に思われるが
ジョーはシンプルに強い相手と戦いたいという本能のままに
南部はそんなジョーの本能のままの戦いを見届けたい親心みたいな
作風に沿ったカタルシスにも繋がる良質エピソードでした
成り上がる為にギアを装着しなかった「ジョー」だが
日々、戦いに明け暮れる暮らしの中で「命を左右する」そんな…
戦慄による興奮に魅せられ、本当の意味でギアを必要をしなくなった
一方、ここまで世話になった「ゆき子」の為に戦って来た「勇利」
そんな両雄のみが知る「何か」を求め、ギア未装着の試合に挑んだ訳だが
メスで切り裂き、ギアを身体から取り外すという大きなリスクを背負う
ここでもアラガキと同様に、万全でないコンディションで描く事により
結果的にはジョーに花を持たせるが、決して踏み台としての描き方ではなく
それは主要人物に対しての愛情と敬意… そういう見解です
◆「音楽」
作風的にはブルースが似合うんでしょうが、反骨精神という意味でロック
それらを融合させた南部の音楽 Southern Rockの持つ「粘っこさ」スワンプ
OP曲のサイケデリック感とスワンプ感は作風と合致してる気がします
ただED曲は素直にスローなブルースナンバーで良かった気もします(^^♪
◆「その他」
本作の特徴としてボクシング、ギャンブル、ギアなど
アナロジー思考で作成されたヒューマンドラマ性が強い作品
よって純粋にボクシングの好きな人には、不満の声も無きにしも非ず
一方で、興味の無い人も、何か刺さる要素も大いに有りそうな気がします
ややドロドロした人格描写から、人を選ぶ傾向は有りますが
個人的にはとても満足出来た作品、私は好きですね(^^♪
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