2018年度のオリジナルアニメーションアニメ映画ランキング 4

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ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年06月01日の時点で一番の2018年度のオリジナルアニメーションアニメ映画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

70.1 1 2018年度のオリジナルアニメーションアニメランキング1位
ANEMONE / 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション(アニメ映画)

2018年11月10日
★★★★☆ 3.7 (85)
423人が棚に入れました
まだ幼かったあの日。
父はアネモネを残して戦いに赴き、そして帰ってこなかった。
アネモネの小さな胸に深く残る後悔。彼女の心を支えたのは、ぬいぐるみのガリバーとAIコンシェルジュ・ドミニキッズ。
7年が経過し、アネモネは父が散った戦場――東京にいた。
アネモネは実験部隊アシッドが実行する作戦の要として、人類の敵「7番目のエウレカ=エウレカセブン」と戦わなくてはならないのだ。
エウレカセブンにより追い詰められた人類は、もはやアネモネに希望を託すしかなかった。
そしてアネモネは、エウレカセブンの内部へとダイブする――。

声優・キャラクター
小清水亜美、名塚佳織、三瓶由布子、山崎樹範、沢海陽子、山口由里子、銀河万丈、三木眞一郎、内田夕夜、辻谷耕史、玉野るな
ネタバレ

TAKARU1996 さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

少女の夢の終わり、迷える子羊が見た光

この歳になると、作品を見て驚くと言う事が中々出来なくなってきます。
これまで観た、読んだ、聴いた、体感したモノに左右されて、日常生活の中で「驚き」を感じると言う事は滅法少なくなってきました。
そんな退屈な日々を終始送っている私ですが……


久しぶりに映画館で仰天致しました。


この映画、端的に言って「凄い」です。
凄いとしか言いようがありません。
「観客を圧倒させる新しい物語を作ってやる!!」と言う製作側の熱意が一身に感じられます。
『交響詩篇エウレカセブン』と言うシリーズ自体、過去作のシーンを取り入れてはいても、決してそれ頼みにはしていなかった。
そんな事実を今回、『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』を観て実感した次第でした。
人気だったシーンの二番煎じ
再構成でお茶を濁す、はたまた劣化になるアニメもとにかく多い。
昨今、決して否定出来ない事実と言えましょう。
しかし、本作にはそれらが全くありません。
特に、世間的に上記のような存在と思われていた前作『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』に、ここまで新しき意図が隠されていた事を知れたのが、私としてはとにかく嬉しかったのです。

取り敢えず、観ていない方は今すぐ映画館に行った方が良い。
過去作品を観て来た人程、生じる「衝撃」が本作にはあります。
私はこれまでの作品「ほぼ」好き(例外が1つだけありますが、ここで話す内容ではありませんね)
と断言出来る程の「全肯定信者」ですが、過去作品を観て来た人程「衝撃」があるのですよ、本作は。
特に、過去作で何かしら不満に思うモノがあった方には、その見方がかなり変わる内容でしょう。
もしかすると、そういった方は本作でかなり救われるかもしれません。
何かしら「エウレカセブン」に触れてきた人には、是非とも観て欲しい映画だと強く感じました。


まだご覧になっていない方への忠言

私は前作も楽しんで観る事の出来た人間ですが、『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』は『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』が期待外れだった人程、楽しめる作品です。
前作はPLAY BACK/FORWARDを駆使した、初見の方には決して観やすくない構成でしたが、実を言うと、あれには明確な意図があります。
あそこまで複雑に前後した意味、『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』を観ると解るでしょう。


『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』は世界観をこれまでとガラッと変えてきました。
スカブコーラルの世界におけるボーイミーツガールを期待していた人からしたら、東京における脅威との戦いは肩透かしも良い所でしょう。
しかし実を言うと、それにも意図があります。
敢えて世界観を全く違うものとした意味、『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』を観ると解るでしょう。

③『交響詩篇エウレカセブン』はProject EUREKAとして、様々に物語を展開してきました。
アニメ、映画、漫画、小説等で語られた彼等の物語、中には自分の好みに合わないと感じた作品もある事でしょう。
安心して下さい、そんな不満を抱いていた方は軒並み救済されます。
『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』を観ると解るでしょう。


この映画を観る前には出来るだけ、本作以前の作品を体感しておいた方が宜しいかと思われます。
取り敢えず、本編『交響詩篇エウレカセブン』と劇場版『交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい』の視聴、そして漫画版『交響詩篇エウレカセブン』は予め読んでおくと、一部場面で悶死する程の衝撃を食らうでしょう。
しかし、必ず観なければいけないと言う訳ではありません。
本作だけでも十二分に満足できる出来でしょう。
あ、でも『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』は観ておいた方が良いです。


そして最後に、観終わった際は何故本作が『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』なのか?
何故『ハイエボリューション2』ではないのか?
ちょっと頭の隅に考えておく事を推奨します。





ここからは、まだ観ていない方は絶対読まないで下さい。
致命的なネタバレがあり、本作における「衝撃」を劇場で体感したい人は、この先を読まない事を強くオススメします。





いいですか?





では、更に数行空けてからカスタムタグ込みで語ると致します。





{netabare}
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…わたしは
わたしはあなたのいるこの世界を守りたかった
あなたがいなくなった世界に何の意味があるの?

『交響詩篇エウレカセブン ニュー・オーダー』エウレカの台詞より抜粋
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はい、正しくその通りでした。
彼女は、彼のいなくなった世界に意味を見出せていませんでした。
生きる事に意味を感じられなくなった彼女は、彼を取り戻す事だけに意味を求め続けました。
何度も、何度も、PLAY BACK/FORWARDを繰り返して……

大好きな人が生きている世界を夢の中で構築し続け、その度に何度も彼は死んでいきました。
TV版、漫画版、小説版、ゲーム版、劇場版『ポケットが虹でいっぱい』、続編『エウレカセブンAO』、新劇場版『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』
生きている世界を生み出しても、絶対に彼女の前からいなくなってしまう絶望
結局、夢は夢でしかなかったのです。
どう足掻いても、彼は死んでいく。
どんなに頑張っても、彼は息絶える。
彼――レントンは死んでしまうのでした。


「物語」と言うモノは「視点」によって如何様にも変化を遂げるモノです。
藤子・F・不二雄先生の短編で「裏町裏通り名画館」と言う作品がございますが、アネモネと共にダイブしていく中で、私は自然とその内容を想起しておりました。
誰を主人公とするか?
誰からの視点で物語を紡ぐか?
「物語」とは言わば、無限に生み出す事の出来る創造物です。
その変化によって見方は変わるし、解釈も変わる。
本作『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』も、その事を強く伝えてきた作品でした。

今回の主人公は「アネモネ」
彼女の視点から物語が綴られています。
アネモネが「エウレカセブン」内に精神を送ると、見えてきたのは正しく過去作品の映像
襲ってくるニルヴァーシュを何度も、何度もやっつける彼女
襲われたコックピットからは何度も、何度も負けていく少女の姿が見えました。
そして、その度に、彼女は叫ぶのです。

「レントン!!!」

アネモネは疑問を抱きます。
レントンとは誰だろう?
どうしてあそこまで悲しく叫ぶんだろう?
そんなモヤモヤとした感情を尻目に、彼女は人類を救う為「エウレカセブン」の中へ何度もダイブし、ニルヴァーシュを殺し続けます。

結局、アネモネが観ていた映像と言うのは全て、エウレカが生み出した過去作品の「夢」に他ありません。
死んでしまったレントンを取り戻す為に、エウレカは何度も何度も夢を見て、過去を繰り返して、彼を救う事の出来る世界を探し続けていたのです。
しかし、どうあっても彼は救えない。


彼女――アネモネが邪魔をする。


だから、エウレカは恨みと悲しみの慟哭を繰り返すのでした。
TV版のアネモネのように。

いやはや、唖然とするしかないでしょう、これは。
エウレカとアネモネの立ち位置が『交響詩篇エウレカセブン』と一気に逆転している!?
観ていたこちらも驚愕の一途です。
まあ、正確に言えば『交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい』でも、彼女達はTV版と正反対のキャラクター構造でしたが、本作はそれを更に衝撃的に上乗せした展開となっています。
エウレカがあそこまで「アネモネ」になるのかと感じた際には、私の心は切なさで張り裂けそうになりました。
彼がいなくなってしまったから、彼女もこうなってしまった訳で。
しかし、そのせいで20億人以上の人間が死んでしまった訳で。
その中には、アネモネの父親「石井賢」も含まれている訳で。
彼女達が互いに相手へ恨みを抱くのも、当然の話と言うモノなのです。
誰も救われません。
皆が皆、可哀想

しかし、そこで本シリーズが最初から伝えてきた事を改めて打ち立てたのがやっぱり「エウレカセブン」だと切に感じます。
互いの想いを否定せず、手を取り合って温かい息吹を作り出すシーンがそこにありました。
今回は、アネモネの方がエウレカに寄り添う形で……
第2の「バレエ・メカニック」を、私は此処に見つけたのです。
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「生きていたい。気付かなきゃよかった、こんな気持ち」

「生きて良いんだよ。生きちゃいけないなんて誰も言ってないんだよ」

「だって苦しいの! あの人がどこにもいないの! そんなの、そんなの……」

「きっと伝わるよ!」

『交響詩篇エウレカセブン』第48話「バレエ・メカニック」一部シーンより抜粋
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はっきり申し上げるに、12年経ってここまで「冒険」をしているアニメ映画と言うのは、私も観た事がありません。
「TV版と同じようにすれば、視聴者のウケも良いだろうし、例え劣化といわれたって、同じような展開をなぞれば良いでしょ!!」
新作として出す作品は、上記のような妥協が見え隠れするのが本当に多い。
正直、フロンティア・スピリットを持っていないそんな作品には、うんざりする事ばかりの始末でした。
しかし、本作を作っているスタッフは違います。
決して同じ世界観や展開でお茶を濁さず、新しい「物語」を創り続けています。
『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』のPLAY BACK/FORWARDが死んでしまったレントンを取り戻す、エウレカの戦いの証明だったと言うのは思わず鳥肌が立ちました。
それは、決して「ハイエボリューション」と言う進化を無駄にしていない証拠でもあったから。
あれだけ酷評されていた前作を全く無駄にしていない「愛」
元を正せば、過去作品自体も全く無駄にしていない「愛」
そして、それらを踏まえた上で新しい『エウレカセブン』を見せてくれる「愛」
そう、本作もまたファンの間で賛否両論となる映画でしょうが、間違いなく「愛」に溢れた作品なのです。

新しき設定も増えています。
きちんと観なければ意味不明な展開も目白押し
何だこれは!?と憤慨する方もいらっしゃるかもしれません、好き過ぎる方は特に。
ある意味「夢」に固執し過ぎてしまう「夢追人」は絶対に楽しめない作品です。

しかし、そういった方はこれまで何を観て来たのかを、私は考えてみたくなります。
『交響詩篇エウレカセブン』を観て、一体何を学んだのかを問いかけたくなります。
あの作品で伝えられてきた事の1つには、変化に対する受容と肯定も含まれていた筈です。
エウレカは自らが変わっていく事に戸惑い、反発し、激昂し、落胆し、不安定になりながらも、最後には自分が変わった事を素直に喜ぶ事が出来ました。
アネモネもまた、自覚出来ていなかった変化に終盤で気が付き、自分の素直な気持ちを見つめ直して、結果として生まれた感情を自然に吐露出来ました。
彼女達は確かに変化を遂げましたが、しかしそれでも、その変移を肯定する事が出来たのです。

そして『エウレカセブン』の素晴らしい所は、例え変化を遂げていたとしても、根底自体はまるで変わっていないと言う事
エウレカだけを終始考え、想い、愛し続けたレントンのように、その根っこはまるで「変化」していないのです。
本作もまた、それが十二分に理解出来た産物でした。
エウレカの、レントンに対する真っ直ぐな愛
アネモネの、父親やドミニクに対する一途な感情
甘酸っぱい想いとか、恥ずかしくなる感情とか、悲しくなる気持ちとか、悔しくなる心とか、悶え殺してくる程の感動や興奮、葛藤や悲痛
TV版でずっと感じていた「思い」も、本作には容量充分に詰まっています。

「進化」とは、言ってしまえば「変化」の類語
新しき設定や世界観等、変化した概念もあるでしょう。
しかし、それを「進化」として、スタッフ達が紡ぎだす新しき物語として受け入れた先に、変化していない根底を見出す事が出来るのだと思います。
前作はレントンからエウレカへの熱き想い
本作はそれに対する返答とアネモネが齎した付加価値
変わっていないモノは確かに描かれています。
それを見出せるかどうかは等しく、貴方様の観方に懸かっていると言えましょう。

ただ、言ってしまえば本作はまだまだ「本番」じゃない。
全体の「幕間」に過ぎません。
『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』が続編の「2」を冠していないのは、これが「アネモネ」の物語であると同時に、ここで一気に「新世界」へ引きずり込む意図があったからでしょう。
だとしたら「進化」の続きは一体何処に辿り着くのか?
『ハイエボリューション1』の続編「One World One Future」か、それとは全く異なったエウレカの物語か?
どちらにしても「夢」を凌駕した最高の「現実」を、彼女には見せてあげて欲しい。
その為には、彼の存在が必須
『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』はレントンとエウレカが紡ぐ「2」番目の進化まで……
彼等と波に乗り続けようと思えた「進化過程」です。
{/netabare}





貴方にとって「エウレカセブン」とは何ですか?
何が備わっていれば、貴方の思う「エウレカセブン」になりますか?
回答を既に得ている私は、最後のエウレカが紡ぐ、最高の物語まで、彼等と波に乗り続けます。
取り敢えず今、スタッフの皆さんに言える一言

「愛と衝撃と、進化を与えてくれてありがとう」

レントンのように、最後まで思いっきり駆け抜けて下さい。
私も、最後まで思いっきり駆け抜けますから。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 7

けみかけ さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

全シリーズ全作品全肯定!全シリーズ全作品全肯定!!全シリーズ全作品全肯定!!!

近未来の東京に突如として出現した未知の存在、七番目のエウレカ=エウレカセブン
強烈な毒素を放ち、謎の巨人ニルバーシュXで73の国と26億人を虐殺したその猛威を振るう
現代兵器では太刀打ちできないその存在に唯一対抗出来る手段として、人類に託された望みはただ1つ
わずか14歳の少女、石井・風花・アネモネをエウレカセブン内に電送、ダイブさせるのだ
7年前、実の父をエウレカセブンへのダイブで亡くしたアネモネは、そのトラウマと戦いながらも戦果をあげる
だが、ダイブした先の世界で出会った青緑色の髪の少女のことが気がかりになっていた…


『交響詩篇エウレカセブン』のリブート劇場版である『ハイエボリューション』3部作の2作目…ですが↑のあらすじを読んでいただくと分かるのですがぶっちゃけ【『ハイエボ1』は観なくていいです!】
世界観が完全にリセットされてるので今作だけで十分完成された映画になっているのでホント、『ハイエボ1』観てないから『ANEMONE』はやめとこ、とか【絶対に損してるのでやめてください!】


いや、厳密には『ハイエボ1』の中で話が分岐しており、実は今作に登場する“闇堕ちしてしまったエウレカ”の世界線と“ラストシーンに登場するレントン”の世界線は『ハイエボ1』の中で分岐してるので、今作をご覧になったあとで気になった方は『ハイエボ1』をチェックすればそれで十分補完出来るはずです


さて『ハイエボ』3部作ですが過去のエウレカセブンシリーズの映像を使った総集編…と思いきや当時の映像の中にいるはずの無い人物が違和感無く描き足されていたり、設定そのものがだいぶ変わっていたりと、どうやら過去作との直接的な繋がりは無いように観られていました


しかし今作で石井・風花・アネモネちゃんの暮らす世界からダイブインする、という形で過去作映像流用の世界が内宇宙として描かれます
これが今もなお“シリーズの聖典”として祀り上げられるTVシリーズ版『交響詩篇エウレカセブン』だけでなく、劇場版『ポケットが虹でいっぱい』や続編TVシリーズ『エウレカセブンAO』も含めて描かれるんです
もっと細かく観るとゲーム版やコミカライズ版も出てくるのでチェックしてみてください(笑)


劇中の中盤まではこれら過去作映像流用世界を否定していく形でアネモネちゃんは勝利を収めていきます
劇中では「偽りの神が作ったゴミの山」とか「ゴミ掃除」とまで言われてますw
しかしクライマックスでアネモネちゃんはエウレカセブンの中枢的存在であるエウレカがこれら過去作映像流用世界を「とある理由」で作り出してしまったことを“許す”のです


【これはつまりエウレカセブンシリーズ全てを“許す”ってことなんです!】


思えばエウレカセブンシリーズはファンを裏切り続けてきました
『ポケ虹』『AO』『ハイエボ1』…とにかくコアなファンであるほどオリジナルのTVシリーズの感動がひとしおに高く、故に蛇足で駄作な続編が増えていくことに一種のアレルギーの様になった人も少なくないでしょう
「エウレカセブンに続編なんかイラネェから!原点こそ原理だから!」とね
オイラがそうですから!w


だけどそんなシリーズ達の存在を“全て許した”のが今作です!
あまりにもこれまでのシリーズ達とはかけ離れた世界観を理解するだけで頭いっぱいになってしまうかもしれませんが、エウレカセブンシリーズに思い入れがある人ほどこの映画は好きになれること間違いありません!
とりあえずオイラは2回観ましたがなんとかしてもう1回観たいと思ってますw


過去作映像流用の部分では、あえて“アスペクト比”を当時のままにしてあるのでそれがスマホ画面→アナログTV→映画レターボックス→地上波デジタルなどと変化していくところにも注目して欲しいです
これはアネモネちゃんが真実に近づく事で変化していってることに気付くと思います!


アネモネちゃんの初陣であの「Tiger Track」が流れるのも素晴らしいですね
『ハイエボ1』の時、結局エウレカセブンシリーズの思い出って曲とセットになってるから曲の差し替えはよくないな…って思ってたんですよ
それがまさかあんなところで「Tiger Track」が流れるとはw
不意打ちにも程がありますw
それとクライマックスでも“凄い1曲”が流れます!!!
この曲は過去作で挿入歌だったというわけではありませんが、“あのネ申回”のサブタイの元ネタとなった楽曲です!
もう劇場で失禁しそうwなくらいはわわわ!!!ってなりましたよね
ニクい演出、いやエモい演出ですわ


そして『エウレカ』といえばロボ作画、ボンズといえばロボ作画、なワケですが今作ではあえて作画的な観どころのクライマックスとは別にグラフィニカによる3DCGで描かれるクライマックスがあり、2段階のクライマックスとなっております
これはもう世界観把握でいっぱいになった頭を破裂させるような展開でアッケに取られてしまうかもしれませんw
それがまた“映画らしくて”好きですね~
とにかく何回観ても「良い、好き」と言えるスルメの様な味わい深い作品なので、少しでもエウレカセブンシリーズに思い入れのある人は絶対に観た方がいいです!!!


最後になりましたが「Tiger Track」を手掛けたDJ KAGAMIことKAGAMIさんが2010年に、『ハイエボ1』までデューイ・ノヴァク役を務められた声優の辻谷耕史さんが今作収録期間中に、それぞれ急逝されています
謹んでご冥福をお祈りすると共に、エウレカセブンというシリーズの一端を氏らの素晴らしいお仕事で担っていただけたことに感謝の意を一ファンの身として表したいと思います

投稿 : 2024/06/01
♥ : 10

Ka-ZZ(★) さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

「世界か、愛する人か―ひとりぼっちの少女たちの、究極の選択」。

この作品は、交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション全3部作のうち、第2部に相当します。
本編では正直アネモネは決して幸せと言えるキャラでは無かったので、逆転の展開を期待しながら視聴を始めました。


まだ幼かったあの日。
父、ケン は幼いアネモネを残して戦いに赴き、そして帰ってこなかった。
ちゃんとお別れを言うことができなかったアネモネの小さな胸に深く残る後悔。

7年が経過した。アネモネは父が散った戦場――東京にいた。
人類の敵、7番目のエウレカ=エウレカセブンと戦うための組織・アシッドの一員として、
アネモネには人類の希望が託されていた。
そして、アネモネはエウレカセブンの中へとその精神を送り込む。

アネモネがエウレカセブンの中で出会ったのは、ドミニクという青年と、エウレカという青緑の髪をした少女。
この出会いは何を意味するのか。そして、見え隠れするレントンという名の少年の姿。

アシッドに囚われていた謎の男・デューイは予言する。
「お前たちが見ているエウレカセブンはエウレカセブンではない。
偽りの神が創っては破棄した無数の不要な世界。いわばゴミの山だ」

アネモネとエウレカが出会った時、全ての真実が明らかとなり、新たな世界の扉が開く――。


公式HPのSTORYを引用させて頂きました。

視聴したらきっと皆さん気付くと思います。
もう過去作の設定云々を気にしている場合じゃなくなっていることを…

本作の主人公はアネモネ…
ですが、彼女にはもう一つの顔があるんです。
彼女は、石井風花という日本で暮らす女の子なんです。

東京に住む女の子がどうやってエウレカやレントンのいる世界に行くのか…
序盤からいきなり頭の中に?マークが浮かぶことになるのですが、視聴を進めるとちゃんとその謎も明らかになります。
エウレカの世界にアネモネが行く方法…結構画期的だと思いますよ^^

それと間違えてはいけないのが、この物語で万人に周知されている「エウレカ」は、私たちの知っている名塚佳織さん演じるエウレカでは無いということ…

この世界におけるエウレカは、世界各地で増殖し続けるスカブなんです。
そしてとうとう日本に7番目のスカブがやってきました。
7番目のスカブだから「エウレカセブン」と呼称されていましたけれど…

現実世界の「エウレカ」は物理攻撃の効かない存在…
そんなエウレカを撃退するため、アネモネも所属する国連の戦略部隊アシッドは、「ある特別な方法」を駆使しながら世界中のエウレカと対峙しているんです。

アネモネ…
いつも頭痛に悩まされ、大量の鎮静剤が欠かせなかった彼女…
エウレカと何かと比較され続け、激しい憎悪を剥き出しにしていた彼女…
ようやく自分の気持ちに気付いて大粒の涙をボロボロ流す彼女…
本編のアネモネに対する私の印象はこんなところです。

本作品での彼女は大量の鎮静剤が必要なわけでも、エウレカに憎悪を燃やすこともありません。
ですが、公式HPのSTORYに記載されている通り幼いころに最愛の父を亡くしていたので、寂し気な表情を見せていたり、一人でポツンと考え事をしていることが多い感じ…
決して自ら積極的に誰かと交友を深めようとすることはありませんでした。

物語が進み、やがてアネモネは究極の選択を迫られることになります。
もう周囲を顧みず、自分の事ばかり優先することなんてできません。
だって悲しみに沈む沢山の人の顔を見てきたから…
自分たちに向けられた視線に対する意味も分からない訳じゃないから…
これだけ色々周りが見えているにも関わらず選べない選択肢…
彼女がどう決断するのか…本作品の見どころだと思います。

この辺りまで視聴するとだいぶこの作品が面白く感じられると思います。
物語の内容も第1部との繋がりが見られるようになりますので…

そして終盤…
これで大団円でも良かったのでは…?
という展開が待ち受けていましたが、それは単なる通過点でしかありませんでした。
ここまで視聴すれば、何となくですが第3部の着地点は想像できると思います。
ですが、第3部の物語にアネモネがどう絡んでくるのかは気になるところです。

上映時間95分の物語でした。
第1部だけでこのシリーズを評価しなくて正解だったと思います。
第2部で格段に面白くなりましたし、アネモネとエウレカとの絡みは泣けるポイントが満載ですし、何より前作まで視聴を続けてきた人へのサービスカットも見れましたし…

第3部の上映は2021年とのことです。
今度はどんな物語が展開されるのか楽しみにしています。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 14

65.9 2 2018年度のオリジナルアニメーションアニメランキング2位
劇場版 フリクリ プログレ(アニメ映画)

2018年9月28日
★★★★☆ 3.6 (54)
250人が棚に入れました
「すっごくさぁ。欲しいものがあるんだよ」 深紅の翼を追って〝女〟は空に消えた――。 時はめぐり、星々を盗み取るほどの力はいま、少女の夢のなかで目覚めようとしている。 「ベスパに乗った女に気をつけろ!」 アイロンの吐き出す煙たちこめる街――ヘッドフォンの少女・ヒドミが轢かれた夜、 クラスメイトの少年・井出の額から巨大ロボットが出現した! 〝特別なことなんてない日常〟が終わりを叫び、ついにあの女が帰ってくる!

声優・キャラクター
林原めぐみ、沢城みゆき、水瀬いのり、福山潤、村中知、中澤まさとも、黒沢ともよ、井上喜久子、大倉孝二、菅生隆之、浦山迅、鈴木れい子
ネタバレ

きつねりす さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

考えすぎず、身を任せて楽しめばOK

「分からないから面白くない」という感想で片付けたくないので、色々と考えながら個人的な感想を。
まず見終わって思ったのは「どういうことなんだ!」ということ。時間が進むにつれてガーっとスピードは上がっていくけど、受け手として追いついていけてないな、という感じ。結末としては{netabare}ヒドミと井出くんがそれぞれの思いに正直になるというところで{/netabare}シンプルなものなのだけれど、そこに行きつくまでの過程が絡まりあっていたりして、「ここでこのキャラが繋がってるわけね!」という部分もあれば「このキャラはここで出てくる必要があるのか?」と思う部分もありました。でもとにかく終盤は怒涛の展開が続くのでこれの処理が追い付かない。映画館を出てパンフレットを見ながら考えをまとめようとしてみても、インタビューで声優さんが「内容はわからない」的発言をしている(笑)。演じている人でさえそうなのだから、見た人が同じゴールに入っていく必要はないのかな、と思うと自分の正直な感性で楽しめばいいんだ、という気持ちになり何か急にスッとしました。水瀬いのりさんの言葉に救われた。

まず言わせてもらいたいのは、ピロウズの音楽がこれまでで一番ハマっていたということ。6話分それぞれに監督が就いていて、大筋の流れや設定は決まっていたとはいえ、それぞれに画面の使い方や描写の方法、キャラの躍動感などの個性があり、まさにアンソロジー的形式ではあります。そんな多様性が感じられる中、どの担当回でもピロウズの音楽が刺さりました。「フリクリを見ていた側」としての立場から「フリクリを作る側」の立場に立った時に、やっぱりこの物語に根付くロック・ミュージック=the pillowsという構図がそれぞれの監督さんの中にしっかりとあったのだろうと感じさせる愛のようなものを感じました。予告編でも流れていた「Thank you,my twilight」、主題歌「Spiky Seeds」、OVA版でもバトルシーンで使われていた「LAST DINOSAUR」といった3曲は特に良かったです。このシーンではやっぱりこの曲だよね!という共感、この世界観ではドンピシャな音楽だなという発見など、今作は音楽面は非常に満足しました。アルバム買います。

話の本筋について。
{netabare}OVA版では「愛」、オルタナでは「友情」というところに最後のトリガーがあるとするなら、今回のプログレは「家族」かなと思いました。帰ってこない父親を待つ母親とこれからも一緒に暮らしていくという「居場所」ができたことによって最後の井出くんへの思いを伝えきれたのかな、と思います。ヒドミ自身はクールでいながら人間らしい感情的な部分も兼ね備えていて、徐々にその片鱗は内側から外側へと出ていくのですが、ヒドミの母親と心の内を交わし、「自分も成長していく」ということを受け入れて自分の思いを伝えられるようになったのかな、と思います。一度見ただけではちょっと追いきれなかったですが、大体そういう筋だと解釈しました。3章から出てくるアイコとマスラオの関係というのもやはり娘と父親という家族で、モチに捕らえられたマスラオが次の希望を娘に託すというのもひとつの家族の形なのかな、と思いました。(自分を買い取るとかそこらへんの描写がよく分かんなかったですが)
また、異性を思う気持ちというのももう一つのテーマだと思います。ハル子がアトムスクを追い求めて手に入れようと躍起になるのも、森がレンタル彼女という形で寄り添う相手を求めようとするのも、マルコが天真爛漫なヒドミに純粋な恋をするのも全部いろんな愛の形。報われなかったり、ちょっと報われたりと達成の程度はそれぞれながら、なかなか上手くもいかないってところまでひっくるめて青春は難しいんだぜ、と教えてくれる作品だな、と思います。中心にいるヒドミと井出くんの恋愛は成就したみたいですが、それぞれが思いに気付く瞬間や、その思いを持て余したりする光景、素直に向き合うシーンといった感情の部分を丁寧に描いてきて辿り着いたゴール、という感じで好感が持てました。見た目ややっていることはハチャメチャで、そこはフリクリらしいといえばらしいですね(笑)。{/netabare}

3つの作品をここ1ヵ月足らずで見てきて、勢いの中に若いゆえの心の葛藤や迷いを描いた作品なんだな、とつくづく思いました。全てを分かったような立場で主人公たちの世界に乗り込んでくる「ハル子」という異分子で日常がかき乱され、いい迷惑と思いながらも、自分の奥に眠っている感情を呼び起こされるという構図。しかし当のハル子自身も本当に追い求めるものにはまだ辿り着けていないという、人生あがいてナンボのもんじゃい!といった作風が大人になった世代にも若い人たちにも刺さるのかな、と思いました。それに加えて大人っぽいピロウズのロックとかギター、バイク、ロボットといった男心をくすぐるアイテムの数々。劇場に足を運んだときはお客さん全員男だったのでああ、納得、と。

これを見ているときは心は少年時代に戻って世界に浸れるっていう意味では、日々疲れた現実からの逃避行にはもってこいの作品だと思います。いい作品に巡り合えました!

投稿 : 2024/06/01
♥ : 4

二足歩行したくない さんの感想・評価

★★★★★ 4.2

フリクリらしいフリクリ

フリクリ劇場版2作目。
海外ではなぜか本作の方が先に公開されていたそうです。
オルタナ同様、劇場版作品ですが、内容は普通に6話分のアニメをOP\EDチョッパって連続して再生しているような感じになっています。
オルタナとは内容的に繋がっておらず、オルタナはオルタナで、プログレはプログレで別のストーリーとなります。

最初から最後まで真面目にみていたのですが、全く流れが理解できませんでした。
オルタナは4人の女子高生が笑いあり涙ありで成長する青春ドラマでしたが、本作は恋愛モノで家族ドラマ的なものが始まったと思ったら、ゾンビだったりロボだったりでギターを武器にバトルをしたり、しっちゃかめっちゃかで、「ふんふんなるほどほー、いやさっぱりわからん」という内容でした。

主人公は無口で猫耳ヘッドフォンを常時つけている女子高生「ヒドミ」。
彼女がジンユと名乗る自称宇宙捜査官に轢き殺されそうになるところからストーリーは始まります。
それとは別に学校の教師が顔の皮をベリベリ向いたら下からもう1人の自称宇宙捜査官ラハルが現れて、生徒たちをハーメルンの笛吹き男のように先導します。
そんな折にヒドミは、同級生の「井出交」を意識し始めるのですが、そしたらN.Oが発動してジンユとラハルがバトルを始めてピロウズのメロディが鳴り響くという展開です。

うーん、わからん。

ググるとフリクリの有識者がOVAとの関連を含めて教えてくれる解説サイトがいくつかあるので、ストーリーについてはそちらを参照するのが近道ですが、私的にはフリクリは"Don't think feel"なので、なんだかよく分からないけどたーのしー作品だと思いました。
なお、OVAもですが、見終えたら内容はだいたい忘れてしまいました。それでいいのだ。いいのか?

わかりやすい反面フリクリらしさが削がれたオルタナと違い、わかりやすさを捨ててフリクリらしさを取ったような内容でした。
ネットの評価はプログレに軍杯が上がっているように感じますが、人によって評価は分かれると思います。
まあOVAから劇場版公開まで現役でアニメを見続けてるというのは、結構拗らせている層な気がしますし、OVAの潮流をくんだプログレが好まれるのもわかる気がします。
なお、私的には両方ともそれぞれの良さがあると感じました。
OVAの先行視聴は必須では無いです。
OVAはまた別のストーリーという感じですね。
ただ、見ておいた方がより楽しめると思うので、劇場版より前にOVAをみておくのがおすすめです。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 1

フィリップ さんの感想・評価

★★★★★ 4.3

大豆ラブストーリー

2000年に制作された『フリクリ』の正統派続編。
6人の監督たちが1話ずつを担当し、
自分たちの個性を押し出しながら
1本の映画としてまとめた画期的な作品。
6人それぞれが制作を同時進行させていたこともあるのか、
作画はかなりバラつきがあるが、
(もちろん、ワザとという部分もある)
それがこの作品の面白さでもあった。

猫耳ヘッドフォンを付けて、
外部をほぼシャットアウトする少女。
貧しさのなかに身を置きながら、
スクラップ工場で働く少年。
ふたりの少年少女が出会い、
ふたりの宇宙人が現れることで、物語は大きく動いていく。

アトムスクを追うラハル、それと止めようとするジンユ、
父の帰りを待つ雲雀弄(ひばじり)ヒナエとヒドミ、
ヒドミのことが気になる井出交とふたりの友人、
OVA登場のアマラオの息子マスラオ、その娘アイコなど、
それぞれの登場人物たちが、心に何かを抱えたまま
世界的な危機に翻弄されていく。

キャラの動きや豊かな表情、挑戦的な作風が
とても楽しいのは、OVA版に近いものがある。
特に4話の「ラリルレ」と5話の「フルプラ」の回の
はっちゃけぶりは、これぞフリクリだという
斬新で見ごたえのある映像を楽しませてくれた。
末澤慧監督が担当した5話は作画の表現も
かなり意表を突いたものだ。
漫画の誌面を表現した部分では、
『ホットロード』を意識しているという。
末澤慧監督は次回作があるなら観てみたい。
そして、主人公の林原めぐみ、水瀬いのりを中心とした
声優陣も存分に上手さを見せてくれていた。

ただ、今回の作品は6名のアニメーターたちが監督となって
できることをやったという形になっていたことが原因なのか、
ストーリーの落とし込みや全体のアイデアという部分では、
カタルシスを感じることができなかった。
最終的には4組の男女が織りなす
ラブストーリーになってしまっているというか、
まぁ、そもそもが東京ラブストーリーだと思えば、
それほど違和感もないのかもしれないが…
物語の根幹のようなものがもう少しはっきりしていれば、
OVA版を超えるだけのポテンシャルがあったと思う。

観る者の心に訴えかけてくる表現が
散りばめられている意欲作だとはいえるだろう。
(2018年11月2日初投稿)

投稿 : 2024/06/01
♥ : 38

63.8 3 2018年度のオリジナルアニメーションアニメランキング3位
劇場版 フリクリ オルタナ(アニメ映画)

2018年9月7日
★★★★☆ 3.4 (60)
230人が棚に入れました
モヤついている高校生・河本カナ。嵐のごとく登場するハル子。その時カナの額にお花が生えた! 煙を吐きがら街をぶっ潰すアイロン。毎日が、毎日毎日続いていくと思っていた・・・。力を手に入れたカナはアイロンをぶっ飛ばせるのか!?

声優・キャラクター
新谷真弓、美山加恋、吉田有里、飯田里穂、田村睦心、小西克幸、永塚拓馬、鈴木崚汰、伊藤美紀、真坂真帆、森功至、松谷彼哉、青山穣
ネタバレ

フィリップ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7

17歳の叫び

アニメーション製作Production I.G×NUT×REVOROOT
監督:上村泰、副監督:鈴木清崇、脚本:岩井秀人
キャラクター原案:貞本義行、キャラクターデザイン:高橋裕一

何がフリクリなのか分からない。
2000年製作のOVAフリクリの監督である
鶴巻和哉から発せられた言葉だ。
それだけフリクリという作品には、
多様性があるということだろう。
音楽、作画、パロディ、ロボット、SF、青春などなど、
渾然一体となってさまざまな要素が盛り込まれていることが、
ひとつの特徴といえるかもしれない。

舞台は何の変哲もない田舎町。
ごく普通の女子高生、河本カナ(カナブン)は辺田友美(ペッツ)、
矢島聖(ヒジリー)、本山満(モッさん)という
3人の友達といつも一緒。
秘密基地「ハム館」を拠点に、楽しい学生生活を送っていた。
しかし、彼女たちの前にハルハラ ハル子が現れて、
日常は大きく変化していく。

街にできた大型ショッピングセンター、
カナブンのバイト先の蕎麦屋で
男がいつも同じ月見そばを注文することも
ひとつの象徴だろう。日本初の女性総理大臣は
国民に何かを隠して計画を進めている。
激動の予感を漂わせながら、カナブンの日常は過ぎていく。

女子高生たちは日々の暮らしを満喫している。
ヒジリーは大人ぶって年上の恋人と付き合っている。
モッさんは進路を決めて自分の力で夢に向かって邁進している。
カナブンはある男子が気になり始める。
ペッツは高村薫の『照柿』を読みながら、
幼馴染のカナブンを特別な存在として意識し、秘密を抱えている。

日本での公開はこちらが先だったが、
『フリクリ プログレ』の製作が決まったあとに
オルタナの製作が開始されたため、
プログレの内容とは、違う形でのやり方が求められていたという。
つまり、プログレのほうが正当派の続編であって、
こちらは、あくまで番外編。本編とは少し外れた内容になっている。

そして、違いをどこで出すかということで、
女子高生の日常を描いた青春ストーリーに
ハル子が絡んでくるという展開になっている。

正直なことを言うと、この話であったなら
『フリクリ』である必要性はほとんどない。
女子高生の青春ストーリーが中心にあって、
ハル子や世界観が重なってくる。
そのため、ハル子のポリシーというか哲学が
ずれているように感じてしまう。
監督がこの作品で重視したのは、
「女子高生のリアル」だとインタビューで語っている。

監督の上村泰はガイナックス時代に『トップをねらえ2!』の
設定制作補助を務めたところからキャリアをスタートさせ、
その後もいわば鶴巻和哉の下で仕事を覚えた人物。
鶴巻和哉のやり方をつぶさに見てきたため、
フリクリの監督としてはうってつけの人物だったのだ。
そして、脚本は舞台作家で演出家でもある岩井秀人を起用。
これは鶴巻和哉が昔のインタビューで語っていたことだが、
フリクリを考案していたときには、色々な舞台を頻繁に見に行っていて、
演出は舞台の手法にかなり影響されたそうだ。
アイロン型の工場やギターを武器のように
使用するというような小道具の使い方は確かに舞台っぽい。
そういう面も踏まえた抜擢だったことが想像できる。
上村泰監督はフリクリのファンだと語っており、
その結果、完成したのが、この『フリクリ オルタナ』なのだ。

ここで、冒頭の鶴巻和哉のコメントが浮かぶのだが、
どれだけ近くにいても何が正しいのかは、分からないのだろう。
特に、このフリクリという作品には、
当時の時代性やガイナックスの社風が色濃く反映されている。
そういう意味では、このフリクリも「アリ」なのだとは思った。

物語の核をなすのは、主人公カナブンとペッツの話となる。
彼女たちの関係性が、この世界の命運を決定づけるキーとなっていく。
{netabare} 女子高生の叫びが世界に関係していくというのは面白いが、 {/netabare}
この作品は良くも悪くもOVA版『フリクリ』を意識しすぎているのが
マイナス方面に働いてしまっている。
それと、この2人を話の中心にするなら、
もう少しそれぞれの想いを前面に出したほうが良かったと思う。
ほかの2人のエピソードを削ってでも、
こっちに持ってくるべきだったのではないかと感じてしまった。

個人的なフリクリという作品に対するイメージは、
「バットを振り切る」ことが重要で、
色々なことに縛られていない自由度が最大の魅力だと思っている。
しかし、この作品では女子高生のドラマを
丁寧に描いていくこと以外では、
ほぼ前作の方向性をなぞっただけという印象は拭えない。
プログレの方向性があったにせよ、
もう少し前作に縛られない部分もあったほうが良かった。

また、この監督は音楽に対して、
あまりにも無頓着すぎるのではないだろうか。
ピロウズの曲が流れているところで、
キャラクターが歌い出すシーンがあるのだ。
どうしてこういうことをやって良しとしたのかは理解できなかった。
理由はあるのだろうが、これは百パーセントあり得ない演出だろう。

それぞれのドラマはよく作りこんでいて、
完成度が高いだけに色々と惜しい作品だったと思う。
ピロウズの曲自体は相変わらず聴かせてくれる。
(2019年10月20日初投稿)

投稿 : 2024/06/01
♥ : 41
ネタバレ

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5

いつまでもこのままでいたい!・・・・ そう思ったって良いと思うです。

   久々の初日、初回上映で見れたです。
 かなぶんを中心としたペッツ、ヒジリー、モッさんの仲良し4人組の日常、非日常をそれぞれの視点に描かれたお話だったです。かなぶんと出会ってかなぶんの能力に気づいた、お姉さん自称なのか?宇宙捜査官ハル子が、やたらちょっかいを出してくる展開です。長い上映時間だったです。

 かなぶん、ハル子やたら目立ってたです。敵なのか侵略者だかわからない、突然出てくる機械生物とハル子が戦うです。宇宙だか火星の話が、何の関係があるやら出てくるです。

 4人でバカやって騒ぎつるむ日常は、ありがちな女子高生なでしょうか?です。4人で興味本位に共同制作して作るロケットは、楽しかったと思うです。

 4人それぞれに互いに、何も知らない事情が描かれていたところも見所です。心配なのか?役に立ちたいと思うのか?ハル子の行動に注目です。
 大人だかの恋のことだったり、進路で自分でつかむために進む夢だったり、同年代の恋する気持ちはどういうものか?だったです。自分が思ってきた変わらないでほしいと思う毎日は、友達にしてみればどうだったか?を破天荒に描かれていたです。

 常にハル子が中心にいるようで、絡むハル子の大胆かついたずらにも見える行動があったです。ハル子は、何をしたいのか?あまり私には理解できなかったところがあるです、

 全体を通して、かなぶんが望むいつも変わらない毎日は、自分としてもそんな気持ちは持っていたいと思うです。かな分が望んでいても、一番の親友は実は、どうなのか?、つらい現実も見せられたです。{netabare}最後の方で、人は年を取る、周りの風景も変わる、そんな中でも笑顔は変えないでいいとか言ってたようなセリフは、共感できるものがあるです。{/netabare}

 かなぶんが思うように、いつまでも4人仲良くしていきたいと思うのは、決して悪くない人として当然の願いであると考えるです。このお話は、そんな自分が望まなくても変わるもの、変えてはいけないものを訴えてもいるように見えたです。そこが、面白みなのかもしれないです。「これでいいのか?」な終わり方だったけど・・・・・・・・です。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 6

やまだ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

反対の反対

ガイナックスのトンデモオシャレアニメ。かと思いきやガワをマネた別物。
本家がトンデモ過ぎてムリってな方はちょうどいい塩梅なのかもしれない。
オルタナっていうだけあって別物。難易度調整版ってことなのかな。

フリクリ本家より間違って先に見てしまった。聞いていた本家の評判の要素は確かに感じたんだけど、ピロウズは好みの問題としてやたらと言葉遊びが鼻につくしなんかいちいち掛け合いが間延びしてるし映像表現と作劇のバランスが悪い印象。80年代のドタバタマンガをアニメにしてみました風なガワだけど中身は今どきの量産アニメレベルの凡庸さがプンプンでそこまで有難がるようなものかね、と思ったら、違う作品だった(笑)。


オルタナティヴって単語はメインストリームから外れた別の可能性みたいな意味だと思うけど、そもそも本家のフリクリ自体がそうなんだからそこからさらにまたハズしてどうすんのって感じ。もともと本流から遠ざける意味で使われるはずの言葉なのに本流に戻すベクトルなのはどうなのか。プログレとのゴロ合わせとピロウズがオルタナティヴロックって言われてたからってだけなんでしょうけど。ここでのオルタナはイージーとかライトって意味になってる。そんなものにいちいち拘って言葉狩りしてもしょうがないけど、本家と比べてしまえば過去の遺産を食いつぶすだけの作品にしか見えません。

ピロウズに関しては嫌いな人は主張し過ぎって感じるかもしれないですが、YouTubeの動画配信で自分の好きな音楽流すのと同じようなもんでしょう。聴かせたくて流してんだからうるさくて当然。初めてマトモに聴いたけどこれは熱狂的な信者がいるのも解る。良質なルーツを感じます。KENZI&THE TRIPSは聴いてたけどこっちは当時は信者がウザかったので聴いてなかった。当時は拗らせてましたからやたら持ち上げられると引いちゃうのです。

フリクリとしてどうなのかとかはどうでもよくてドヤ感しか感じません。
本家観てみたら評判との相違が一気に解消されました。
全然違いますやんってなったのでこっちは撤退。これから本家観ます。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 6

62.2 4 2018年度のオリジナルアニメーションアニメランキング4位
Midnight Crazy Trail(アニメ映画)

2018年3月10日
★★★★☆ 3.2 (10)
41人が棚に入れました
真夜中の“ゴミ捨て屋” 稼業に励むシャウト&クランチのコンビ。そんなある日、魔女として立派な花嫁になるために、人間界で1年間修業すべくロンドンの街に降り立った16 歳の少女マキナがふたりを探しあて、“魔法の書”を捨てさせようと懇願。実は彼女、魔女をやめて普通の女の子になりたがっているのだが、そのためには魔法の媒介となる魔法の書が邪魔なのだ。しかし実際のところ、この本、簡単に捨てられるシロモノではなく……。

ヘーゼル さんの感想・評価

★★★☆☆ 2.6

上坂すみれファンなら。

声優演技が引き立つ作風で、声優ファンなら楽しめます。主演は上坂すみれさんです。

大人向けなのか子供向けなのか中途半端なストーリー。CG作画だけど低レベル。

調べると2018年のアニメ制作若手育成の一貫とのことで、完成度には納得。
今後、海外展開したいとありましたが、このレベルでは不安です。

全12話作成予定との記事も拝見。2020年で続編の話題が無いということはあきらめたのでしょうか。

今回、ユーネクストで視聴。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 1

褐色の猪 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

スラップスティック・アニメ

初公開は「あにめたまご2018」となりましょうか、
https://animetamago.jp/2018/index.php

あにめたまご2018 公式PV
https://www.youtube.com/watch?time_continue=4&v=kOfmMkxStz0


2018年8.9月頃より幾つかの配信サイトにて配信されてます。

美術的にはちょっとだけ「プリンセス・プリンシパル」を彷彿する、かもしれない(^-^;)
キャラはまた違うポップな感じなのでキャラ絵が気に入ればお勧め。

投稿 : 2024/06/01
♥ : 3
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